東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
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  • 曽田 直樹, 池戸 康代
    セッションID: O-01
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】立位姿勢制御は、立ち上がるや歩くなどの動作において必要不可欠な運動機能であり、高齢者において立位姿勢制御能力の低下は、転倒リスクが高くなる要因の一つとされている. 立位姿勢制御は足関節周囲筋との関連について多くの報告がされている.Gatevらは足圧中心(COP)と筋活動量との観点からCOPの前方への移動が下腿三頭筋の伸張反射を誘発し、姿勢のコントロールを行っていると報告しており、Miyoshiらは下腿三頭筋の中でも特にヒラメ筋が重要であるとしている.Horakらは、前後方向の外乱に対して、前方へ揺れた身体を下腿三頭筋が引き戻し、後方への対応は前脛骨筋が行うことを報告している.一方で立位姿勢制御における股関節周囲筋の重要性が報告されている.Mahyarらは、股関節屈筋や伸筋の疲労が足関節周囲筋の疲労より姿勢の安定性に関与し、特に前額面上においてその特徴が明らかであると報告している.またWinterらにより側方動揺に対する反応として股関節周囲筋の関与が報告されている.このように立位姿勢制御において前後方向には足関節周囲筋、左右方向には股関節周囲筋の重要性が徐々に明らかになってきており、足関節周囲筋では、特にヒラメ筋が前方への、前脛骨筋が後方への姿勢コントロールに関与しているとされている.しかし、股関節周囲筋に関して個々の筋を詳細に検討している研究はあまりみられない.その要因としてこれまでの姿勢制御に関する研究では、筋疲労や筋活動(表面筋電図)を指標とした研究が多く、筋疲労では粗大筋力での評価になってしまい、個々のどの筋が関連しているのか特定できないことや表面筋電図では表層の筋の情報しか得ることができなかった.しかし、近年、超音波画像診断装置(以下超音波)は、表層筋に加えて従来その活動状態の確認が困難であった体幹筋や深部筋の形態変動を観察する手段として用いられるようになった.また超音波で測定する筋厚の信頼性や妥当性、筋力との関連性が報告され、超音波が個々の筋を評価するための有用な手段の一つと考えられるようになった.そこで我々は、超音波を用いて、股関節周囲筋をはじめとする下肢筋の筋厚と立位姿勢制御との関係について調査することを試みた. 【方法】 対象は健常成人女性26 名とした.対象者には、本研究の趣旨を説明し文書にて同意を得た.立位姿勢制御能力として静的姿勢制御、動的姿勢制御の2通りの課題で評価した.静的姿勢制御課題では、重心動揺計(ANIMA社製)を用い、開眼での20秒間の両脚立位および片脚立位時の総軌跡長と実効値面積を測定した.両脚立位では、両上肢を体側に沿わせ、両足部内側間を20cmとし、視点は前方を注視させた.片脚立位では右足で計測し、右足の位置は重心動揺計の中央部にあわせた.なお両上肢は体側、視点は前方を注視させた.動的姿勢制御課題では、不安定傾斜板(Dyjoc board plus)を用い、20秒間の開眼での両脚立位および片脚立位時の前後・左右平均傾斜角度変動域(以下角度変動域)を測定した.測定肢位は静的姿勢制御課題と同様とした.なお角度変動域とは、計測中に傾斜した角度の絶対値を平均した値を表している.下肢筋の筋厚は、超音波を用い、股関節周囲筋として大殿筋、中殿筋、小殿筋、膝関節周囲筋として大腿二頭筋、大腿直筋、外側広筋、足関節周囲筋として前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋を測定した.統計学的分析には、静的姿勢制御課題、動的姿勢制御課題と股関節・膝関節・足関節周囲筋の筋厚との関連性についてPearsonの相関係数を用い検討した.有意水準は5%とした. 【結果】股関節周囲筋の筋厚は1.6cm~2.9cmであり、大殿筋が最大で小殿筋が最小であった.膝関節周囲筋の筋厚は2.2cm~4.4cmであり大腿二頭筋が最大で外側広筋が最小であった.足関節周囲筋の筋厚は1.3cm~2.4cmでありヒラメ筋が最大で前脛骨筋が最小であった.静的姿勢制御課題と下肢筋厚の関連では、両脚立位・片脚立位ともに有意な相関は認められなかった.動的姿勢制御課題と下肢筋厚との関連では、両脚立位において小殿筋筋厚と左右の角度変動域との間に有意な相関が認められた(r=‐0.54).また片脚立位においても小殿筋筋厚と左右の角度変動域との間に有意な相関が認められた(r=‐0.44).その他の筋厚と動的姿勢制御課題との間には有意な相関は認められなかった. 【考察】動的姿勢制御課題において小殿筋筋厚が左右の角度変動域との関連性を示した. 小殿筋は、骨頭を側方から臼蓋に押す力(支点形成力)や姿勢保持に重要な遅筋線維が多いという報告がされている.また生理学的に深部筋は、筋紡錘などの固有受容器が多く存在するとされ、伸張反射など固有受容器によるフィードバック情報が姿勢制御に介入している可能性が考えられる.
  • 高木 佑也, 久保田 雅史, 松浦 佑樹, 吉岡 直美, 西前 亮基, 谷口 亜里沙, 高本 伸一, 中瀬 裕介
    セッションID: O-02
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】 高齢者では,若年者と比較しバランス能力が低下し,転倒との関連が指摘されている.高齢者は,転倒により骨折などの損傷を受けやすく寝たきりの原因となることが多いため,高齢者の転倒を予防することは重要な課題である.これまでに,我が国における在宅生活高齢者の転倒関連因子として年齢,性別,過去の転倒経験,既往歴,筋力,歩行速度,バランス能力などが報告されている. 一方,歩行比とは歩幅を歩行率で除した値である.日常生活における成人の歩行は,速度の変化に関わらず歩行比は一定であることが報告されている.また,歩行比は高齢者やパーキンソン病患者で減少することが知られており,体幹下肢運動年齢とも相関すると報告されている.以上のように,歩行比は歩行能力の重要な指標の一つであるが転倒歴との関連性ついての報告は我々が探した限り無い.また高齢者は後方へ転倒することが多く,前方移動能力のみでなく後方移動能力を評価することが重要であるとされている.本研究では高齢者の転倒歴が前進及び後進歩行の歩行速度や歩行比と関連を有するかを明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象は60歳以上の地域在住高齢者で,当院に外来リハビリテーション目的に来院した40名(男性24名,女性16名,平均年齢75.3±7.8歳)である.なお,過去1年以内に脳血管障害,心疾患の既往がある者,歩行障害により下記の検査遂行が困難な者は除外した.また,全対象者に本研究の目的,方法を口頭で説明し同意を得た. 転倒は「故意によらず身体バランスを崩し,膝より上の身体の一部が地面や床に触れた場合」と定義し,過去3ヵ月間における転倒経験の回数を聞き取りにて調査した.歩行路は10mの直線歩行路とし,歩行速度を定常状態にするため前後に各3mずつの助走路を設定した. 測定は前進歩行及び後進歩行を至適歩行速度と最大歩行速度でそれぞれ2回ずつ,計4回の歩行を実施し,歩行時間と歩数を測定した.最大歩行の際には「できるだけ早く歩いてください」との教示で統一した.なお,歩行は裸足での歩行とし全例で歩行補助具を使用せず行った.歩行時間の測定にはデジタルストップウォッチを用いた. 歩行パラメーターとして,測定した所要時間,歩数,歩行距離(10m)より,歩行率{歩行率(steps/min)=歩数(steps)/所要時間(min)},歩行速度{歩行速度(m/min)=歩行距離(m)/所要時間(min)},歩行比{歩行比(m/steps/min)=歩幅(m)/歩行率(steps/min)}を算出した.統計学的解析は転倒経験群と転倒非経験群との比較には対応のないt-testを用い,転倒経験回数と各評価項目との関連はSpearmanの順位相関係数を用いた.有意水準は5%とした.  【結果】 転倒経験の調査より,転倒経験群は13名(77.7±8.8歳),転倒非経験群は27名(74.2±7.3歳)であった.歩行速度と歩行比は、前進及び後進、至適歩行速度及び最大歩行速度のすべてにおいて転倒経験群と転倒非経験群の間で有意差を認めた.歩行率においては転倒経験群と転倒非経験群に有意差は認めなかった.転倒経験回数の相関に関しても,歩行率以外の全てにおいて群間に有意差を認めた. 【考察】 本研究の結果より,歩行速度のみでなく,歩行比も前進歩行及び後進歩行ともに転倒経験の有無に関連することが明らかとなった.歩行速度は被験者の努力によって容易に変化しうる一方,歩行比は特別な指示を与えなければほぼ一定である可能性が高いことから,歩行比は,転倒のリスクを簡便に評価するのに適した歩行能力評価の一つであるかもしれない.今後,対象者を増やし,各種疾患との関連などを明らかにしていく必要がある. 【まとめ】 本研究では,地域在住高齢者の転倒歴と各歩行パラメータとの関連を検討した.前進及び後進歩行の歩行速度のみでなく,歩行比との関連も認められた.
  • 相本 啓太, 上田 誠, 太田 進
    セッションID: O-03
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】膝立ちや膝歩きは立位と比べ身体重心が低く、足関節の影響を除外するという特徴を持っている。また膝関節を屈曲した状態で股関節をコントロールする点で、選択的な股関節伸展を促通するための有益な姿勢であるともされており、教科書的にも「膝歩き」が運動療法の一つとして紹介されている。しかしその動作特性に関する報告は少ない。我々は膝歩きの運動特性の解析を目的に研究を行い、第25回東海北陸理学療法学術大会にて膝歩きの骨盤の可動域と筋活動量、重心移動についての報告を行った。今回は膝歩きにおける胸部・体幹の可動域についての動作特性を明らかにすることを目的とした。
    【方法】対象の健常者24名(22±2歳)に3次元動作解析装置用マーカーを身体の35ヶ所に貼付し、歩行、膝歩きを3回ずつ計測した。歩行と膝歩きはケーデンスを統一し、右側の初期接地から再び右側を接地するまでの1 歩行周期を100%に換算した。歩行時と膝歩き時の胸部・体幹の可動域の変化量を解析し比較を行った。なお、胸部は絶対座標、体幹は胸部と骨盤角度の相対値で表記した。統計処理には対応のあるt検定を使用し、有意水準は5%とした。本研究は名古屋大学医学部生命倫理委員会の承認を得て、対象者には研究の概要、利益・不利益、個人情報の保護について十分な説明を行い、同意を得た後に実施した。
    【結果】可動域の平均変化量±標準偏差は、胸部においては歩行では前後傾3.4±1.0°、側屈3.1±1.3°、水平回旋6.0±2.3°、膝歩きでは前後傾4.2±0.9°、側屈5.0±2.2°、水平回旋9.6±3.5°であり、前後傾、側屈、水平回旋で膝歩きの方が有意に大きかった。 体幹において歩行では前後傾3.4±1.1°、側屈13.0±3.6°、水平回旋12.8±3.4°、膝歩きでは前後傾8.4±1.8°、側屈11.7±3.7°、水平回旋22.3±4.3°であり、前後傾、水平回旋角度で膝歩きの方が有意に大きかった。側屈角度では有意差はなかった。
    【考察】先行研究により、膝歩きは歩行と比べて骨盤前後傾・水平回旋角度が有意に大きく、側屈では歩行の方が有意に大きく、左右への重心移動の大きさは膝歩きの方が有意に大きいと報告している。
     胸部前後傾は骨盤前後傾と反対方向への動きをしていたため、増大した骨盤の前後傾と反対に動くことでバランスを保っていることが考えられた。 胸部側屈可動域の増大については左右方向への重心移動が大きく、バランスを保つために立脚側と反対側への側屈が見られると考えられた。水平回旋可動域増大については骨盤水平回旋角度が膝歩きでは有意に大きく、それに対応する形で反対方向の回旋角度が有意に大きくなっていることが考えられた。
     体幹の関節可動域については胸部と比べて骨盤の角度の方が大きく動いているため、骨盤の動きと類似していた。
     歩行時の体幹・骨盤の動きは下肢の働きにともなって二次的に起こるとされており、胸部の動きは下肢に近い骨盤の影響を強く受けている。膝歩きでは歩行と比べて骨盤の可動域、左右への重心移動距離が大きくなっており、胸部の可動域も有意に大きくなったことが考えられた。
     膝歩きは高齢者など歩行時の胸部・体幹可動域が小さい患者に対して、胸部・体幹の動きを促す運動として適している可能性がある。
