【目的】本研究は,終末期がん患者の生存期間1 か月間の転倒要因を明らかにする。
【方法】国民健康保険小松市民病院において2013 年1 月1 日から2014 年12 月31 日に,がんにより死亡した397 名の生存期間1 か月間の診療録,インシデントレポートからの後ろ向き調査を行った。対象者の基本属性,心身状態,治療・処置内容,使用薬剤,バーサルインデックス,転倒状況,損傷レベルを調査し転倒との関連について分析した。
【結果】転倒群は80 名(20.2 %),100 件であった。見当識障害のオッズ比は,4.092[95 % CI:2.296 - 7.294],下肢筋力低下の認識は,2.281[95 % CI:1.287 - 4.045],睡眠薬の内服は,1.963[95 % CI:1.134 - 3.396]であった。その内,複数回転倒者は17 名(21.2 %),37 件であった。複数回転倒群では,転移のオッズ比が,3.575[95 % CI:1.050 - 12.168 p = 0.041],見当識障害2.849[95 % CI:1.045 - 7.766, p = 0.019],睡眠薬の内服3.809[95 % CI:1.342 -10.81, p = 0.011],食欲不振3.348[95 % CI:1.126 - 9.953, p = 0.025]と高かった。複数回転倒群はすべて65 歳以上であった。転倒が多かった場所はベッドサイド66.0 %,行動の動機は排泄59.0 %,夜間帯の転倒は52.0 %,転倒の多かった月は4 月の16.0 %であった。
【結論】終末期がん患者の生存期間1 か月間での転倒要因は,見当識障害,下肢筋力低下の認識,睡眠薬の内服であり,複数回転倒群では,転移,見当識障害,睡眠薬の内服,食欲不振であった。
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