日本ハイパーサーミア学会誌
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19 巻, 1 号
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  • 渡辺 秀臣, 篠崎 哲也, 柳川 天志, 小林 勉, 佐藤 潤香, 鈴木 涼子, 高岸 憲二
    2003 年 19 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    骨悪性腫瘍の切除後における骨格再建に, 体外温熱処理骨が使われている.近年, 煮沸骨やオートクレープ処理骨に比べて, パスツール処理 (60-65度, 30分) 骨がより好ましい結果が得られることが報告された.実験結果から, パスツール処理は骨誘導能を維持させながら, 悪性腫瘍細胞を死滅させることが明らかとなった.臨床例の報告には, パスツール処理組織に関連する再発の報告は認めていない.合併症として, 癒合不全, 骨吸収や感染が見られた.パスツール法は, 現在のところ理想的な手術法とは言えないが, 他の再建術に見られる, 本質的な合併症, 例えば人工物の長期生存が低いこと, 同種移植に報告されるHIVなどの致死的な感染の危険や免疫異物反応をさけることができることを踏まえると, これらの再建術に優る方法と考えられる.
  • 小塚 洋司, 岡田 洋
    2003 年 19 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    誘導深部局所加温用の「高効率発熱微小インプラント」の開発について述べている.これは, 従来の材料定数の立場からではなく, 新たに微小コイルとマイクロチップコンデンサを組み合わせるという電気回路論の立場からの提案であって, 例えば, コイル直径6.5mm, 厚さ1.6mmのもので, 1分間で20℃以上の温度上昇が得られている.先に提案したMMICを用いたワイヤレス温度計と組み合わせれば, 温度計測と局所加熱の両機能を持つインプラントが構成でき, この基本技術を確立している.
  • 古倉 聡, 中川 修史, 朴 義男, 原 拓, 内藤 裕二, 吉田 憲正, 吉川 敏一
    2003 年 19 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    われわれは, 温熱療法の抗癌作用の増強を目的として腫瘍局所でフリーラジカル反応を強く導く方法を動物実験レベルで試みてきた.本検討では, 生体内での主要な抗酸化物質であるグルタチオンに着目し, グルタチオン合成酵素阻害剤のButhionine sulphoximineによる温熱療法の増感作用をラット肝癌モデルを用いて検討した.さらに, グルタチオンの低下による全身的副作用を抑える目的でButh-ionine sulphoximine投与後の腫瘍, 肝臓, 腎臓のグルタチオン含量を経時的に測定し, 有効かつ安全な温熱療法施行のタイミングについても検討した.Buthionine sulphoximineの前投与で温熱療法の抗癌作用は増強し, そのタイミングは, buthionine sulphoximineの動注24時間後が適切と考えられた.
  • 櫻井 洋至, 野口 孝, 伊藤 偉織, 阪井田 麻祐子
    2003 年 19 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    HSP70は虚血耐性の誘導に重要な役割を占めていることが報告されているが, その詳細なメカニズムは未だ明らかでない.本研究の目的はHSP70を誘導する効果を有するpreconditioningとgeranylgeranylacetone (GGA) の細胞保護効果について評価すると共にHSP70とシグナル伝達因子NF-κBの機能的関連からHSP70の細胞保護機序について検討することである.
    対象と方法.ウィスター系雄性ラットを用い45分間の温阻血再灌流を行うI群, 45分温阻血再灌流に先行して30分の虚血再灌流をpreconditioningとして行うP群, 45分阻血再灌流の前に7日間GGA200mg/kg体重を経口投与するG群の3群を分類.検索項目は生存率, 肝機能 (ALT, ヒアルロン酸), 肝微小循環 (レーザードップラ法), 組織所見 (電顕), HSP70, NF-κχB発現 (ウェスタンブロット法), NF-κB DNA結合活性 (ゲルシフト法), 分離肝細胞培養液中NO-2+NO-3産生 (Griess法).
    結果.I群の7日生存率は0%であるのに比し, P群では83%, G群では75%と有意に改善した.肝組織血流, 血清ALT値, ヒアルロン酸値や組織所見はI群において極めて不良であったのに比し, P, G群で有意に改善を示した.HSP70発現はI群に比しP, G群で有意に増強する一方, NF-Bの活性化ならびにNO産生はP, G群で抑制された.またP, G群では核内へ移行したNF-κBのDNA結合がI群に比し有意に抑制されていた.結語.PreconditioningやGGA投与によりHSP70が発現と共に虚血耐性が誘導された.その機序としてHSP70がNF-κBの活性化を抑制してiNOS発現に関連したNOの過剰産生を制御すると共に再灌流後6時間以内の内皮障害を軽減しeNOSによる微小循環を維持することが示唆された.
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