    【まとめ】歩行と比べて膝歩きは、胸部において前後傾、側屈、水平回旋の可動域が有意に大きく、体幹において前後傾、水平回旋の可動域が有意に大きい。その要因としては膝歩き時の骨盤の可動域が大きいこと、左右への重心移動が大きいことが考えられた。
  • 浦川 将, 坂井 奈津子, 高本 考一, 堀 悦郎, 石川 亮宏, 小野 武年, 西条 寿夫
    セッションID: O-04
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】 リハビリテーションの臨床場面において、患者さんや他の医療スタッフとコミュニケーションを成立させることは、よりよい医療実現のためには必要不可欠である。広汎性発達障害は、他者とのコミュニケーション能力や、社会性の獲得といった人間の基本的な機能の発達遅滞を特徴とする発達障害であり、自閉症やアスペルガー症候群が含まれる。このような発達障害により、目と目を見つめ合うことや、顔の表情変化から相手の気持ちを汲みとることが困難となることが多い。多くの場合、3歳児までに発達障害に気付くとされるが、アイコンタクトによる認知機能の発達過程と、乳児の脳活動に関してはほとんど報告がない。 本研究では、乳児への認知課題として「いない・いない・バー」を呈示し、アイコンタクトの有無による乳児視線挙動と前頭前野脳活動の変化を比較解析した。 【方法】 対象は5-8カ月の乳児8名とし、母親にも実験に参加して頂いた。椅子に座った母親の膝の上に乳児を保持させ、実験中の体動や上肢の動きを制御した。実験開始前に、視線認識解析用アイトラッカーおよびモニターを、乳幼児から50-60 cm離れた位置に設置し、乳児にモニター画面を固視させることにより、視線の位置をキャリブレーションした。その後、乳児の前頭部に乳児頭部測定用のヘッドパッド(島津製作所製)を装着し、近赤外線分光装置(島津製作所製)により前頭部の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)濃度変化を測定した。認知課題は、乳幼児から80-90 cm離れた位置に実験者(すべての実験を通して同一の女性)が座り、両手で顔を隠した状態で「いない・いない」の3秒間の後、両手を顔の左右に広げるとともに「バー」と5秒間実験者の顔を呈示した。「いない・いない・バー」の呈示は、実験者の背後に設置したスピーカーから、録音した音声を出力した。「バー」の呈示時には、実験者が乳児の目を注視する(アイコンタクトあり)場合と、実験者が右もしくは左斜め前方30度方向に視線をずらす(アイコンタクトなし)場合の2条件を設定した。30-60秒間の安静後、再び「いない・いない・バー」を呈示し、再び安静とする試行を10-30回行った。本研究は富山大学倫理委員会の承認を得て、倫理規定に基づいて行った。 【結果】 乳児の視線解析では、「バー」呈示期間中に乳児がどこを見ていたかを評価した。全課題の解析では、顔の領域を見ている時間が長く、特に相手の目の領域を注視している時間が48%を占めていた。さらに、アイコンタクトのある場合は平均1.75秒、アイコンタクトのない場合は平均1.10秒と有意にアイコンタクトがある場合に相手の目の領域を見ている時間が長かった(P < 0.05)。脳活動は、アイコンタクトのない場合は、前頭前野の活動がみられないのに対し、アイコンタクトがある場合は有意に前頭前野の活動(Oxy-Hb濃度変化)が上昇した(P < 0.001)。 【考察】 本研究における課題「いない・いない・バー」は、日本だけでなく世界中で行われている乳幼児とのコミュニケーション方法のひとつであり、とくに母子間で頻繁に行われている。本研究により、コミュニケーションをとろうとする側(実験者)から積極的に注視することにより、受けとり側(乳児)とのアイコンタクト効果が増強することが判明した。この時、乳児の脳では、前頭前野最前部の活動が亢進した。コミュニケーションに重要とされる心の理論とは、他者の心の動きを推し量り、他者が自分とは違う心を有していることを理解する脳機能のことである。この心の理論に関与する脳領域の一つが前頭前野であり、特に最も吻側に位置する前頭極は、自己の内的な心の表象を行動に移行させる脳領域とされている。本研究においてアイコンタクト時に同領域の活動が亢進したことは、乳児においてもアイコンタクトに関与する脳領域がすでに機能しており、コミュニケーション成立のために前頭前野の活動が重要であることを示唆する。さらに、これらアイコンタクトを伴うコミュニケーションは乳児の言語機能の発達を促進することが報告されているが、本研究結果よりアイコンタクトが前頭前野を賦活することに関係があると考えられる。 【まとめ】 リハビリテーション遂行に重要なコミュニケーションの発達に関わる脳領域を明らかにするため、乳児被験者を用いて視線行動および脳活動を解析した。乳児においても、コミュニケーション時の実験者の注視によりアイコンタクトが増強し、さらに前頭前野の活動が増大した。より良いリハビリテーション医療のためには、とくに乳幼児など低年齢児を扱う場合は、目と目を合わせてコミュニケーションをとることが重要であると考えられる。
  • 藤田 大輔, 久保 裕介, 西田 裕介
    セッションID: O-05
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】
     一段階運動負荷試験における酸素摂取量の立ち上がりの速さは,τV(dot)O2と呼ばれ,このτV(dot)O2を制御する因子は酸素供給系と酸素利用系に分けられている。τV(dot)O2を制御している因子は,酸素供給系が第一制御因子となり,ある境目(tipping point)を超えると酸素利用系が制御因子となる“tipping point theory”によって説明がなされている。τV(dot)O2の制御因子は,概ね健常者では,酸素利用系が制御因子となり,高齢者や心疾患患者などでは酸素供給系が制御因子となることが報告されている。しかしながら,先行研究では,健常者において酸素供給系が制御因子とならない条件として高強度の前運動を挿入した際,τV(dot)O2は30秒を境目に加速する群と加速しない群に分けられたと報告している。そのため,健常者においても酸素供給系が制御因子となり得ることが示唆されていることから,τV(dot)O2の制御因子の評価を誤る可能性がある。そのため,τV(dot)O2の遅れを解明する際にtipping pointを明確にする必要がある。本研究では,最大下運動負荷試験時のpeak HRの結果から,各対象者が目標心拍数に達している群(Achieved 群)と達していない群(Non-achieved群)の2群に分け,τV(dot)O2の制御因子について検討した。
    【方法】
     対象は,健常成人男性18名(年齢:20±1歳,身長:170.1±6.0cm,体重:63.4±6.8kg)とした。測定機器は,自転車エルゴメータと呼気ガス分析装置,近赤外線分光法装置を使用した。データ測定は5日間実施した。まず,1日目には最大下運動負荷試験によって嫌気性代謝閾値(AT)と最高酸素摂取量(peak V(dot)O2)を測定した。運動終了基準は,Borg scale(原型)にて18となった場合もしくはカルボーネンの処方心拍数における最大心拍数の85%に達した場合,異常心電図が検出された場合とした。次に,2-5日目にはATとpeak V(dot)O2時の自転車エルゴメータのWatt数を足して2で割った負荷量を前運動として6分間挿入し,20Wに設定した6分間の下肢クランク運動後に,AT80% Wattにて6分間の一段階運動負荷試験を実施し,τV(dot)O2とτDeoyHbを測定した。群分け方法は,運動終了基準である目標心拍数の平均値から標準偏差の3倍を引いた値をカットオフ値として算出した。この際,目標心拍数に達している場合をAchieved 群とし,達していない場合をNon-achieved群とした。そして,各群におけるτV(dot)O2とτDeoxyHbとの間の相関関係をPearsonの積率相関係数によって求め,各群の変数の比較には,独立したサンプルのt-検定を用いた。統計学的有意水準は,危険率5%未満とした。なお,本研究は,聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認のもと実施し,対象者には口頭並びに書面にて同意を得た。
    【結果】
     最大下運動負荷試験におけるpeak HRの平均値は182.0±2.0bpmとなり, 2群に分ける際の基準となるpeak HRは176.0bpmとなった。各群におけるpeak HRとτV(dot)O2,τDeoxyHbの平均値は,Achieved群では180.0±3.0bpm,32.2±6.8秒,14.8±4.1秒,Non-achieved群では161.0±14.0bpm,35.9±4.5秒,12.7±3.3秒となり,群間での比較では,peak HRに有意な差を認めたが,その他の変数に有意な差は認められなかった。次に,各群におけるτV(dot)O2とτDeoxyHbとの相関係数は,Achieved群では0.73(p<0.05)となり,Non-achieved群は-0.28(p=0.47)となった。
    【考察】
     本研究の結果より,176bpmを境目として群分けをしたAchieved群とNon-achieved群では,τV(dot)O2に差はないのにもかかわらず,τDeoxyHbの反応性が異なることが明らかになった。つまり,peak HRが176bpm以上の場合においてτV(dot)O2とτDeoxyHbは正の相関関係があったことより,τV(dot)O2を制御している因子は酸素利用系であると考えられるが,peak HRが176bpmより下回る場合には,酸素利用系がτV(dot)O2を制御せず,酸素供給系によって制御されていることが示唆された。また,Achieved群とNon-achieved群でτV(dot)O2に差がなかったことは,Non-achieved群において毛細血管レベルの酸素供給の減少によって酸素利用系が賦活したためであると考えられる。
    【まとめ】
     本研究の成果は,最大下運動負荷試験におけるpeak HRが176bpmを境目にτV(dot)O2の制御因子が異なることを示したことである。この成果によって,最大下運動負荷試験におけるpeak HR=176bpmをtipping pointの1つとして示唆することができ,τV(dot)O2の制御因子を解釈する際の精度を高めることができたと考えられる。
  • 小関 裕二, 藤原 雄大, 熊嵜 洋三, 曽我 竜佑, 水鳥 美希, 塚本 祐司, 岩田 全広, 加藤 ふみ
    セッションID: O-06
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】糖尿病患者は、血糖のコントロールを行い、合併症の発生を予防することが重要である。代謝改善のための運動療法は、軽度から中等度の運動負荷にて、20分以上の持久力訓練やレジスタンストレーニングの実施が推奨されている。しかし、糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者の場合は、透析治療による時間的制約のため、代謝改善のための運動療法を実施することは、困難なことが多い。今回、我々は糖尿病性腎症透析患者に対し、透析中の運動療法(以下DHDex)を実施し、代謝における影響及び、下肢筋力・持久力の変化について調査を行った。
    【方法】対象は平成21年9月から平成23年6月の間に、DHDexを実施した21名のうち、2型糖尿病を原疾患とする血液透析患者8名、男性7名、女性1名とした。平均年齢は67.2±4.4歳、平均透析期間は5.3±4.4年であった。混合型インシュリン使用者4名、経口血糖降下薬使用者0名であった。なおコントロール不良な高血圧患者、中枢性疾患や整形疾患により、運動実施が困難な患者、活動期の糖尿病性網膜症患者、重度心疾患患者、運動実施期間にインシュリン及び経口血糖降下薬の種類や投与量が変更になった患者は対象から除外した。下肢筋力はμTasMF-01を使用し、等尺性膝伸展筋力の測定を行った。左右膝伸展筋力の平均値を体重で除し、体重比を求めた。持久力検査としては、30m区間を往復歩行する非激励型の6分間歩行テスト(以下6MD)を行った。なお6MD検査に同意されなかった患者については、実施しなかった。DHDexは週3回実施した。透析開始1時間後にベッド上にてストレッチを行い、重錘負荷及びセラバンドにて下肢筋力強化を20セット実施した。持久力訓練としては、ベッドバイクを1時間実施した。運動負荷量は自覚的運動強度の「楽である」の強度とし、運動中は何度でも休憩可とした。運動負荷にて重症不整脈、虚血性変化が心配される患者については、運動療法導入時に心電図モニター管理にて運動を行った。またDHDex中に胸部の痛み、めまい、呼吸困難が出現した場合は、近くの医療スタッフに通知するように指示した。リスク管理については、「心血管疾患におけるリハビリテ-ションに関するガイドライン」に示されている運動負荷の中止基準を適用した。運動介入前と3ヶ月経過時に運動機能検査、血液検査を行い、比較検討を行った。分析は対応のあるt検定を行なった。対象者へは、本研究と運動介入についての目的とリスクについて説明文書を作成し、同意のサインを得て実施した。
