Thermal Medicine
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23 巻, 3 号
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Reviews
  • 増永 慎一郎, 西村 恭昌, 平岡 真寛, 阿部 光幸, 高橋 正治, 小野 公二
    2007 年 23 巻 3 号 p. 103-112
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2007/10/26
    ジャーナル フリー
    従来, 臨床における温熱併用放射線療法は, 実験腫瘍に対する放射線照射と同時あるいは照射後の連続的加温処置のデータに基づき, 放射線照射の直後に加温する様式がとられてきた. 温熱治療を受ける患者の多くは, 通常治療法では難治性で進行した腫瘍を有していたり, すでに癌治療を受けた後の再発症例である事も多く, いわゆるPerformance statusの良くない場合も多い. 従って, 温熱処置による直接的殺腫瘍効果を期待して, 42℃以上の腫瘍内温度を確保しつつ1時間以上ある定まった体勢を保持させる事は至難の業であり, 加温による疼痛などの有害事象によって治療中断に陥る可能性も非常に高い. さらに, 現行の加温装置を用いて, 加温対象となる腫瘍をほぼ均一に, 直接的殺細胞効果を期待して42℃以上に加温することは非常に困難である. 他方, 温熱療法の併用が放射線照射による治療効率を高めた事を示した従来の多くの報告においては, 治療対象腫瘍の温度は40-41.5℃までしか加温されていない. 放射線治療による抗腫瘍効果の上昇を認めたにもかかわらず, 加温による直接的な殺腫瘍細胞効果の上昇, 放射線増感効果, 及び腫瘍血管障害効果は, 重要に思えない. 最近, 低温度温熱処置 (MTH) が誘導する血流増加作用やそれによる腫瘍酸素化作用などの生理的効果が, MTH後の放射線照射による放射線増感作用や, 薬剤の腫瘍分布上昇による化学療法増強効果をもたらす事が示唆されている. そこで, 40-41℃前後の低温度加温を加温目標に定めるならば, 患者の負担も軽減し, 体勢保持も確保され, 治療中断を避ける事も可能となる. 腫瘍内休止期細胞分画への効果に着目し, 化学療法や化学放射線療法に併用されたMTHの有用性も明らかにされている. 温熱併用放射線治療においては, 42-43℃以上の加温が保証されるならば, 温熱治療は放射線照射後に施行されるべきであるが, 42℃以上の加温が困難であるならば, 放射線照射と加温の順序を逆転させ, 腫瘍酸素化効果を誘導するMTH後に放射線照射を施行し, 放射線増感効果を臨床的に期待するのも有用であろうと考えられる.
  • 吉田 徹, 近藤 隆, 小川 良平, QING-LI ZHAO, MARIAME A. HASSAN, 渡部 明彦, 高崎 一朗, 田渕 圭 ...
    2007 年 23 巻 3 号 p. 113-122
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2007/10/26
    ジャーナル フリー
    がん治療における分子イメージング技術や分子標的治療法が注目されている. 超音波は診断のみならず, がん治療への応用も進んできており, さらに分子レベルでの生物作用の解明が必要とされる. 本稿では特に分子生物学的見地から超音波によるアポトーシス誘導, 遺伝子発現の変化および遺伝子導入について概説した. また, 抗がん剤であるドキソルビシンの増強作用についても触れた. これらの生物作用は高い強度の超音波照射で認められることはわかっていたが, 最近の研究で低強度のパルス波でも認められることが判明した. 低強度のパルス波でもキャビテーション発生が認められ, これによる機械的作用と生体膜との相互作用が分子レベルの生物作用を考える上で重要となる. そのため, キャビテーションの発生を促進する微小気泡や生体膜を修飾する手法が超音波を利用した治療に考慮されるべきである.
