タウリンリサーチ
Online ISSN : 2434-0650
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5 巻, 1 号
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  • 砂田 芳秀, 大澤 裕, 太田 成男
    2019 年 5 巻 1 号 p. 8-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    MELAS は繰り返す脳卒中様発作を特徴とするミトコンドリア病であり、tRNALeu(UUR)をコードするミトコンドリアDNA の3243A>G 変異に起因する。この変異によりtRNALeu(UUR)の1 番目のアンチコドンクレオチドのタウリン化学修飾が欠損し、コドン認識障害が惹起される。われわれは、タウリン高用量投与でMELAS モデル細胞のミトコンドリア機能障害が改善し、2 例のMELAS 患者で脳卒中様発作が9 年以上完全抑制されることを報告した。これを基に、タウリンによるMELAS 脳卒中様発作の再発抑制効果を検証するため多施設共同・オープン・第Ⅲ相医師主導治験を実施した。1 年間のタウリン投与により10 例中6 例で、脳卒中様発作再発が完全抑制され、100%レスポンダー率は60%であった。また80%の患者では脳卒中様発作の頻度が50%以下に減少した。末梢血白血球のミトコンドリアtRNALeu(UUR)タウリン修飾率は測定した9 例中5 例で有意に増加した。タウリン大量投与は、MELAS 患者のミトコンドリアtRNALeu(UUR)タウリン修飾欠損を修復し、脳卒中様発作再発を抑制する。
  • 井上 広滋
    2019 年 5 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    深海底の熱水噴出域に棲む二枚貝類の多くは鰓に硫黄酸化細菌を共生させ、共生菌が硫化水素を利用して生産する有機物を摂取している。宿主が硫化水素を取り込み共生菌に供給する際には、ヒポタウリンに結合させてその毒性を回避しているという説が有力である。ヒポタウリンはタウリンの前駆体であり、構造も類似しているため、貝類が一般に持っているタウリン合成・蓄積機構を流用することにより、硫化水素に富む環境への適応や、硫黄酸化細菌との共生が可能になったと考えられる。
  • 森 真理, 相良 未木, 森 英樹
    2019 年 5 巻 1 号 p. 14-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    世界61 地域で48-56 歳の男女各約100 人の24 時間尿を採取し、魚介類と大豆摂取のバイオマーカー、タウリンとイソフラボンを測定した結果を夫々5 分割して、両方が最低の25 分の1 の群では、日本人は0%、両方が最高の群では、90%を占め、日本食の特色は両者を共に摂取する事と分かった。そこで、この両者が共に少ない群から共に多い群に5 分割し「和食スコアー」として生活習慣病のリスクとの関係を明らかにした。
  • 羅 成圭, 中原 未央, 川中 健太郎
    2019 年 5 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、単回の経口タウリン摂取がヒトの筋力を一過性に高める可能性について検証した研究成果を紹介する。本研究では、健康な若年女性を対象とし、タウリン(50 mg/kg 体重)を運動前に一回のみ摂取させ、その後の筋力および筋持久力の変化を単盲検クロスオーバー比較試験法によって検証した。タウリン摂取から120 分後に測定した発揮筋力(握力、背筋力、垂直跳び)に有意な変化は見られなかった。一方、タウリンを摂取することによって、繰り返される高強度運動時の筋力低下をタウリン摂取が有意に抑制したという結果を得た。本稿で示された結果は、経口タウリン摂取は発揮筋力よりも筋持久力を効果的に高めることを示唆するものであり、運動前に一度摂取するだけでも効果が得られるという新たな知見を示すものである。
  • 宮﨑 照雄, 佐々木 誠一, 豊田 淳, 白井 睦, 池上 正, 本多 彰
    2019 年 5 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン生合成能がないネコでは、タウリン枯渇食の供与により生体中のタウリンが欠乏状態に陥る。タウリンの欠乏により、タウリンの胆汁酸抱合率が顕著に減少する。さらに、胆汁中の胆汁酸濃度の有意な減少と胆汁酸組成の変化が生じる。そこで、タウリンの欠乏が、肝臓における胆汁酸合成過程に及ぼす影響について、胆汁酸合成経路の中間代謝物である酸化ステロールの変化について検討した。その結果、タウリン欠乏ネコの肝臓において、胆汁酸合成経路のClassic pathway の酸化ステロールの有意な増加とAlternative pathway の酸化ステロールの有意な減少が確認された。タウリン欠乏による胆汁酸組成の変化は、胆汁酸合成経路で異なる中間代謝物の変化に伴っており、タウリンが胆汁酸合成系の代謝に関与する可能性が示唆された。
  • Ning Ma, Feng He, Yamashita Takenori, Toshihiro Kato, Mariko Murata
    2019 年 5 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    Since ancient times, natural products have been used intraditional medicine to prevent and treat various diseases, including cancer. Taurine (2-aminoethanesulfonic acid) is a natural amino acid that is expressed widely in all mammalian tissues. It is crucial for proper function of the central nervous system1, retinal neurons2, 3, and cardiac and skeletal muscle4, 5. Several studies have demonstrated that taurine has anti-inflammatory6, antioxidant7, and hypoglycemic8 effects. Recently, taurine not only mitigate the side-effects of taurine on the cancer chemotherapy, but also possesses anti-tumor properties and has been shown to inhibit proliferation and induce apoptosis in certain cancers by differential regulating pro-apoptotic and antiapoptotic proteins9, 10. The anti-tumor study of taurine is still in its infancy, so the mechanism of its anti-tumor effect is not fully understood. In this regard, it is worthwhile to study the anti-tumor mechanism of taurine, which may provide clues for us to develop new synthetic therapeutic molecules. In this mini review, we summarize the main effects of taurine that have shown suppressing actions in the initiation and progression of cancers. The underlying molecular mechanism was also elucidated to provide evidence of the potential clinical application to taurine in tumor therapy.