    【結果】運動療法継続率は100%であった。DHDex実施期間中において、運動負荷の中止基準の対象となるような症状は見られなかった。運動介入前の膝伸展筋力は、30.5±13.4%であり、平澤らによる健常者の基準値より低値であった。6MDについては、4名実施可能であり、372.3.±50.4mと大西らによる健常者の基準値より低値であった。膝伸展筋力の変化としては、3か月後35.6±13.1%であり、介入前と比べ、統計学的有意差が認められた。(p=0.03)6MDの変化としては、3ヵ月後384.6±42.3m(p=0.06)であった。HbA1cにおいては、介入前6.7±0.8%、3ヵ月後6.2±0.9%(p=0.06)であった。DHDexにおいて、下肢筋力、持久力及び糖代謝が改善する傾向がみられた。患者の中には、「透析時間が短く感じるようになった」、「非透析日に散歩するようになりました」などの積極的な意見が聞かれた。
    【考察】透析患者の運動耐容能は健常成人の50~60%程度、下肢筋力に関しては約40%程度と報告されている。今回の研究においても、同様の結果が得られ、透析患者の運動療法の重要性が再認識された。しかし、透析患者に推奨されている運動方法は、非透析日にあまり無理をしないウォ-キング程度の運動とされている。透析患者の自主性に任せた運動は、その必要性が認識されているにもかかわらず、なかなか定着しない実情がある。MooreらはDHDex中の血行動態は、透析開始後2時間までは安定していると報告している。DHDexは、ベッド上で血管を穿刺したまま行う為、運動内容は低負荷なものに限定されるが、代謝改善のための長時間の運動や運動継続のためには、理想的な環境であるとも考えられる。Romijinらは低強度の持続的な運動では、運動中のエネルギー源の80%が、糖や遊離脂肪酸であるとしている。そのためDHDexにて、下肢筋収縮におけるインシュリン非作用の糖取り込み促進や内臓脂肪の減少によるインシュリン抵抗性の改善がみられ、更には、筋肉量増加が基礎代謝量を向上させ、糖代謝改善に繋がったのではないかと推察する。またDHDex実施により、透析中の心理的苦痛を和らげ、透析療法を主体的に考えるようになったと思われる。
    【まとめ】DHDexは、運動継続率が高く、身体機能や代謝改善、精神面にも良い影響を与えている。
  • 水谷 真康, 高橋 猛, 萩原 早保, 青木 正典, 若山 浩子, 出口 晃, 中 徹
    セッションID: O-07
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】  2型糖尿病患者(以下DM患者)の血糖コントロールを目的とした運動療法は、エルゴメーター(以下EM)や歩行など下肢の有酸素運動が一般的である。下肢に運動機能障害を持つDM患者の場合には上肢での有酸素運動が考えられるが報告は少ない。本研究は上肢の有酸素運動が血糖コントロールへ及ぼす影響を明確にすることを目的とする。
    【方法】
    1)研究方式:ABAデザインの運動介入を含む単一症例研究。
    2)対象症例:外傷性対麻痺を既往に持つ2型糖尿病患者、62歳男性・身長180cm・体重90.2kg・DM罹患期間43.2ヶ月間・過去1年間の平均HbA1c7.1±0.6%である。交通事故による胸髄損傷にて両下肢不全麻痺で歩行不能状態、改訂フランケル分類C1、ADLは車椅子にて自立レベルである。
    3)期間設定:7月~12月で介入前非運動期間8週間、運動期間8週間、介入後非運動期間8週間と設定した。
    4)測定項目:血糖コントロール指標のHbA1cは各三期の前後および中間点の計7点、運動耐用能指標として上肢でのRamp負荷運動負荷試験にて算出したAnaerobic Threshold(以下AT)の酸素摂取量(以下AT-V(dot)O2)・心拍数(以下AT-HR)・仕事量(以下AT-Load)、体格指標として体重・BMIをいずれも各三期の前後計4点、DM治療への主観的意識指標としてProblem Areas In Diabetes Survey(以下PAID)による質問紙調査を介入期間の前後2点にて測定を行った。また、運動能力指標としてEMによる消費熱量を介入初回・最終の2点にて測定した。
    4)測定機器:EMは三菱電機社strengthergo240、呼気ガス分析器はCOSMED社K4B2を使用した。
    5)介入方法:AT-HRの90%にて心肺定常負荷を用いた有酸素運動をEMにて週3日(30分/日)の頻度で8週間、計24回の運動を行った。
    6)説明と同意:倫理委員会の承認を得た上で、説明後に文書による同意を得た。
    【結果】  血糖コントロール指標HbA1c(%)は介入8週前6.9、4週前7.0、介入開始時7.0、4週後5.8、介入終了時5.8、介入終了4週後5.7、8週後6.3であった。運動耐用能指標・体格指標は開始8週前、開始時、終了時、終了8週後の順でAT-V(dot)O2(ml/min/kg)12.7 12.5 14.3 13.6 AT-HR(bpm)106 109 112 111 AT-Load(Watt)21.0 18.0 33.0 30.0 体重(kg)90.2 90.0 85.8 88.9 BMI27.8 27.8 26.5 27.4であった。消費熱量(Kcal)は初回29.6 最終45.9であった。
    PAID(score)は開始時35.0 終了時28.75であり「糖尿病の運動療法について具体的目標がない」「糖尿病の治療が嫌になる」「糖尿病に打ちのめされたように感じる」の3項目が開始時より低値を示した。
    【考察】 血糖コントロール指標のHbA1cは過去1年間の平均が7.1%、介入前期間が7.0%と高値であり長期間血糖コントロールが不良であったが、介入期間で5.8まで低下した。しかし介入後非運動期間では6.3まで上昇した。これは、上肢による有酸素運動が糖代謝を促進させることが可能であり血糖コントロールにおいて有効であったことを示している。日本糖尿病診療ガイドライン2004による血糖コントロール管理指標を本症例で見てみると、介入前は「不可」、介入により「優」となり細小血管障害など合併症の予防にも重要な役割を果たす血糖値のコントロールが行えたことは症例にとって有用な結果であった。  運動耐用能指標であるAT-V(dot)O2、AT-Load、体格指標である体重・BMIは改善し、介入後非運動期間で若干の悪化を認めたがAT-HRは変化がなかった。また、運動能力指標である初回・最終消費熱量は増加を認めた。これらは上肢での運動が心肺機能および全身持久力の向上、体重軽減に有効であったことを示している。押田らは、BMIとインスリン感受性は負の相関、全身持久力指標とインスリン感受性は正の相関があると報告しており、今回の結果でBMIが低下し運動耐用能指標が向上していることからインスリン感受性が改善したことも推察できる。
     PAID(score)の改善は、上肢の運動によっても効果が感じられ、目標意識の明確化につながったためであると考えられた。
     血糖コントロール、運動耐用能指標や体格指標が介入で改善し非運動期間で悪化する傾向を示す結果となったことは、本介入が血糖コントロール等上記の指標改善に有益であることが示された一方、運動療法を8週間以上継続する必要性も示唆している。
    【まとめ】
    ■下肢機能制限をもつDM患者に対し上肢による有酸素運動を実施した。結果、血糖コントロール及び運動耐用能・体格へ有益な効果があることが示唆され、下肢に機能障害を持つ患者に対し上肢での有酸素運動の有用性を示すことができた。
    ■下肢機能障害により血糖コントロールを目的とした運動療法の導入が困難であった患者に対し、上肢による運動療法は、感情負担の軽減、目標意識の明確化等、精神面での改善を促すことがわかった。
  • 櫻木 聡, 松川 千賀子, 中澤 正樹, 真方 淳一, 清水 愛子, 志水 理香, 長田 ゆき, 奥岡 由佳, 杉山 統哉
    セッションID: O-08
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 当院は1985年に「がんと免疫」をテーマに掲げ民間のがんセンターを目指し開院されたため、がん患者のリハビリテーションに関わる機会も多い。日本の死因順位の一位でもあり今後高齢化社会が進む現状を考えると、ますますがん患者が増加する可能性が高くリハビリテーションが関わる場面も多くなることが予想される。今回当院でのがんのリハビリテーションの現状について報告する。 【方法】 昨年度リハビリテーションを行ったがんの患者数を抽出し、診療科、リハビリ目的、転帰、緩和ケアチーム関与、に分けて患者数、リハビリ期間を集計した。当院ではリハビリ開始時および終了時にEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス(以下PS)にて身体機能のスクリーニング評価をしており、PSの数値も合わせて集計した。 【結果】 昨年度のリハビリテーション受診患者数は1263名であり、そのうちがん患者数は182名で全体の約14.4%である。がん患者数は血液化学療法内科(60名)、外科(41名)、整形外科と呼吸器科(各22名)の順に多かった。リハビリ目的別の患者数は「ADL向上」が86名、「ADL維持」が30名、「呼吸リハビリ」が27名、「嚥下リハビリ」が19名、「リンパ浮腫軽減」が8名、「乳癌周術期」が6名、「上肢腫瘍に対するROM訓練」が4名、「動作指導」が4名、「疼痛緩和」が2名と多岐にわたるものであった(一症例に対し重複ケースあり)。転帰別の患者数およびリハビリ期間(「患者数/平均リハビリ期間」と表記)は、「自宅および施設へ退院」が(117名/31.8日)、「死亡」が(22名/54.3日)、「他院に転院」が(20名/41.4日)、「病状悪化による中止」が(11名/28.3日)、「病状改善による終了」が(9名/11.0日)、「継続入院中」が3名、上記症例の中で緩和ケアチームが介入している「緩和ケアチーム関与」群も別に集計し(13名/53.9日)であった。PS(平均値)は「自宅および施設へ退院」が開始時2.47、終了時2.08、「死亡」が開始時3.32、「他院に転院」が開始時3.50、終了時3.40、「病状悪化による中止」が開始時3.18、終了時3.55、「病状改善による終了」が開始時3.11、終了時が2.89、「継続入院中」が開始時2.67、「緩和ケアチーム関与」が開始時3.15、終了時3.08であった。 【考察】 転帰別で各群の開始時PSを比較すると差がある傾向がみられた。各群内で開始時PSと終了時PSを比較すると「自宅および施設に退院」に差がある傾向がみられた。これらの結果よりリハビリ開始時のPSが転帰に関係している可能性も考えられるが、がんの種類やリハビリ目的によってリハビリの内容やリハビリ期間、転帰が大きく変わり、リハビリの内容もADL向上を目的とした筋力・体力増強訓練、ADL維持を目的とした関節可動域訓練、離床訓練、胸部・上腹部の周術期における呼吸リハビリテーション、リンパ浮腫に伴うドレナージやマッサージ、疼痛緩和目的のタッチングなど様々であるため、疾患別で集計するなどさらに細かくみていく必要があると思われる。またがん患者は「トータルペイン」を抱えており、精神面での影響も大きいため、そのあたりを考慮する必要があると思われる。 【まとめ】 当院は2010年6月に愛知県がん診療拠点病院に指定され、リハビリテーション部も同年に緩和ケアチームの一員となったため今後ますますがんのリハビリテーションに関わる機会が増えていくものと思われる。がん患者のリハビリテーションを担当するようになり、がんのリハビリテーションに関わるためには疾患に対する医学的な知識や身体症状へのアプローチ方法、精神的なケアの方法など多岐にわたるスキルが不可欠だと感じたため、今後定期的な勉強会の開催や他部門との連携を深めていくことが重要だと考えられる。
  • 水口 且久, 河合 直樹, 塚本 彰, 山下 美智子, 辻 美千代, 今井 敏枝, 柴田 正信, 原 拓央, 井上 亮, 鳥田 宗義, 西村 ...
