CaC
2-CaF
2系フラックスを,1kgのFe-C,Fe-Cr-C,Fe-Mn-C溶融合金と反応させて溶融合金の脱りん,脱硫にあたえるC濃度,Cr濃度,Mn濃度の影響を調査し,CaC
2の分解反応とその支配因子について検討した.
結果は以下のようにまとめられる.
(1)溶融合金の脱りん率は,処理前の溶融合金の炭素の活量が小さいものほど大きく,加炭量も多くなる.したがつて,溶融合金の炭素濃度が低いほど,クロム濃度が高いほどよく脱りんされる.しかし,マンガン濃度が高くなると,脱りん率は大きくなるがクロム溶鋼ほど大きく変化しない.
(2)脱硫率は,みかけ上,溶融合金の種類による相違はあまりなく,およそ70%以上の脱硫率が得られる.しかし,溶融合金の硫黄の活量を考慮すると,脱硫効果は合金の炭素の活量が大きくなると低下する.
(3)脱りん反応はCaC
2の分解によつて生成したCaによつて進行するのに対して,脱硫反応は,CaC
2と[S]との直接反応の寄与もあろうと推定した.
(4)CaC
2の分解反応は,溶融合金の炭素の活量によつて決まり,フラックスの添加後,およそ20min以降では
NCaC2/
NCa=k・a
[C]2の関係を保ちながら推移する.ただし,スラグ中のCaC
2とCaは時間の経過と共に変化しており,CaC
2の分解反応はスラグ-メタル間で平衡しているわけではない.
(5)本実験条件下において,スラグ-メタル間のりんの分配比は,スラグ中の金属カルシウムの濃度(Ca)と共に大きくなる傾向はあるが,その依存性はあまり強くはない.この理由は,復りん反応が比較的遅いためであると推定した.
(6)スラグ-メタル間のりんの分配比は,みかけ上,溶融合金の炭素の活量に強く依存し,炭素の活量が小さいときほどりんの分配比は大きくなる.
(7)CaF
2の併用は有効であり,その混合量はフラックス量の10~25%程度が適量であるといえる.
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