  • 高堂 裕平
    2019 年 5 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    アルツハイマー病とタウリンの何らかの関連を示唆する研究報告が前臨床および臨床研究で蓄積しつつある。アルツハイマー病モデルマウスにおけるタウリン投与の有効性が報告されているが、アルツハイマー病の治療薬としてタウリンが有効であるかどうか、今のところ明らかにはなっていない。タウリンの多彩な作用を鑑みるに、アルツハイマー病における複数の病態機序にタウリンが効果を示す可能性があり、今後の検討が重要である。
  • 芳賀 穣, MM Gonzales-Plasus, 伊藤 智子, 近藤 秀裕, 廣野 育生, 佐藤 秀一
    2019 年 5 巻 1 号 p. 30-31
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    コイのシステアミン代謝に関与するシステアミンジオキシゲナーゼ(ADO)の構造および発現解析ならびにシステアミンを経口投与したコイの血液中のタウリン濃度を検討し、コイADO はゼブラフィッシュなどと近縁で肝膵臓や脳、腸管などに発現することを見出した。また、システアミンを投与すると血液中のタウリン含量が増加することを確認した。これらの知見は、魚類のタウリン合成能の一端を明らかにしたもので、他魚種との比較から魚類のタウリン合成能の違いを解明する一助となると期待される。
  • 伊藤 智子, 曺 貞鉉, 中村 康平, 益田 玲爾, 芳賀 穣, 佐藤 秀一
    2019 年 5 巻 1 号 p. 32-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンの合成経路は、システインスルフィン酸経路、システアミン経路、システイン酸経路の3 つが存在する。マダイ稚魚がこれらの経路からタウリンを合成できるかを明らかにするため、各経路におけるタウリン前駆物質を添加した飼料を作製し、5週間の給餌試験を実施した。その結果、マダイ稚魚は、システインスルフィン酸経路、システアミン経路によってタウリンを合成できないものの、システイン酸経路によって成長に必要なタウリンを合成できる可能性が高いことを明らかにした。
  • 中村 康平, MM Gonzales-Plasus, 伊藤 智子, 益田 玲爾, 芳賀 穣, 佐藤 秀一
    2019 年 5 巻 1 号 p. 34-35
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒラメにおいてタウリン合成経路の1 つであるシステインスルフィン酸経路は存在しないか活性が微弱であると考えられる。本研究ではシステインスルフィン酸経路以外の合成経路であるシステアミン経路がヒラメに存在するかを明らかにするため、ヒラメ稚魚にシステアミン添加飼料を与え、30 日間飼育した。その結果、システアミンの摂取により、魚体中のタウリンが増加した。このことから、ヒラメ稚魚にシステアミン経路が存在することが示唆された。
  • 山下 剛範, 磯貝 珠美, 北岡 ひとみ, 加藤 俊宏, 具 然和, 有馬 寧
    2019 年 5 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    腎臓は放射線曝露後に放射線腎症を誘発することが報告されている。放射線腎症は、活性酸素種(ROS)およびサイトカインが原因である炎症に基づくプロセスを含むことが知られている。タウリン(2-アミノエタンスルホン酸)は、酸化防止剤および抗炎症剤を含むいくつかの重要な効果を有する含硫有機酸である。今回は、我々自身の知見を含むタウリンによる放射線腎症緩和の可能性について述べる。
  • 加藤 俊宏, 伊藤 崇志, 山下 剛範, 有馬 寧
    2019 年 5 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンは含硫アミノ酸の一種で、タウリントランスポーターノックアウト(以下、TauTKO)マウスは野生型マウスと比較して寿命が短く、小さい体長を示す。タウリントランスポーターノックアウト(以下、TauT KO)マウスの骨組織の観察では、骨量・骨密度低下が示されている。今回はTauT KO マウスの血清の骨代謝マーカーを測定し、骨代謝が骨吸収に傾いている可能性が示唆された。
  • 伊藤 崇志, 宮下 晶惠, 伊藤 駿太, 村上 茂
