Thermal Medicine
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33 巻 , 4 号
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Reviews
  • 藤内 祝
    2017 年 33 巻 4 号 p. 103-115
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    口腔癌の治療は手術が標準治療であるが,術後の機能障害(構音障害,嚥下障害,咀嚼障害)や審美障害が大きな問題である.よって非侵襲的治療が求められるが,その治療手段の一つに温熱療法(ハイパーサーミア)に注目した.磁性体針を用いた磁場誘導組織内加温法(implant heating system: IHS)が開発され,実験的,臨床的に効果を検討した.実験的(家兎VX7舌腫瘍)には舌腫瘍の抹消側には温熱効果も高いが,中枢側ではクーリング作用もあり温熱効果が低かった.また,臨床的には腫瘍の大きさに合わせて磁性体針を複数本刺入し化学療法と併用して8例の口腔癌患者に治療を行ったが,温度分布も良く全ての症例で腫瘍は消失した.
    Magnetic liposomesの磁性微粒子を用いた組織内加温の抗腫瘍効果を実験的に検討した.舌腫瘍原発に対しては温度も高く腫瘍の消失がみられた.また,舌腫瘍に注入した磁性微粒子は頸部リンパ節転移にも選択的に移行しており,頸部のみの交流磁場照射でも頸部リンパ節転移の壊死,アポトーシスがみられた.既存の薬剤であるフェルカルボトランは交流磁場下で発熱が認められ,さらに,シスプラチン単独よりも温熱併用でアポトーシス誘導作用が増強されることが確認できた.また,新規磁性体有機化合物(Fe (Salen))を用いて実験的に抗腫瘍効果を検討した.Fe(Salen)単独投与でも抗腫瘍効果が認められた.電磁石によって局所に集積させると抗腫瘍効果が増し,高周波磁場下では発熱し腫瘍の消失がみられた.
    進行口腔癌に対して新しい超選択的動注化学放射線療法とRFハイパーサーミアの併用療法は頸部リンパ節転移(N3)に極めて有用であった.この治療は進行口腔癌に対して非侵襲治療(臓器温存治療)の一つとして期待できるものであった.
  • 相羽 久輝, 山田 聡, 三輪 真嗣, 大塚 隆信
    2017 年 33 巻 4 号 p. 117-127
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    我々は,高悪性度軟部腫瘍に対し,術前に腫瘍を縮小・壊死させることで,腫瘍切除範囲を縮小し,患肢温存を行うことを目標とする,温熱化学放射線療法(Radio-hyperthermo-chemotherapy: RHC)の研究・開発を行ってきた.本著では,温熱療法の歴史的な発展と,当院で行われたRHCの基礎研究と臨床応用につき振り返ることを目的とする.
    基礎研究では,未分化多形肉腫株を42-43°C/1時間にて加温処理を行うことでアポトーシスが生ずることを確認し,さらにFACSによる細胞周期の解析で放射線抵抗性であるG1期の細胞が,特異的に細胞死していることを示した.さらに,シスプラチンと加温処置を同時に行うことで細胞内の抗がん剤濃度が上昇し,DNA生成阻害効果が高まるこを示した.これらの研究結果から温熱療法は放射線療法と化学療法に相乗的に作用することが示唆された.
    そこで我々は1990年代初頭よりRHCを臨床応用し,1990-1999年代では44名の患者(21例,未分化多形肉腫;7例,高悪性度脂肪肉腫;その他;16例)にRHCを行い,局所再発は1例と,高い局所制御率(97.1%)を報告した.また,2004-2013年に治療された20名の患者から採取した手術検体を病理学的に解析すると,3名(15%)は完全壊死,6名(30%)は90%以上壊死率,9名(45%)は50-90%以上の壊死率であった.これらの患者群では,90%以上の壊死率が得られた場合,死亡症例は認められなかった.
    さらに,RHCにて治療された患者群と,日本整形外科学会による骨・軟部腫瘍登録データー群(BSTT群)を,傾向スコア分析により,患者背景,腫瘍径,組織型,深度,性別などを全て調整してカプランマイヤー法にて腫瘍学転機に関し分析を行った.その結果,5年生存率はRHC群で81.2%,BSTT群では78.3%と有意差は認められなかった(p=0.52)が,局所コントロールはRHC群で97.3%,BSTT群では87.1%であり,RHCを行った場合,有意に高い局所制御率が認められた(p=0.04).以上に加え,BSTT群では切除縁により局所再発率が上昇する傾向が認めらたが,RHC群では辺縁切除・腫瘍内切除でも低い再発率であった.
    このように,名古屋市立大学では温熱療法に古くから着目し,基礎実験を行うとともにRHCとして臨床応用を行ってきた.腫瘍の局所制御率に関し,従来の補助療法に比べ高い効果を発揮し,縮小手術が可能になったと考えられる.今後も更なる研究を重ね,より精度の高い手法を確立したい.
Short Report
  • ラーマン KMZ, 小瀬 真吾, 今本 尚子
    2017 年 33 巻 4 号 p. 129-134
    発行日: 2017/12/15
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル フリー
    Hikeshiは,熱ストレス時に熱ショックタンパク質HSP70(HSPA1, HSPA8)を核に運ぶタンパク質である.ヒトでのHikeshi機能欠損は重篤な遺伝性疾患の原因にもなるが,Hikeshiの細胞機能の詳細はまだ十分には解明されていない.我々は以前,二種類のヒト培養細胞(HeLaがん細胞,hTERT-RPE1不死化細胞)を用いて,タンパク質毒性ストレス(Proteotoxic stress)応答におけるHikeshi欠損の影響を解析した.その結果,HeLa細胞では,Hikeshiをノックアウトすると,タンパク質毒性ストレスによって細胞生存率が低下するが,hTERT-RPE1細胞では,Hikeshiをノックアウトした方が,p21(WAF1/CIP1)発現が亢進し,タンパク質毒性ストレスに対して,より強い抵抗性を示すことが判った.p21は細胞周期進行を抑制し,その発現は,がん抑制遺伝子p53によって制御されている.今回,我々は,HeLaとhTERT-RPE1細胞において,Hikeshi欠損とHSP70機能阻害が細胞情報伝達に及ぼす影響を調べた.HSP70阻害剤YM-1で処理すると,HeLa細胞では細胞死を,hTERT-RPE1細胞では増殖停止が誘導された.さらに,YM-1処理によって,hTERT-RPE1細胞ではp53とp21の発現が劇的に誘導され,両細胞において,細胞周期制御因子であるFoxM1とsurvivinの発現が抑制された.今回の結果は,Hikeshiの有無に関わらず,YM-1でhTERT-RPE1非がん細胞を処理すると,p53-p21経路が活性化し,細胞死が抑制されることを示している.Hikeshiは,HSP70の上流制御因子として機能することで,特にタンパク質毒性ストレス時において,p53-p21経路の活性を制御している可能性がある.
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