本研究は, 前橋市元総社地区を事例地域に, 農業的土地利用の持続性と変移性を分析することを目的とした。
元総社地区の土地利用は1980年代中頃のバブル経済期を境にして大きく変化した。バブル以前の土地利用は土地条件を強く反映し, 台地には桑畑や養蚕農家が立地し, 谷底には水田が展開していた。この農業的土地利用の持続性は, 様々な農業奨励政策, 農業生産の伝統, 商品生産の変化, 土地条件といった諸要因によって支えられていた。他方, 変移性は, 市街化区域の設定, 幹線道路網の整備, 前橋市の都市化の影響といった要因により促進されていた。
バブル以降は, 外国産繭の台頭や養蚕農家の高齢化によって養蚕業は著しく衰退した。しかし, 樹木作物である桑は都市化の進行に対して大きな摩擦となり, 普通畑として農業的土地利用が持続した。一方, 都市化の進展に伴って, 都市化, 交通条件, 制度・政策といった各要因が複合的に作用することにより, 変移性の性格をより強く示すようになった。
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