正電荷リポソーム包埋型マグネタイト (MCL) は交番磁場中で発熱することから, 細胞内加温法のための発熱素子として利用されている. 今までに, 様々なガンの移植モデルで高い治療効果が得られているが, 全て可移植性腫瘍における検討であり, 実際のガン患者の状態に近い遺伝性腫瘍を用いた検討は行っていない. 本研究では, metallothionein-I/
retを導入したトランスジェニックマウスの遺伝性メラノーマに対するMCLを用いた温熱療法の抗腫瘍効果を調べた. MCLを5-7mm径の腫瘍に投与して, 交番磁場を30分間照射した. 腫瘍温度は5分で45℃に上昇し, そこからは磁場強度を調節することで45℃に一定に保った. 温熱療法は24時間間隔で3回繰り返して行い (repeated hyperthermia, RH), RHは腫瘍が完全に退縮するまでに行った. 腫瘍の完全退縮は1回から3回のRHを行うことで達成された. さらに, RHで完全退縮した腫瘍は, 治療120日後まで再増殖せず, また, 有意な生存の延長がみられた. これらの結果は, MCLを用いた温熱療法はメラノーマに対する強力な治療法になることを示唆している.
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