Thermal Medicine
Online ISSN : 1882-3750
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33 巻 , 2 号
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Reviews
  • 辻 俊一
    2017 年 33 巻 2 号 p. 19-28
    発行日: 2017/07/28
    公開日: 2017/10/05
    ジャーナル フリー
    ハイパーサーミアは,外部から熱をかけることで癌細胞や腫瘍組織の温度を上昇させ,それら細胞・組織を消失・制御する方法である.しかしながら,その温度に関する知見は,細胞外環境中の温度に基づくものであり,細胞内の温度に関する知見は非常に少なかった.近年,複数の新たな蛍光性温度計の開発により,細胞内温度を高い空間分解能で測定することが可能になり,細胞活動を熱力学的観点から議論できるようになってきた.本総説では,細胞内温度測定技術の中でも,蛍光性温度計に焦点を絞り,その中でも蛍光性高分子温度計(FPT)に関して最近の知見を詳しくまとめた.FPTは,1細胞レベルで0.1°Cオーダーの高い精度をもって温度を測定できる特徴を持ち,核の温度が高いなどの細胞内における温度の不均一性を明らかにしてきた.近い将来,FPTを含めた細胞内温度測定技術によりハイパーサーミアの理解がさらに深まり,より汎用的かつ効果的な治療法になることを期待している.
  • 大西 健
    2017 年 33 巻 2 号 p. 29-37
    発行日: 2017/07/28
    公開日: 2017/10/05
    ジャーナル フリー
    正常組織には,体性幹細胞が存在し,その自己複製能と分化能によって組織形成,維持及び修復システムで重要なはたらきをしている.種々の固形がんにおいても幹細胞が存在することが15年ほど前から明らかにされ,腫瘍の形成維持に寄与していると考えられている.また,この細胞は放射線や抗がん剤に対して抵抗性を示すため,治療後に残存すると再発や転移に繋がると考えられている.腫瘍に存在するこのような幹細胞はがん幹細胞と呼ばれる.現在,がんの根治を可能にするには,このがん幹細胞への対応が必要とされる状況となっている.このようにがん幹細胞は広く認知されるようになった反面,その実体/実態についてはまだよく理解されていない.今後,がん幹細胞を標的とするより進歩したがん治療戦略の開発が望まれるが,がん幹細胞そのものを正しく理解し,その取扱いに充分注意して研究を進める必要があると考えられる.そこで本総説では,がん幹細胞とは何か,そしてがん幹細胞を対象とした研究の注意すべき点に言及し,がん幹細胞に対するハイパーサーミアの有効性について考察する.
Original Papers
  • 大木 明子, 田上 穂, 小林 彩友美, 村瀬 研也
    2017 年 33 巻 2 号 p. 39-51
    発行日: 2017/07/28
    公開日: 2017/10/05
    ジャーナル フリー
    磁気粒子イメージング(Magnetic Particle Imaging: MPI)は磁性体ナノ粒子の外部磁場に対する非線形磁化応答特性を利用したイメージング法である.磁気温熱療法(Magnetic Hyperthermia Treatment: MHT)では,磁性体ナノ粒子をがん組織に取り込ませ,外部から交流磁場を印加し,磁性体ナノ粒子を発熱させてがん細胞を死滅させる.シスプラチンはがん治療に臨床で広く用いられている白金製剤である.本研究では,磁気温熱療法とシスプラチンを用いた化学療法を併用した場合の磁性体ナノ粒子の腫瘍内空間分布の経時的変化および抗腫瘍効果について,MPIを用いて検討することを目的とした.
    BALB/cマウス(雄性8週齢)の皮下にマウス直腸癌由来細胞株(Colon-26)1.0×106 cells/100 μLを播種し,対照群(n=10),MHT単独群(n=11),シスプラチン単独群(n=8)及びMHT・シスプラチン併用群(n=8)を作成した.腫瘍体積が100 mm3を超えた時点で,シスプラチン単独群ではシスプラチンを5 mg/kg腹腔投与した.MHT単独群では腫瘍部に磁性体ナノ粒子[リゾビスト(γ-Fe2O3)]250 mM(14.0 mg Fe/mL)溶液 200μLを直接投与し,MHTを20分間行いMHTの前後でMPI撮像を行った.MHT・シスプラチン併用群では,シスプラチン投与1時間後に同様にMHTを行った.MHTから3,7,14日後にもMPI撮像を行い,磁性体ナノ粒子の経時的変化を観察した.MPI撮像後,最大MPI画素値の40%以上の画素値を示す領域を関心領域(region of interest: ROI)として,平均画素値,最大画素値,ROI面積を評価した.腫瘍体積は治療当日から14日間毎日計測し,抗腫瘍効果を腫瘍体積成長率を用いて評価した.また,治療から3日後の腫瘍を切除し,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い腫瘍組織を観察した.対照群では腫瘍体積が100 mm3を超えた日の3日後に腫瘍を切除した.
    リゾビストの腫瘍組織内の空間分布の経時的変化については,シスプラチン・MHT併用群におけるMPI画像の平均画素値および最大画素値の変化率はMHT後3日目にMHT単独群に比べて有意に高値を示した.MHT・シスプラチン併用群の腫瘍体積成長率は,いずれの治療群に対しても有意に低値を示した.HE染色の結果,シスプラチンを使用した群では腫瘍組織が広く傷害される傾向が見られた.
    本研究結果より,磁気粒子イメージングを用いて磁気温熱療法と化学療法との併用に対する腫瘍反応性を定量的に評価できる可能性が示唆された.
  • デブナス オエインズリラ, 齊藤 一幸, 伊藤 公一, 上坂 充
    2017 年 33 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2017/07/28
    公開日: 2017/10/05
    ジャーナル フリー
    組織内加温法と小線源治療との組み合わせは,腫瘍の治療に有効であることが示されている.腫瘍の温度を上昇させることにより,その腫瘍は放射線に対して敏感になるため,結果として放射線量を低減させることが可能である.本研究の目的は,深在性の乳房腫瘍に対して効果的に加温可能な侵襲型アプリケータを選定し,これにより腫瘍部の温度を42.5°C以上に上昇させ,30 Gy未満の低線量放射線の効果を調べることである.我々は,まず,侵襲型アプリケータとして同軸スロットアンテナアレーを用いることとし,アンテナ周辺の温度分布について胸部ファントムを使用して測定した.さらに,specific absorption rate(SAR)分布を市販の電磁界シミュレーションソフトウェアを用いて計算した.これらの結果より,2本の同軸スロットアンテナを5 mm間隔で配置し,15 Wのマイクロ波電力を使用する同軸スロットアンテナアレーにて,腫瘍ファントム中の直径3 cm程度の領域の温度を42.5°C以上に上昇させることができた.また,30分加温後の温度上昇値やSARは,正常組織のファントムよりも腫瘍組織のファントムの方がいずれも高い値になることがわかった.さらに,治療計画ソフトウェアを用いて小線源治療時の線量分布を検討すべく,乳房腫瘍患者の断層画像にシミュレーションを適用した.腫瘍サイズは50 mm(長さ)×50 mm(幅)×20 mm(厚さ)であった.6 Gyの放射線量を5回照射し,30 Gyの放射線量とした.この結果,同軸スロットアンテナアレーを用いて42.5°C以上に温度上昇させる組織内加温法と,6 Gyを5回に分けて照射する小線源治療の併用は,深在性乳房腫瘤の局所制御を行える可能性があることがわかった.
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