日本ハイパーサーミア学会誌
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19 巻, 2 号
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  • 水島 徹, 堤 信二, 星野 竜也, 富里 亘
    2003 年 19 巻 2 号 p. 67-78
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    様々な胃粘膜ストレスは, 胃粘膜細胞死を起こし胃潰瘍の原因となっている.我々はすべての胃粘膜によって, ネクローシスとアポトーシスの両者が誘導されることを見出した.さらに我々はゲラニルゲラニルアセトン, 及び低濃度エタノール処理による熱ショック蛋白質 (HSP) 誘導が, 様々な胃粘膜ストレスによるアポトーシス, 及びネクローシスから, 胃粘膜細胞を保護することを発見した.従って, ゲラニルゲラニルアセトンのような毒性のないHSP誘導薬は, 胃粘膜ストレスによる胃潰瘍に対し有効であると考えられる.
  • in vitroにおける加温特性および家兎VX-2腫瘍における抗腫瘍効果
    田澤 賢次, 和田 重人, 八塚 美樹, 斎藤 智宏, 田澤 賢一, 長野 勇, 五十嵐 功一, 古田 勲, 長江 英夫
    2003 年 19 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    デキストラン・マグネタイト複合体 (DM) はsubdomain粒子のコロイド状懸濁液であり, 交流磁界中で効率良く発熱することが知られている.DMを用いた誘導加温は, 従来の局所温熱療法の様々な問題点を克服しうる新しい方法として注目されている.臨床応用に際してより簡単に使用できることを目的とし, 携帯型の誘導加温装置の開発を行ったので本稿において報告する.
    新しい装置は200Vの交流電源 (最大出力3kW) で使用が可能である.サイズは0.4×0.4×0.4mときわめて小型で, 周波数は100~500kHzの範囲で連続的に調節することが可能である. DM懸濁液の濃度は過去の実験結果を参考に, in vitroの実験では14mg Fe/ml (0.25M), 28mg Fe/ml (0.5M), 56mg Fe/ml (1.0M) を使用した.結果として1) DMの温度はDMの濃度に比例して上昇, 2) DMの温度は磁場強度の二乗に比例して上昇することが明らかになった.さらにDM濃度28mg Fe/ml, 磁束密度5.2mTの実験条件下において, DMの温度上昇は周波数299kHzで約8℃/min, 418kHzで約14℃/minであった.これらの結果は従来の装置における加温特性と同等であった.さらに家兎VX-2腫瘍において本装置による抗腫瘍効果を評価した.本装置を使用した温熱療法により, 対照群 (n=3) と比較して治療群 (n=8) では有意な腫瘍成長阻害効果が確認され, 肺転移の出現率が減少していた.以上本研究から, 局所癌治療のための本携帯型加温装置の有用性が確認された.
  • 櫻井 洋至, 野口 孝, 伊藤 偉織, 阪井田 麻祐子
    2003 年 19 巻 2 号 p. 89-98
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    拡大肝切除後の残存肝障害が軽減される機序を解明することは臨床的に有意義であるが, 本研究の目的はpreconditioningやHSP誘導効果を有するgeranylgeranylacetone (GGA) 投与の細胞保護効果につき評価しシグナル伝達因子NF-kBとの関係よりHSP70の細胞保護効果を明らかにすることである.
    方法 : ウィスター系雄性ラットを用い90%肝切除モデルを作成前処置なしのN群, 肝切除術48時間前にpreconditioningとして30分の肝温阻血再灌流を行うP群, 肝切除前7日間GGA 200mg/kg体重を経口投与するG群を分類.生存率, HSP70やNF-kB発現 (ウェスタンブロット法) ならびに残存肝細胞のアポトーシス (DNA fragmentation assay) につき検索.
    結果 : 各群の7日生存率は N群0%, P群40%, G群62.5%.90%肝切除後のHSP70発現はP群で術前値の5倍, G群で7倍の発現増強を認めた.NF-kB p65発現はN群に比しP, G群では有意に低値に留まった.残存肝細胞のアポトーシスはP, G群に比しN群で有意に高度であった.
    結論 : 広範肝切除術前の肝阻血 (preconditioning) やGGA投与は残存肝細胞のviabilityを維持し, アポトーシスを制御して術後残存肝障害を軽減する.その機序としてHSP70発現がNF-kB発現を抑制し炎症反応の過剰な応答を制御している可能性がある.
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