日本ハイパーサーミア学会誌
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22 巻, 1 号
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Reviews
  • 丹下 裕, 斉藤 義明, 金井 靖, 堀 潤一
    2006 年 22 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    多くの癌温熱治療用加温装置が開発されている. しかしながら. 非侵襲な癌温熱治療用加温装置は, 人体表面近傍のみの加温が可能である. 現状では, RF波を用いて深部に位置する癌を選択的に加温することは不可能である.
    局部加温の可能性を持つ装置を開発することが望ましいが, この目標を達成することは, 現状の技術では不可能である. それゆえ, 我々は, 人体深部までを一様に加温する装置を開発することを目標とした.
    この論文では, 立体空洞共振器を用いた深部癌温熱治療用RFシステムの基礎的な加温特性について述べる. 初めに, 基本加温特性を調べるためにMaxwellの方程式と熱伝導―熱伝達方程式を解いた. 次に, 人体筋肉の電気特性を模した誘電体ファントムを使用し, 加温実験を行った. 実験結果と計算結果を比較したところ, 深部加温できる傾向は一致した. すなわち, 深部癌温熱治療用加温装置としての可能性を持つことが分かった.
  • 小島 周二, 早瀬 央健, 高橋 希之
    2006 年 22 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    まずはじめに, マウスに0.5Gyのγ線を全身照射し, 脾細胞内glutathione (GSH) 量の変化を検討した. 細胞内GSH量は照射後2時間より増加, 4時間前後に最大値を示し, その後, 低下, 12時間以降は照射前とほぼ同じ値を示した. 一方, NKおよびADCC活性は, いずれも照射4~6時間後に有意な活性上昇が見られ, GSH量の変動パターンと良く一致していた. 次に, 低線量γ線照射のエールリッヒ固形がん増殖に対する抗腫瘍効果 (腫瘍免疫) を検討すると, 非照射群と比較し, 照射群 (0.5Gy×4times) では有意にがんの増殖が抑制された.
    この機構として, 低線量γ線によるサイトカインバランスのTh1タイプへのシフトによる細胞性免疫の亢進が示唆された.
Original Contributions
  • 小野 博史, 安藤 聡志, 鈴木 友昭, 門前 一, 天野 守計, 寺井 薫, 高橋 徹, 長谷川 武夫
    2006 年 22 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    42.5℃以上の処理温度を用いたハイパーサーミアと化学療法とを併用することで抗腫瘍効果を増強できることは既に知られている. 本研究では, それ以下の処理温度であるマイルドハイパーサーミア (以下, MHT) との併用でも抗腫瘍効果の増強がみられるかを検討した. 腫瘍成長抑制効果では, 化学療法単独で使用するよりもMHTと併用した方が1.3倍腫瘍の成長を抑制し, 病理学的にも細胞損傷の増大が認められた. さらに40℃から44℃加温処理による腫瘍内の血流の変化をみてみると, MHTの温度範囲内において血流増加が確認できた. また, Cisplatin投与後にMHTを行うと腫瘍内のCisplatin濃度が上昇した. これらより, MHTと化学療法の併用による抗腫瘍効果の増強は, 腫瘍内の血流が増加し, 抗がん剤が腫瘍内に多く取り込まれることに起因するのではないかと考えられる.
  • 浦川 豊彦, 奴久妻 美智子, 大塚 浩平, 川田 学, 柴崎 哲, 長谷川 貴史, 片本 宏
    2006 年 22 巻 1 号 p. 35-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    我々は温水浸漬法によるハイパーサーミアのために新たに高精度温浴装置 (0.1℃単位で設定, 温度誤差±0.05℃) を開発した. より正確な温度の温水を使い直腸温を間接的にコントロールすることで, 全身麻酔下のイヌとネコの実験的な一回の全身加温を行った. まず高温による傷害を調べた. 41.0℃から0.5℃刻みで43.0℃まで2時間の加温実験を行った. 傷害はイヌとネコとも42.5℃から出はじめ, 43.0℃では極めて重篤な症候を呈し懸命な治療にもかかわらず死亡例が出た. 特有な臭いの粘液便, 血便, 肝酵素値の異常上昇, 各種臓器での出血である. 特に今までに報告の無い顆粒球の変性・壊死像が加温最中から顕著に増加し, 加温後3日目に正常に戻った. この急激な顆粒球の崩壊による全身での活性酸素やエラスターゼなどの放出と腸管バリアーの破壊が傷害発生の機序の一つになっている可能性が示唆された. 加えて高温によるHSPsの分解も42.5℃から検出され, 今回HSP90とHSP70 (Hsc73) の分解が加温後1~3日目まで確認された. そこで生体への侵襲性と安全性に考慮し, 至適加温温度を直腸温41.5℃として加温し免疫に与える影響を調べた. 加温群 (41.5℃で2時間維持, 合計3.5時間), 平熱領域加温群 (38.3~39.3℃で3.5時間維持), それに対照群として全身麻酔だけを施した非加温群 (3.5時間) の3グループとした実験を行った. 平熱加温群では2週目には顆粒球数が20%程度減少し, リンパ球数は加温直後から上昇をはじめ2週目では2倍以上に上昇し, 4週間程度で元のレベルに戻った. 直腸温41.5℃2時間加温群では, 加温直後に一過性のリンパ球減少と3日目に顆粒球数の一過性の上昇が見られたものの, 2週間目でリンパ球数が2倍弱上昇した. 加温後2週目のCD4, CD8陽性リンパ球数も著明に増加した. HSP70 (Hsp72) の発現量は41.5℃加温群で加温中と加温後3日目の二峰性の上昇を示す個体が存在したが, 対照群と平熱加温群では変化しなかった. PHAを使った遅延性過敏症皮内試験では3日と7日目に接種, その後24時間目と48時間目の判定で, いずれも41.5℃加温群が最も高い値を示し, 次は平熱加温群であった. ネコの場合もイヌとほぼ同様の結果を得た. これらの正確な加温による動物実験の結果から, 直腸温41.5℃の加温はもちろん平熱レベルで数時間の加温でも十分免疫を高めることが分かった. 反対に, わずか数時間の実験的な2~3℃の低体温は顆粒球増多とその後2週間にわたる免疫低下を来たすことが明らかになった.
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