    セッションID: O-09
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、リハビリテーション(以下、リハビリ)施行時の栄養管理が重要視されている中で、当院では2009年11月よりNST運営委員会(以下、NST)に理学療法士(以下、PT)2名が加わり、リハビリとNSTの協働による栄養障害を有する方(以下、低栄養者)へのADLとQOLの向上を図ってきた。低栄養者へのリハビリと栄養管理はADLやQOLの向上に効果的であるとされる報告や栄養状態の改善がADLの向上に繋がるという報告は散見されるが、低栄養者のADL向上の要因を検証した報告は少ない。低栄養者のADL向上要因を検証することはリハビリ施行時の目標設定や運動負荷の調整などのリスク管理にも繋がると考えられる。そこで今回、低栄養者のADLに影響を与える要因についての検討を行い、今後の課題について考察する。
    【方法】当院にて2010年度にNST依頼のあった104例中、理学療法施行し、脳血管・脊髄・神経筋疾患と死亡例を除いた34例(男性21例、女性13例)を対象とした。主疾患の内訳は心疾患7例、呼吸器疾患12例、その他15例であった。対象の退院時のBarthelIndex(以下、退院時BI)と年齢、リハビリ開始時のBI(以下、開始時BI)、退院時BMI(以下、BMI)、退院時TP値(以下、TP値)、退院時Alb値(以下、Alb値)の関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また、退院時の栄養経路(以下、栄養経路)が経口にて全エネルギー量摂取可能な経口群と、静脈栄養などを必要としたその他の2群に分け、2群間の退院時BIをU検定を用いて比較した。なお、各検定の危険率5%未満を統計学的有意水準としたがSpearmanの順位相関係数については、さらに相関係数が0.4以上もしくは-0.4以下をもって相関ありとした。
    【結果】対象の退院時BIは38.6±37.5%、年齢は79.3±10.1歳、開始時BIは13.9±23.9%、BMIは17.5±2.44%、TP値は6.3±1g/dl、Alb値は2.49±0.5g/dl、栄養経路は経口群が22例で退院時BIが56.8±34.9、その他が12例(食事+PPN2例、TPN7例、PPN2例、経腸1例)で退院時BIが5.4±5.4であった。退院時BIと他の要因との相関関係は、年齢ではr=-0.41、p=0.015で負の相関関係にあった。開始時BIではr=0.58、p=0で正の相関関係にあった。BMIではr=-0.07、p=0.65で相関関係は無かった。TP値ではr=0.48、p<0.05で正の相関関係であった。Alb値ではr=0.12、p>0.05で相関関係は無かった。栄養経路での退院時BI値の比較では経口群がその他の群よりも有意に高い値となった。(p=0)
    【考察】今回の調査により低栄養者のADL向上要因には、年齢、開始時BI、TP値、栄養経路が挙げられた。年齢に関しては高齢者では加齢によるADL低下などによりADLが向上しにくい一方で、低栄養者でも若年者はADLが向上しやすい事が示唆された。開始時BIに関しては低栄養者でADLが低下した状態ではADLの向上が難しく、入院早期からのリハビリが必要と考えられる。TP値に関しては栄養状態の指標であり、TP値がADL向上の際の栄養状態の指標になることが示唆された。しかしながら、同じように栄養状態の指標として用いられているAlb値に相関関係が無い事からADL向上にはAlb以外のタンパク成分の関与が関係する可能性も考えられた。栄養経路に関しては、経口群で退院時BIが有意に高い事より経口摂取は単に栄養補給をするだけでなく消化管を使用する事で最も効率よく、また正常に栄養を吸収・活用出来るため、栄養状態の改善が促され、それらが結果としてADL向上の一助になると考えられ、経口摂取可能になる事がADL向上の指標になることが示唆された。また、BMIが退院時BIと相関関係が無い事については栄養状態の改善により摂取エネルギー量が増加する事で体重の増加に繋がる一方で、ADLが向上し活動量が増加する事で消費エネルギー量の増加する事が体重減少に繋がる為、BMIと退院時エネルギー量はADL向上の要因とは考えにくい事が示唆された。今回の結果を踏まえて、ADL向上に向け早期のリハビリ、NST介入開始の促進、経口摂取を可能にするための多職種の連携、ADL向上要因を踏まえた上での適切なリハビリの目標設定を行い運動負荷量の調整などの必要性が考えられた。そして、ADL向上要因を持たない対象のリハビリ、栄養管理をどのように行っていくかが課題として考えられた。
    【まとめ】低栄養者のADL向上要因について検証した。結果、年齢、リハビリ開始時BI、退院時TP値、栄養経路が関与すると考えられた。結果を踏まえ、早期のリハビリと栄養管理が重要と示唆された。
  • 久保田 一矢
    セッションID: O-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【はじめに】
    今回、乳がんによりホスピスへ入所となった患者様を担当させて頂く機会を得た。
    終末期がん患者の自宅退院は社会的制約などがあり困難な場合も多い。
    患者様の病状は緩和的リハビリテーションの対象であったが、自宅へ退院したいと希望され、ご家族様も支援したいと考えていた。
    症状は浮き沈みが大きかったものの、患者様、ご家族様をはじめスタッフ間で自宅退院という目標を共有し、リハビリを介入することでQOLの維持を支援した。 【説明と同意】
    患者様ならびにご家族様に対し、症例検討という形での報告をさせて頂くことに対し説明を実施し同意を得た。
    【患者情報】
    患者様は60代女性の方。乳がんと診断され、告知を受けていた。
    合併症として左硬膜転移、脳転移、骨転移を伴っていた。
    右片麻痺と構音障害が主障害であった。
    【理学療法評価】
    意識レベルはほぼ清明でコミュニケーション可能。
    自立心が高い性格で、他者の世話になることは好まれていない印象であった。
    Performance statusのscoreは3~4。
    右上下肢の運動麻痺はBrunnstrom `s recovery stage_IV_レベル。
    麻痺以外に全身的な筋力低下がみられ、基本動作から中等度程度の介助量を要していた。
    【初期経過】
    ホスピス入所時はウィルス感染が疑われる発熱を伴っており、自力で起き上がれず、食事も取れない状態であった。入院10日後に発熱が落ち着いたところで理学療法士、作業療法士の介入が開始となった。
    リハビリ開始後2週間程度は状態が安定しており、リハビリ室にて積極的な訓練を実施できた。 軽介助レベルでの歩行も可能な状態にまで改善したため、本人様、家族様ともに自宅退院を検討していた。
    しかしその後急激に活動性が低下してしまい、MRI検査の結果、左大脳への浮腫拡大が確認された。
    ほぼベッド上での生活となり、尿道カテーテル留置となった。
    治療としてステロイドの静注が開始された。
    【目標設定】
    症状増悪を受けて、本人様、家族様へ今後の目標や希望の聞き取りを行ったところ、本人様は家に帰りたいと強く希望されていた。
    家族様もその希望に添いたいと思われていたが、家庭の事情を考慮すると現状での退院は難しいと判断された。
    しかし最低限一人の介助でトイレ動作ができれば外泊は考えたい、とも話された。
    本人様の退院希望は否定せず、まずは外泊に向けてご家族様をはじめスタッフ間で連携した対応を取っていくこととした。
    まず家族様が提示したポータブルトイレを使用し一人介助での動作が可能となることを最低条件とし、外泊から退院へつなげていく方針を共有した。
    【理学療法アプローチ】
    トイレ動作獲得に向け、ベッド周囲の動作練習から開始しトイレ動作へつなげた。
    主な問題点は移乗時に膝折れが起き、立位が保てないことであった。
    運動療法に加えベッド高の調整や病室のテーブルを上肢支持物として利用するなどの環境調整を実施した。
    リハビリ中の様子は随時病棟看護師に伝え、実際の生活場面で家族を交えてトイレ動作を行った。また自宅の環境に合わせ、福祉用品の導入などの調整も実施した。
    状態は改善と増悪があることがあらかじめ予想されたため、退院したいという発言は否定せず受容し、退院という目標に向かっているということを随時伝えていった。
    その上で状態増悪時は基本動作練習など前段階からのリハビリを再開していった。
    【最終経過】
    ステロイドの効果もあり状態は安定。麻痺の改善もみられ、積極的にリハビリを実施できたため徐々にトイレ動作介助量が軽減していった。家族の介助が可能となった時点で医師と面談を行い外泊の日程を決めていった。
    45病日目に外泊を達成され、病院へ戻られてからの活気も良好であった。 その後も状態は安定しており、見守り下でのベッド周囲動作が可能となったことで再び本人、家族とも退院を検討されるようになった。
    しかし日程が決まる直前に再度状態が悪化し、退院は延期することとなった。
    再度ステロイドが処方され、状態は安定へと向かった。
    トイレ動作も何とか家族の介助で可能となったところで2度目の外泊に向かわれた。
    その後は再び状態が増悪し改善みられず永眠されたが、前日まで病室には伺い、家族とのコミュニケーションを続けた。
    【考察】
    家に帰りたいという希望を考慮し、トイレ動作の獲得から外泊、退院へと段階的な目標を立てアプローチした。
    状態が増悪した際もトイレ動作の獲得に向けてのリハビリを続けたことで、退院という目標に向かっているとう意識を持ち続けQOLの維持を支援することができたと考えた。
  • 平野 友子, 仲野 四朗, 佐々木 嘉光
    セッションID: O-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】  医療・介護施設において、理学療法士が移乗動作の介助方法をケアワーカー(CW)に指導することは多い。しかし、移乗介助の効果的な指導方法について具体的に検討した報告は少なく、臨床現場で十分な教育が行われているか定かではない。医療・介護施設現場では、理学療法士の指導方法が統一されておらず、CWが何に対し困惑しているのかも把握できていないため、指導内容もCWが臨床場面に活かす事のできる移乗介助指導とはなっていないと推察される。そこで今回は、CWに対する移乗介助指導において留意すべき重要な点を明確にし、移乗介助の効果的な指導方法を探る事を目的にアンケート調査を実施したので報告する。なお、アンケート実施前に本研究の目的と方法を口頭で十分に説明し、同意を得た上で施行した。 【方法】  対象者は当施設の3FCW、16名(全て女性)とした。調査期間は平成22年9月27日から同年10月3日までであった。アンケートの項目は、1)CWの年齢、2)CWの経験年数、3)車椅子とベッド間移乗動作で介助困難な方はいるか、4)移乗方法について先輩への相談・後輩への指導をした事はあるか、5)他施設の移乗介助勉強会への参加経験はあるか、6)入所者A氏に対する介助量 はどの程度か(※軽度介助・中等度介助・全介助の3択)、7)移乗介助時に危険を感じた事はあるか、の7項目とした。〈BR〉アンケートは1)~7)の各項目をSpearmanの相関係数を用いて関係性の検証をした(有意水準5%以下)。また各項目を探索的記述統計にかけ、中央値の比較と項目ごとの自由記載部分を参考に移乗介助量が異なる原因やCWが何に対し困惑しているのか等の傾向を探った。 【結果】  7つの項目の相関関係について検討した結果、各項目に有意な相関は認められなかった。全てのCWが「移乗介助時に危険を感じている」と回答したが、年齢・経験年数・他施設勉強会への参加があるかないかなど全ての項目に関係性は認められなかった。また、年齢・経験年数の低いCWは、「移乗方法について先輩・後輩への指導や相談をする」「他施設の移乗介助勉強会への参加経験」が出来ていないと回答する傾向がみられた。移乗介助に関して「困難である」と回答したCWは、利用者1名に対してCW1名が行う移乗介助ではなく、利用者1名に対しCW2名で行う介助方法について疑問を持つ者が多く、「頭側の方の人の持ち方・支え方がよく分からない」「2人移乗のとき手を添える場所によって上手くいかず恐怖を感じる時があるため、もう一度基本を教えてほしい」等の回答がみられた。また、「移乗介助」に対しては、入浴やトイレ誘導をするための「作業」として捉えており、「機能訓練」の一環として捉えている理学療法士とは認識が大きく異なっていた。 【考察】 今回、CWに対する移乗介助の効果的な指導方法を実施するため、アンケート調査を行った。各項目に関して有意な相関はみられなかったが、1)各項目に関係なく全てのCWが移乗介助に危険を感じている、2)他施設の移乗介助勉強会への参加経験のない方がおり、特に若いCWが消極的である、3)先輩への相談・後輩への指導ができておらず、移乗介助技術の教育環境整備がなされていない、4)CW1名での基本的移乗介助以上に2名で行う介助方法が困難と感じている、5) 「移乗介助」を作業として捉えている等の課題が明確になった。理学療法士とCW間の認識の差異が明確となったことで、正しい認識の獲得・CWに対しそれらを「課題」として認識してもらう必要性が感じられた。また、CWによって移乗介助量が異なる原因を作る主な要因は「若年層の経験・知識不足」が考えられ、若年層への教育指導が特に重要であることが分かった。そして若年層のCWへの定期的指導や互いに相談可能な環境作りをすること、On the job training のシステムを整備すること等が現場教育の課題であると考えられた。研究の課題としては、さらに医療・介護施設の対象者を広げ、臨床場面での移乗介助指導のポイントを構築していくことが重要であると考えられた。 【まとめ】 本研究により、移乗介助量が異なる原因・CWが何に対し困惑しているのか・移乗介助に対する理学療法士とCWの考え方の差異に関する傾向を探ることが出来た。今後、これらの傾向を考慮することで、CWが臨床場面に活かすことの出来る移乗介助の指導方法に繋げていくことが可能になると考える。医療・介護保険分野において、理学療法士が他の職種に対してより専門的な介助指導を実践するために、今回の研究は意義があると考える。
