胆道
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7 巻, 4 号
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  • 特に,虚血-再灌流障害におけるradical scavengerおよびphospholipase A2 inhibitorの効果とプロスタグランディンの関与について
    矢嶋 幸浩
    1993 年 7 巻 4 号 p. 445-457
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    犬の胆嚢に虚血-再灌流を加えて急性無石胆嚢炎を発生せしめ,その発生機序におけるradical scavengerやphospholipase A2(以下PLA2)inhibitorの効果とプロスタグランディンの関与を明らかにする目的で本研究を行った. 胆嚢に45分虚血後90分再灌流を加えると全例に急性胆嚢炎が発生し,胆嚢粘膜中のPLA2,過酸化脂質およびリゾレシチン/レシチン比(以下L/P比)は増加し,特にPLA2やL/P比と胆嚢の炎症面積との間には有意の正の相関が認められた.また,胆嚢内のPGE2,PGF2α,6KFおよびTXB2は虚血- 再灌流により有意に増加し, 特にPGE2 やPGF2αは胆嚢の炎症面積と有意の正の相関が認められた.これにSOD+CAT,あるいはSOD+CAT+キナクリンを混合して胆嚢動脈内に注入すると,胆嚢粘膜中の過酸化脂質はSOD+CATの混合投与で,PLA2活性やL/P比はキナクリンの投与で,有意に減少し,また,胆嚢内のPGE2やPGF2αも減少して,胆嚢の炎症面積は有意に減少した.
  • 増生細胆管の形態学的および免疫組織学的検討
    国村 利明, 諸星 利男, 神田 実喜男
    1993 年 7 巻 4 号 p. 458-464
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    劇症肝炎における肝内細胆管の経時的変化について,20剖検例を用い検索を行った.光顕的に肝細胞再生がみられない急性期症例では,明るい細胞質を有する円柱上皮からなるI型細胆管の増生が門脈域に確認された.肝細胞再生がみられる亜急性期症例では,暗い細胞質を有する立方上皮よりなるII型細胆管も再生結節周囲に増生し,経過とともに著明となっていた. EMA,Keratin,CA19-9等の免疫組織学的結果から, I 型は胆管上皮と同様の染色性を示した.また,II型は肝細胞様の染色性を示すものと胆管上皮様の染色性を示すものとが認められたが,経過とともに肝細胞様の染色性示すII型細胆管の占める割合は減少していた.電顕的にII型細胆管は肝細胞に類似するが,基底膜上に配列するものもみられた.以上より,劇症肝炎における肝内細胆管の動向は,まず発症初期に胆管上皮由来の細胆管の増生が,さらに肝実質細胞の再生が盛んになるにつれて肝細胞に由来する細胆管の増生が引続くことが示唆された.しかし,文献的に劇症肝炎回復期症例では,有意な肝組織所見を認めないことから,剖検例に観察されたこれらの所見は,予後不良を示す所見でもあると考えられた.
  • 山本 宏, 渡辺 一男, 篠原 靖志, 菊池 俊之, 浅野 武秀, 磯野 可一, 竜 崇正, 丸山 尚嗣
    1993 年 7 巻 4 号 p. 465-472
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸症例71例において胆管造影CTを行い,肝門部胆管と門脈の解剖学的位置関係を検討し,胆管造影CTの術前検査としての評価を行った.CT画像において,胆管は肝実質に比べ強いhigh densityに描出され,頭側から尾側のスキャンにて,外側区域枝,内側区域枝,尾状葉枝,前区域枝,後区域枝の分岐部付近が確認できる.また,門脈は肝実質よりlow densityに描出され,同様に門脈臍部,左枝,右枝,前区域枝,後区域枝が順次確認できるので,胆管,門脈の位置関係を判定できる.胆管後区域枝は89%の症例で門脈前区域枝頭側で分岐し,その背側を走行し,11%の症例では腹側で分岐し,尾側を走行していた.胆管内側区域枝は97%の症例で門脈臍部の右測で分岐し,3%の症例で門脈臍部の頭側で分岐していた.胆管造影CTは,肝門部胆道癌の術前検査として,門脈の走行を考慮に入れた肝側胆管切離部位想定に非常に有用と考えられる.
