季刊地理学
Online ISSN : 1884-1252
Print ISSN : 0916-7889
63 巻 , 2 号
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論文
  • 田中 健作
    2012 年 63 巻 2 号 p. 67-84
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,広島県北広島町大朝地区におけるデマンド型交通(DRT)のサービス供給方式と運営関係者の組織化過程を検討した。
    国や広島県の地域公共交通政策が変更される中,北広島町は,町村合併に伴う公共交通再編成を進め,DRTを導入した。北広島町大朝地区の場合は,多様なアクターがDRTの運営に関与し,利用特典を独自に設定したり,車両を積極的に利活用したりすることで経営基盤を強化させていた。こうした特徴を持つ大朝地区のDRTの運営関係者の組織化過程を考察すると,町は交通事業者側の経営自由度を高め,その下で大朝地区の交通事業者は,独自の運営方式を可能とする緩やかなネットワークを既往の地域的な諸関係を基にして構築していたことが判明した。そこでは,キーパーソンとなる交通事業者のH氏が,利用者の視点からサービスが向上されるよう,運行を支援する地区内の各事業者を位置付けていた。一方の運行を支援する各事業者も自らの活動のツールとしてDRTを位置付けた。これらの結果,交通経営と各アクターの事業の運営の双方にメリットが生み出されるようなサービス供給体制が構築されていた。
  • 遠藤 匡俊
    2012 年 63 巻 2 号 p. 85-106
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
    定住性が高い狩猟採集社会である1864∼1869(元治元∼明治2)年の東蝦夷地三石場所のアイヌ集落を対象として,定住性の程度と集落の血縁率の関係を分析した。その結果,「集落の存続期間が長くなると血縁率は低くなる」という傾向はとくに認められなかった。また「家の同一集落内滞在期間が長くなると血縁率は低くなる」という傾向もとくに認められなかった。集団の空間的流動性の程度と集落の血縁率の関係を分析した結果,分裂・結合の流動性の程度と集落の血縁率の間にもとくに関係はなかった。これは集団の空間的流動性が,移動する家のみで形成されるのではなく,集落内に定住する家と移動する家の組み合わせで生じており,集団の空間的流動性には血縁共住機能があり集落の血縁率が維持されているためと考えられる。集落の血縁率の変動率(絶対値)は平均24.9%と大きく,その変動は主に集団の空間的流動性に起因していた。多くの場合に集落の血縁率は50%以上に保たれており,血縁率は平均73.6%である。この結果は,三石場所のアイヌ集落においては,移動性(あるいは定住性)の程度に関わりなく,集団の空間的流動性によって集落の血縁率は低下しない可能性,つまり国家という枠組みのなかに組み込まれながらも「血縁から地縁へ」という変化は生じない可能性があることを示唆する。
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