季刊地理学
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68 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集論文
  • 佐々木 達
    原稿種別: 特集論文
    2016 年 68 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    ジャーナル フリー
  • 蘇徳斯琴
    原稿種別: 特集論文
    2016 年 68 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,内モンゴル自治区における生態環境に留意し,草原地域における定住化政策や農地開発といった土地利用政策を持続可能な開発の視点から再検討することである。「遊牧方式」による牧畜業は,歴史的な知恵が蓄積された伝統的な生業であった。しかし,「遊牧方式」を根本的に否定した定住化放牧を中心とする草地利用政策の実施は,草原地域の生態環境に適合するものではなかったため草地劣化の一因となっている。また,莫大な人口を抱える中国は,農地確保が食料安全保障の観点から常に重要課題となってきた。そのため,内陸部の乾燥・半乾燥地域に位置する内モンゴル自治区においても農地開発が進められてきた。ところが,自然条件を考慮しない農地開発は,農地としての利用に適さなかったばかりか草地にも還元することが不可能なほどに生態環境を悪化させている。草地劣化や草原開墾は,当該地域の土地利用の持続性や国内の食料確保にほとんど貢献できなかったことを示す現象であると言ってよい。以上から,今後の土地利用政策は,持続可能な開発の視点から科学的見地を最大限に活用した環境保全と食料安全保障の両立を追求すべきであると考える。
  • ──1982年~2014年の衛星データによる検討 ──
    咏梅 , 境田 清隆
    原稿種別: 特集論文
    2016 年 68 巻 1 号 p. 15-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,近年沙漠化の進展が著しいと言われ,北京市や天津市で急増した砂塵暴の発生源として注目を集めている錫林郭勒草原の渾善達克沙地に注目し,植生指標の変動とその要因を各種気象データから検討した。まず1981年~2014年までのAVHRR/GIMMSとMODIS/TERRAの衛星データを使用し,生育期間である4~10月における植生量を算出した。植生量の指標として4~10月積算NDVI値を用い,その年々変動と長期変動の時空間的変化を調べた。次に,渾善達克沙地内10観測点の気温と降水量のデータを用い,これらがNDVI値の変動に及ぼす影響を検討した。最後に,家畜頭数変化,植林の人為的影響がNDVI値に与える影響を考察した。その結果,対象期間30年を通じてNDVIは明瞭な増減傾向を示さなかったが,2003年以降に値が低くなる傾向がみられた。4~10月積算NDVIを目的変数として, 3~10月の月毎の降水量と気温を説明変数として重回帰分析を行った結果,NDVI実測値と予測値との重相関係数は0.91と非常に高い値が得られた。家畜頭数の増減は年々の植生変動に直接結びつくものではないが,増加傾向にあった家畜頭数のもとで干ばつが発生する場合には植生量が急激に減少することが明らかとなった。
  • ──阿拉善左旗烏兰布和沙漠東縁の事例 その1──
    大月 義徳, 関根 良平, 佐々木 達, 西城 潔, 蘇徳斯琴
    原稿種別: 特集論文
    2016 年 68 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究は内モンゴル自治区西部阿拉善左旗東縁地域を事例として,周辺に卓越する地形プロセスに着目した土地環境条件を明示するとともに,地域農業の営農状況と環境政策の受容プロセスを明らかにした。
     烏兰布和沙漠東縁にて,8 ka頃の河成段丘面離水期以降,砂丘地の拡大が継続している。砂丘地前縁位置は過去数千年間で10-1~100 m/yr,1960年代以降,場所により100~101 m/yr程度の移動速度が見積もられる。砂丘地拡大により段丘面はほぼ埋没し,当地の農地利用は,地下水位の極めて浅く土壌塩性化の生じやすい黄河氾濫原上に限られる。
     砂丘地拡大に伴う草地縮小の影響を受けていた牧畜業は,1990年代中盤以降,主要生業として換金性の高いヒマワリ生産に変化した。その集中的な作付は,地力・収量の低下や病虫害,化学肥料の多投,塩害などの土地環境資源に対するリスクと,冬季湛水による農地維持策との均衡保持が必要とされるが,現在,そのバランスは徐々に崩れつつある。禁牧などの環境政策は所得保障の性格が強いため,環境資源の持続性を確保するには,土地環境条件と住民の生計維持行動とを考慮した政策適用が必要である。
  • ──阿拉善左旗烏兰布和沙漠東縁の事例 その2──
    関根 良平, 大月 義徳, 佐々木 達, 西城 潔, 蘇徳斯琴
    原稿種別: 特集論文
    2016 年 68 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    ジャーナル フリー
    本稿は,内モンゴル自治区阿拉善左旗東縁地域における土地環境条件をふまえ,巴彦喜桂集落のヒマワリ単一生産を特徴とする営農状況と環境政策の受容プロセスを検討した。この集落は,牧畜を生業としてきたモンゴル族が転出した後に流入した回族の世帯が多数を構成し,黄河河岸を農地として利用しながらヒマワリ生産を展開している。2000年前後に建設された黄河の新たな堤防は,ヒマワリ生産における洪水のリスクを一定程度回避することを可能とした。この集落の世帯は,自らの子弟を集落内で分家独立させることで世帯数を増加させてきた。親の世代が引退すると,その農地の使用権を子世代が引き継ぐことによりヒマワリ生産の規模を拡大している。ヒマワリ生産は地力低下や塩害が顕在化しつつも高収益であり,政府による補助金や牧畜,大型トラクターによる農作業の請負をあわせ,各世帯は内モンゴルの農村地域のなかでも高い所得を得ている。他地域では都市部への若年層の人口移動が顕在化するなかで,この集落では各世帯が乗用自動車を購入し,集落内で住居を新築するなど生活レベルの向上を果たしている。
  • 佐々木 達
    原稿種別: 特集論文
    2016 年 68 巻 1 号 p. 55-70
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,内モンゴル自治区を事例に農民専業合作社の組織形態を検討し,その特質と課題を明らかにすることである。具体的には,合作社の設立経緯に注目し,どのような理由で組織化に至ったのかを分析し,合作社における各主体の結合関係を検討した。その結果,合作社の設立経緯は,第一に農畜産物の販売力強化のために組織化されていること,第二に政府からの補助金が合作社の設立の直接的契機となっていること,第三に組織形態は,水平的というよりもむしろ,垂直的な形態であることが明らかとなった。農民専業合作社は,協同組合的な萌芽を持っているが,龍頭企業や産地商人による急速な組織化を経験している過渡期にあると言えよう。
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