待遇コミュニケーション研究
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研究論文
  • 日中母語話者の課題達成観との関わり
    立見 洸貴, 許 亜寧
    2021 年 18 巻 p. 1-17
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    本研究では、親しい間柄の20代の参与者2名による相談談話(「誕生日会の計画」)を分析データとして、課題達成に深く関わる第三者に関してどのような言及が行われているかについて、JNSとCNSの比較分析を行い、以下のことを明らかにした。

    JNSでは、「第三者に関する情報(言及①)」、「第三者の反応の想像(言及②)」、「第三者の名前のみ(言及③)」の3種類の言及がみられたが、CNSでは、このうちの言及②がみられなかった。言及①と言及②について詳しく分析を行った結果、JNSデータの言及①には、「a.第三者に関する具体的なエピソードを提示する」、「b.第三者に関する一般的・抽象的な事柄を提示する」、「c.第三者の事情を考慮し、選ばれうる他の選択肢の可能性を否定する」という特徴がみられた。JNSは、具体性に志向した発話を重ね、先行する発話に含まれる情報の根拠性を高めることを重視することで、課題達成を目指していると考えられる。JNSデータの言及②では、「a.第三者になりきって第三者の発話を想像する」、「b.第三者の気持ちを想像する」という特徴がみられた。こうした発話は、課題達成に直接影響するものではないが、臨場感を高め、場を盛り上げるとともに、話し手の評価を間接的に伝えていると考察した。一方、CNSデータの言及①では、「b.第三者に関する一般的・抽象的な事柄を提示する」ことが多く行われており、CNSでは、第三者に関して知っている情報を互いに複数提示し、最適解を導き出すことによって課題達成を目指すこと、特に親しい間柄では第三者の情報を明確に言語化する文化があることが示唆される結果となった。

    さらに、JNSとCNSに共通して観察された言及①について、課題達成までのプロセスが異なることを指摘した。具体的には、「質問」に対する「応答」の現れ方が異なっており、JNSでは「関連づけ型」の連鎖構造の中で、CNSでは典型的な「独立型」の連鎖構造、発展型の「独立型」の連鎖構造の中で用いられることが明らかになった。

  • 張 智超
    2021 年 18 巻 p. 18-34
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    従来、「〜てもらえませんか」や「〜てくださいませんか」などの依頼に関する「表現形式」についての研究や、文章・談話における依頼に関するコミュニケーション・ストラテジーについての研究は多くされてきた。

    しかしながら、筆者は実社会で起こった依頼コミュニケーションのトラブルは、「結果としての表現形式」の問題だけではなく、依頼コミュニケーションの「前提」(依頼主体がある依頼を行う「前提」、被依頼主体が相手の依頼を引き受ける「前提」)についての意識の違いにも起因しているのではないかと考えている。本研究は依頼コミュニケーションにおいて、コミュニケーション主体が依頼を行うかどうかを決めるという「前提」についての意識、もしくは、依頼を引き受けるかどうか、または断るかどうかという「前提」についての意識を明らかにしようとするものである。8名の調査協力者それぞれに具体的なエピソードを尋ねるための半構造化インタビュー調査を実施し、得られたデータをKJ法の考え方に倣って質的に分析した。その結果、各種の事例から、多様な依頼コミュニケーションの「前提」についての意識が見られた。その上、コミュニケーション主体の「前提」についての意識には段階性、諸意識の連動と意識の多様性が存在することを明らかにした。

  • ビジネスメールの作成調査から
    平松 友紀
    2021 年 18 巻 p. 35-51
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    本稿は、ビジネス場面のメール作成調査を行い、その結果から、言語行為における主体の認識と、言語行為の結果としての表現との連動の様相を明らかにしたものである。具体的には、コミュニケーション主体の認識(場面認識と言語行為の前提となる「記憶」への認識)と、言語行為の結果としての表現(内容・形式)とが、どのように連動していたかが中心的な課題となる。言語行為において、どのような連動がみられたかを考察した結果からは、主体がどこに重点を置き、結果としての表現に結び付けているのかには、異同のあることが明らかとなった。本稿では、それらの考察の結果を、「人間関係」、「場」、理解行為から生じた場面認識に重点が置かれた連動、言語行為の前提となる「記憶」に重点が置かれた言語行為、言語行為の結果としての〈内容〉に重点が置かれた言語行為、言語行為の結果としての〈形式〉に重点が置かれた連動、〈ライティングレベル〉に重点が置かれた言語行為としてまとめた。言語行為における連動の様相においては、主体の中でも複数の認識が語られ、「相反」するような認識が生じていた場合もみられた。こうした主体の認識における「相反」からは、「主体の認識自体の動態性」が窺えたと言えよう。

