日本ハイパーサーミア学会誌
Online ISSN : 1881-9516
Print ISSN : 0911-2529
ISSN-L : 0911-2529
12 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 入來 正躬
    1996 年 12 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    体温調節反応では, 温度刺激の与えられた部位によって温度感受性が異なる.また温度刺激によってひき起こされた体温調節反応は同じ強さの温度変化で全身的に同時に起こるものではなく, さらに全身的に同一方向の応答を示さない場合もある.本総説では, 体温調節反応に占める役割りの部位による差について概観した.
    温度受容の部位差について : 1) 熱産生や熱放散の単位温度変化当たりの応答の大きさは, 核心温変化による方が皮膚温度変化によるより著しく大きい.2) 一方, 温, 冷覚は主として皮膚温に左右される.3) 頭部と躯幹部の温度変化でひき起こされる熱産生・熱放散の応答の大きさはほぼ同じオーダーにある.4) 皮膚での温度受容に部位差がある.さらに, 温・冷覚と発汗促進・抑制に及ぼす皮膚の部位による差は異なっている.
    体温調節反応の部位差について : 1) 温度刺激によって交感神経系および心血管系の地域性反応がひき起こされる.たとえば体表部と体内部で拮抗的応答がみられる.2) 冷刺激によるふるえのはじまりと強さは筋により異なる.3) POAHの片側温度刺激による自律性体温調節反応で左右差がみられるものがある.
    このような部位による差を, 人工的高体温を行うとき考慮する必要があろう.
  • 伊藤 公一, 古屋 克己
    1996 年 12 巻 1 号 p. 8-21
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    組織内加温法の一つとして有力視されているマイクロ波アンテナ刺入式の基礎について概説した.同軸線路との類推によってマイクロ波アンテナによる加温パターンの定性的把握を容易にし, 加温範囲に対する客観的評価方法の確立が重要であることを示した.マイクロ波アンテナでは, 組織内刺入長に依存せずアンテナ導体上の電流分布の範囲がアンテナの先端部分に限局され得ることが望ましく, そのための従来の工夫について, 工学的観点から説明を行った.また, アンテナの開発手順について概観するため, マイクロ波アンテナの一例として同軸スロットアンテナについて血流量を考慮した数値解析例を示し, 筋肉等価標準ファントムを用いたSAR推定実験について述べた.マイクロ波アンテナ刺入式においては, アンテナ・アプリケータ自体の開発に加え, 加温装置の特に電力分配システムが今後の重要な課題である.実用的なアンテナの開発には, 医療従事者と様々な分野の開発技術者らの密接な協力が不可決である.
  • 窪田 倭
    1996 年 12 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 治英, 藤沢 博亮, 土田 英司, 浦川 学, 金 茂成, 足立 秀光, 師井 淳太, 大本 芳範, 松田 忠義
    1996 年 12 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
  • 前田 廸郎, 貝原 信明, 福井 美香
    1996 年 12 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    切除不能症例, あるいは再発癌症例など, 外科的切除が不可能な症例に対する治療として, 近年, 温熱療法が癌の集学的治療の一環として臨床にとり入れられるようになってきている.そのような症例における癌の進展範囲は広汎, かつ体内深部におよび, 同時に臨床的に診断し得ない多数の微小転移巣をも伴っている場合が多い.これらに対処するには, 局所加温法では困難な場合が多く, 全身加温療法が合理的と考えられる.1979年にParksら により体外循環を応用した血液加温による全身温熱療法 (total-body hyperthermia;TBHT) が報告されて以来, 本邦においても, この方法を用いた進行癌, 末期癌の治療が行なわれるようになってきた.本稿では, その現状の分析と, これに基づくその適応について我々の考えを述べる.
  • 古屋 克己, 伊藤 公一, 葛西 晴雄
    1996 年 12 巻 1 号 p. 38-55
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    現在, わが国では, 電磁波を用いた外部加温法が主流である.そのようなハイパーサーミア加温装置の加温性能評価の指標として, ある面内で規格化されたSAR分布 [%] が広く用いられてきた.しかし, 刺入式アンテナのような組織内加温アプリケータにおいては, 規格化SAR分布の適用が困難である。そこで我々は, 評価指標としてSAR分布, 規格化SAR分布, 温度分布について, 本研究室で開発された同軸スロットアンテナを用い, その関連性について検討した.アンテナのカテーテル表面近傍位置からのSAR分布を, モーメント法を用いて解析的に導出し, その結果から, 生体熱輸送方程式を有限差分法を用いて解くことにより温度分布をシミュレーションした.筋肉等価標準ファントムを用いた実験結果は, 解析結果とよく一致した, 我々は, 温度分布による評価指標として, 熱耐性について考慮し, 加温開始時より10分後の治療温度領域を提案し, その上で, 血流量が与えられるならSAR値と治療温度領域に実用的な対応を確立できることを示した.これは, ファントムを用いた前臨床的試験等によって得られたSAR値により加温領域を予測し得ることを意味し, ハイパーサーミア従事者に, より有益な情報を与えると考えられる.
