Thermal Medicine
Online ISSN : 1882-3750
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24 巻, 4 号
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Review
  • - 臨床応用への幕開け -
    井藤 彰, 小林 猛
    2008 年 24 巻 4 号 p. 113-129
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    磁性ナノ粒子を発熱体とした細胞内加温による温熱療法は, 腫瘍を特異的に加温できる可能性を秘めた有望な温熱療法であるが, 長い間, それは基礎研究レベルでの検討であり, 臨床では温熱療法の一つの治療法としては実施されていなかった. 細胞内加温による温熱療法は, 磁性ナノ粒子を腫瘍へ送達して, 外部から磁場を照射することによって, 磁性ナノ粒子をヒステリシス損失またはニール緩和効果で発熱させるという技術である. 磁性ナノ粒子としてはマグネタイトが専ら研究されてきた. 近年, 機能性マグネタイトナノ粒子と交番磁場発生装置の両方の開発によって, その技術の発展は著しい. 現在, いくつかのグループでは, 臨床応用を始めようとしており, まさにマグネタイトナノ粒子を発熱体とした細胞内加温による温熱療法の時代がやってきたといえる. 本稿では, マグネタイトナノ粒子を発熱体とした細胞内加温による温熱療法における最近の発展を述べる.
Original Papers
  • 石川 剛, 古倉 聡, 小山田 裕一, 乾 利夫, 沖田 美香, 磯崎 豊, 長尾 泰孝, 高木 智久, 半田 修, 安藤 貴志, 内藤 裕 ...
    2008 年 24 巻 4 号 p. 131-139
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】ゲムシタビン (Gem) は, それまでの標準治療であった5-FUと比較して, 生存率および症状緩和効果ともに優れていたため, 現在, 切除不能進行膵癌に対する治療として広く用いられている. しかし, その治療成績は未だ不十分なものである. そこで, 切除不能進行膵癌に対するGem温熱異時併用療法の効果および有害事象について検討を行った. 【方法】2005年11月から2007年11月の間に, 松下記念病院にて切除不能膵癌と診断されGem温熱異時併用療法を2コース以上施行できた7例を検討対象とした. 温熱療法はGem投与翌日に行い, 同施設においてGem単独治療を行った7例をhistorical controlとして比較検討した. 【結果】Gem温熱異時併用群とGem単独群 (historical control) の間には, 治療開始時の年齢, performance status, 臨床病期に有意な差はなかった. Disease control rate (CR+PR++SD) はGem温熱併用群57.1%, Gem単独群14.3%と温熱併用群で良好であった. 累積生存率でも温熱併用群 (MST327日) はGem単独群 (同198日) に比し有意に良好であった (p=0.0275). 【結論】Gem温熱異時併用療法は, Gem単独療法に比し抗腫瘍効果が増強されることが期待され, 今後, 前向き試験において多数例で評価することが必要である.
  • 藪原 忠雄, 新藤 康弘, 加藤 和夫, 高橋 英明, 宇塚 岳夫, 藤井 幸彦
    2008 年 24 巻 4 号 p. 141-152
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    本論文では, 我々は装着具を使用することなく, 空胴共振器内に発生する電磁界パターンを用いて人体脳内の加温領域を非侵襲的に制御するための新しい方法を提案している. 本研究の目的は, コンピュータシミュレーションと試作加温システムとを用いて, 加温領域を制御するために開発された本方法の可能性を示すことである. 提案された加温方式では, 人体頭部はリエントラント型空胴共振器内のギャップ部に設置される. 脳腫瘍は, 頭部表面と内部電極間の接触なしに, 電磁波エネルギーによって加温される. 寒天ファントムを用いた本加温方式の加温特性は, コンピュータシミュレーションによって推定され, そして試作された加温システムによって, 実験的にチェックされた. 推定された温度と実測された温度とは, 誤差10%以下で一致した. 円筒型の空胴共振器内に発生するTMモードによく似たTM-likeモードと呼ばれる電磁界パターンがある. ここでは加温領域を制御するために2種類の電磁界モードが用いられた. これら両者の熱画像は, 寒天ファントム中央部がそれぞれ最高温度に加温されることを示していた. TM012-likeモードを用いた加温結果では, 円筒型寒天ファントムおよび人体頭部形状寒天ファントムの温度上昇は, それぞれ5.9°Cおよび8.0°Cであった. TM010-likeモード加温は, TM012-likeモード加温に比べて, より広い加温領域を持つ. 我々の実験結果では, TM012-likeモードによる加温領域は, TM010-likeモード加温のそれの50%程度に局所化された. これらの結果は, 共振器内部に発生する電磁界パターンによって加温する本加温方法は, 非侵襲的な脳腫瘍の温熱治療法として有効であることを示している.
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