季刊地理学
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61 巻, 2 号
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論文
  • 松尾 忠直
    2009 年 61 巻 2 号 p. 89-108
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    本論は,農業部門への企業進出が顕著にみられた生シイタケ栽培の代表的な地域として北海道を取り上げ,栽培動向,地域的変化,企業の立地戦略,企業間取引,流通の特性を明らかにした。
    北海道では,1990年代にK社やM社の系列に属する企業の相次ぐ進出がみられた。K社は系列企業を全国的に立地させる過程で北海道にも進出し,M社は本州以南の原木栽培農家との関係を考慮して北海道へ進出した。北海道への企業進出の要因は,新しい菌床栽培技術に加え,補助金の交付が受けられることにあった。さらに,手作業に頼らざるを得ない生シイタケ栽培の特性が安価な労働力をいかすことができた。
    一方で,行政は旧産炭地の補助金を活用し,新たな雇用の創出を目指すとともに,栽培の特性をいかし,障害者の雇用と自立支援のために就業の機会を増やす意図もあった。このような施策によって企業進出が後押しされ,北海道では菌床栽培による生産量が増大した。
    また,生シイタケの流通については,K社系は系列間の流通に重点を置き,M社系は系列下の企業の判断に委ねるという差異がみられた。それは,両社の立地戦略と参入経緯の違いから生じた。
研究ノート
  • 三島 佳恵, 檜垣 大助, 牧田 肇
    2009 年 61 巻 2 号 p. 109-118
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/02/14
    ジャーナル フリー
    地すべり地に見られる植物の群落構成および分布の微地形との関係を検討するため,白神山地のひとつの地すべり地で,微地形・植生・土層構造・土壌侵食量の調査を行った。調査地にメッシュを設け,メッシュごとに植生調査を行った。メッシュは,植物の種構成により(1),(2),(3)のグループに分けられた。(1),(2)はブナ林に特徴的な種を持っているが,とくに(1)は尾根から滑落崖上部に分布しており,乾性の立地条件に現れる種をもつ。(3)は移動体下部に集中して分布しており,サワグルミ林に関係の深い種群をもつ。ブナ林乾燥型の(1)は,土壌の撹乱や土砂の移動が少ない尾根と,土壌侵食があり土層が薄い滑落崖上部に分布していた。サワグルミ林型の(3)は,土壌の撹乱や土砂の移動がある移動体の中でも,地下水の湧出で湿潤な環境にある移動体下部に分布していた。(2)は,基本的にブナ林型の種構成であり,微地形単位を超えて広く分布していた。調査地では,ブナ林を基本として,尾根や滑落崖上部に乾性立地の種が,また地すべりによる土砂堆積と地下水による湿性な環境にある移動体下部でサワグルミ林に関係の深い種を持つ林分がが立地している。
短報
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