  • 新井田 達雄, 吉川 達也, 武藤 博昭, 森山 宣, 吉田 基巳, 吾妻 司, 中村 光司, 羽生 富士夫
    1993 年 7 巻 4 号 p. 473-479
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌の大動脈周囲リンパ節(以下(16))転移や,(16)郭清に関する検討を行った.胆嚢癌44例中25%に(16) 転移を認め,m,pm癌(3例)に(16)転移はなかったが,ss以上の進行癌41例中26.8%に(16) 転移を認めた.特に,頸部にかかる癌(以下Gn)で30.0%,底体部二領域に及ぶ癌(以下Gfb)で28.6%に(16)転移を認めた.(16)転移陽性でも,他の非治癒因子がなけれぼ,3年生存無再発例も1例であったが,(16)以外の非治癒因子を有したり,(16)転移度が高い症例は術後早期に死亡した.ss以上(GnかGfb)における(16)郭清37例の5 年生存率は47.6%で,(16)非郭清91例の5年生存率18.2%に比し有意に良好であった.(16)郭清に起因する術後合併症や死亡はなかった.(16)郭清後の1年以上経過した21例のQOLは,95%がGrade O~1と良好であった.以上より,ss以上の胆嚢癌(GnかGfb)に対し,(16)郭清は必要で安全な術式と思われたが,(16)以外の非治癒因子を有したり,(16)転移度が高い症例は(16)郭清の適応外と思われた.
  • 西荒井 宏美, 土屋 幸浩, 大藤 正雄
    1993 年 7 巻 4 号 p. 481-490
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    体外衝撃波胆石破砕療法は,1)胆石の破砕と2)破砕片消失の2段階より成る.本研究においては,胆汁酸による胆石溶解療法を併用せずに,胆嚢胆石症患者144人(X線透過性99人,非透過性45人)の体外衝撃波破砕療法を行い,破砕片の消失効果と密接な関連をもつとされる,破砕片の大きさと胆石の石灰化,さらに,それらに胆嚢収縮能を新たに加えて,これらの因子と破砕片の消失効果との関連を検討した.なお,上記の破砕片の消失関与因子を多変量解析法で分析した.その結果,破砕片の大きさ,胆石の石灰化(腹部単純X線撮影),胆嚢収縮能が,破砕片消失効果と統計学的に有意に関連し,重要な消失関与因子であることを確認した.
  • 伊藤 正樹
    1993 年 7 巻 4 号 p. 491-498
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    総胆管結石,膵胆管合流異常,肝内結石,胆管癌症例で,胆管胆汁中リゾレシチン(LPC)を測定し,疾患との関係を推察した.また,レシチン(PC),粘液糖蛋白,アミラーゼの検討も行った.さらに,肝内結石の成因の一端を明らかにする目的で,肝内結石の生成に関与する物質を統計学的手法であるロジスティック回帰分析を用い検討した.胆汁中LPCは、総胆管結石,膵胆管合流異常で増加し,同時に胆汁中に膵由来であるはずのアミラーゼも有意の高値を示した.したがって,総胆管結石,膵胆管合流異常におけるLPCの増加は,膵液の胆道内流入により活性化されたPLA2がPCを加水分解するためと考えられた.膜障害性の強い物質であるLPCは,膵胆管合流異常,総胆管結石の胆管炎,膵炎などの発生増悪に関連があることが示唆された.ロジスティック回帰分析では,胆汁中粘液糖蛋白が肝内結石の成因および進展に関与すると考えられた.
  • 佐藤 正一, 伊勢 秀雄, 北山 修, 森安 章人, 鈴木 範美, 松野 正紀
    1993 年 7 巻 4 号 p. 499-509
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    乳頭狭窄(狭窄・不全)を,確実に診断することはきわめて因難である.今回は定圧灌流法をモデル胆管と乳頭炎犬に用いて,その診断学的有用性を基礎的に検討した.モデル胆管を用いた定圧灌流法では,末端抵抗の大小で流量が大きく影響されること,内圧波形は定流灌流法のものと,よく一致することが判明した.また,雑種成犬(対照犬)では,負荷圧(高さ)と流量は正の相関関係が認められた.フォルマリン注入乳頭炎犬(慢性犬)は,術後3週では胆管拡張と減衰時間の延長,流量の減少が,術後6週では胆管拡張は残存するが,減衰時間は短縮し,開放圧は高いが流量は増加した.慢性犬の実験では,乳頭は狭窄パターンから漸次不全パターンに移行することが判明した.これらの基礎的検討から,乳頭の機能的,器質的変化の診断に,定圧灌流と定流灌流の併用が有効であることが判明した.