特別寄稿
  • 授受動詞の用法を中心に
    前田 直子
    2021 年 18 巻 p. 52-67
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    現代日本語の授受動詞は他言語と比べて特色があり、日本語学習者には負担が大きい文法項目である。その授受動詞の様々な用法の中で、本稿では次の3つの問題を取り上げる。第一は、依頼表現「~していただけませんか」においてなぜ可能形が必要なのかという問題、第二は、依頼の連続「~して、~してください」において、従属節「~して」の部分に敬語を用いるとすると「~してくださって、…」ではなく「~していただいて、…」が使われるのはなぜかという問題、第三は、「もらってくれた」「もらってあげてくれませんか」のように、授受動詞が2つないし3つ複合できる場合は何通りあるのか、またその条件は何かという問題である。これらについて調査・分析を行った。第一の問題については、一般に1人称主語の疑問文は成立しないが、動詞の可能動詞であれば成立すること、その動詞が「もらう・いただく」の場合、聞き手の行為の実現可能性を問うことが聞き手の動作実現を依頼することになるため、依頼として機能することを述べた。第二の問題については、「くださる」は「ください」という形になってはじめて依頼・指示の意味を表すが、その「ください」には「て」形は存在しない。一方「もらう・いただく」は言い切りの形ですでに依頼・指示を表すことができ、その「て」形も存在可能なので、それが「~していただいて、…」であることを述べた。第三の問題については、非敬語形「やる・あげる・くれる・もらう」4動詞のうち、2つの複合は9通り、3つの複合は6通りあることを述べた。特に生産的なルールとしては「~してくれる?」という疑問の形で依頼・指示することができる「くれる」が後項動詞になりやすいこと、また前項動詞には「もらう」が来やすいことが分かり、その結果「もらってくれる」という組み合わせが使用頻度が最も高いことが明らかになった。

2020年待遇コミュニケーション学会春季大会・秋季大会研究発表要旨
  • 張 家沁
    2021 年 18 巻 p. 68
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    本研究で取り上げる「再誘い」は、初出の誘い会話が遂行できずに、それ以降にも行う誘い行為であり、「再誘いコミュニケーション」は、「再誘い」における表現行為と理解行為によって成り立つ。「誘い」において、相手の応答への受け止め方や、対人意識が重要で、特にSNSによるコミュニケーションでは、即時の表情などが読み取れないため、感情の伝達がより難しくなり、2回目となる再誘いに苦手意識を持つ学習者が多く生じるのだと思われる。先行研究は、表現のストラテジーを分析するものが多かったが、その背後にある意識に関する考察が副次的なものとなり、協力者自らの語りを扱う研究は少なかった。したがって、本研究では、LINEにおける「再誘い」行為に着目し、接触場面でコミュニケーション主体の意識について考察することを目的とする。

    調査では、日本語母語話者と上級学習者4名を協力者とし、「再誘い」に関わる過去の経験について、半構造化インタビューを行った。それを基に、2つの場面を設定し、新たに場面と合致した関係性を持つ4名の協力者にLINEでやり取りをしてもらい、個別に送信者・受信者の双方の協力者にフォローアップインタビューを実施した。分析では、M-GTAを参考に、分析テーマに関連する協力者の発言を抽出し、概念を生成した。その後、類似したテーマに関する概念を1つのカテゴリーの中にまとめ、修正や再構成した後に、グループ化し、再誘いコミュニケーションのモデル図を作成した。

    分析の結果、誘う側と誘われる側にいるコミュニケーション主体が意識する要素が共通していることが明らかになった。それは、人間関係、コミュニケーションの工夫、負担、感情認識、意思表示とコンテキストである。コミュニケーション主体は1回目の誘いの失敗や人間関係への配慮などにより負担を感じているが、コミュニケーションの工夫を駆使してそれを解消しようとしている。それらの工夫に関する考慮は、人間関係とも密接に関わり、高度な表現力と読解力によって具現化される。

