静岡県西部, 袋井市南部に位置する太田川低地の地形形成過程をボーリング資料の分析,
14C年代測定結果, 遺跡分布, 条里型土地割, 古地図に基づいて考察した。その結果, 以下のような特徴が認められた。
1) 太田川低地の形成過程において, 西側から天竜川の堆積物が運搬されていたことが明らかになった。この堆積物は約6,000年前に, 内湾化していた太田川低地南部を閉塞し, 低地の潟湖化を促進させた。
2) 縄文時代から弥生時代にかけての遺跡分布状況の変化を, より詳しくみていくことにより, 約1,900~1,700年前の海水準変動が, 明らかにできた。太田川低地の弥生時代後期の遺跡が, 中期に比べて台地, 丘陵, 低地北部に多く認められるようになることや, 後期の貝塚に鹹水産の貝類が多く産出することなどから, この時期に海水準の小上昇があったことが推定された。
3) 条里型土地割の分布を調べた結果, 太田川低地南部に条里の空白部分が存在することがわかり, 南部地域は条里制施行後, 陸化したことが推定できた。
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