  • 佐々木 嘉光, 増井 大助, 吉村 由加里, 仲野 四朗, 井口 英子, 鯨井 ゆき, 大山 美保, 北川 恵里
    セッションID: O-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】バランスト・スコア カード(BSC)は経営諸活動を多面的な視覚から分析し、戦略を実行する為の具体的な行動を識別して管理するツールとして多くの医療機関で導入されている。当法人リハ部門では平成22年度に BSC を導入し部門内の収支や委員会活動、職場・学習環境等の成果を管理するためのツールとして運用している。今回 BSC 導入後1年間の運用を振り返りリハ部門の戦略目標や成果指標の特徴と課題を検討したので報告する。
    【方法】平成22年度当法人リハ部門は46名が在籍し、302床の病院に36名、50床の病院に4 名、150床の介護老人保健施設に6名を配属していた。ここ数年でスタッフが急激に増加し、結婚・出産や大学院に挑戦をするスタッフが増え、多様な働き方を支援しながら専門職としての学習が出来る職場・学習環境の整備が必要であった。当法人リハ部門では円滑な組織運営にするためにリハ部門委員会の設置や職場・学習環境の見直しを行い課題の改善を行っていた。しかし役割が多岐にわたるにつれて、情報の共有が困難になり始めた。そこで各活動の成果や情報を共有して PDCA サイクルを円滑にするためのツールとして BSC を導入した。 BSC の導入にあたっては平成21年度末に2日間の研修会を開催し、各施設の職制18名が集まって検討した。研修会では BSC の講義と SWOT 分析を行い、 BSC の4つの視点に沿って戦略目標や成果指標を検討した。 BSC の項目はリハ部門の職制会議で随時見直しを行い修正された。 BSC 導入の効果を検討するため、平成22年4月から平成23年3月までの結果について目標値と対前年度の比較を行った。比較には成果指標の項目のうち対前年度比較が可能であった10項目を用いた。
    【結果】対前年度比較が可能であった成果指標は、顧客の視点は患者一人当たりの実施単位数の1項目、財務の視点は療法士一人当たりの月別売上、療法士一人当たりの週間単位数の2項目、業務プロセスの視点は残業時間、職場満足度、がんばるタイム有効度、働きがい満足度の4項目、学習・成長の視点は、各療法士協会の新人教育プログラムの修了証取得率、学習環境の満足度、プリセプターシップの満足度の3項目であった。
    成果指標10項目のうち目標値を達成出来た項目は1項目(患者一人当たりの実施単位数)で、1項目(新人教育プログラムの修了証取得率100%)は維持された。対前年度比較では6項目に改善(患者一人当たりの実施単位数、療法士一人当たりの月別売上、残業時間、職場満足度、がんばるタイム有効度、学習環境の満足度)がみられ、2項目(働きがい満足度、新人教育プログラムの修了証取得率)は維持された。2項目(療法士一人当たりの週間単位数、プリセプターシップの満足度)は減少を示した。前年度と比較して10%以上の改善率を示した項目は、個別実施単位数の向上(35%改善)、残業時間(13%減少)、学習環境の満足度(18%改善)であった。
    【考察】今回 BSC を導入した結果、対前年度比較が出来た10項目のうち6項目は改善、2項目は維持、2項目は減少を示した。改善の要因としては責任者が明確になる事で PDCA サイクルがスムーズに展開した事や、リハ部門の目標達成に向けた各戦略目標と成果指標・目標値が示されたことで情報が共有しやすくなった事などが考えられた。患者満足度を高めるために患者1人当たりの実施単位数の向上が成果指標として挙げられたが、目標値を達成し、対前年度比で35%の改善を示すなど大きな成果を上げることが出来た。また13%の残業時間の短縮は、育児や大学院に通うスタッフの働き方に良い影響をもたらすことが出来た。一方で十分な改善率を示せず昨年度よりも成果指標が減少した項目も見られたが、 BSC 導入により部門の課題が明確となり、スタッフが課題を共有できたことは意義深いと考える。特に療法士一人当たりの週間単位数の減少は、各病棟の職制によるマネジメントの強化が必要である事を示した。1年間運用して生じている課題としては、職制がトップダウンで作成したためスタッフに浸透していない事、ビジョンと戦略が十分に時間をかけて検討出来ていないため、成果指標の目標値達成に終始してしまっている事が挙げられる。今後はスタッフ全員の意見を集約出来るようなボトムアップの仕組みを作ったうえで、 SWOT 分析によるビジョンと戦略目標の策定を行う必要があると考える。
    【まとめ】リハ部門の組織運営を管理するツールとして BSC を導入し、導入後1年間の運用を振り返ることでリハ部門の戦略目標や成果指標の特徴と課題を検討した。今後 BSC をより効果的なツールとして運用するためには、スタッフ全員の意見を集約する仕組みと、十分な時間をかけて SWOT 分析を行い、ビジョンと戦略目標の策定を行う事が必要であると考える。
  • 池田 雅志, 小島 誠, 岩島 隆, 廣渡 洋史, 中根 英喜, 廣田 薫, 宇佐美 知子, 村瀬 優, 櫻井 宏明, 金田 嘉清
    セッションID: O-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科(以下本学)のOSCE課題においてPTとOT専攻で共通のOSCEが行われる。この実施により時間と人手を節約して効率の良いOSCEの実施が可能となり、学年ごとにレベル別で複数課題のOSCEを実習の前後で実施することができる。さらに臨床実習においては基礎的な能力の向上を図ることができる。しかし、採点差が生じるOSCE項目がみられ、その項目は両専攻で類似した内容であった。採点の差は学生が医療人としての成長を知ることやフィードバックを理解することを妨げる一因となるため、その内容を検討する。 【対象】本学科4回生のPT専攻が49名、OT専攻が44名のOSCEレベル2課題(検査・技術面の評価)の成績とした。〈BR〉実施における倫理的配慮としては対象となる学生には説明を行い、同意を得た。個人情報は他の情報から分離し、新たな症例番号を付加し連結可能匿名化を行った。個人情報および再連結に必要な情報は、一台のノート型コンピューターのみで管理した。データを参照する場合はパスワード等にて管理し、漏洩に対する安全対策を講じた。本研究で収集されるデータは学外には一切持ち出さなかった。尚、本研究を行うに当たり、藤田保健衛生大学疫学・臨床研究倫理審査委員会より承認を受けた。 【方法】PTとOT専攻合同で学生を15名ほどの3グループにわけ、さらに各グループで3人の学生で1チームをつくった。各々のOSCE課題はチームごとに取りくんだ。3つのステーションには教員による2名の評価者を配置し、1名の模擬患者もまた教員とした。さらに1名のタイムキーパを配置した。学生はこれらの3つのステーションで5分間のOSCEを受験し、その後にOSCE課題の評価を受けた。さらに、自分がどのような技能や基本的態度等を身につけなければならないかを知るために評価者と模擬患者より2〜3分間のフィードバックを行った。チームが全てのステーションを終了すると次のチームがOSCEを開始した。2名の評価者は3段階で評価した。このOSCEのPTとOTにおける採点差をMann-WhitneyのU検定を用い、有意差があった項目を技術項目と接遇・態度項目に分けて検討した(有意水準5%未満)。 【結果】PTとOT専攻において検者間で有意差があった項目はMMT上肢:段階3(Fair)のテスト (技術の項目)、バイタルチェック:手順の説明 (接遇・態度の項目)、療法士面接:共感的理解の態度 (接遇・態度の項目)であった。PT専攻において検者間で有意差があった項目はMMT上肢:段階を特定するテスト(技術の項目)、MMT上肢:検査結果を伝える(技術の項目)、MMT下肢:骨盤を固定して代償運動を防ぐ(技術の項目)であった。OT専攻において検者間で有意差があった項目はMMT上肢:検査結果を伝える(接遇・態度の項目)、MMT下肢:関節可動域の確認、段階3(Fair)のテスト段階を特定するテスト(技術の項目)、ROM下肢:基本軸に角度計をあわせる (技術の項目)であった。 【考察】採点差があったOSCEの項目の内容をみると共通点が多かった。技術項目においての共通点は1項目に2つの評価課題がある項目と検者の見る位置により評価が変化する項目であった。また、接遇・態度の項目における共通点は声の明瞭度や仕草・表情などであった。〈BR〉一つの課題に2つの評価基準があるときは別々の評価基準として問題を明確化する必要がある。しかし、あまり評価基準を多くすると複雑なものになり、多くの人員が必要であると言われるOSCEを更に手間が掛かるものにする。〈BR〉言葉使いのような明確な採点基準の設定が困難なものは2段階評価とするのが妥当であるとの意見がある。確かに評価者間での採点差は3段階評価項目では2段階評価項目に比べ大きいことは明らかである。しかし、2段階評価では臨床能力の多寡を的確に評価することはできないという欠点がある。また、OSCEは専門性を伝授する教育実践の場であると捉えると学生が自分の成長が分かり易い3段階評価が妥当で有ると考える。〈BR〉評価者間の評価基準を確認するために模擬患者と評価者が話し合いをするための時間をOSCE実施直後の即時フィードバックの前に設けることを提案する。このことにより評価者間の評価差が生じ難くなり、さらにはフィードバックが学生にとって明確なものになると考えられる。 【まとめ】本学のOSCEのレベル2をPT・OT専攻における検者間の採点差について研究した。採点差があった技術項目の共通点は1項目に2つの評価課題がある項目と検者の見る位置により評価が変化する項目、接遇・態度の項目の共通点は声の明瞭度や仕草・表情であった。
  • 内田 全城, 岡本 徹, 石神 理恵
    セッションID: O-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】 理学療法教育における臨床実習は、受動的学習から能動的学習への転換が重要とされ、この基盤には情意領域が関与するといわれている。このため養成校には情意面を含む自己主導型の学習を促す教育方法が求められる。学内教育では認知領域が占める割合が高いが、情意・精神運動領域を含む臨床能力の向上に結び付ける教授法や評価手法が望まれるようになり、近年、臨床実習における事前的診断的評価として客観的臨床能力試験の有効性について多くの報告がされている。情意領域の教育基盤は内的欲求に基づく内的動機付けが好ましいとされ、自己洞察が必要となる。自己洞察を促す方法として、「気がかり」を根源としたプロセスレコードがあり、学びの評価にも用いられている。  以上より本研究の目的は、臨床実習の事前的診断的評価におけるプロセスレコードの有効性について、定期試験成績、臨床評価実習との関係から検証することである。 【方法】 対象は平成22年度理学療法学科3年生69名の臨床評価実習前に実施した学外授業(公開講座への参加)に対するプロセスレコード、定期試験成績、臨床評価実習成績である。事前に本研究の目的を文書にて説明し同意を得た後に調査を行い、情報管理に留意した。プロセスレコードは、1)最も印象に残った内容、2)選択理由、3)再構成内容、4)考察で構成され、学外授業後に調査を行った。分析は、プロセスレコードにおける再構成から考察に至る記述内容についてBloomらの教育目標に基づき、共同研究者が協議した上で認知領域階層尺度に分類した。また考察から情意領域への転換を示す記述がある群と無い群に区分した。定期試験成績は総得点の中央値以上の者をH群、満たない者をL群に区分し、臨床評価実習成績は、各一般目標成績を優:4、良:3、可:2、不可:1と点数化し、認知、情意、精神運動領域ごとに平均値を算出した。 分析は、1)プロセスレコード教育分類の割合、2)プロセスレコード教育分類と定期試験及び評価実習成績の関係、3)プロセスレコード情意領域への転換有無における認知領域階層尺度、定期試験成績、および臨床評価実習成績の関係について検証した。統計ソフトはExcel2007を使用し、2)に対してピアソン相関係数検定とウィルコクソン符号付順位和検定、3)にはt検定とウィルコクソン符号付順位和検定を用いて検証を行い、有意水準1%未満とした。 【結果】 プロセスレコード教育分類の内訳は、知識52%、理解33%、応用6%、分析6%、合成3%であり、情意領域への転換があった者は64%、ない者は36%であった。プロセスレコード認知領域階層尺度と定期試験成績および臨床評価実習の関係では、定期試験成績H群のほうがL群に比べて有意に認知領域階層が深く(p<0,01)、臨床評価実習成績と認知領域階層との間に相関を認めなかった。情意領域転換の有無と定期試験成績および臨床評価実習の関係は、転換がある群のほうが有意に定期試験成績は高く(p<0,01)、臨床評価実習成績も総合得点と各領域の全てにおいて有意に高かった(p<0,01)。また、認知領域階層においても有意に階層が深かった(p<0,01)。 【考察】 今回、臨床評価実習における事前的診断的評価として、学外授業を対象としたプロセスレコードの有効性について検証した。その結果、プロセスレコードにおける認知領域階層が深い者ほど定期試験成績が良いが、臨床評価実習成績との間には相関が認められなかった。このことは、定期試験は認知領域を反映する評価指標であり、臨床実習は認知領域単独では評価指標として不十分であることが示唆された。一方、プロセスレコード考察から情意領域への転換が出来る者ほど定期試験成績や臨床評価実習成績が高値を示したことから、領域間の思考転換能力が臨床評価実習に対する事前的診断的評価として有効な指標となることが示唆された。情意領域は単独で修業するものでなく、認知や精神運動領域の学修過程で組み入れる必要がある。自己洞察を活用したプロセスレコードを教授場面に活用することで、情意領域への思考転換を促すことが可能になると考える。 以上より、プロセスレコードは臨床評価実習における事前的診断的評価指標として有効であることが示唆され、また学内教育においても領域間の思考転換能力を促す手法として活用できることが示唆された。 【まとめ】 プロセスレコードにおける情意領域の分析から、領域間の思考転換能力が臨床実習に向けた事前的診断的評価として有効な指標であること、また教授場面での活用により自己洞察を通じた領域間の思考転換能力を促す手法となることが示唆された。
  • 川瀬 修平, 嶋津 誠一郎, 内山 靖
