がん患者に対してハイパーサーミアを実施する際, がん進行による全身状態の悪化により治療導入直後にもかかわらず, その継続が困難となるケースを度々経験する. ハイパーサーミアの受容性に関してはコンセンサスが十分に得られておらず, ハイパーサーミアにおける患者選択に関して明確な臨床的な判断基準も定められていない. ハイパーサーミアにおける患者選択に関する適切な判断基準の制定を目指して, 今回, 我々は治療前の患者の背景因子に基づいたハイパーサーミアの受容性に関する検討を行った. 化学療法や免疫療法に併用して週1回, 局所ハイパーサーミアを実施した進行がん患者45名を対象とした. ハイパーサーミアを8週間以上にわたって実施できたのは, 24名 (Group A) であった. ハイパーサーミアを7週間以下しか実施できなかったのは, 21名 (Group B) であった (Group Bの平均施行回数 : 4.19回). 各々の患者の治療前の血液検査所見, BMI, performance status (PS), Glasgow prognostic score (GPS), QOL (EORTC QLQ C-30による) などについて調査した. PSとGPSの両者のスコアが不良である症例は, 早期にハイパーサーミアの実施が困難となった. これらの症例では低アルブミン血症に加えて, LDH, およびCRPの上昇が多く認められる傾向にあったが, これらはがん進行に伴うものと考えられた. Group Bでは, ハイパーサーミア導入前の段階で, 既にQOLは損なわれている傾向にあった. PSとGPSはハイパーサーミアの受容性を判断する上でもっとも重要な因子と考えられた. また, LDH, CRP, 血清アルブミンの数値を加味して評価すれば, より適切に判断できると思われた. 本検討により, 患者の治療前の血液検査所見, 全身状態, およびQOLなどの背景因子を適切に評価できれば, ハイパーサーミアの受容性は予測できる可能性が示唆された. 今後, 症例を蓄積して検討すれば, ハイパーサーミアにおける患者選択に関する適切な判断基準の制定につながると考えられる.
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