酸化鉄ナノ粒子を熱分解法と共沈法の二種類の方法で合成し, その発熱特性と磁気物性を評価した. 熱分解法では, 鉄原料である鉄ペンタカルボニルとオレイン酸 (C
17H
33COOH) をジオクチルエーテル中に投入し, 大気中で560 Kで反応させることで酸化鉄ナノ粒子を合成した. C
17H
33COOHの添加量と反応時間を変化させて得られた試料を透過型電子顕微鏡 (TEM) によって観察した結果, 酸化鉄ナノ粒子の平均粒子径は反応条件に応じて3.0 nmから12.2 nmまで変化した. 一方, 共沈法では硫酸鉄 (II) 水溶液と塩化鉄 (III) 水溶液の混合液をアンモニア水に添加して酸化鉄ナノ粒子を作製した. TEM像観察から, 共沈法により作製した酸化鉄ナノ粒子の平均粒子径は10.2 nmと見積もられた. それぞれの方法で作製した酸化鉄ナノ粒子をイソパラフィン系溶媒に分散させ, 周波数600 kHz, 磁場強度3.2 kA/mの交流磁場を印加して温度変化を測定した. この結果, 共沈法により作製した試料は77 Kの温度上昇を示した一方, 熱分解法により作製した平均粒子径11.3 nmの試料では14 Kの温度上昇を示した. これに対して, 平均粒子径3.0 nmの酸化鉄ナノ粒子では有意な温度上昇は観測されなかった. 試料の磁気物性を超伝導量子干渉型磁束計と物理特性測定システムを用いて評価した結果, 発熱効率の高い試料では磁化率が極大となる温度, ブロッキング温度が高くなることが明らかになった.
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