    セッションID: O-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】
     チーム医療が重視される中、多職種横断型では日常のカンファレンス、リハビリテーション総合実施計画書、地域連携パスの導入によって情報の標準化や様々な意見交換がなされている。一方、対象者を中心とした病期ごとにみた同一職種の縦断型のチーム医療についての情報は十分に共有されているとは言い難い。
     これまで、理学療法にかかわる情報提供書の研究がいくつかみられ、介護保険サービスである通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションの導入、在宅理学療法の推進によって、連続的で円滑な理学療法を実施するためには理学療法士同士の情報交換が必須であることが示されている。また、急性期の理学療法士は多くの情報を提供することはあっても、対象者の帰結を維持期や在宅の理学療法士からフィードバックを受ける機会は少ないものと予想される。
     そこで、本研究では、病期からみた理学療法士の情報提供の実情と情報を発信する側と受け取る側の立場から必要と思われる内容を整理することで、連続的で効果的な理学療法を実施するための基礎資料を得ることを目的とする。
    【方法】
     対象は愛知県内の理学療法士とした。平成21年度社団法人理学療法士協会員名簿を用い、あらかじめホームページや聞き取り調査等で急性期リハビリテーション(以下リハ)、回復期リハ、維持期リハ(外来リハ、老人保健施設、通所リハ、訪問リハを含む)の3つにグループ分けし、所属会員から各グループ100名ずつ合計300名を無作為に抽出した。
     調査内容は、情報を送る立場と受ける立場のそれぞれに立った場合を想定していただき、情報提供書に記載している内容や作成負担度、情報を得たい内容等について、5段階(1:強く思う2:やや思う3:どちらともいえない4:あまり思わない5:全く思わない)の選択と自由記載で回答を得た。
    【説明と同意】
     調査票は原則無記名とし、調査票に本研究の趣旨と内容、使用目的、連絡先等を明記したうえで郵送し、研究への同意と協力が得られる場合に調査票を返送いただくこととした。なお本研究は、病院管理者から本研究の倫理と実施についての承認を得た。
    【結果】
     有効対象者数は292名、有効回答数及び有効回答率は112名(38.4%)であった。内訳は、急性期36名(32.0%)、回復期25名(22.0%)、療養型11名(10.0%)、外来リハ12名(11.0%)、老人保健施設9名(8.0%)、通所リハ7名(6.0%)、訪問リハ9名(8.0%)であった。
    情報提供書に記載している内容は、病態(60.3%)、身体機能(86.2%)、ADL能力(86.2%)、理学療法プログラム(66.0%)、理学療法経過(72.0%)が中心であった。受け取り側として情報提供書に記載して欲しい内容は、病態(80.3%)、身体機能(74.5%)、ADL能力(82.5%)等に加えて、対象者の性格について記載して欲しいという意見がみられた。老人保健施設では、医学的データが乏しいために医療機関からの画像や生理検査等の情報を必要としているという意見がみられた。なお、情報提供書の作成に関しては、「患者数が多い」、「情報を取り出す手間がある」、「他の理学療法士がどのような情報を求めているかが分からない」といった理由から、全体の80.0%の回答者が負担と答えた。
     リスク管理では、送る側で必ず記載していると答えた者は46.0%であったのに対し、受ける側で強く希望すると答えた者は76.0%と高値を示した。一方、ゴール設定を記載しているかという項目では、対象者を送る側で必ず記載していると答えた者は14.0%で、受ける側も情報を強く希望すると答えた者は12.0%にとどまった。なお、「患者が説明されたゴールと現状の状態が全く違う」といった意見を散見した。
    【考察】
     本研究から、情報提供書を作成する上でそれぞれの立場に立つ理学療法士がどのような情報を望んでいるかが明らかとなった。病期ごとに必要としている情報は異なる部分もあるが、全体の共通項を形式化することで作成の効率化やデータベース化を図れるではないかと考えられる。また、リスク管理にかかわる具体的項目のリストアップが求められる。ゴール設定に関しては、情報を送った側に対象者の帰結が伝えられていないために、送り手としてゴール設定の精度が確認できない状況にある。この意味では、回復・維持期の理学療法士は前医療機関の担当者に情報を少しでもフィードバックする責務があるのではないかと思われる。なお、対象者の状態や経過が当初設定されたゴールと全く違うために対象者の期待が偏り、理学療法を実施するうえで弊害となる可能性への注意が必要となる。
    【まとめ】
     情報提供の実情と希望内容が明確になったことで、より具体的な情報交換が行えるのではないかと考えられる。また、情報のサイクルによってゴール設定等の評価精度を高めることに繋がる可能性が期待できる。
  • 勝井 洋, 町 貴仁
    セッションID: O-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】頸椎深層屈筋群の評価は、Jullらによって報告されている頭頚部屈曲テストがあり、アウトカムの尺度としても適していると言われている。しかしこの評価を行うためにはStabilizerというプレッシャーバイオフィードバック器具が必要となる。我々は器具を使用しない頸椎深層屈筋群評価法を開発することを目的に、胸椎の代償を制御しながら頚椎の最大伸展位から正中位への屈曲運動を評価する、頚椎伸展―屈曲テストを考案した。我々が行った先行研究(2010ACPT)では、頚椎伸展―屈曲テストで正中位に戻すことが不可能な健常女性12名に3週間の頚椎深層屈筋トレーニングを行った結果6名が可能となり、頚椎深層屈筋群との関連があると考えた。また我々は頭部重量や頸部長など骨格的な影響を検討する為、作田ら(1990)が開発した頭重負荷指数評価(頭部周径R、頚部周径r、頚部長Lとし公式index=R3・L/r2/1000に当てはめる)において頚椎伸展―屈曲テストによる可能・不可の群間比較をしたところ、頭重負荷指数の差はみられず頭頚部形態の与える影響は無かったと考えた(2011日本理学療法学術大会)。しかし先行研究では頸椎表層屈筋群の影響や、徒手筋力検査(MMT)との違いを検討することは出来ていなかった。本研究の目的は、頚椎伸展―屈曲テストと頸椎深層屈筋群の機能評価である頭頚部屈曲テストとの関係を、MMTの結果も含めて検討することとした。
    【方法】対象者は頚椎疾患の既往の無い健常女性で、28名(平均年齢30±8歳)であった。頚椎伸展―屈曲テストは、検者による肩甲骨内転強制により胸椎屈曲運動を制限しながら、被験者に頚椎を最大伸展位から屈曲させ正中位に戻せるかを評価した。この時肩甲骨外転を伴う胸椎屈曲代償運動や頸椎屈曲途中で運動の中断が見られた場合は不可とした。頭頚部屈曲テストはJullらの方法を参考にTYATTANOOGA社製Stabilizerを背臥位の被験者の頸部下に置き、基準値の20mmHgになるまで圧力センサーに空気を入れ、上下の歯を噛み合わせず舌を口蓋上部に軽く当てるよう指示した。この状態で頭部のうなずき動作を行うよう指示し基準の20mmHgから最大の30mmHgまで2mmHg間隔で5段階の目標値に合わせ、その位置を10秒間保持できるかをテストした。検者は頸椎表層屈筋群の収縮を触診し、優位な収縮がみられた場合は不可と判断した。また頸椎深層・表層屈筋群の粗大筋力評価としてMMTの頭頸部・頸部屈曲筋力をテストした。テストは全て筆頭演者本人が行った。統計は、頭頚部屈曲テストの群間比較にt検定、MMTの群間比較にマン・ホイットニのU検定を用い、有意水準を危険率5%未満とした。この研究は対象者にヘルシンキ宣言に基づき説明し、文書にて承諾を受けた上で行った。
    【結果】頚椎伸展―屈曲テストの結果、正中位まで屈曲可能だった群(可能群)は15名(平均年齢31±8歳)、不可だった群(不可群)は13名(平均年齢29±9歳)であった。頭頚部屈曲テストの圧センサー値平均は可能群27.6±3.6mmHg、不可群23.4±4.7mmHgであった。頭頚部屈曲テストにおいて不可群は可能群に比べ圧センサー値平均が有意に低かった(p<0.05)。またMMTにおいては可能群と不可群に有意な差はみられなかった。
    【考察】Jullらは、頭頚部屈曲テストにおいて頸部に痛みの無い人では26~28mmHgまでは出来ると思われると述べている。今回の結果では頚椎伸展―屈曲テストの不可群において頭頚部屈曲テストの圧センサー値平均が23.4mmHgと比較的低値を示し、頸部深層屈筋群の機能低下が示唆された。しかし頭頸部屈曲MMTにておいては可能・不可の群間に差がみられないことから、MMTではこのような差を鑑別することは難しいと考えた。また頸部屈曲MMTでは差がみられないことから頸部表層屈筋群の影響は無かったと推察した。現在健常者を対象に研究を行っているが、健常者においても正中位まで屈曲不可能なケースがあることは興味深く、むちうち損傷等の傷害予防も含め今後臨床応用を検討したい。しかし、本研究では頭頚部屈曲テストにおいて頭頸部の動きの評価や触診など主観的評価の要素も多かったこと、筆頭演者が検者であったことなど、客観性に課題もあったと考えた。今後は他の検者による評価や、筋電図や超音波を用いた頸椎屈筋群の収縮の評価など、より客観性の高い研究を発展的に行いたい。また不可群の中には頭頚部屈曲テストで問題の無かった被験者もおり、今後姿勢アライメントや体幹機能との関連についても検討したいと考えている。
    【まとめ】頸椎のアプローチにおいて重要とされている頸椎深部屈筋群の簡便な評価の開発は臨床において有益と考える。我々の考案した頚椎伸展―屈曲テストにおいて、可能・不可の群間で頭頚部屈曲テスト結果に差がみられ、頸椎深部屈筋群の評価として活用できる可能性が示唆された。
  • 田中 夏樹, 岡西 尚人, 山本 昌樹
    セッションID: O-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【はじめに】
     右上肢挙上時の右胸背部痛に対して前足部機能の改善を目的に運動療法を行い、症状の改善につながった症例を経験した。本症例における胸背部痛と前足部の関係について考察したので報告する。なお、症例には本発表の主旨を説明し、同意を得ている。
    【症例紹介】
     症例は10歳代後半の女性でバドミントン部に所属している。2週間前より、バドミントンにおけるラケット操作時に右背部から胸部にかけての疼痛を自覚した。徐々に疼痛が増悪したため当院を受診し、理学療法を開始した。
    【画像所見】
     単純X線像において側面像では著明な変化を認めなかったが、正面像において中位胸椎の側弯を認めた。
    【初期理学所見】
     上肢挙上90度において右背部から胸部にかけて疼痛を訴えたが、肩甲上腕関節の可動域には問題がなく、疼痛部位には圧痛を認めなかった。胸椎の屈曲、伸展、両側回旋すべてにおいて右背部から胸部にかけて運動時痛が出現した。体幹のアライメントは胸椎過後弯、腰椎過前弯であり、Kendallらの姿勢分類におけるkyposis-lordosisであった。歩容におけるダイナミックアライメントの特徴は、股関節が内旋位、後足部が回外位であり、toe-inを呈していた。形態的特徴として、外反母趾傾向であり、前足部の緊張は低緊張であった。股関節の柔軟性は股関節開排において膝―床間距離が両側14横指であり、トーマステストが両側とも弱陽性であった。Straight leg raisingが両側80度であり、オーバーテスト、腰椎後弯可動性テスト(以下、PLFテスト)は胸背部痛のため測定が出来なかった。
    【治療および経過】
     母趾外転筋および足内筋のエクササイズを行い、即時的に股関節開排が両側7横指と改善を認め、上肢挙上が120度可能となった。セルフエクササイズとして足部の自動運動を指導し、母趾外転筋、短母趾屈筋の促通を目的にテーピングを貼付した。胸椎の運動時痛はほとんど変化がなかった。初期評価より3日後、胸椎の運動時痛が5/10(初期を10とする)に軽減し、上肢挙上が145度可能となった。オーバーテストは右が強陽性、左が陽性であり、PLFテストでは下位腰椎の伸展拘縮を認めた。そのため、腸腰筋、恥骨筋、大腿筋膜張筋の伸張性改善、下位腰椎の屈曲可動域拡大を目的とした運動療法を追加した。初期評価より1週間後には胸椎の運動時痛が1/10とほぼ消失し、上肢挙上が180度可能となった。また、toe-in歩行が是正され、競技復帰が可能となった。初期評価より3週後にはトーマステストが両側とも陰性、開排が両側2横指、オーバーテストが両側とも弱陽性となり、胸椎の運動時痛が完全に消失した。競技復帰による疼痛の再燃も認めなかったため理学療法を終了した。
    【考察】
     本症例は当初、右上肢挙上時における右背部から胸部にかけての疼痛の訴えであったが、肩甲上腕関節に問題がなく、中位胸椎部の運動時痛であった。疼痛出現部位に圧痛を認めなかったことより、本症例における症状は中位胸椎椎間板に関連する疼痛と推察した。中位胸椎椎間板へのストレスが集中した原因として、体幹のアライメントが胸椎過後弯、腰椎過伸展を呈しているため、胸椎の可動性が制限され、その状況下でラケット操作を多用したことによるものと考えた。胸椎の過後弯は腰椎の過前弯に伴って生じ、腰椎の過前弯は前足部の支持性低下に対する代償動作として、股関節内旋位を呈したことによるものと推察した。つまり、本症例のダイナミックアライメントを規定する要因は前足部機能の低下にあると考えた。そのため、足内筋機能の改善を目的に運動療法を行ったところ、即時的に股関節周囲筋の可動域が拡大するとともに上肢挙上角度も改善を認めた。本症例のポイントは、足部機能の低下が本症例における股関節周囲筋の筋活動と体幹のアライメントに最も影響を与える要因であると気付けたことであった。腰椎の過前弯、胸椎の過後弯を呈する症例が股関節の可動域制限を有する場合、股関節に対するアプローチを選択しがちである。しかし、本症例は足部へのアプローチにより股関節周囲筋の筋緊張が改善することで腰椎の過前弯、胸椎過後弯が是正され、中位胸椎の安静が保たれたことによって症状の消失に至ったと推察された。症例が訴える症状に何が関与するかを把握するためには、足部を含めた全身の評価が重要であることを再認識した。
