Thermal Medicine
Online ISSN : 1882-3750
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ISSN-L : 1882-2576
27 巻, 2 号
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Review
  • 田渕 圭章, 古澤 之裕, 近藤 隆
    2011 年 27 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2011/07/25
    ジャーナル フリー
    がん細胞にパイパーサーミアの変曲点温度である42.5°C以上を負荷すると, 細胞死が誘導される. 一方, その変曲点以下の温度では, 細胞障害は僅か, または, 殆ど観察されない. 温熱ストレスシグナルは複雑であり, ハイパーサーミア研究において温熱ストレスによる細胞応答の分子メカニズムを解明することが大きな課題として残されている. 最近, 我々は温熱ストレス応答を解明する最も強力な方法は, 網羅的なマイクロアレイとバイオインフォマティクス解析であると考えた. 本総説では, ヒトリンパ腫U937細胞のアポトーシス誘導またはアポトーシス非誘導条件において, これらの解析手法を用いて得られた温熱ストレスによる細胞応答の遺伝子発現プロファイルを要約する. さらに, アポトーシスの有無の条件における温熱ストレスに応答する生物学的な機能と遺伝子ネットワークの差異を考察する.
Original Papers
  • 降矢 健太郎, 村津 宏樹, 佐藤 忠邦, 田倉 哲也, 佐藤 文博, 松木 英敏
    2011 年 27 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2011/07/25
    ジャーナル フリー
    ソフトヒーティングハイパーサーミアは細長い素子を体内に埋め込むハイパーサーミアの一つである. 発熱素子は体外の励磁コイルによる高周波磁界によって発熱する. 発熱素子は感温磁性体を金属環で包んだ構造である. 素子はキュリー温度以上に上昇しない特徴を持つ. これにより温度の自動制御性を有するため加温範囲は限定され, 安全な治療が可能となる. 素子の発熱量は磁界強度, 励磁周波数, 発熱素子と入射磁界の成す角に依存する. 例えば, 素子長軸と入射磁界が平行な場合に最もよく発熱する. しかし, 素子一本当たりの加温範囲は限定されるため, ソフトヒーティング法は腫瘍に対して複数の素子を様々な方向から埋め込むことを想定している. 従って, 単独のソレノイドコイルや平板コイルではほぼ一定方向しか励磁できないため, 患部において多方向磁界の生成が必要となる. 多方向磁界を得るには少なくとも二方向の磁界源が必要なため, 二つのコイルを用いる. 二つのコイルの電流位相差を90度にすることは多方向の励磁が可能な回転磁界の条件として良く知られている. しかしながら, 二つのコイルに電磁結合が存在する場合, 誘導電流により電源が破損する恐れがある. 加えて, 電磁結合が全くないコイルモデルでは人体への適用が難しい. そこで我々は多方向励磁法と臨床用コイルモデルの一例を提案した. これは二つの異なる励磁周波数を使い, ある位置において, 多方向磁界が得られる手法である. また, 電磁結合が存在するコイルモデルでも安全に駆動できる特徴を持つ. 我々は本手法を用いて, 様々な方向に設置した発熱素子の加温に成功した.
  • 坂元 直行, 古倉 聡, 石川 剛, 谷川 真理, 内藤 裕二, 吉川 敏一
    2011 年 27 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2011/07/25
    ジャーナル フリー
    がん患者に対してハイパーサーミアを実施する際, がん進行による全身状態の悪化により治療導入直後にもかかわらず, その継続が困難となるケースを度々経験する. ハイパーサーミアの受容性に関してはコンセンサスが十分に得られておらず, ハイパーサーミアにおける患者選択に関して明確な臨床的な判断基準も定められていない. ハイパーサーミアにおける患者選択に関する適切な判断基準の制定を目指して, 今回, 我々は治療前の患者の背景因子に基づいたハイパーサーミアの受容性に関する検討を行った. 化学療法や免疫療法に併用して週1回, 局所ハイパーサーミアを実施した進行がん患者45名を対象とした. ハイパーサーミアを8週間以上にわたって実施できたのは, 24名 (Group A) であった. ハイパーサーミアを7週間以下しか実施できなかったのは, 21名 (Group B) であった (Group Bの平均施行回数 : 4.19回). 各々の患者の治療前の血液検査所見, BMI, performance status (PS), Glasgow prognostic score (GPS), QOL (EORTC QLQ C-30による) などについて調査した. PSとGPSの両者のスコアが不良である症例は, 早期にハイパーサーミアの実施が困難となった. これらの症例では低アルブミン血症に加えて, LDH, およびCRPの上昇が多く認められる傾向にあったが, これらはがん進行に伴うものと考えられた. Group Bでは, ハイパーサーミア導入前の段階で, 既にQOLは損なわれている傾向にあった. PSとGPSはハイパーサーミアの受容性を判断する上でもっとも重要な因子と考えられた. また, LDH, CRP, 血清アルブミンの数値を加味して評価すれば, より適切に判断できると思われた. 本検討により, 患者の治療前の血液検査所見, 全身状態, およびQOLなどの背景因子を適切に評価できれば, ハイパーサーミアの受容性は予測できる可能性が示唆された. 今後, 症例を蓄積して検討すれば, ハイパーサーミアにおける患者選択に関する適切な判断基準の制定につながると考えられる.
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