デキストラン-マグネタイト複合体 (DM) は交流磁場中で発熱することが知られており, これを応用した細胞内あるいは血管内温熱療法が提案されている.本研究では生体内におけるDMの発熱能の時間的変化についてマウスを使った実験を行った.500mg-Fe/kgのDMをC3H/Heマウスに静脈内投与し, 直後および1, 2, 4, 7, 14, 21, 28, 56日後に屠殺し, 肝・脾を摘出した.摘出後直ちにこれらを100kHz, 24000A/mの交流磁場に5分間曝露し, 温度上昇を測定した.また, 各標本の鉄濃度も測定した.肝・脾ともに投与直後に最も高い発熱能を示した.発熱能は時間の経過とともに急激な低下を示し, 28日後には発熱は見られなかった.一方組織中の鉄濃度は不変であり, 発熱能の低下がDMの組織からの排出によるものではなく, 代謝によるDMの構造の変化によるものであることが示唆された.以上より, DMを使った温熱療法においてはDM投与から磁場印加までの経過時間も重要な因子と考えられた.
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