    組織内加温用マイクロ波刺入式アンテナの加温特性評価の指標として規格化SAR分布の適用が困難であることを本研究室で開発された同軸スロットアンテナを例にとって示し, これに代わる評価指標として加温開始時より10分後の43℃以上の温度領域を提案した.その上で, これまで定量的に評価されることの少なかったSAR値と温度上昇値の関係について, 血流量を考慮した温度についてのシミュレーションを行い, 両者の間に実用的な対応があることを明らかにした.これは, 加温対象の血流量が既知であるなら, 治療温度分布をSAR分布から推測することが可能であることを示しており, 従来の規格化SAR分布に比べて, より有効な情報をマイクロ波アンテナ刺入式ハイパーサーミアの従事者に与え得ると考えられる.
  • 大泉 幸雄
    1996 年 12 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    局所温熱と化学療法の併用の意義は, 局所効果の増強と遠隔転移の防止・抑制にある.BDF1マウス下腿部に移植されたルイス肺癌を用いて, (1) 温熱効果に有効な薬剤, (2) 温熱・薬剤の投与法, (3) 増強法として血管収縮剤の温熱化学療法への併用について, 腫瘍成長遅延日数と肺転移数を指標として検討した.薬剤は, ACR, DWA2114R, PEP, BLM, CPT11, MMCを用いた.結果 : (1) DWA2114R, PEP, MMCは, 43.5℃温熱との併用で相加以上の効果を示し, 同時に転移も抑制した.LD50の約30%の投与量と温熱の効果は, 放射線10Gy (MMC) ~16Gy (DWA) に匹敵した. (2) 投与量・温熱温度・投与時期・併用回数の影響は, 僅かであった.腫瘍内投与は腹腔内投与より効果が高かった. (3) エピネフリンの局所投与は, 温熱・抗癌剤 (PEP, DWA2114R) の効果を著しく増強し, 放射線30Gyに匹敵した.この療法は42℃以下でも増強効果が認められた.結論 : 血管収縮剤エピネフリンの局所投与によってin vivo実験での温熱化学療法の限界を征服することができた.血流抑制による (低酸素化・低pH化) 温熱化学療法の増強に大きな期待がもてる.
    表3は, 以上のまとめで, GDの効果を放射線線量に換算したものである.43.5℃45分の温熱は約1日のGDで放射線の4Gyに匹敵し, MMCやPEPとの併用は10Gy, 大量のDWA2114Rで16Gy, 三回の併用で16-17Gy, 腫瘍内投与で18-19Gyに達した.しかし, これ以上の温熱や薬剤の投与量もこの実験では限界ともいえる.血流抑制による温熱化学療法の増強効果は, 温熱化学療法の効果を倍増し (30Gy相当), まさにこの限界を打破するものと期待できる.腫瘍内血流抑制剤にはさまざまものがあるが, 果して臨床的に使えるのか, その効果は動物実験で得られたものと遜色ないかといった問題がある.エピネフリンの場合は局所投与に限られるが, 血流抑制の効果は確実であり, 臨床的にも応用可能である.
    また, その血管収縮効果は可逆性であり, 放射線照射は血流の回復時期に行うことが出来る.さらに効果を高めるには放射線との併用が考えられる.放射線照射直後に温熱を併用すると著しい効果があり, その場合にエピネフリンを併用すると治癒も得られている.照射2日後の温熱はもはや増強効果はなくなるが, エピネフリンを併用するとその増強は照射直後温熱の効果に近づいた.照射後においては腫瘍内血流の回復・再酸素化による温熱効果の低下も予想でき, 照射と温熱による腫瘍・正常組織の環境の変化についてさらに研究が必要である.
    温熱療法における化学療法は, 43.5℃以上の高温の場合は転移促進の可能性もあり, 転移抑制・防止の為に必要と考えられる.また, 局所効果を高める役割があるが, その効果を向上させるためには, (1) 温度感受性リポソーム, 腫瘍内・局所投与などドラッグデリバリーを工夫し, 腫瘍内薬剤濃度を上げること, (2) ヒドララジン, FAA, TNF, グルコース, エピネフリン等による腫瘍内血流低下・低pH化, あるいはアミロライドのような低pH化剤による温熱効果の増強, (3) 低酸素細胞増感剤, MMC, CDDP等の低酸素・低pH状態で効力を増す薬剤との併用, (4) さらには, 以上の薬剤と放射線との適当な組み合わせの研究が必要である (表7).
