症例: 56歳女性.発熱が1か月以上続くため紹介入院.入院時体温39.6℃.
検査結果: ヘモグロビン10.4 g/dL,血小板230×10
3/μL,白血球17.5×10
3/μL,成熟単球20.5%,CRP 17.0 mg/dL.骨髄は正形成で単球43.2%.単球は,
MLL break-apart probeを用いた間期核FISHでスプリットシグナル陽性,メタフェーズFISHで3′
MLLが19pに転座,RT-PCRで
MLL-ELL融合mRNAを検出した.以上からt(11;19) (q23;p13.1);
MLL-ELLを伴う慢性骨髄単球性白血病と診断した.CTで回盲部の腸管壁肥厚を認め,FDG-PET/CTで同部位に強い集積を認めた.大腸内視鏡検査で回盲部に多発性潰瘍病変が認められた.一方,上部消化管内視鏡検査で早期胃癌を合併していることが判明した.
経過: 入院後も高熱が続いた.さらに口内炎と腹痛・下血をきたし,ヘモグロビン6.9 g/dLに低下した.プレドニゾロン30 mg/dayを経口投与したところ速やかに解熱し消化器症状も軽減した.全身状態が安定したところで早期胃癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を実施した.血液学的にも貧血・単球増多が改善し,末梢血中の
MLLスプリットシグナル陽性細胞は53.8%から6.1%に低下した.
しかし治療開始4か月後に再燃した.白血病細胞は幼弱な形態を示し急性単球性白血病に進展したと考えられた.核型は47,XX,+8,t(11;19)(q23;p13.1).ish t(11;19)(5′MLL;3′MLL)であった.
考察: 本症例に認められた回盲部の潰瘍病変は,慢性骨髄単球性白血病に合併した腫瘍随伴症候群と考えられる.文献検索によると,+8を有する骨髄系腫瘍と不全型・腸管型ベーチェット病の合併例が,特に我が国から数多く報告されている.本症例でも急性単球性白血病細胞に+8を認めたことから,本染色体異常と回盲部病変との関連が示唆された.
抄録全体を表示