本研究では, 岩手県を事例に高校教育におけるサービス供給の地域差と高校進学行動の関係について分析した。その結果, 以下のことが明らかになった。
教育サービスの供給には, 量と質の両面において地域差が存在する。量的な面では, 1965年以降の30年間に全地域でサービス供給量の相対値が増大したが, 県の西部地域で値が高く, その他の地域で低いという地域間の格差構造があり, その構造は1965年と1995年の両年次において確認できる。また, 専門学科の設置, 学校規模, 教員の配置を指標として質的側面からサービス供給を検討したが, 量的地域差とほぼ同様の格差構造が確認された。
また, 各地域におけるサービス供給量の相対値と高校進学率の関係をみると, 1965年の段階では強い正の相関がみられた。しかし, 1995年になると進学率の地域差がなくなり, 両者の関連は薄れている。これは, 全県的な所得水準の向上や教育に対する人々の意識の変化などが背景にあると考えられる。さらに, 岩泉ブロックを対象としたミクロスケールの分析の結果, 縁辺地域での高校の新設や交通条件の改善も進学率の向上に影響していることが明らかとなった。
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