  • 小柳 泰久, 吉松 昭彦, 伊藤 伸一, 土田 明彦, 青木 達哉, 木村 幸三郎
    1993 年 7 巻 4 号 p. 510-517
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵・胆管合流異常(以下,合流異常)では,膵液と胆汁が相互に流入することによって膵や胆道に病変をもたらすが,胆嚢にも種々の併存疾患がみられる.そこで,合流異常39例について,併存病変と胆嚢粘膜の病理組織学的変化を検索した.
    胆嚢における併存病変としては癌が多く(10例),その他,腺筋腫症,結石,ポリープなどであった.胆管拡張形態で比較すると,紡錘型では癌が多く,非拡張型では全例に何らかの胆嚢病変の併存がみられた.
    胆嚢の病理組織学的検討においては,合流異常症例では過形成が高頻度にみられることが特徴であった.また,非癌部および癌との境界部の所見から,過形成が癌の発生母地にもなり得るものと推察された.合流異常では過形成は成人,小児ともに高率にみられたが,化生は小児ではみられなかった.
  • 加納 宣康, 山川 達郎, 石川 泰郎, 酒井 滋, 福間 英祐, 本田 拓, 春日井 尚, 水口 國雄
    1993 年 7 巻 4 号 p. 518-521
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    1990年5月から1992年10月までの30カ月間に施行した,腹腔鏡下胆嚢摘出術409例中5例が,術中あるいは術後の病理組織学的検索にて胆嚢癌と判明した.年齢は51歳から66歳までで,平均59歳,性別は男性2例,女性3例であった.術前診断は2例が胆嚢ポリープ,3例が胆石症であった.症例1および2は,術後の病理組織学的検査で粘膜癌と診断されたもので,胆嚢摘出術のみで経過をみている.症例3,4および5は,術中あるいは術後の病理組織学的検査で深達度ssの胆嚢癌と診断されたため,肝床切除とリンパ節郭清を追加した.現時点では全例元気に生存しているが,今後厳重な経過観察を要する.本法施行に際しても,切除標本は必ず術中に肉眼診断し,癌が疑われれば術中に迅速組織診断し,癌と判明した場合は,深達度がpmまたはそれ以上なら,肝床切除とリンパ節郭清を追加すべきである.
  • 木村 文夫, 諏訪 敏一, 林田 和也, 柿崎 真吾
    1993 年 7 巻 4 号 p. 522-526
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    交通外傷後に発症した,外傷性胆管狭窄の1例を経験したので報告する.症例は20歳の女性で,受傷後16日目に全身倦怠感が出現し,その25日目に黄疸が出現した.入院時の血液生化学とCTから閉塞性黄疸と診断し,経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)を施行した,胆管造影で中部胆管に狭窄像を認めた,内視鏡的逆行性膵管造影では異常は認められず,血管造影でも異常はなく,腫瘍マーカーも正常であった.以上より,本疾患と診断し,PTCDの瘻孔からPTCSカテーテルを用いて狭窄部の拡張を行なった.PTCD施行後4週までに瘻孔の拡張を行ない,カテーテルを14Frとし,6週目に狭窄部の拡張を行なった.その後3ヵ月間カテーテルを留置し,総胆管の狭窄が消失したことを確認しカテーテルを抜去した.本疾患はこのように,保存的に治療しうるものと考えられた.
  • 篠原 靖, 福田 定男, 武田 一弥, 池田 肇, 川口 実, 斉藤 利彦, 児島 辰也
    1993 年 7 巻 4 号 p. 527-534
    発行日: 1993/09/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,女性.心窩部痛を主訴に来院した.腹部US,CTにて総胆管の拡張と,肝左葉の結石をともなう嚢胞様病変を認めた.PTCにて,左肝内胆管から総胆管にかけての著明な拡張と,総胆管全域におよぶ透亮像を認め,PTCSにより粘液産生胆管腫瘍と診断した.高齢のため,PTCDによる保存的治療としたが,腫瘍の産生する粘液により頻回のドレナージチューブの目詰まりをきたしたため, 塩酸ブロムヘキシンの投与を試みたところ,粘液の粘稠度の低下が認められ,良好な胆道ドレナージが得られた.さらに,体外および胆管腔内照射の放射線療法を追加したところ,粘液産生量の低下が得られ,ドレナージチューブの抜去も可能となった.
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