日本転倒予防学会誌
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最新号
日本転倒予防学会誌
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特集
  • 原田 敦
    原稿種別: 特集
    2020 年 7 巻 1 号 p. 5
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

     立川,山本両会長の申されましたように,2004 年の第1 回学術集会から今回までに,「転倒予防」が奥深く,学問的にも掘り下げ続けられてきました。それはまさにメインテーマである“米百俵の精神”に支えられて来たと言って過言ではありません。また,転倒予防の精神も,皆様の弛まぬご努力が積み重なって開発され,引き継がれ,将来のさらなる発展に繋がっていくと思われます。

     さて,本シンポジウム「高齢者の転倒に関わる医学,多面的視点」の最初の講演者,立入久和先生は,変形性膝関節症がロコモティブシンドロームの主原因であり,下肢アライメント,筋力,可動域,バランス能力の低下,痛みは転倒リスクとなること,また,予防で重要となる運動療法を詳細に解説されました。

     次の白野美和先生は,歯と転倒との関連性に歯科のお立場から解説され,歯の喪失,咬合力支持の低下は,口腔機能の低下,食物摂取支障は転倒リスクに繋がり,フレイルから要介護の上流には,「オーラルフレイル」が存在し,咀嚼障害や接触嚥下障害に陥る前に介入することが重要と強調され,非常に興味深い講演となりました。

     次の小川純人先生は,生理的予備能の低下でストレスに対する脆弱性が亢進するフレイルと転倒との関連性について基礎から臨床に至る深く幅広い知識を基盤に解説され,フレイル,サルコぺニアの発症や進展には,ホルモン等の液性因子の加齢変化,栄養障害,慢性炎症など様々な要因が関与し,運動・栄養・薬物療法を含めた包括的アプローチによる転倒予防対策の可能性を提唱されました。

     次の石澤正博先生は,これまで正面から取り上げられなかった糖尿病と転倒について大変分かりやすく解説され,糖尿病患者の転倒リスクには数多くの要因が関わるが,食事療法で食事摂取量抑制と体重減少が指示され,サルコペニアが起こりやすいなどの各要因の改善は困難であり,生活療法を中心とした予防策が重要で,さらに骨質の悪化という上乗せの骨折リスクがあり,一部の薬は骨折リスクを高めることも指摘されました。

     最後の森川春子先生は,女性アスリートのエネルギー摂取量<消費量,視床下部性無月経,エストロゲン低下による骨粗鬆症,そして疲労骨折などの悪循環を断つには,運動量をへらすか適切なエネルギー補給が必要とされ,女性医学の視点から骨粗鬆症の予防治療が重要であることを強調されました。

     本シンポジウムにおきましては,発表者の先生方の日頃の深いご考察,透徹した展望,ご研究の存分なる成果を非常にわかりやすく提示してくださりましたことで,会場の観衆にはこれまでにない満足と知見を得ていただけたと思います。

  • 立入 久和
    原稿種別: 特集
    2020 年 7 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
  • 石澤 正博
    原稿種別: 特集
    2020 年 7 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

     日本の糖尿病患者は近年大幅に増加しており,主な合併症に関しては周知が進みつつあるが,糖尿病が実は「全身病」であることはよく理解されているとはいえない。さらに転倒リスクが増えることは,「糖尿病治療ガイド」や数々の診療ガイドラインでも,十分には説明されていない。

     まず医療者側が,糖尿病が複合的な栄養関連障害を来すことや,食事療法として単純に食事摂取量の抑制と体重減少が指示されがちであることからサルコペニアが起こりやすいこと,運動療法の管理・評価が困難であること,薬物療法は低血糖を起こさないように慎重にしつつ治療目標を個別に検討しなければならないこと,多剤併用を避けること,等,多くの「原則」を掌握する必要がある。

     その上で,改めて糖尿病患者の転倒リスクを俯瞰すると,数多くの要因が関わっていること,またそれぞれの要因について改善は困難で,生活療法を中心とした予防策が重要であることが理解できる。それは今すぐにでも始めるべきであるが,一方で,それらの予防策によってどれだけ転倒リスクを減じることができるのか,エビデンスが不足しているのも事実である。

     また転倒はそれ自体よりも,その結果として起こる骨折・寝たきりこそが問題なのであるが,糖尿病では,骨質の悪化という骨密度等の日常検査では計れない上乗せの骨折リスクがあることも分かっている。一部の糖尿病治療薬はさらに骨折リスクを高める。

     転倒・骨折予防と糖尿病治療とは,共通するところもあるが,両立が難しい部分もある。エビデンスが不足しているとはいえ,まずは前者については十分に推し進め,後者は原則を念頭に個々の患者について臨機応変に対応することから始め,やがてはそこから得られる多くの知見を次の研究につなげていくことが重要である。

  • 森川 香子
    原稿種別: 特集
    2020 年 7 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
  • ~転倒・転落件数が半分以下に低下した要因をさぐる~
    國分 千津子, 太田 隆慈, 浅井 八多美
    原稿種別: 特集
    2020 年 7 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
  • 新井 春美
    原稿種別: 特集
    2020 年 7 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー
総説
  • ~システマティック・レビューに基づく課題抽出~
    鈴木 みずえ, 内藤 智義, 澤木 圭介, 金森 雅夫
    原稿種別: 総説
    2020 年 7 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者施設における転倒予防のシステマティック・レビュー(SR)を分析し,今後の高齢者施設における認知症高齢者の転倒予防の方向性について検討する。

