丹沢山地西部において1972年7月の集中豪雨によって発生した崩壊地は, 南向き斜面に選択的に生じている。その要因を検討した。
地形は遷急線を境に, 小起伏で谷密度の多い上流域と起伏が大きくて谷の少ない下流域とに2分される。上流域の崩壊地は, 規模が小さいが密度が高い。下流域の崩壊地は数が少ないが規模が大きい。人工林は上流域に多く, かつ人工林内またはこれに接して発生している率が高い。崩壊地の発生密度は上流域の南東~南向き斜面に高く, とくに林齢10~15年の植林地で崩壊が多発している。
上流域において, 16の斜面を選び, 樹木の根量, 根長, 最大深さを測定したところ, 根系発達程度は樹齢にはあまり影響されないものの, 北西向き斜面で良く発達し, 南東向き斜面で発達が悪いことが認められた。また, 南東向き斜面の土壌層厚は, 北西向き斜面のそれより浅く南東向き斜面のC層上部の土壌硬度 (土のセン断抵抗力を示す) が弱いことが認められた。
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