    2019 年 5 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンを多く含有する魚介類や海藻にも多彩なタウリンの誘導体が見つかっており、ヒトを含むほ乳動物に対する薬理効果が検討されているものが散見される。例えば、海藻に含まれるホモタウリンは、抗アルツハイマー効果が期待され、過去に臨床試験がすすめられた。イワシから単離されるD-システイノール酸については血圧や血小板凝集への作用が検討されている。このように、海産物中のタウリン誘導体にはヒト生体に対する薬理効果が期待されるが、これまでにあまり研究が進んでいない。本ミニレビューでは海産物中に含まれるタウリン誘導体に関するこれまでの知見を紹介する。
  • 薩 秀夫, 権藤 祐輔, 嶋中 花, 和多利 研二, 福村 みどり, 清水 誠
    2019 年 5 巻 1 号 p. 45-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリンはレドックス制御に関与するthioredoxin interacting protein(TXNIP)のmRNA発現を亢進することをこれまでに見出した。本研究では、タウリンがTXNIP の遺伝子発現亢進を介してどのような細胞機能に影響を与えるか検討した。その結果、タウリンはTXNIP 亢進を介してグルコース取込活性を抑制すること、またAMP キナーゼの活性化及び細胞内ATP 量を増加させることが示唆された。
  • 黒川 洋一
    2019 年 5 巻 1 号 p. 47-48
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    低密度リポタンパク質(LDL)は酸化されると、動脈硬化を引き起こす原因物質になる。本研究では、粥状動脈硬化の直接の原因とされる活性塩素種と同様の作用を持つとされるクロラミン-T存在下で、LDL分子内のトリプトファン残基の酸化に伴うキヌレニン残基由来の形成を、その蛍光スペクトルの増大を指標として検証し、本蛍光強度変化を抑制する化合物を探索した。その結果、タウリン類縁体などに顕著なLDL酸化抑制効果を見出した。
  • 三浦 征, 小峰 昇一, 宮下 菜緒, 時野谷 勝幸, 今野 雅生, 川津 俊輔, 大森 肇
    2019 年 5 巻 1 号 p. 49-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    一過性の伸張性運動が血中タウリン濃度に及ぼす影響を検討した。健常男性に非利き腕上腕屈筋群の伸張性運動を負荷し、運動の前後で主観的筋痛の評価、肘関節可動域の測定、血中タウリン濃度の測定を行った。一過性の伸張性運動により、主観的筋痛の増加、関節可動域の制限が確認された。また、伸張性運動によって血中タウリン濃度は減少した。この結果から運動による組織損傷に対して、血中のタウリンが骨格筋に取り込まれ組織保護に利用された可能性が示唆された。
  • 髙橋 諄, 小峰 昇一, 宮﨑 照雄, 時野谷 勝幸, 今野 雅生, 永山 純礼, 大森 肇
    2019 年 5 巻 1 号 p. 52-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    タウリン合成能は合成酵素であるCysteine Dioxygenase (CDO)および Cysteine Sulfinate Decarboxylase (CSD)の活性に依存する。慢性的な高脂肪食の摂取は肝臓および白色脂肪組織(White Adipose Tissue:WAT)におけるタウリン合成能に影響を及ぼす可能性が示唆されるが、いまだ不明な点が多い。本研究ではマウスにおける8週間の高脂肪食摂取に伴う肥満化が肝臓およびWATのタウリン合成能に及ぼす影響を検討した。3週齢の雄性C57BL/6マウスを通常食群と高脂肪食群に分けて8週間飼育した。高脂肪食群では体重、WAT重量が有意な高値を示し、耐糖能は低下した。CDO遺伝子発現量は肝臓、WATともに群間差は認められなかった。CSD遺伝子発現量は肝臓において高脂肪食群で有意に高値を示したが、WATにおいては高値傾向にとどまった。これらは23週間高脂肪食を摂取させた先行研究の結果とは異なるものであった。結論として、マウスのタウリン合成酵素の遺伝子発現量は高脂肪食摂取の期間により異なる可能性が示唆された。
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