がん抑制因子p53は,ヒトのがんにおいて変異の発生頻度の最も高い遺伝子である.大部分の変異はミスセンス変異であり,それにより発現する変異型p53タンパク質は,本来のがん抑制因子としての機能を喪失するのみならず,がんの進行を促進する働きを新たに獲得することから,“機能獲得変異(gain of function: GOF)”と呼ばれている.野生型p53および変異型p53が,各々がん抑制的または促進的に機能するためには,その安定化や蓄積が重要であるが,その制御機構については未だ不明な点が多い.熱ショックタンパク質(HSPs)は分子シャペロンの一つであり,タンパク質の折りたたみや輸送,変性タンパク質の安定化や分解など多彩な機能を有している.中でもHSP40は,50種類以上のメンバーを有しHSPでは最大のファミリーである.HSP40ファミリーはJドメインと呼ばれる高度に保存された構造を有することから,またの名をJドメインタンパク質(JDPs)とも呼ばれる.HSP40はJドメインを介してHSP70と結合し,HSP70のATPase活性を刺激する補助因子(コシャペロン)として機能する.しかし,最近の研究では,HSP40/JDPsがp53の発現または活性制御にも関与することが明らかになってきている.そこで本総説では,我々が明らかにしたDNAJA1による変異型p53の安定化を介したがん転移促進機構について紹介するとともに,過去の文献を基に,HSP40/JDPsによるp53の発現と活性の制御について総括したい.
本論文は,非侵襲超音波温度計測機能を有する小型矩形空胴共振器加温システムの加温特性について記述している.著者らは,先行研究において,膝関節深部温熱治療を目的とした小型矩形空胴共振器アプリケータを開発した.
本研究では,本アプリケータの安全性の確保と治療効果の向上を目指すために,非侵襲的温度計測機能を有する温熱治療システムを開発した.開発した本システムの有用性を示すために,模擬骨を有する人体脚形状寒天ファントムを用いた加温実験および温度計測実験を実施した.本実験結果から,実測温度結果との誤差は,0.3 ℃程度であり,試作した本システムは,臨床応用に際しても,骨周辺での異常加温を発生することなく,関節腔内の目的部位を有効に加温治療できる可能性があることを実験的に明らかにした.