水沢鋳物産地は南部鉄器の産地として知られるが, 現在の生産量の大部分は鋳物製産業機械部品からなる。南部鉄瓶, 風鈴を中心とした工芸品の生産は零細企業に限られ, 相対的に規模の大きい企業は産業機械部品生産へ特化する傾向にある。製品転換には, 経営者の経営方針と行動力が大きく影響しているが, 総じて産地の中でも資金力の強い大規模な法人企業が産業機械部品生産へ転換し, 零細企業が一部の工芸品生産法人企業の下請け業者として工芸品生産を継続させているという生産構造が明らかとなった。1980年代後半以降, 産業機械部品と工芸品の生産量の格差は拡大しており, 当地域が鋳物産地として存立し続けていくためには, 産業機械部品の安定した生産が欠かせない状況にある。
現在, 当該産地には, 産業機械部品生産企業を中心とした産学連携による研究グループをはじめ, 多様な企業・経営者間のネットワークが形成されており, 鋳物製品の品質管理や加工技術, 製品開発の技術力の向上はもちろん, 原料費高騰への対策や営業力の強化に向けた取り組みが進められている。
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