正電荷リポソーム包埋型マグネタイト (MCLs) は交流磁場中で発熱することから, 細胞内加温法のための発熱素子として利用されている.しかし, 投与後のMCLsの生体内における臓器分布は未知である.本研究では, 生体内におけるMCLsの臓器分布と発熱能の経時的変化についてマウスを用いて調べた.MCLsを腹腔内投与した6日後に, 投与した50%量のマグネタイトが肝臓に, 3%が脾臓に集積した.投与14日後には, MCLsの肝臓, 脾臓における蓄積は見られなかったことから, 細網内皮系によってMCLsが分解されたことが示唆される.次に, MCLsをMM46腫瘍内に投与し, 経時的に腫瘍, 肝臓, 脾臓を摘出して交流磁場照射による発熱能を調べた.腫瘍においては, マグネタイト量はday 0で最高になり, day 6まで減少した.温度上昇はマグネタイト量にほとんど付随して減少したが, day 1にピークが見られた.一方, 肝臓と脾臓では温度上昇はほとんど見られなかった.これらの結果は, MCLsを投与して1日後以内に交流磁場を照射することが最も効果的な治療プロトコールであり, このプロトコールでは正常組織は加温されないことを示唆している.
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