石川県の白山西北に位置する三村山山頂付近のスギ・ヒメコマツ林下に生成するポドゾル性土壌について, 粘土鉱物組成を中心に検討した。
三村山土壌の断面形態や遊離三二酸化物の移動集積状況はポドゾル的であった。しかし, 遊離鉄の活性度や結晶化指数および腐植酸の特性値は, 褐色森林土的な特徴を示していた。これらのことから, 当該土壌は冷温帯の特定植生下で生成したポドゾル性土壌であると考えられた。
このポドゾル性土壌の粘土鉱物学的な特徴は, 以下の通りであった: 第1に, 溶脱層であるE層で雲母/スメクタイト不規則混合層鉱物が確認された。第2に, 全土層にバーミキュライトおよびその類縁鉱物が存在していたが, その層間アルミニウムが表層では溶脱され, 下層ほど緑泥石/バーミキュライト中間体化していた。このような現象は, 冷温帯のヒノキやヒバ林下の類似土壌においても認められており, 粘土鉱物も未分解針葉樹葉を起源とするフルボ酸などのキレート作用を受けていた。ただし, 溶脱層の粘土鉱物が, 亜寒帯針葉樹林下のポドゾルで生成されるほぼ完全なスメクタイトと異なって, 雲母/スメクタイトやバーミキュライト層間からのAl溶脱で留まっている点は, 当該土壌の受けたポドゾル化がそれ程強くないことを示していた。
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