奈良盆地と京都盆地は同じ瀬戸内気候に属し,隣接する盆地である。しかし,奈良盆地では古代より「干ばつ」,京都盆地では「大雨」「洪水」と異なる気候風土が形成されてきた。本研究では,両盆地の気候の乾湿に注目し,1954~2012年の気象データを用いて,ソーンスウェイト法により可能蒸発散量を算出し,気候学的水収支計算を行った。さらに,これらの結果からmoisture index, aridity index 及びhumidity indexを求め,年候的に気候分類を行った。その結果,可能蒸発散量は全年において京都が奈良を上回り,最大で76.8 mm/年の差がみられた。水過剰量についても59年中50回京都が奈良を上回り,最大で446.7 mm/年の差がみられた。反対に水不足量は奈良が京都を上回る頻度が多く,最大で93.4 mm/年の差がみられた。気候分類の結果は,平均値の気候分類が奈良でB
3B
2′rb
3′,京都でB
4B
3′rb
3′であったのに対し,年候による最多出現の気候分類は奈良でB
2B
2′rb
3′(23.7%),京都でAB
2′rb
3′(18.6%)であり,京都は奈良よりもやや温暖で湿潤な気候であることが示された。
抄録全体を表示