日本造血・免疫細胞療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-455X
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総説
  • 宮本 敏浩, 森 康雄
    2025 年 14 巻 2 号 p. 48-56
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     近年,分子標的薬,抗体医薬,免疫細胞療法など多種類の新規薬剤の登場により,造血器腫瘍患者の治療成績は向上しつつある。さらに新規治療薬を従来の化学療法や同種移植に組み込んだ新たなプラットフォームの構築が進んでいるが,多くの薬剤を同時に使用するため,薬物間相互作用に留意する必要がある。特に抗真菌薬トリアゾールはCYP阻害作用があるため,CYPの基質である免疫抑制剤,抗がん剤,新規薬剤等と併用した場合にはそれらの薬理作用を増強し,強い毒性が生じる。併用する各薬剤の薬理動態,CYP阻害強度を把握して,投与量の調節や併用開始時期・中止時期を決定することが重要である。

  • 牧野 茂義
    2025 年 14 巻 2 号 p. 57-69
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     瀉血に始まったアフェレーシスの臨床応用は多岐にわたっている。血漿交換療法などの治療的アフェレーシスや,赤十字血液センターで日々行われているドナーアフェレーシスに加えて,1980年代から始まった末梢血幹細胞採取やCAR-T療法のための自家末梢血単核球採取などの細胞治療のためのアフェレーシスが行われている。アフェレーシスはリスクを伴う侵襲的手段であり,患者・ドナーの安全性確保のために注意深く実施することが要求されている。日本造血・免疫細胞療法学会ガイドライン委員会が造血幹細胞採取を発表した。その中でアフェレーシス実施体制として採取責任・担当医師は関連学会に所属していることが望ましく,末梢血幹細胞採取中は,少なくとも1名の医療スタッフによる常時監視体制が整っている必要があり,学会認定・アフェレーシスナースが在籍していることが望ましいと明記されている。

  • 浅野 悠佳
    2025 年 14 巻 2 号 p. 70-75
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     家族看護の目的は,家族が本来の機能を発揮し,傷病によって生じた問題を主体的に解決できるように支援することである。本総説では,家族看護を理解する上で代表的な理論である家族システム論に基づいて,COVID-19流行下に血縁者間移植を行い予後不良となった事例に対するグリーフケア実践について考察する。

  • 安斎 紀
    2025 年 14 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     東北地方には11の移植認定施設がある。当院では血液内科と小児腫瘍内科で同種移植を実施しており,年間件数は血液内科が約25件,小児腫瘍内科が約10件である。血液内科は県内の移植の多くを担っており,小児腫瘍内科は全国から難治性造血器腫瘍患者をハプロ移植目的で受け入れている。移植後フォローアップの年間件数は血液内科が約60件,小児腫瘍内科が約30件である。東北地方では認定HCTC 11名,未認定HCTC 7名が各施設で活動している。LTFU外来は11診療科で実施している。HCTCもLTFU看護師も各施設で継続した育成が課題である。東日本大震災時には4名の患者が移植を控えていたが,骨髄バンクや中央の移植施設の協力で予定通りに移植が実施され,広い意味での移植チーム力が発揮された。HCTCが移植医療に貢献できるためには,移植チームからの信頼を得ることと,HCTCとしてのやり甲斐が重要である。東北地方は移植施設やHCTCが少ないため,仲間意識や一体感を持てる強みがある。

  • 杉田 純一
    2025 年 14 巻 2 号 p. 82-90
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     移植後シクロホスファミドを用いたHLA半合致移植(PTCyハプロ)は,世界中で急速に増加している。日本では,2020年にHLA半合致移植数がHLA適合移植数を上回り,2024年にはPTCyが保険適用となった。日本の後方視的研究では,PTCyハプロはHLA適合非血縁者間移植および臍帯血移植の成績と同等であった。PTCyハプロは,非骨髄破壊的前処置と骨髄移植で開発されたが,最近では末梢血幹細胞移植,骨髄破壊的前処置にも用いられている。末梢血幹細胞の使用,輸注CD34陽性細胞数の増加,若年ドナー,HLAクラスⅡの不一致,HLA-B leaderの一致,減量PTCy,カルシニューリン阻害剤の早期開始,移植後維持療法など,PTCyハプロを改善するための戦略が試みられている。さらに,PTCyはHLA適合移植やHLA 1-2アレル不適合移植でも有効性を示し,日本人の前向き第Ⅱ相試験でも良好な結果が報告された。PTCyによりGVHDを十分に抑制することで,より安全な同種移植が期待される。