    また、コミュニケーション主体は1回目の誘いが双方にとって利益があるかどうかを判断し、再誘いを進めるか、回避するかを決める。誘われる側が利益のある行為と判断した再誘いは成功しなくても、相手との親密度が上がったと実感する場合も存在するが、再誘いの回数が増えるにつれて、双方の負担が大きくなることが観察された。

  • 許 亜寧, 立見 洸貴
    2021 年 18 巻 p. 69
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    本研究では、参与者2人の日本語母語話者による相談場面において、相談の課題達成に関わる「第三者への言及」にはどのような種類があり、それがどのように行われているか分析を行った。「第三者への言及」をめぐる先行研究としては、筒井(2012)、高宮(2018)、上林(2019)などが挙げられるが、これらは主として雑談を分析対象として、話題に持ち込まれた第三者についていかに言及がなされるかを分析したものであり、本研究で分析を行ったような、相談などのタスクが設定された場面において、その課題達成に深く関連している第三者をいかに言及するかについて分析している研究は極めて少ない。

    そこで、本研究では、親しい間柄の20代の日本語母語話者による2人会話、計3組を調査対象として、「2人で、(共通の友人である)Cの誕生日会を企画する」という相談を行ってもらい、その相談談話を分析対象にして、第三者に関してどのような言及が行われているか分析および考察を行った。本研究での分析の結果、以下の3点が明らかになった。

    Ⅰ.日本語母語話者の相談談話における「第三者への言及」では、3種類の言及が見られた。具体的には、第三者の好み、都合など第三者の事情について言及する「第三者の情報の言及(言及①)」、第三者の発話や気持ちを第三者に代わって言語化する「第三者の反応の想像(言及②)」、発話内に第三者の名前のみが含まれている「第三者の名前のみ(言及③)」という言及が行われていた。

    Ⅱ.言及①について、「a.第三者に関する具体的なエピソードを提示する」、「b.第三者に関する客観的で恒常的な事実を提示する」、「c.第三者のことを考慮し、選ばれうる他の選択肢の可能性を否定する」という特徴が見られた。このことから、日本語母語話者の相談場面に見られる「第三者への言及」においては、具体性に志向した発話を重ねることで、情報の根拠性を高めることが重視されていると考えられる。

    Ⅲ.言及②について、「a.第三者になりきって第三者の発話を想像する」、「b.第三者の気持ちを想像する」という特徴が見られた。このような言及は、臨場感を高めたり、場を盛り上げたりするとともに、話し手の評価を間接的に伝える働きを持っていると考察した。

  • 中国語母語話者の捉え方を中心に
    馮 琪
    2021 年 18 巻 p. 70
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    林ら(2011)は「シテモラッテモイイデスカ」という「許可求め型表現」に対して、「使いやすい」という認識が表現主体にあることを示唆し、丁寧さを表す表現が、ことばレベルを上げずに構造上の変換によっても可能になることを日本語教育/学習に繋げられると指摘しているが、現在日本語学習者を対象とする「~てもらってもいいですか」についての研究は管見の限り見当たらない。よって、本研究は、まず、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』、『日本語話し言葉コーパス』、『日本語日常会話コーパス』、『名大会話コーパス』、『現日研.職場談話コーパス』を用いて、「~てもらってもいいですか」の機能をまとめる。そして、「~てもらってもいいですか」の機能について中国語人日本語学習者がどう捉えているかをアンケートで調査することを目的とする。

    「~てもらってもいいですか」の使用例を集めたところ、依頼、指示と許可求めの機能が確認できた。そして、その中で、依頼の割合が一番高いことが分かった。アンケートの結果から、依頼と許可求めの機能においての行動者が誰であるかにおける学習者の理解困難、指示の機能においての決定権が誰にあるのかにおける理解困難が見られた。多くの学習者が指示に断れると思っていることも明らかになった。また、学習者の中で、そもそも指示という概念の存在が薄く、指示というより、それを依頼やお願いだと捉えていることも分かった。

