季刊地理学
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68 巻, 3 号
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論説
  • 今野 明咲香
    原稿種別: 論説
    2016 年 68 巻 3 号 p. 165-182
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/22
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    秋田駒ヶ岳周辺では,本来亜高山性針葉樹林が成立する標高帯にササや灌木を主とする偽高山帯景観が広がっており,亜高山性針葉樹であるオオシラビソは小林分でしか存在しない。このオオシラビソ小林分を伴う偽高山帯景観は,花粉分析の研究からオオシラビソ林が未だ分布拡大途上である可能性が示唆されている。この地史的見解について森林動態の観点から検討することを目的に,笹森山北斜面に成立するオオシラビソ小林分を対象にして,樹種構成や樹齢構成,立地環境の調査を行った。オオシラビソ林は周囲の植生と明瞭な境界を持ち,比較的傾斜の緩やかな斜面に成立する。隣接するササやブナ林と比較し,オオシラビソ林内では体積含水率が高い傾向が認められた。また,林分内においてはオオシラビソの実生や稚樹が多数認められるものの,ササやブナ林には全く確認されなかった。このことから,オオシラビソ林は湿性な環境に成立しており,現在分布拡大が進行しているとは考えにくい。すなわち,笹森山に見られる偽高山帯景観は,オオシラビソ林の分布が湿性環境に偏在することによって形成された景観であると考えられる。

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