  • 松浦 佑樹, 久保田 雅史, 高木 佑也, 吉岡 直美, 西前 亮基, 谷口 亜里沙, 高本 伸一
    セッションID: O-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】 人工膝関節置換術(TKA)は、除痛、日常生活活動動作の改善に関しては良好な成績が報告されているが、術後関節可動域に関しては不良例も散見される。膝関節屈曲拘縮は歩行能力を低下させ、特にエネルギー効率の低下や膝関節伸展モーメントの増大に伴う膝関節前面部痛の出現に関与すると報告されている。さらに屈曲拘縮はインプラントの耐久性を低下させる可能性もあり、TKA後の膝関節屈曲拘縮の残存は重要な問題の一つである。TKA後の膝関節屈曲可動域に関連する因子は多くの報告があり、術前可動域、術前Femoral-tibial angle(FTA)、術前JOAスコアなどと関連があるとされている一方で、TKA後の膝関節屈曲拘縮と関連する因子を検索した報告は少ない。近年、高山ら(2010)が術後4週時での膝関節屈曲拘縮の残存には術前伸展可動域、術後脛骨コンポーネント設置角度が関与すると報告しているが、十分明らかにされてはいない。本研究では、TKA術後一年以上経過した症例に対し、膝関節屈曲拘縮の残存に関連する因子を検索することを目的とした。 【方法】 変形性膝関節症により初回TKAを施行し、術後一年以上経過してfollow-upを実施し得た20名24膝を対象とした。男性5例、女性15例、平均年齢79.2±7.9歳、平均術後follow-up期間は6.1±3.4年であった。外傷後変形や矯正骨切り術後の症例、最終follow-up時に独歩困難な症例は除外した。研究はRetrospective studyとし、カルテより下記の項目を情報収集した。評価項目は患者背景より年齢、性別、罹病期間、BMI(body mass index) 、術前及び最終follow-up時のJOA scoreとし、理学的評価として術前、術後2週時、最終follow-up時の膝関節伸展及び屈曲可動域を調査した。さらに単純X線画像所見より術前Kellgren-Lawrence分類、術前FTA、術前脛骨関節面後傾角度、最終follow-up時の脛骨コンポーネント設置角度及び術前・最終follow-up時の大腿脛骨間距離(単純X線側面像において大腿骨外側顆背面上部の彎曲頂点から大腿骨骨軸への垂線との交点と脛骨内側顆背面下部の彎曲頂点から脛骨骨軸への垂線との交点との距離)を測定した。インプラント挿入に関わらず同一定点間の距離を評価する目的で大腿脛骨間距離を測定し、術前と最終follow-up時の差を算出した。最終follow-up時に膝関節伸展可動域が-5度以上残存した症例を屈曲拘縮群、伸展可動域制限が残存しなかった症例を非屈曲拘縮群として上記の項目について比較検討した。統計はUnpaired t-testを用い、有意水準を5%とした。 【結果】 非屈曲拘縮群は16膝(平均年齢78.1±3.9歳、男性2膝、女性14膝)、屈曲拘縮群が8膝(平均年齢81.3±1.6歳、男性3膝、女性5膝)であった。罹病期間、BMI、術前FTA、最終follow-up時FTA、術前JOA、最終follow-up時JOAに関しては群間に有意差を認めなかった。術前伸展可動域は拘縮群が非拘縮群と比し有意に低下していたが、術前屈曲角度は群間で有意差を認めなかった。術後2週時の膝関節伸展角度は群間で有意差を認め、屈曲拘縮群の8膝中7膝は‐10度以上の伸展制限を有していた。術前脛骨関節面後傾角度及び最終follow-up時の脛骨コンポーネント設置角度は屈曲拘縮群が非屈曲拘縮群と比し有意に高値を示した。また、大腿脛骨間距離の術前後差は屈曲拘縮群が非屈曲拘縮群と比し有意に増大していた。 【考察】 本研究結果より、術前に屈曲拘縮が存在すること、術前後それぞれにおいて脛骨関節面の後傾角度が大きいこと、骨切りに対してコンポーネント厚が大きく大腿脛骨間距離が延長した症例には膝関節屈曲拘縮が残存しやすい可能性が示唆された。さらに、術後2週時に膝関節伸展角度が術後一年以上経過時の膝関節屈曲拘縮残存に影響を与えることが明らかとなり、術後の膝関節屈曲拘縮は早期に改善していくことが重要であると推察された。 【まとめ】 本研究ではTKA術後一年以上経過症例の膝関節屈曲拘縮の残存に関連する因子を検索した。術前の可動域や術後2週時の可動域、手術による脛骨コンポーネント設置角度、大腿脛骨距離の拡大が関連することが明らかとなった。
  • 吉村 孝之, 今井田 憲
    セッションID: O-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【はじめに】
    今回、後脛骨動脈及び脛骨神経断裂し、縫合術後の患者様の後療法を担当する機会を得た。手の外科領域の神経断裂後の報告は数多く存在するが、足部損傷の報告は少ない。そこで治癒過程を考慮して、理学療法を行い、良好な成績を得たので、ここに報告する。
    【症例紹介】
    症例は70歳代男性で農業を営んでいた。既往歴は、右アキレス腱断裂受傷後、足関節可動域制限・跛行残存するが、農作業可能であった。草刈り機誤操にて受傷、出血多量にて、A病院到着直後に縫合術を施行された。
    術後9日目にリハビリ目的で当院転院、同日理学療法処方となった。当院Drの指示は「腱損傷は不明」「底屈位・疼痛自制内にて足趾の自動運動・他動運動、足関節等尺性収縮可能」「術後3週まで底屈位固定後、足関節可動域訓練と疼痛自制内荷重開始」であった。
    Needは「一人で歩きたい」「農業がしたい」であった。
    なお、本発表にあたり、患者様へ説明を行い、同意を得ている。
    【初期評価】
    視診は、足関節全周に腫張著明で、発赤は軽度であった。術創長は160mmで、踵骨隆起直上37mmより起始し、内果下端と踵骨隆起間のほぼ中央を通り、第1中足骨頭から25mm内側底側に停止した。
    足部全体に熱感認め、後脛骨動脈触知困難であった。
    足趾は、自動伸展スムーズ、自動屈曲何とか可能で、MMTは、足部外来筋は長母趾屈筋(以下、FHL)2、長趾屈筋(以下、FDL)2、長母趾伸筋(以下、EHL)4、長趾伸筋(以下、EDL) 4 であり、足部内在筋は短母趾屈筋(以下、FHB)2-、短趾屈筋(以下、DB)2、短母趾伸筋(以下、EHB)4、短趾伸筋(以下、EDB 4)であった。
    足部は、前脛骨筋(以下、TA)、後脛骨筋(以下、TP)、長腓骨筋(以下、FL)、短腓骨筋(以下、FB)、腓腹筋(以下、GA)、ヒラメ筋(以下、SOL)筋は足関節底屈位等尺性収縮可能であった。
    ROMは、足関節屈位固定中で、足趾屈曲は低下している印象だが腫張著明なため精査困難であった。
    疼痛検査は、安静時痛は術創に認められた。筋収縮痛増悪は認めず、伸張痛はFHL、FDLに認め、圧痛は術創に強いが、腫張著明のため、精査困難であった。
    表在感覚は健患比にて評価し、内側踵骨枝10/10・内側足底神経7/10・外側足底神経7/10・伏在神経5/10、外側踵骨枝・外側足背神経10/10であった。
    【治療内容】
    ・足関節底屈位でのEHL、EDL筋力訓練、疼痛自制内でのTP,FHL,FDL等張性収縮、ストレッチ
    ・MTPjt関節包、術創部のストレッチ
    ・母趾外転筋、FHB、FDBの等張性収縮、EHB、EDB筋力訓練
    ・疼痛自制内でのTA FL FB GA SOL等尺性収縮
    ・患部外訓練
    修復過程を考慮し、3週目までは損傷組織完全伸張位を禁忌とし、3週後から、疼痛・循環・神経症状の著明な変化に注意しながら、腱・動脈・神経を最大伸張位へ近づけていった。
    【結果】
    ROM開始時に右足関節背屈5°、1/2FWBまで疼痛自制内で、両松葉杖歩行安定して可能であった。術後7 週にて、独歩時疼痛軽減し、独歩自立、術後8週にて独歩時疼痛消失した。術後12週にて、ROM左右差なし、筋力MMT4レベル、3~5趾底側のしびれ残存しているものの、階段昇降、自転車乗車可能で、Need満足となり、理学療法終了となった。
    【考察】
     術創より軟部組織の損傷が予想された。初期評価にて、MMTはFHL 2、FDL 2、TPは収縮可能であったことから腱不全断裂であると考えられた。後脛骨動脈は、出血多量、熱感著明、右後脛骨動脈触知困難より、完全断裂が予想された。脛骨神経は、支配筋が収縮可能で、表在感覚が脱失していないため、不全断裂であると考えられた。
    中田らは、ハンドセラピー分野では神経断裂後、引っ張り強度がストレスに持ちこたえられるようになるまで3~4週間要し、腱断裂縫合後は、術後3週間は縫合腱の自動運動を禁止するという考え方を報告している。腱治癒過程より、術後7~10日は腱の引っ張り強度が弱まり、その後、徐々に強度が高まっていくことが知られている。Drより、底屈位・疼痛自制内にて足趾の自動・他動運動、足関節等尺性収縮可能との指示があったことから、腱の損傷は軽度であると推測されるため、術後10日目より疼痛自制内で、TP・FHL・FDLの収縮により腱滑走を促し、術創深部の癒着の予防を試みた。この際、脛骨神経や後脛骨動脈へ過負荷とならないように神経症状及び循環動態の変化に注意して実施した。結果、荷重開始時に背屈荷重可能でとなり、良好な後療法を実施することができたと考えられた。
    【まとめ】
    ・右後脛骨動脈・脛骨神経断裂受傷し、緊急縫合術後の理学療法を経験した。
    ・腱、動脈、神経の損傷状況、治癒過程を考慮し、理学療法プログラムを立案、実施した。
    ・治癒過程を損なうことなく、ADLの改善、Needを満たすという良好な結果を得た。
  • 増田 賢, 徳田 裕
    セッションID: O-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインでは深部静脈血栓症(以下,DVT)の予防として早期離床が困難な患者では,自動的および他動的な足関節運動が推奨されている.また,先行研究においても足関節自動運動により下肢静脈血流が有意に改善するという報告は多々ある.これは骨格筋によるミルキング効果であり,足関節自動運動は下肢静脈血うっ滞を減少させることを目的としている.〈BR〉しかし,足関節自動運動時の筋収縮強度と下肢静脈血流変化についての報告はなく,詳細は不明である.〈BR〉そこで本研究では誘発筋電図によるM波を用い,神経筋電気刺激による最大筋力比(以下,%MVC)と静脈収縮期最高血流速度(以下,PSV)の関係を明確にすることを目的とし検討を行った.〈BR〉【方法】対象者は内科的,運動器的な機能障害がなく,静脈疾患の既往がない健常成人男性17名(年齢:22.1±3.9歳,身長:173.7±4.7cm,体重:71.3±16.1kg)とした.なお,被験者には本研究の趣旨を十分に説明し研究参加への同意を得た.〈BR〉M波の測定には,誘発電位装置を使用し,筋腹-腱導出法にて皿電極を用い,ヒラメ筋,アキレス腱に導出電極を貼付し,左下肢膝窩部で経皮的に脛骨神経を電気刺激し,M波を導出した.筋収縮強度はM波の振幅が最大となったところを最大筋力(100%MVC)とし, 100%MVCの振幅を基準に 75%,50%,25%の振幅をそれぞれ75%MVC,50%MVC,25%MVCとし算出した.〈BR〉PSV測定は,超音波診断装置を使用し,プローブはリニア深触子(7.5MHz)を用いた.被験者を体動がないよう安静背臥位とし,十分な休息後カラードプラ法にて左下肢の大伏在静脈を確認し,その位置でプローブを固定し,パルスドプラ法にて安静時PSVの測定を行った.その後,盲検化を目的に無作為に100%MVC,75%MVC,50%MVC,25%MVCを選択し刺激したときのPSVを測定し,比較検討を行った.〈BR〉統計処理には一元配置分散分析を用い有意差を認めた場合には,多重比較検定比較にGames-Howell法を用い検定した.なお,いずれの有意水準も危険率5%未満とした.〈BR〉【結果】各刺激強度でのPSVは,安静時5.0±5.2cm/sec,100%MVCでは20.3±7.5cm/sec,75%MVCでは19.6±8.5cm/sec,50%MVCでは15.5±6.0cm/sec,25%MVCでは12.2±6.4cm/secであった.一元配置分散分析の結果,有意差を認めた(p<0.01).Games-Howell法の結果,安静時と各%MVCでのPSV(p<0.01),100%MVCと25%MVCでのPSV(p<0.05)の間にて有意差を認めた.〈BR〉【考察】誘発電位装置での下腿三頭筋への神経筋電気刺激による%MVCを用いて筋収縮強度の違いによるPSVの変化について比較検討した結果,安静時と比較し100%,75%,50%,25%MVCでの筋収縮強度によりPSVが有意に上昇した.静脈還流の駆動力は骨格筋によるミルキング作用により促されるとされている.本研究の結果より安静時と比較すると25%MVC以上での下腿三頭筋収縮強度でミルキング作用が寄与しPSVが上昇したことが示唆された.〈BR〉また,100%MVCと25%MVC間でPSVの有意差を認め,%MVCの増加に伴いPSVが上昇する傾向がみられた.下腿三頭筋収縮強度を増すことにより筋収縮に参加する筋線維が増加し,ミルキング圧が増大することによってPSVが上昇したと推考された.〈BR〉以上より,ミルキング作用によるPSV変化は筋収縮強度が強いほど効果的であると考えられ,DVT予防としての足関節自動運動は下腿三頭筋の最大筋力での筋収縮強度が望ましいことが示唆された.〈BR〉また,理学療法場面で自動運動が出来ない患者において神経筋電気刺激によりミルキング効果があることが示唆され,臨床応用できると考えられる.〈BR〉今後の課題として,肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインではDVT予防として自動運動を推奨しており,自動運動による筋収縮力とPSV変化の関係についての検討,自動運動・弾性ストッキング等の他の予防法と神経筋電気刺激との検討をする必要がある.〈BR〉【まとめ】安静時と比較すると25%MVC以上の筋収縮強度でミルキング作用によりPSVが上昇することが示唆された.〈BR〉また,ミルキング作用は筋収縮強度が強いほど効果的であると考えられ,DVT予防としての足関節自動運動は下腿三頭筋の最大筋力での筋収縮強度が望ましいことが示唆された.
