天理医学紀要
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17 巻, 1 号
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特別講演
原著
  • 和泉 清隆, 鴨田 吉正, 飯岡 大, 前迫 善智, 赤坂 尚司, 本庄 原, 大野 仁嗣
    原稿種別: 原著
    2014 年 17 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的: 当院で診療したホジキンリンパ腫患者の臨床的特徴と治療成績を明らかにするために, カルテレビューによる後ろ向き研究を行った.
    対象患者: 2003年1月から2012年10月の間に当院でホジキンリンパ腫と診断され, 化学療法単独または化学療法+放射線治療を受けた36例について検討した.
    結果: 病理診断は, 24例が結節硬化型, 6例が混合細胞型であった. 年齢は20から81歳で, 中央値は61歳, 年齢分布は二峰性を示し, 18例が60歳以上であった. 8例は限局期, 28例は進行期に分類された. International prognosis scoringに従うと, 14例が予後良好群, 22例が予後不良群であった. 29例がABVd/ABVDレジメンによる化学療法を受け, 7例が化学療法後に放射線治療を受けた. 23例(63.9%)が完全寛解に至り, 全奏功率は72.2%であった. 観察期間中央値3.0年で, 5年無増悪生存率は66.1%, 5年全生存率は75.0%であった. 60歳未満の若年者と60歳以上の高齢者を比較すると, 5年無増悪生存率がそれぞれ76.2%と54.7%, 5年全生存率がそれぞれ94.1%と55.0% (P = 0.014)であった. 高齢者が予後不良である原因として, 合併症が多いことや, 治療毒性が高いことが考えられた.
    考案: 若年者の治療成績はJCOG 9305試験のそれと同等であった. 現時点では, 高齢者ホジキンリンパ腫患者に対してもABVD療法が標準治療であるが, より毒性の低い治療レジメンを計画する必要があると考えられた.
症例報告
  • 安田 有斗, 飯岡 大, 下村 大樹, 岡森 慧 , 鴨田 吉正, 前迫 善智, 金子 嘉志, 大野 仁嗣
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 17 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
     我々は,ADAMTS13 インヒビターを有する後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の4 例(症例1–症例4)の治療経験から,リツキシマブの有用性を2012 年International Journal of Hematology に報告した.2012 年に新たに4 例(症例5–症例8)を経験し,全8 例(症例1–症例8)における発症時インヒビター力価と臨床所見を検討した.全8 例中4 例で発症時インヒビター力価が5.0 BU/mL 以上を示し,当該4 例では第1 病日から血漿交換療法とステロイド投与を開始し,リツキシマブ(375 mg/m2, weekly, 4 doses)を導入した.4 例とも治療直後にADAMTS13 活性値の回復とインヒビターの消失を認めたが,3 例で第5–10 病日に活性値の再低下とインヒビター力価の再増高を認め,2 例で意識障害の再燃により一時的な人工呼吸管理を必要とした.最終的には全8 例ともTTP は寛解し明らかな後遺症状も認めていない.高力価インヒビターを有するTTP では,リツキシマブを早期に導入しても血漿交換によるインヒビターのリバウンドをきたす可能性があり,神経症状の再燃にも留意する必要がある.今後は,インヒビターのリバウンドを避けるための最適な免疫抑制治療の確立が望まれる.
  • 小笹 勝巳, 住友 理浩, 川田 悦子, 角 明子, 中塚 えりか, 高井 浩志, 古武 陽子, 金本 巨万, 林 道治
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 17 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    緒言: A 群溶連菌(Group A Streptococcus; GAS)による重症感染症が1980年代より報告されるようになってきた.一般には咽頭や皮膚からの感染が多いとされているが,感染経路が不明なことも多い.今回我々は子宮内膜細胞診後に発症した重症GAS 感染症を2例経験したので報告する.
    症例1: 46歳女性.帯下異常及び外陰掻痒感を主訴として当科初診.腟分泌物細菌培養及び子宮内膜細胞診を施行した.翌日に突然の腹痛をきたし,翌々日,当科再診した.来院時ショック状態であり,骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease; PID)の所見を認めたため,抗生剤投与及び抗ショック療法を開始した.初診時の腟培養及び入院時血液培養からGASが検出されたため,toxic shock-like syndrome (TSLS)を疑い免疫グロブリン投与,エンドトキシン吸着療法も施行.血圧安定後,腹腔鏡下に腹腔内洗浄ドレナージを施行.集学的治療で全身状態は改善し軽快退院となった.
    症例2: 52歳女性.子宮癌検診として子宮内膜細胞診が施行され,当日夕方より嘔吐,下腹部痛,悪寒,戦慄が出現した.翌日,当院救急外来受診.受診時38℃台の発熱とショックを認めた.内診で子宮の可動痛著明であり,子宮内膜細胞診を契機とした敗血症性ショックと診断した.初診時の血液培養,腟培養からGASが検出されTSLS の診断基準は満たさないものの,それに準じた病態と考え,抗生剤,昇圧薬,免疫グロブリン投与を施行し軽快退院となった.
    結語: 子宮内膜細胞診後に発症した侵襲性GAS 感染症を2 例経験した.子宮内膜細胞診は日常診療でしばしば用いられる手技であるが,重篤な合併症の報告はまれである.子宮内膜細胞診の合併症として侵襲性GAS感染症が発症しうるということを念頭に置いた対応が必要と考えられた.
Pictures at Bedside and Bench
学術発表会 2013
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