Thermal Medicine
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36 巻 , 2 号
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Review
  • 田渕 圭章, 古澤 之裕
    2020 年 36 巻 2 号 p. 35-46
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    がん温熱療法(ハイパーサーミア:HT)と化学療法,放射線療法やこれら両者との併用は,有効ながん治療法として位置付けられている.しかしながら,HTの問題点の一つは温熱抵抗性獲得であり,これが治療効果を低下させる.

    小胞体(ER)は,新生タンパク質の品質管理を行う主要な細胞小器官である.ERストレスは,ERにおいて構造異常のタンパク質の蓄積により感知され,細胞保護機構であるERストレス応答(unfolded protein response(UPR)とも云われている)を誘導する.ERストレスは,熱ストレス,グルコース欠乏,低酸素,カルシウム枯渇等,様々な病態生理学的な条件下で引き起こされる.この応答は,ER膜上の三種類の異なるセンサー分子,IRE1(inositol requiring enzyme-1),PERK(protein kinase R-like ER kinase)とATF6(activating transcription factor 6)を介して行われる.非ストレス条件下では,BiP(HSPA5: heat shock protein family A (Hsp70) member 5)がこれらのセンサー分子と結合している.一方,ERストレス条件下では,BiPがタンパク複合体から解離し,三種類のセンサー分子の活性化が誘導される.興味深いことに,IRE1, PERKとATF6シグナル経路の全て,または,それらの一部が熱ストレスを負荷した細胞で活性化されることが判っている.

    本総説では,HTや温熱抵抗性におけるERストレス応答の役割について要約する.

Original Paper
  • 森野 富夫, 田上 祥太, 宮田 周一郎, 平山 鋼太郎, 井藤 彰, 惠谷 俊紀, 内木 拓, 河合 憲康, 安井 孝周
    2020 年 36 巻 2 号 p. 47-58
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    腫瘍内に局所投与したナノサイズのマグネタイト正電荷脂質複合粒子(magnetite cationic liposomes, MCL)に交番磁場を照射し,その発熱誘導により癌を治療する方法が開発され,本邦で臨床研究が実施された.しかしながら,腫瘍温度は等しく上昇したにも拘わらず,その有効性は完全退縮~ほぼ無効まで広範囲に亘った.筆者らは,MCLのインビトロの殺細胞活性が培養液温度に相関しないこと,臨床効果が腫瘍体積当たりの投与量(mg-MCL/cm3 tumor volume)に相関することを示し,腫瘍温度に代わる指標として,腫瘍体積当たりの発熱量(J/cm3 tumor volume)を提言した.本研究の目的は,動物腫瘍モデルを用いて,その有用性を検証することにある.

    MCLの腫瘍内発熱量の算出を可能にするために,治療用装置で想定される腫瘍位置(mm)と出力(kW)をパラメータにして,MCLの発熱活性(J/g-MCL・min)を測定した.本装置を用いて,小型腫瘍(7 mm径)の完全退縮条件を再現し,その照射条件におけるMCLの発熱活性(J/g-MCL・min)に,腫瘍体積当たりの投与量(g-MCL/cm3)と照射時間(min)を乗じて,腫瘍内発熱量(J/cm3)を算出した.この結果,完全退縮に十分な1回照射当たりの腫瘍内発熱量は,大凡700~850 J/cm3であることが判明した.既に,温度指標では,大型腫瘍(15 mm径)における効果の減弱傾向が示されていたため,算出された腫瘍内発熱量を指標に,ラット大型腫瘍(13~16 mm径)の治療条件を机上でデザインし,その単回クールでの完全退縮効果を実証した.更に,温度指標では大型腫瘍の投与量設定(g-MCL/cm3)が各段に低いことが判明したため,測温部の温度上昇は伝熱により比較的容易に達成されるものの,低い投与量設定(g-MCL/cm3)に連動して腫瘍内発熱量(J/cm3)が低値となることが,効果減弱の要因と考察した.腫瘍内発熱量を指標とした治療条件のデザイン手法を示し,その臨床フィジビリティと装置開発の今後の方向性を論じた.

Technical Report
  • 加藤 博和, 高杉 庸男, 田中 龍二郎, 山本 泰司
    2020 年 36 巻 2 号 p. 59-74
    発行日: 2020/07/15
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

    山本ビニター社製の誘電型加温装置(発振周波数8 MHz),サーモトロン-RF8が,自励発振方式の真空管を用いた装置,EX editionから水晶発振方式の半導体を用いた装置,GR editionへ世代交代し,小型化した.新型装置の加温特性を実証するため,両装置の加温性能を基本的な加温特性と臨床を想定した加温特性についてファントムを用いて比較検討を行った.

    1)ファントム両端に印加される高周波について,高周波出力を100 Wから1,000 Wまで変化させた場合,両装置間の波形は同じであり波形の歪みはみられなかった.

    2)加温電力測定用ファントムを用いた実験において,両装置ともファントムを均一に加温することができ,両装置の加温効率はそれぞれ63%,64%であった.

    3)1対の電極において,片方の電極の直径を30 cmから7 cmまで変化させた場合,電極が小さくなるに従い加温できる深さは浅くなった.加温できる深さは,両装置において同じであった.

    4)ファントムの片面に突起がある場合,突起の温度上昇は突起辺縁に比較して大きいが,その大きさは突起のない面と同じであった.この傾向は,両装置において同じであった.

    5)ファントム内に埋没空気がある場合,電極に面した空気近傍のファントムの温度上昇は小さく,電極に面していない空気近傍のファントムの温度上昇は大きくなった.この現象は,両装置において同じであった.

    6)ファントム内に埋没骨がある場合,電極に面した骨近傍のファントムの温度上昇は小さく,電極に面していない骨近傍のファントムの温度上昇は大きくなり,骨そのものの温度上昇は小さかった.この現象は,両装置において同じであった.

    7)1対の電極が平行に設定されていない場合,深さ方向の温度上昇分布は平行に設定されている場合と同じであったが,横方向の温度上昇分布では電極が互いに接近している方の温度上昇が大きくなった.この現象は,両装置において同じであった.

    以上のことから,半導体を用いた加温装置GR editionは,真空管を用いた加温装置EX editionに対して,上位互換機であることが示された.

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