日本造血・免疫細胞療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-455X
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選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 髙木 伸介
    2025 年 14 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     類洞閉塞症候群(SOS)は造血細胞移植後の主要な合併症の一つで,重症化すると致死的な経過を辿る。診断基準は修正Seattle基準とBaltimore基準が長年使用されてきた。2016年に欧州血液骨髄移植学会(EBMT)から新しい診断基準が提唱され,その後,2023年にその改訂版が公表された。本稿ではEBMT診断基準で提唱されたlate onset SOSについて現状と今後の課題を論じる。

  • 八木 悠, 熱田 由子, 加藤 光次
    2025 年 14 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     CD19標的キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法が再発/難治性大細胞型B細胞性リンパ腫の治療にパラダイムシフトをもたらした。CAR-T細胞療法のリアルワールドデータでは,欧州は米国に比べ治療成績が劣り,その一因としてリンパ球アフェレーシスから輸注までの期間(vein-to-vein interval)が米国より長いことが挙げられている。本邦でのvein-to-vein intervalは欧州よりもさらに長く,2022年以降はさらに延長傾向にあり,早急に対処すべき課題である。また,リンパ球アフェレーシス後に,病勢増悪や合併症により輸注に至らないケースも報告されている。アフェレーシス産物未使用により患者の治療機会が失われるだけでなく,コスト面でも重大な問題が生じている。これらの問題を解決するには,病床運用の改善,ブリッジング治療の向上,感染症の管理が必要である。

  • 塚田 信弘
    2025 年 14 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     新規薬剤およびモノクローナル抗体の登場により未治療多発性骨髄腫(MM)の治療成績は劇的に向上した。ボルテゾミブ,レナリドミドを含む3剤併用の寛解導入療法が主流となっている現在においても,up-frontの自家末梢血幹細胞移植併用大量メルファラン療法(HDM/ASCT)が無増悪生存期間(PFS)の延長に寄与することが複数の臨床試験で示されており,維持療法の継続によりPFSは5年を超える時代となった。一方,移植非適応症例に対する抗CD38抗体を含む治療により5年以上のPFSも期待されるようになり,近い将来移植適応症例に対しても抗CD38抗体を含む寛解導入療法が行われるようになると思われる。HDM/ASCTはALアミロイドーシスおよびPOEMS症候群に対しても有効な治療法であるが,ALアミロイドーシスに対しては抗CD38抗体が用いられるようになり,HDM/ASCTの位置づけが変化しつつある。

  • 白鳥 聡一
    2025 年 14 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     同種造血幹細胞移植におけるGVHD予防法は,長らくカルシニューリン阻害薬+メトトレキサートが標準とされてきたが,GVHDリスクの高い移植ではより強化した予防法を選択する必要がある。その手段の一つとして,複数のランダム化比較試験にて有効性が確立されてきたのが抗胸腺細胞グロブリン(ATG)である。一方で,HLA半合致移植にて画期的なGVHD予防効果が示され,急速に使用が拡大しているのが移植後シクロホスファミド(PTCy)である。ATGとPTCyの比較研究は現時点では後方視的解析が中心であるが,興味深いことにHLA適合移植と不適合移植で結果の傾向が異なり,両者の位置づけの確立には大規模前向き試験での検証が望まれる。

     更に近年,新たな機序に基づいたGVHD予防薬の開発も進んでおり,特にランダム化比較試験にて有効性が示されたアバタセプトとベドリズマブは,今後,本邦の実臨床への導入が期待される。

  • 角田 三郎, 清原 千貴, 池田 翔平, 助川 真純, 大田 雅嗣
    2025 年 14 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     福島県会津地域において自家末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を導入し,2013年より2023年に18例施行した。年齢31~68歳(中央値53歳),女性10例,男性8例であった。疾患内訳は,悪性リンパ腫10例,多発性骨髄腫7例,急性骨髄性白血病1例であった。観察期間中央値14.5ヶ月(1ヶ月~9年)で,1例が間質性肺炎で死亡,3例が再発した。予測5年生存率(OS)および無増悪生存率(PFS)は,それぞれ90.9%(95% CI 50.8-98.7%),76.0%(95% CI 40.4-92.0%)であった。この成果は,医師,看護師,臨床工学技士,臨床検査技師など,多くのスタッフとの総力を結集して得られたものである。今後の継続,発展のためには,スタッフの維持と確保,さらには職場環境等の改善が重要である。本総説が,これからauto-PBSCTを導入する医療施設の一助となれば幸いである。

  • 黒川 敏郎
    2025 年 14 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     北陸の地方都市にある富山赤十字病院に2010年4月に血液内科が開設した。同年10月に1例目の造血幹細胞移植(移植)を開始し,2024年3月までの14年間で同種167,自家104,合計271件の移植を実施した。最近5年間では北陸の移植施設で1位か2位の移植件数となっている。病院の規模が小さいので部門間の距離が物理的・心理的に近く,多職種によるチーム医療が良好になされた結果,移植件数を伸ばすことができた。2018年12月に医療ソーシャルワーカーが造血細胞移植コーディネーターに認定され,2019年4月に当科は移植施設認定基準の認定カテゴリー1に区分された。チーム医療の重要な構成員として若手医師の存在がある。当科では血液内科への若手の勧誘と育成にも積極的に取り組んでおり,現在まで5人の医師が当科で専攻医研修(後期研修)をした。彼らの活躍により血液内科チームは大きく前へ進むことができた。

  • 荒岡 秀樹
    2025 年 14 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

     抗菌薬耐性(Antimicrobial resistance,AMR)対策は世界レベルの重大な問題である。薬剤耐性グラム陰性桿菌の検出状況は国や地域によっても大きく異なることが知られている。血液疾患患者,特に造血幹細胞移植患者においては,好中球減少やキノロン系薬による予防戦略などの複合要因によって,薬剤耐性グラム陰性桿菌感染症のリスクが高まる。2010年代以降,新規抗菌薬の開発が少しずつ進み,日本においてもいくつかの薬剤が承認,上市に至った。私たちは,感染臓器(適応症),原因菌(適応菌種),薬剤感受性を確認し,抗菌薬を適正に使用して,患者の予後を改善させることが求められている。本総説では,薬剤耐性グラム陰性桿菌の現状,新規抗菌薬の開発状況,薬剤耐性グラム陰性桿菌の治療戦略についてまとめた。

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