本論文は, 仮想空間における針状1アプリケータを用い, 効果的なハイパーサーミアを目指して開発したシミュレーターシステムの有効性を述べている. 脳は, 頭蓋骨によって保護されているため, このことが電磁波エネルギーによって非侵襲的に深部腫瘍を加温することを難しくしている. 一般に, 針状アプリケータが脳腫瘍の加温治療に用いられている. しかしながら, 幾つかの問題点があり, その1つは, この加温方式の加温領域は, 小さいことにある. 加温領域を拡大するために, 我々はすでに形状記憶合金製の新しい針電極を開発している. このアプリケータの加温特性は, 実験的に確認されている. その結果として, 腫瘍内の加温領域の拡大を達成している. 他の問題点は, 医師が目的とする位置に針状アプリケータを刺入するのが難しいことにある. そこで, 臨床では, 効果的な癌温熱治療を実施するための支援システムの実現が望まれている.
本論文では, まず2次元MRIおよびCT画像からCADソフトを応用して, 3次元人体モデルを構築した. 次に, 3次元グラフィックス上で, 非線形要素に分割されたFEMモデルを示す. 最後に血流量を考慮したこの3次元FEMモデルを用いて, ハイパーサーミア実施時における温度分布計算を行った. これらの結果から, ここで提案したVRシステムは, 効果的なハイパーサーミアの実施に有用であることが分かった.
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