  • 坂口 善久, 冨崎 真一, 北村 薫, 大野 真司, 市吉 裕二, 前原 喜彦, 杉町 圭蔵, Joan M. C. Bull
    1996 年 12 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    温熱化学療法によって誘導されるアポトーシスと抗腫瘍効果との関係をin vitro, in vivoで検討した.培養細胞を用いたin vitroの検討では, adriamycinおよびcisplatinが腫瘍細胞にアポトーシス (DNA fragmentation) を誘導し, さらに温熱併用により両薬剤の殺細胞効果, アポトーシスともに増強され, 両者の相関が認められた.In vivoにおいては, 固型腫瘍を用いて, 温熱と5-fluorouracil (5-FU) のアポトーシス誘導作用および抗腫瘍効果を比較検討した.その結果, 温熱では治療4時間後にピークを示す急激なアポトーシス細胞の増加を認めたが, 5-FUの場合アポトーシスは緩徐に上昇し192時間後にピークとなった.また, 5-FU投与後のアポトーシスの変化は腫瘍体積の変化と相関し, 腫瘍の感受性と一致した.さらに, 温熱と5-FUとの併用により高いレベルのアポトーシスが誘導され, 抗腫瘍効果も増強された.温熱化学療法によるアポトーシスの誘導と抗腫瘍効果との相関が認められ, 温熱化学療法の効果発現におけるアポトーシスの重要性が示唆された.
  • 増永 慎一郎, 小野 公二, 光森 通英, 西村 恭昌, 平岡 真寛, 芥田 敬三, 永田 靖, 阿部 光幸, 高橋 正治, 徐 志堅
    1996 年 12 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    1987年6月から1988年6月まで, 京大病院放射線科で8MHz誘電加温装置を用いて温熱治療を施行した28症例 (肝腫瘍7例, 後腹膜腫瘍2例, 骨盤内腫瘍6例, 表在性腫瘍13例) に対し, 初回温熱治療中及び各温熱治療終了時に加温を中断する事によって得られた温度降下曲線から生体熱伝導方程式を用いて腫瘍内での温度降下率 (TCR) を試算した.この内9例では一連の温熱治療の前後でのCTの変化をも測定した.その結果, TCR値は肝腫瘍と骨盤内腫瘍で比較的大きく, 一連の温熱治療の前後でのTCRの減少率は骨盤内腫瘍で著しかった.さらにTCR値は大きな腫瘍で相対的に小さく, TCRの減少率は小さな腫瘍で著しかった.またTCRの絶対値よりもTCR値の変化の方が腫瘍内平均温度およびCT値の減少に良く関連性を示し, 腫瘍効果に対しても同様にTCR値の変化の方が良く関連した.他方, 腫瘍大きさ, 腫瘍の深さ, 腫瘍内平均温度, 併用治療の有無等の因子と腫瘍効果との関連を分析すると, 小さく浅在性の腫瘍に対し, 腫瘍内平均温度の高い温熱治療を数多く施行すると腫瘍効果が良好になる事も明らかになった.生存率については, 腫瘍効果がCR-PRであった症例の方がNC-PDであった症例よりも有意に高かった.以上より, 温度降下曲線から得られる腫瘍内のTCR値及びCT値も腫瘍効果に影響し得る有用な因子の一つである事が明らかになった.
  • 宮路 紀昭, 中條 政敬, 内山 典明, 荻田 幹夫, 竹下 強志, 中礼 久彦, 富吉 司, 大山 勝, 河野 一典
    1996 年 12 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 1996/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    頭頸部腫瘍の中でも予後の不良な下咽頭癌に対する術前RF温熱療法併用放射線治療を7症例に対して実施した.肉眼的な抗腫瘍効果は, 全例が奏効例であり, 原発巣は6例中3例に, 手術にて組織学的に腫瘍細胞の消失が認められた.また郭清リンパ節は, 7例中5例で組織学的に腫瘍細胞の消失を認めた。当科での過去の対照群6例の術前放射線治療例では, 原発巣, リンパ節とも同一症例の1例のみが, 手術での組織学的な腫瘍細胞消失例であった。以上より, 術前温熱併用放射線療法は放射線単独治療よりも有用な一次効果をもたらす方法と考えられたが, 今後は長期予後についての検討が必要である。
feedback
Top