哺乳類は温熱などの環境ストレスに対して,ストレス応答機構を有している.ストレス適応機構には,アポトーシスなどの細胞死誘導機構と生存のために働くストレス適応機構がある.ストレス適応機構の一つとして,ストレス顆粒(SGs)と核内ストレス顆粒(nSBs)の形成が報告されている.多くのタンパク質とRNAからなるSGsとnSBsは,細胞が環境ストレスに曝された時にのみ形成される可逆性の細胞内構造体である.細胞質で形成されるSGsは酵母からヒトまで幅広い真核生物で観察される.興味深いことに,核内で形成されるnSBsはSGsとは異なっており,ヒトでのみ観察される.そこで,本総説ではnSBsに注目する.
nSBsは1989年に発見され,その後多くのnSBs構成タンパク質及びRNAが同定されている.nSBsの主な構成因子はHeat shock transcription factorファミリーやスプライシング因子,Satellite III RNAや開始tRNAなどの非コードRNAである.近年,多くの研究者がnSBs形成機構を報告している一方で,nSBsの細胞内機構は未だ明らかになっていない.本総説では,nSBsの形成機構やnSBs構成因子の細胞内機能などの基礎研究について紹介する.
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