上底吹き転炉を用いた溶融還元法をフェロマンガン製造に応用することを目的として,70kg規模基礎実験と600kg規模上底吹き実験により,マンガン焼結鉱の溶融還元反応を調べた.
(1)(T.Mn)の挙動は,1次反応式で整理できる.反応速度定数:
k1と十分な時間経過後の到達マンガン濃度:(T.Mn)
fに影響をおよぼす主要な要因は,CaO/SiO
2比,温度,[%Mn],コークス量,および底吹き攪拌条件である.
(2)[Mn]が25%以上では,
k1と(T.Mn)
fは[%Mn]に関係なくほぼ一定となる.
k1が一定になるのは,還元反応がおこる場所がコークス-スラグ界面に限定されるためであることを,X線透過による直接観察で確認した.
(3)クロム合金の場合とは異なりマンガン合金では,底吹きO
2が再酸化とダスト生成に悪影響をおよぼしていることが認められた.
(4)酸素の上吹き条件としては,クロム合金の場合と同様,酸素ジェットがメタル浴にあたらないように多量スラグ共存状態でソフトブローすることが重要である.
フェロクロム溶融還元製錬の原理は,操業条件の一部を変えることにより,フェロマンガン製造にも応用できる可能性があることを明らかにした.本法は,将来,各種フェロアロイの製造を集約することが必要となつた場合などに特長を発揮できると考えられる.
本研究の取りまとめにあたり,九州大学名誉教授・新日本製鉄株式会社顧問川合保治博士の御指導をいただきました.また,X線透過実験については,東京大学工学部金属工学科反応設計教室の装置を使わせていただき,相馬胤和教授,天辰正義博士の御指導を受けました.
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