    【方法】本研究では,英文論文の検索はPubMed を用いて「fall &intervention &Elderly &review &Facility」とし,適格基準からSRを検索した。

    【結果・考察】高齢者施設における要介護高齢者に対しては,転倒予防に関する効果的な介入として運動だけではなくバランス訓練も含めて6か月以上などの長期の介入が必要であり,単一介入や複合介入も含めた転倒予防介入は転倒件数を有意に減少させていた。しかし,認知機能障害割合が40%未満の施設での転倒予防介入では転倒件数が高く,認知症である高齢者とそうでない高齢者が混在する施設での介入は介入の目的や方法も含めて注意が必要である。QI(医療の質)の視点からの分析では,「チームの変化」が通常のケアと比較して有意な効果が認められた。さらにネットワークメタアナリシス(MA)では「ケアマネジメント」「患者へのリマインダー」と「スタッフ教育」などが有意な介入であった。転倒予防に関する質的なMAでは転倒予防の促進因子は「良好なコミュニケーション」と「施設設備の有効性」,障害要因としては「提案された介入に圧倒され,フラストレーションを感じるスタッフ」などであった。

    【結論】高齢者施設における転倒予防では,高齢者の認知症の有無や心身の状況も踏まえて効果的な転倒予防介入を組み合わせ,さらにケアスタッフが良好なコミュニケーションができるような組織体制を行うなど,エビデンスに基づき対象者に合わせた介入方法とケアスタッフ教育と組織体制の両面を検討する必要性が明らかになった。

原著
  • ~介護予防教室に通う高齢者を対象とした縦断研究~
    稲垣 圭吾, 鈴木 みずえ, 渥美 友梨, 柘植 美咲, 松崎 花奈子, 鳥居 史愛, 伊藤 友孝, 谷 重喜
    原稿種別: 原著
    2020 年 7 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,要介護ハイリスク高齢者の1年間の変化における握力と歩行機能,転倒要因,健康関連QOLの関連を明らかにすることである。

    【方法】2013年10月~11月および2014年10月~11月に介護予防教室に通う自立歩行が可能な要介護ハイリスク高齢者を対象に握力測定,歩行機能,転倒要因,健康関連QOLの調査を実施した。全身の筋力の指標とされている握力を測定し,歩行機能は,運動計測システムを用いて10m歩行を行い,ストライド長やスイング速度,関節角度(膝関節,踝関節),歩行時の膝の前後への振れ幅の分析を行った。転倒要因は,転倒スコア,転倒予防自己効力感尺度を,健康関連QOLはQOLの評価尺度であるSF-8TM を実施した。

    【結果】本研究の対象者は,平均年齢が80.7(± 6.4)歳の男性4名,女性16名の計20名とした。握力の平均値は19.6(± 6.5)kgであり,1年の変化値は,-0.4(± 2.1)kgであった。対象者の1年間の変化における握力と各評価指標の相関係数では,転倒スコアは有意な負の相関がみられた(r = -0.460,p <0.05)。SF-8TM の全体的健康感(GH)は,有意な正の相関がみられた(r = 0.530,p <0.05)。運動計測システムを用いて測定したストライド長,膝位置(後)は,有意な正の相関がみられた(r = 0.610,r = 0.540,p <0.05)。

    【結論】要介護ハイリスク高齢者の1年間の変化において,握力とストライド長,膝位置(後),転倒スコア,全体的健康感(GH)で有意な相関関係がみられた。

報告
  • ~動的バランス運動介入の効果~
    檜皮 貴子, 菅原 知昭, 長谷川 聖修
    原稿種別: 報告
    2020 年 7 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2021/03/05
    ジャーナル フリー

    【目的】転倒は子どもたちにとっても重大な問題の一つとなっている。そのため,転倒予防を目的とした運動を学校体育の授業で指導し,その効果を検証することは必要であると考える。そこで本研究は,児童の転倒予防を主眼として,体育授業において動的バランス運動を実施し,その効果を明らかにすることを目的とした。

    【方法】小学3年生の児童34名を対象にした。考案した身体が揺さぶられる4つの「ぐらぐら運動」を体育授業で全3回(45分/回)指導し,その指導前後で,開眼片足立ち・立ち幅跳び・反復横とびの測定を行った。加えて,形成的授業評価等を実施した。

    【結果】授業実施前後において,立ち幅跳びと反復横とびにおいて有意な差が示され,運動後に値が向上した。加えて,形成的授業評価では,全3回の体育授業において,全ての項目で評定3以上が得られ,児童にとってよい授業であったことがわかった。特に,「学び方」では全3回において評定5で推移した。

    【結論】児童の転倒予防目的で考案・指導したぐらぐら運動を3回実施したことで, 立ち幅跳びと反復横とびの値が向上した。さらに,児童らの授業評価が高い値で推移し,ぐらぐら運動を実施した授業は,児童らが自ら進んで楽しく学ぶことができる体育の内容であることが示された。

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