末期癌に対しては, 積極的治療が行われていないのが現状である. 我々は膵癌術後局所再発, 多発性肝転移および右肺転移を来し, 癌悪液質を伴った末期膵癌患者に温熱化学療法 (CHT) を行った. その結果, 局所再発の消失, 肺転移巣の著明縮小および肝転移巣の約80%縮小と共に腫瘍マーカーも正常となる抗腫瘍効果と, 癌悪液質もほぼ改善しPSも4から1へとQOLの向上もみられた.
癌悪液質に対しては栄養治療以外, 特別な治療は施行していないので, CHTの効果と考え, その機序について以下の如く考察した. 即ち, CHTによる抗腫瘍効果により癌細胞の活性が減弱し, その結果, 癌細胞からのTh2サイトカインの生産低下と, 癌組織内の炎症反応低下に伴い酸化型マクロファージから還元型マクロファージが優位となってTh2サイトカインが抑制されてTh1/Th2バランスがTh1優位となり癌悪液質が改善された.
一時とは言え, 抗腫瘍効果と癌悪液質の改善がみられた事は特筆に値する. 今後はこの方面の究明が待たれる.
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