    このようなことが起こった要因として、3つの要因が考えられる。まず、例文を収集した結果から、3つの機能の中で、依頼が多かったので、インプットとしても恐らく依頼が一番耳にすると考えられる。また、日本では上下関係が厳しいと言われているが、中国ではそれほど厳しくはないと王(2011)で指摘されているので、指示の機能について、決定権が誰にあるのかにおける理解困難が見られた可能性も考えられる。最後に、ほとんどの教科書は「~てもらってもいいですか」について扱っていなく、扱っているとしても、依頼の機能しか紹介されていないことも原因の一つであり、そもそも「指示」という機能を明確に教えている教科書が少ないことも学習者の理解不足の原因だと考えられる。

  • 「遊び」としてのやりとりを中心に
    儲 叶明
    2021 年 18 巻 p. 71
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、親しい友人関係にある中国語母語話者同士のWechatにおける自然会話に注目し、「遊び」としての否定がいかに間主観的に形成されているかを記述するものである。IM(インスタントメッセンジャー)における文字チャットでは、音声、および、ノンバーバルな要素による情報交換が制限されているため、対面コミュニケーションとの相違が見られることが想定される。本研究では、パラ言語、非言語的リソースが制限されているIMの文字チャットにおいて、中国語母語話者が「否定」を「遊び」としてリフレームする際の資源について記述し、中国語母語話者の非対面コミュニケーションにおける遊びとしてのやりとりの特徴の一部を明らかにした。その結果、

    ①絵文字の多用・文字による笑いの表記(「哈哈哈哈哈哈」「233333」)

    ②文脈から乖離した誇張された表現の使用(「勾引(誘拐)」、「抛弃(見捨てる)」)

    ③臨時的なコンテクストの利用(「(桜山)寮→山→「山大将」)

    ④あだなの使用

    ⑤語呂合わせに基づいた流行語の使用(「神馬(なに)」)

    ⑥一時的な配役ごっこ

    ⑦コードスイッチング

    以上の7つの手立てが見られた。そのなかでも特に、語呂合わせによる効果は非対面コミュニケーションにおいてこそ(対面コミュニケーションに比べて)比較的顕著であると考えられる。なお、中国語の表記システムは漢字一種類のみであり、日本語のようにひらがな、カタカナ、ローマ字、何種類の表記システムをもたないものの、語呂合わせ、流行語の使用、コードスイッチング、漢字あるいは絵文字による笑い声の表記などによって異なるニュアンスを指標することができることが示唆された。最後に、本研究では、絵文字を伴わずに、「誘拐」、「見捨てる」といった深刻度の高い表現を使用する例が見られたが、中国語母語話者による「遊び」としてのやりとりにおいて、このような文脈から乖離した誇張された表現の使用が注目に値する。

  • 評価のモダリティ「なければならない」の使用に着目して
    アンディニ プトリプラタミルスタンディ
    2021 年 18 巻 p. 72
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/04/01
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    本発表では日本語とインドネシア語の評価のモダリティ形式が非対話場面においてどのような機能を持って使用され、相手のフェイスの侵害行為に関わっているのかを「なければならない」と”Harus”に焦点をあてて論じ、それぞれの言語での役割の異なりを待遇コミュニケーションの観点から分析した。データは日本版とインドネシア語版のTripAdvisorの口コミ各500件、計1,000件である。モダリティ形式の使用傾向を明らかにするために、計量テキスト分析ソフトKH Coderを使用し、出現頻度を集計した。その後、Leech(1983)のポライトネス原則、高梨(2010)、坂本ほか(1996)に従い、評価のモダリティの機能を質的に検討した。その結果「なければならない 」の出現頻度は137件中23例だが、”Harus”は167例と多く出現していることが確認できた。また日本語の「なければならない」の主語は書き手であるが”Harus”の主語はほとんどの場合読み手であった。主語が書き手の場合は読み手の過失を控えめにする機能があることから是認の原則が守られるが、主語が読み手の場合は読み手への非難を表現していることから是認の原則が破られる。また、評価のモダリティと表現意図の点から見ると、「なければならない 」の主語が書き手に関わると、「不満・遺憾の気持ちを伝えたい」という意図が強くなるのに対し、”Harus”の主語が読み手に関わると「不満な状況を変えたい」という意図が生じる。これらにより日本語とインドネシア語の不満表明の相違が生じると思われる。

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