症例は6歳女児.入院1年前の冬に手指の色が紫色に変化することに気付いた.その後,手指の色調の変化は改善したが,手指全体の腫脹が持続した.入院3か月前には腹部や上腕の皮膚の硬化が出現した.入院1か月前から,坂道を登る際に軽度の呼吸苦を訴えるようになった.近医を受診し,これらの症状と抗核抗体が強陽性であったことから膠原病を疑われ,当科を紹介され受診した.
入院時の精査で抗Scl-70抗体が強陽性で,胸部 high resolution CT (HRCT)では間質性肺病変を疑わせる胸膜下のスリガラス影を認めた.全身性の皮膚硬化や第一足趾先端の潰瘍病変などの所見もあり,全身性強皮症と診断 した.
肺野の間質性変化が認められたこと,高度の全身性皮膚硬化病変を認めたことから,ステロイドパルス療法と,それに続いてシクロホスファミドパルス療法を行った.趾尖部潰瘍やレイノー現象に対してはカルシウム拮抗薬とボセンタンの内服を行った.ボセンタン内服開始後より,足趾の潰瘍は著明に改善した.小児の全身性強皮症は極めて稀な疾患であり,本症例の臨床経過について文献的考察を踏まえて報告する.
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