味刺激に対する末梢の応答を解析する方法としていくつかの方法が採用されている。電気生理学的手法では、マウスやラットの鼓索神経や舌咽神経等を外科的に露出し、その電気的活動を細胞外電極で取得する手法が良く用いられる。また、パッチクランプ法も味細胞の活動解析に用いられている。最末梢である味細胞の活動を観察できるため、単一細胞の味受容機構の解析に力を発揮する。一方で、多点の同時計測には困難が伴うため、検体数を増やすためには多大な労力を要する。カルシウムイメージングも味細胞の応答解析に良く用いられる。細胞は外部から情報を受容すると、それに応じて特有な反応を示し、細胞内に情報を伝達する。多くの細胞でCa^<2+>がセカンドメッセンジャーとして採用されており、味細胞も例外ではない。これまで味細胞のカルシウムイメージングでは単離味細胞やスライス試料を用いるのが一般的であった。そのため、味刺激を与えた際に味細胞の口腔側だけでなく基底側までもが同時に刺激される、味細胞の生存時間が短いなどの欠点が残っていた。我々はこの点を克服すべく、マウスの舌から剥離した舌上皮をそのままカルシウムイメージングに供する方法を確立した。本法を用いることによって多数の味細胞の応答を同時に長時間に渡って観察することが可能となった。
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