【目的】本研究は,施設入所者を車いす使用者(全介助者)・車いす使用者(部分介助者)・歩行移動者に分類し,移動手段別に転倒発生状況を明らかにすることを目的とした。【方法】3 か所の介護施設において,過去1 年間の事故報告書などを分析対象とした。対象者数は341 名(A 施設86名,B 施設113 名,C 施設142 名),移動手段別に車いす使用者(全介助者)・車いす使用者(部分介助者)・歩行移動者に分類し,転倒件数,転倒者数,転倒場所,転倒時間帯,転倒様式について分析した。また,移動手段別の転倒発生割合(移動手段別転倒者数/移動手段別入所者総数),および1,000 人日当たりの発生頻度を求めた。【結果】施設全体の事故報告件数459 件のうち転倒件数は304 件(66 %)であり,転倒者数は341 名のうち154 名(45 %),1,000 人日当たり1.6 であった。移動手段別に見ると,車いす使用者(全介助者)は,80 名中15 名(19 %,0.1/1,000 人日)が転倒しており,転倒件数43 件であった。転倒場所は居室・食堂・ホール38 件(88 %),転倒時間帯は午後2 時~ 4 時で12 件(28 %),転倒様式は介護者に由来する転落やずり落ちが16 件(37 %)とそれぞれ最も多く報告された。車いす使用者(部分介助者)は,200 名中113 名(57 %,1.2/1,000 人日)が転倒しており,転倒件数208 件であった。転倒場所は居室126 件(61 %),転倒時間帯は午後2 時~ 4 時で31 件(15 %),転倒様式は本人に由来する移乗時の転倒が94 件(45 %)とそれぞれ最も多く報告された。歩行移動者は,61 名中26 名(43 %,0.3/1,000 人日)が転倒しており,転倒件数53 件であった。転倒場所は居室22 件(42 %),転倒時間帯は午前6 時~8 時で7 件(13 %),転倒様式は歩行時の転倒が32 件(60 %)とそれぞれ最も多く報告された。【結論】事故報告総数の60 %以上が転倒事故であり,施設全体の年間転倒発生割合は45 %と過去の報告と同程度であったが,移動手段別に見ると,それぞれの転倒発生状況および転倒発生割合は異なっていた。
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