本論文では, 我々は装着具を使用することなく, 空胴共振器内に発生する電磁界パターンを用いて人体脳内の加温領域を非侵襲的に制御するための新しい方法を提案している. 本研究の目的は, コンピュータシミュレーションと試作加温システムとを用いて, 加温領域を制御するために開発された本方法の可能性を示すことである. 提案された加温方式では, 人体頭部はリエントラント型空胴共振器内のギャップ部に設置される. 脳腫瘍は, 頭部表面と内部電極間の接触なしに, 電磁波エネルギーによって加温される. 寒天ファントムを用いた本加温方式の加温特性は, コンピュータシミュレーションによって推定され, そして試作された加温システムによって, 実験的にチェックされた. 推定された温度と実測された温度とは, 誤差10%以下で一致した. 円筒型の空胴共振器内に発生するTMモードによく似たTM-likeモードと呼ばれる電磁界パターンがある. ここでは加温領域を制御するために2種類の電磁界モードが用いられた. これら両者の熱画像は, 寒天ファントム中央部がそれぞれ最高温度に加温されることを示していた. TM
012-likeモードを用いた加温結果では, 円筒型寒天ファントムおよび人体頭部形状寒天ファントムの温度上昇は, それぞれ5.9°Cおよび8.0°Cであった. TM
010-likeモード加温は, TM
012-likeモード加温に比べて, より広い加温領域を持つ. 我々の実験結果では, TM
012-likeモードによる加温領域は, TM
010-likeモード加温のそれの50%程度に局所化された. これらの結果は, 共振器内部に発生する電磁界パターンによって加温する本加温方法は, 非侵襲的な脳腫瘍の温熱治療法として有効であることを示している.
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