     最近の研究の進歩により, 超音波により細胞内へ遺伝子導入ができること, 遺伝子制御された細胞死であるアポトーシスが誘導されること, 照射された細胞での遺伝子発現が変化することが明らかとなった. 機械的エネルギーの代表とも言える超音波が遺伝子の発現および制御にも大きく関わることがわかり, 今後の治療応用が期待される.
  • 増田 稔郎, 別府 透, 石河 隆敏, 堀野 敬, 小森 宏之, 林 洋光, 岡部 弘尚, 高森 啓史, 広田 昌彦, 馬場 秀夫
    2007 年 23 巻 3 号 p. 123-131
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2007/10/26
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対するマイクロ波凝固療法 (MCT) やラジオ波凝固療法 (RFA) などの熱凝固療法は, 低侵襲で根治性の高い治療として普及している. いずれの治療法も腫瘍径, 腫瘍個数や存在部位によって経皮的, 内視鏡下, 開腹・開胸下アプローチが適用される. MCTはmonopolar typeの電極を用い, その凝固範囲は針の周囲1cmの円柱形となる. RFAは内部冷却型 (Cool-tipTM) または展開型 (LeVeenTM, RITATM) の電極を用い, その凝固範囲は直径3cmの球状となる. MCTの3年生存率は80.0-81.0%, 5年生存率は43.0-78.0%で, RFAの3年生存率は62.0-77.7%, 5年生存率は33.3-55.4%と報告されている. 熱凝固療法の死亡率は0.2-0.5%, 合併症発生率は2.2-8.9%と安全性が高い. MCTとRFAによる熱凝固療法は, 肝機能不良肝細胞癌にも適応可能であり, 合併症は低率で良好な長期予後をもたらす.
Original Paper
  • 加藤 博和, 黒田 昌宏, 澁谷 光一, 金澤 右
    2007 年 23 巻 3 号 p. 133-143
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2007/10/26
    ジャーナル フリー
    身体深部にRFエネルギーを収束するために, 身体周囲にInductive Aperture-Type Applicator (IATA) を配置する方法を提案する. この方法においては, 脂肪層を過熱することなく, 身体中心部の発熱を最大にすることが, 有限要素法による計算によって示された. 直径0.30m高さ0.54mの脂肪-筋肉円柱状ファントムの周囲に開口面の高さが0.20m, または0.30mのIATAで取り囲み, それに13.56MHz, または27.12MHzの高周波電流を流した場合, 計算結果は筋肉中心部の発熱が最大となることを示した. 中心部の発熱は辺縁の極大値に比較して1.11~1.27倍になった. 脂肪の発熱は筋肉中心部の発熱に比較して20%程度にとどまった.
Case Report
  • 渥美 和重, 塩山 善之, 野元 諭, 大賀 才路, 吉武 忠正, 鳥羽 隆史, 大西 かよ子, 寺嶋 廣美, 田仲 和宏, 松田 秀一, ...
    2007 年 23 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2007/10/26
    ジャーナル フリー
    40歳男性, 下肢原発の線維肉腫の症例. 大腿深部に径24×13cmの腫瘤として認められた. 術前の温熱治療, 放射線治療の併用療法後, 引き続き, 患肢温存手術が行われた. 放射線治療は, リニアック6MV X線を用い, 前後対向2門照射, 1回3Gy, 週5回法で総線量30Gyで行われた. 温熱療法は, 照射期間中に放射線照射後15分以内に開始することを原則として, 週2回併用された. 温熱療法はサーモトロンRF-8を使用し, 腫瘍内温度42°C以上, 加温時間40分で行われた. 患肢温存手術は温熱併用放射線療法終了8日後に行われた. 術後に特記すべき副作用もなく, 患肢機能も温存された. 治療後67ヶ月, 無病生存中である.
     下肢原発の線維肉腫に対し, 術前温熱放射線治療と温存手術は, 患肢機能温存および局所制御の両面で有用と考えられた. 我々は, 術前温熱放射線療法および患肢温存手術にて根治しえた下肢原発線維肉腫を経験したので報告する.
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