1本のアンテナで組織内加温が可能であれば, 侵襲性が低くなり, 適応も広がる. 我々は, 1本のみのアンテナで加温するときの理想的温度分布の形, すなわち腫瘍の一般的な形に近い球形の温度分布を示すアンテナを開発した. そしてさらに, 対象となる腫瘍の中心と, 球形の温度分布の中心を一致するようにアンテナを刺入する技術を考案した. 均一な温度分布を得ようとする従来の温熱療法の考え方とはべつに, 1本のアンテナでも出力を大きくすることにより中心部はablation, 周辺部は温熱療法による "熱" による治療が可能になると考えた. 我々は, 根治を目的とした放射線併用microwave組織内加温症例5例を経験した. 4例は鎖骨上または鼠径リンパ節転移, 他の1例は軟口蓋原発腫瘍であり, いずれも唯一の病巣である. 加温装置は市販のablation用の装置を用いた. 7.3ヶ月-4年9ヶ月, 平均2年2ヶ月の経過観察で, 腫瘍は3.0-7.0cm (平均4.5cm) と大きいがすべて制御されていた. 2例は2-4本のアンテナを用いたが, 他の3例は1本のみのアンテナでの加温であった. これら3例のすべてのセッションにおけるアンテナの出力は1本で10-15Wと大きく, このため腫瘍中央部ではアンテナを中心にすべて47-66°Cまで上昇していた. この温度領域を考えると, これら3例では腫瘍中心部の広い範囲で凝固壊死がおきていた可能性が高い.
1本のアンテナによる組織内加温の利点は以下の3点である. 1) 多本数のアンテナを用いた組織内加温に比べ, 侵襲製が低く, 施行が容易で適応症例が多くなる. 2) 放射線療法との併用の観点からは, 腫瘍の中心部の低酸素で放射線抵抗性な部分はablationが行われるため, 局所制御率が高まる. 3) 腫瘍に神経や血管または正常の皮膚や粘膜が接しているとablationは適応にならないが, 本法では施行可能である.
さらに発展的に考えると, 多本数のアンテナを用いた組織内加温でも, 意図的にアンテナをより腫瘍の中心に集めた配列をとれば, 中心と周辺の温度差を大きくし, 腫瘍中心部にablationの効果を期待できると思われる.
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