日本造血・免疫細胞療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-455X
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 池添 隆之
    2021 年 10 巻 4 号 p. 136-144
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     肝類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome,SOS)と移植関連血栓性微小血管症(transplantation associated-thrombotic microangiopathy,TA-TMA)はともに後天性の血栓性疾患で,前者は類洞内皮細胞障害が,後者は血管内皮細胞障害がその発症に深く関与していると考えられている。わが国においても2019年から,ブタの小腸粘膜DNAから作られたオリゴヌクレオチドの混合物デフィブロチド(defibrotide,DF)がSOSに対して使用可能となった。DFの作用機序は未だ全容が明らかになったとは言えないが,内皮保護作用,抗凝固作用や線溶促進作用を介してSOSに効果を発揮すると考えられている。TA-TMAには未だ有効な治療法は確立されていない。しかし近年の研究から補体の活性化が病態に関与している可能性が示され,診断マーカーや治療標的分子として注目を集めている。

  • 小沼 貴晶
    2021 年 10 巻 4 号 p. 145-152
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     初期に臍帯血移植の最大の問題とされていた生着不全や早期死亡が多い点は,近年では改善されつつあるが,その要因の一つとして移植前処置の改良もあげられる。若年者では全身放射線照射を含む骨髄破壊的前処置が頻用されているが,ブスルファンの静注製剤を含む骨髄破壊的前処置においても,薬剤や低用量全身放射線照射を追加することにより,高齢者などでも安全かつ生着率や生存率の改善が期待できる。また,大量シタラビンの上乗せ効果としての強化前処置は,臍帯血移植でのみ生着率の向上や生存率の改善が認められる。現在,抗がん剤の増量を伴わずに治療強度をあげる効果が期待できるgranulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)プライミング効果を利用した移植前処置の有効性を,臨床第Ⅲ相試験で検証中である。

  • 小見山 尚子, 真継 恵美, 吉田 茂
    2021 年 10 巻 4 号 p. 153-164
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     体外フォトフェレーシス(ECP)は,ステロイド抵抗性または不耐容の慢性移植片対宿主病(GVHD)の治療法として2020年12月に日本で承認された。ECPの作用機序のすべては解明されていないが,リンパ球のアポトーシス誘導,抗原提示細胞集団およびサイトカイン産生の変化,制御性T細胞の誘導,骨髄由来免疫抑制細胞の増加,B細胞シグナルおよびB細胞集団の変化などの免疫調整作用を介し,慢性GVHDの病態を改善すると考えられている。これまでに欧米を中心に,慢性GVHD患者を対象としたECPの多くの臨床試験成績が報告されており,ECPは多くの臓器で奏効を示すが特に皮膚,口腔粘膜,肝臓での奏効割合が高いこと,ステロイド投与量の減量や全生存期間の延長が達成できること,ECP治療の忍容性が示されている。日本の実臨床においてECP治療の有効性と安全性に関する情報を蓄積していくことが今後の課題である。

研究報告
  • 奥田 生久恵, 稲本 賢弘, 石﨑 佑子, 小川 ゆう子, 山田 里絵, 野口 睦, 吉田 千香, 藤井 恵美, 藤 重夫, 森下 慎一郎, ...
    2021 年 10 巻 4 号 p. 165-171
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     同種造血細胞移植患者の身体機能を経時的に評価するために,単施設前向き観察研究を実施した。2016年11月から2019年3月に当院で同種造血細胞移植を受けた100名を対象に握力・膝伸展筋力・short physical performance battery(SPPB)・筋肉量を測定した。握力は経時的に低下し,膝伸展筋力と筋肉量は前処置開始前と比べてDay 14までは増加したが,Day 42以降は減少した。SPPBの経時的変化は少なかった。重回帰解析にて,前処置開始前を基準としたDay 42の各測定値の低下割合に影響する因子は,握力に関しては,HLA不一致とステロイド累積投与量がプレドニン換算で平均20mg/日以上,膝伸展筋力に関しては年齢60歳未満,SPPBに関しては減量強度前処置とステロイド累積投与量がプレドニン換算で平均20mg/日以上,筋肉量に関しては非血縁ドナーと体重減少率5%以上とステロイド累積投与量がプレドニン換算で平均20mg/日以上であった。本研究結果をもとに,身体機能低下予防のための看護介入へとつなげていきたい。

  • 松浦 朋子, 黒澤 彩子, 山口 拓洋, 森 文子, 森 毅彦, 田中 正嗣, 近藤 忠一, 坂本 周子, 藤井 伸治, 一戸 辰夫, 奈良 ...
    2021 年 10 巻 4 号 p. 172-182
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

     移植後サバイバーにおける慢性GVHD等の自覚症状の有病率と,それらによる仕事,生活への影響度を探索した。対象は同種移植後2年無病生存,調査時年齢65歳未満かつ原病診断時に就労状態の成人患者とし,多施設無記名アンケート調査を実施した。回収率は60%,調査時就労状態にある841人を解析対象とした。92%が34項目いずれかの症状があると回答し,有症状割合が高い臓器は皮膚(78%),関節筋肉(72%),眼(61%),精神(44%)であった。ロジスティック回帰ではサバイバーの業務内容により影響を及ぼす症状が異なり,販売/介護等では皮膚や眼,関節症状,営業職等ではアピアランスや気分の落ち込み,屋外肉体労働では眼のまぶしさの影響が大きいことが示された。移植後は症状の種類や程度のほか,サバイバーそれぞれの就労や生活状況を加味して患者指導にあたることで,よりニーズにあった介入につながる可能性が示唆された。

症例報告
  • 後藤 実世, 福島 庸晃, 伊藤 真, 飯田 しおり, 河村 優磨, 鵜飼 俊, 佐合 健, 河野 彰夫, 尾関 和貴
    2021 年 10 巻 4 号 p. 183-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     30歳男性。胃部不快感を契機に,脾腫,白血球増多,LDH高値を指摘され,精査の結果,非定型慢性骨髄性白血病(atypical chronic myeloid leukemia,aCML)と診断された。Hydroxyurea単独の内服では腫瘍量制御が困難であったことから造血幹細胞移植を目的として当院へ転院した。aCMLは化学療法単独での腫瘍量制御が難しく長期生存のため造血幹細胞移植の必要性が報告されており,速やかに造血幹細胞移植を行う必要があると判断した。骨髄・臍帯血バンクでは適切なドナーが得られずHLA半合致の姉をドナーとした末梢血幹細胞移植を行う方針とした。移植前の架橋的治療としてazacitidine導入後より速やかな白血球数および血清LDHの低下を認めた。Azacitidine投与開始から18日目に前処置を開始し,24日目に移植を施行した。移植後17日目に好中球生着を認めた。皮膚GVHDを発症したが外用で改善し,移植後1年現在も完全寛解を維持している。aCMLに対してazacitidine療法後にHLA半合致末梢血幹細胞移植を行い,寛解を維持している症例は稀である。

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