  • 西田 彩
    2025 年 14 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     近年,新規薬剤や検査技術の進歩により白血病治療は飛躍的に向上し,それに伴い治療戦略も進化を続けている。従来,同種移植なしでは治癒が困難とされていた一部の白血病において,移植を行わずに長期生存が可能な患者群が存在することが明らかになった。しかしその一方で,様々な治療を試みても再発・難治性となる白血病は依然として残り,克服すべき重要な課題となっている。

     再発ハイリスク白血病に対しては,迅速かつ高確率に準備可能で,さらにPIRに起因する強力なGVLが期待されるCBTと,再発抑制を目的とした維持療法の併用が大きな可能性を持つと考えられる。これらの進歩が,再発ハイリスク白血病克服への一歩となることを願う。

  • 奥 菜央理, 竹下 徹, 二木 寿子, 今村 貴子, 森 康雄, 柏﨑 晴彦
    2025 年 14 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     造血細胞移植(以下,移植)レシピエントは移植前処置に伴う骨髄抑制や免疫抑制剤の使用により易感染性宿主となる。口腔には多種多様かつ大量の細菌が常在しており,粘膜障害発症時には起炎菌となり得るため,移植前の口腔内感染源除去や口腔衛生状態の改善は非常に重要である。当院では移植予定患者に対する口腔内感染源の精査/除去や口腔内清掃を実施し,移植治療中には歯科医師・歯科衛生士からなる歯科往診ケアチームによる口腔ケアサポート体制を構築し,血液内科医,病棟看護師とも連携しながら活動を続けてきた。その中で,口腔環境が口腔有害事象を含む移植アウトカムに影響を与える可能性を考え,特に口腔微生物叢に注目して臨床研究を進めている。本稿では,当院での移植患者への口腔管理の取り組みとともに,移植患者の口腔微生物叢の実態と全身状態・口腔有害事象との関連について解析した臨床研究の結果を報告する。

研究報告
  • 大澤 かおる, 直井 為任, 南雲 光則, 藤原 慎一郎, 神田 善伸
    2025 年 14 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     造血幹細胞移植患者におけるサルコペニア有病率と臨床的特徴を調査した。対象は当院血液科で同種造血幹細胞移植を実施した105名を解析した。サルコペニアの診断はアジアサルコペニアワーキンググループの診断基準2019を用い,握力,歩行速度,骨格筋指数から算出した。リハビリテーションは当院のクリニカルパスに従い実施している。サルコペニアは入院時12.4%,退院時27.6%に認められた。また,移植後の新たなサルコペニアの発症は19.6%であった。特に,女性,aGVHD発症,ステロイド治療,長期入院患者に多く認められた。移植患者のサルコペニアの現状を知ることは今後の治療,対策の一助になる可能性がある。

短報
  • Souichi Shiratori, Marie Ohbiki, Noriko Doki, Takahiro Fukuda, Satoshi ...
    2025 年 14 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー

     Graft-versus-host disease (GVHD) prophylaxis using antithymocyte globulin (ATG) has been well-established in allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. We collected data on GVHD prophylaxis from 27,091 cases of hematological malignancies undergoing bone marrow transplantation (BMT) and peripheral blood stem cell transplantation (PBSCT) from 2010 to 2022. Annual trends in GVHD prophylaxis were analyzed based on donor type, stem cell source or HLA compatibility. The number of GVHD prophylaxis using ATG was increased in related-HLA matched-PBSCT [2010: n=6 (1.6%), 2022: n=42 (14.1%)], unrelated-HLA matched-PBSCT [2010: n=0 (0.0%), 2022: n=80 (43.0%)], unrelated-HLA 1-locus mismatched-BMT [2010: n=36 (9.6%), 2022: n=97 (40.4%)], and unrelated-HLA 1-locus mismatched-PBSCT [2010: n=0 (0.0%), 2022: n=64 (59.3%)]. Conversely, ATG use decreased in related-HLA haplo-PBSCT [2010: n=111 (67.7%), 2022: n=63 (11.2%)] due to the increasing use of posttransplant cyclophosphamide (PTCy). This study highlights the variation in GVHD prophylaxis trends using ATG across transplantation types.

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