丘陵地の谷頭凹地の土層が持つ流出調節機能および部分寄与域の変動を明らかにするため, 土壌断面調査や簡易貫入試験を行い, 水流発生点 (Stream-head) 付近で土層別の流出, 圧力水頭, 地下水位等を降水量とともに観測した。谷頭凹地上部から谷心線に沿う1方向と他の2方向とでBC層が厚い。谷頭凹地下部の浅い溝状部は, BC層の大半が削られた後, AB層で再埋積されたと判断される。この構造がAB層, BC層からの浸透水の集中およびパイプと亀裂からの流出をもたらすと考えられる。地中水の経路は, (1) BC層に浸透せずに谷頭凹地下部の溝状部での厚いAB層に貯留され, 地表に流出するか, 亀裂の多い基岩中に降下浸透するもの, (2) BC層に浸透した上で (1) より遅れて谷頭凹地下部のAB層に達し, その後は (1) と同様の経路をたどるもの, (3) 亀裂の多い基岩に浸透した後AB層を通らずに流出するものに分けられた。各経路からの流出発生の有無は1時間単位の先行降雨指数 (M-API) で条件付けられる。地中水の経路は, (1)+(2) が大半を占め, 強雨時ほど部分寄与域が増大して (1) が顕著になる。ただし, 土壌が乾燥する夏期には, いずれの経路も地中水は流れにくい。
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