  • 山田 哲也, 新屋 順子, 土屋 忠大, 中神 孝幸, 中山 禎司, 平岩 卓根
    セッションID: O-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】心臓血管外科手術後のリハビリテーション(以下リハ)では, 社会復帰を目的に,全身状態に留意しながら早期離床を行い,合併症や廃用症候群の予防につとめている.しかし,術後にせん妄が発生すると術後の全身管理に支障を来し,リハの遅延から離床に難渋することが多い.今回,当院の心臓血管外科手術後のせん妄発生状況を調査し,理学療法(PT)介入の阻害要因となり得るかについて調査したので報告する. 【方法】平成22年1月から12月までの期間に当院心臓血管外科で手術を施行し,PTが処方された開心術,冠動脈バイパス術,大血管手術後の41例を後方視的に調査した.術前より歩行が自立していなかったもの,手術を繰り返したもの,術後抜管せずに死亡された症例は除外した.術後に不穏状態を認めたものをせん妄群,認めなかったものを非せん妄群と2群に分類した.PT介入病日,術後抜管病日,歩行開始病日,術後在院日数,転帰を調査した.統計学的処理は,2群の差の比較にはMann WhitneyのU検定,割合の差の比較にはカイ二乗検定を使用した. 危険率5%未満を有意とした. 【結果】術後不穏症状がみられたものは19例,みられなかったものは22例であった.せん妄群は年齢53~87歳(中央値75.0),男性14例,女性5例,待機手術15例,緊急手術4例であった.非せん妄群は年齢33~81歳(中央値71.5)),男性10例,女性12例,待機手術21例,緊急手術1例であった.年齢,男女比,待機手術と緊急手術の割合は2群間で有意差はみられなかった.術式(弁置換・弁形成術/冠動脈バイパス術/人工血管置換術/弁置換とバイパス術や人工血管置換術の複合術/その他)はせん妄群では(4/3/9/2/1),非せん妄群では(13/6/2/0/1)であった.術前に既往症を有していたものはせん妄群で19例中15例,非せん妄群では22例中16例であり主な既往症は両群ともに高血圧症,高脂血症,糖尿病,腎不全等であった.術後合併症はせん妄群では19例中8例,非せん妄群では22例中6例であり,せん妄群では腓骨神経麻痺の発生が3例みられた.PT介入病日はせん妄群では術後介入13例(1~12日) ,非せん妄群では術後介入12例(1~6病日),であり有意差はみられなかった.術後の抜管病日はせん妄群0~29病日(中央値2.0),非せん妄群0~5(中央値1.0)であり有意にせん妄群で遅延していた.術後歩行開始病日はせん妄群では2~52病日(中央値9.0),非せん妄群では2~26病日(中央値4.0)であり有意にせん妄群で遅延していた.術後在院日数でもせん妄群6~106病日(中央値37.0),非せん妄群11~49病日(中央値25.5)であり有意にせん妄群で長期化していた.転帰(自宅退院/転院/死亡)はせん妄群(15/3/1)であり,転院の理由は長期臥床による廃用症候群,嚥下障害,院内転倒による大腿骨頸部骨折であった,非せん妄群では(22/0/0)であり全例自宅退院された.自宅退院と転院または死亡退院の割合は2群間で有意差は見られなかった. 【考察】せん妄群では有意に抜管病日が遅延しており, その原因として,術後の病態が重篤であったことが推察される.術後の全身管理に伴う長期人工呼吸器管理はせん妄発生リスクの一つであると考えられた.術後抜管病日が遅延するために,その後の歩行開始病日が遅れ,術後在院日数の長期化もみられたが,転帰では2群間で有意差がみられなかった.せん妄発生により術後在院日数は長期化するものの,理学療法士の介入により概ね入院前のADL能力を獲得し,自宅退院が可能であったと考えられた.術後のPTでは人工呼吸器管理中は肺合併症や,拘縮予防,ポジショニングを行い,臥床期間中ではベッド上にて廃用症候群を予防し,離床がスムーズに行えるよう努めることが重要であると考えた.せん妄の発生は離床の遅延に繋がることがあるが,病状に応じた適切なPTの介入により, ADL獲得が望めるものと考えた. 【まとめ】今回心臓血管外科手術後患者のせん妄発生状況を調査し,PT介入の阻害因子となり得るかについて検討した.せん妄群では有意に抜管病日,歩行開始病日が遅くなり,術後在院日数が長期化していたが,転帰では2群間で有意差はみられなかった.せん妄発症により術後在院日数が長期化するものの,患者の状態に合わせてPTが介入することで,概ね自宅退院が可能であったと考えた.
  • 和久田 未来, 西田 裕介
    セッションID: O-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     有酸素運動や呼吸統制による迷走神経活動の賦活化は、内部障害系疾患患者の血圧や血糖値、HbA1cなどを改善できることが報告されている。また、内部障害系疾患患者は、圧受容器反射感受性(Baroreflex sensitivity:BRS)の低下により、安静時の迷走神経活動が退縮しているとの報告もある。BRSは迷走神経活動と同等のものとして扱われ、圧受容器反射の特徴からBRSを高めることで、迷走神経活動を賦活できる。これらの報告から、迷走神経活動を直接的に調節している圧受容器反射の感受性を高める介入には意義があるといえる。本研究では、BRSを高める手段として頭低位に注目した。頭低位は、重力による静脈還流量の増加が圧受容器反射を惹起し、BRSを高めることができると考えられる。そこで本研究では、迷走神経活動を賦活させる手段としての頭低位の有用性を確立するために、「頭低位の介入により、また、頭低位角度が大きいほどBRSを高めることができる」という仮説を立案し検証した。
    【方法】
     対象は、内部障害系疾患の既往と喫煙習慣のない健常男性10名(年齢23±3歳、身長171±8cm、体重61±7kg)とした。プロトコルは安静5分、頭低位5分、回復5分の合計15分間で、頭低位は6°と10°の2種類を実施し、測定順序はランダムとした。一連のプロトコルを通して、CM5誘導法を用いて心電図のRR間隔を測定し、心拍変動解析から迷走神経活動の指標であるrMSSDと予測BRSを算出した。予測BRSの算出にはMork et al.(2009)によって作成された回帰式(LogLF=1.67+0.78×LogBRS)を使用した。統計学的分析は、安静と頭低位との比較に対応のあるt検定を用い、有意水準は危険率5%未満とした。また、頭低位による自律神経の変化を明確とするため、呼吸数を1分間に15回(呼気:吸気=2sec:2sec)の統制を行い、24時間前からアルコールとカフェインの摂取、高強度の身体活動を避け、当日は測定2時間前からの食事摂取も控えて頂いた。なお、本研究は聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得ており、実験の対象者には研究目的を紙面及び口頭で説明し、同意を得てから実施した。
    【結果】
     頭低位6°の介入では、rMSSD(安静:55.8±20.0、頭低位6°:57.9±24.2)と予測BRS(安静:38.2±37.3、頭低位6°:49.8±54.1)の両指標において、安静と比較して有意な増加は認められなかった。一方、頭低位10°の介入では、rMSSD(安静:53.4±16.2、頭低位10°:61.4±21.5)と予測BRS(安静:23.8±16.0、頭低位10°:51.6±49.6)おいて、安静と比較して有意な増加を示した(p<0.05)。
    【考察】
     迷走神経活動の指標であるrMSSDと予測BRSは、安静時と比較して頭低位6°では有意差は認められなかったが、頭低位10°では有意に高値を示した。両指標は、値が大きいほど迷走神経活動が賦活していることを示しており、頭低位10°において、迷走神経活動が賦活したことが分かる。つまり、仮説であった「頭低位の介入により、また、頭低位角度が大きいほどBRSを高めることができる」は証明されたことになる。Fu et al. (2000)により、頭低位6°で一回拍出量が有意に増加すると報告されていることから、頭低位6°においても重力の影響により静脈還流量が増加することが推測される。しかし、本研究の結果より、頭低位6°では迷走神経活動を賦活させることができなかった。この理由として、頭低位6°における静脈還流量の増加が、圧受容器反射の閾値を越えるだけの変化でなかったと考えられる。つまり、頭低位6°と10°との間に圧受容器反射を惹起させる閾値が存在して可能性があり、静脈還流量を増加させることができるとされる腹式呼吸等を併用することで頭低位6°においても圧受容器反射を誘発させることができる可能性も示唆している。
    【まとめ】
     健常男性における短時間頭低位の介入では、頭低位10°においてBRSを高め、迷走神経活動を賦活できることが分かった。頭低位は運動耐容能の低く、有酸素運動等の介入が困難な患者に対しても、背臥位にて処方が可能であり、迷走神経活動を賦活できる手段と成り得るといえる。最終的には、健常高齢者や疾患患者が対象であり、健常男性を対象とした本研究は、頭低位の有用性を確立するための基礎的な研究として意義のあるものであると考えている。
  • 大崎 泰信, 沼田 秀人, 塚本 彰, 糸川 秀人, 池田 達則, 桶家 一恭, 山本 正和
    セッションID: O-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,高齢心不全患者は増加傾向にあり,再入院を繰返すことが問題となっている.再入院の要因として,医学的要因よりも塩分や水分制限および内服の不徹底,過負荷での運動など自己管理不足によるものが多いとの報告が散見される.高齢者は身体機能や認知機能の低下により,心臓リハビリテーション(以下,心リハ)の指導や教育内容を退院後も継続していくことが難しいものと予測される.患者の自己管理を補うためには,介護保険等の社会資源の積極的活用や在宅訪問スタッフによる患者教育・指導などの支援体制が重要視されている.
     当院心リハでは,退院後に介護保険サービスを利用している高齢心不全患者の中にも再入院する患者が多くみられる.そこで,心不全再入院患者の介護保険サービス利用の有無に視点を当てて現状を調査し,今後の課題について検討したので報告する.
    【方法】平成21年1月から平成22年5月までに心リハ依頼のあった65歳以上の高齢心不全患者のうち,自宅退院後1年以内に心不全増悪で再入院した55例(男性:30例,女性25例,平均年齢82.6±5.8歳)を対象とした.介護度の内訳は,要支援12例,要介護1が10例,要介護2が12例,要介護3が4例,要介護4が3例,要介護5が0例であった.サービス利用内容としては,訪問介護やデイサービスの利用が大部分を占めていた.
     対象を,介護保険サービス利用群(以下,利用群)36例と介護保険サービス非利用群(以下,非利用群)19例の2群に分け,年齢,左室駆出率(EF),退院時BNP,退院時歩行レベル,再入院までの期間(退院後3ヶ月以内,退院後6ヶ月以内),同居者の有無を診療録より後方視的に調査した.退院時歩行レベルは,病棟トイレ歩行が自立していた症例を歩行自立として調査した.統計処理は,年齢,EF,退院時BNPにはMann-WhitneyのU検定を用いた.また,各群で歩行自立症例,3ヶ月以内に再入院した症例,6ヶ月以内に再入院した症例,独居者の比率についてχ2検定を用いて比較した.いずれも,危険率5%未満を有意水準とした.
    【結果】年齢は利用群が84.0±5.3歳,非利用群が79.8±5.9歳であり,EFは利用群で54.7±14.3%,非利用群で50.2±21.4%であった.退院時BNP値は利用群で415.0±442.3pg/ml,非利用群は296.6±210.3pg/mlで両群ともに高値であった.年齢は,利用群で有意に高齢であったが,EF,退院時BNPでは有意差を認めなかった.また,歩行自立症例は利用群47.2%,非利用群89.4%であり,非利用群で有意に高率であった.退院後3ヶ月以内に再入院した症例は利用群69.4%,非利用群42.1%,退院後6ヶ月以内に再入院した症例は利用群86.1%,非利用群57.8%であり,いずれも利用群で有意に高率であった.独居者につては利用群8.3%,非利用群15.8%あり,有意差を認めなかった.
    【考察】退院後1年以内に心不全増悪で再入院した症例は55例(41.0%)で,そのうち介護保険サービスを利用している症例は,36例(65.4%)と高率であった.介護保険サービス利用群は高齢であり,歩行自立度が低ことからADLそのものが低下していることが考えられた.また,退院時のBNPが高値の傾向にあり,退院後早期に再入院する症例が多いことから,心不全の管理がより困難な症例が多いものと考えられた.家族構成については,独居者に有意差はなかったが,嶋田らの報告では,独居者の再入院率が高かったと報告していることより,今後症例数を増やして再検討する必要があるものと思われた.
     高齢心不全患者の自己管理を支援するにあたり,介護保険サービスを利用している心不全患者は,より厳重な疾病管理が求められる状態にあると思われる.よって,退院後に心不全増悪を予防するには,患者と密に関わる機会がある地域介護スタッフの果たす役割は大きなものと考えられるが,心リハでの教育や指導内容について病院側から地域介護スタッフへの詳細な情報提供が必要不可欠と思われる.当院においては,退院時に経過報告書などにより情報提供を行っているが,心不全管理に対して統一的な形式にはなっていない.松崎らの報告では,「心不全地域連携シート」を作成し,患者の病態や注意してほしいポイントを具体的に提供することで,再入院が減少したと報告している.今後当院においても明確な情報ツールを作成し,退院後も心リハの指導内容を継続してもらえるような地域連携に対する取り組みを検討することが課題として考えられた.
    【まとめ】高齢心不全患者の介護保険サービス利用患者は,より厳重な心不全管理が必要と思われた.そのためには,病院側からの明確な情報提供が必要不可欠と考えられ,当院においても,より密な地域連携に取り組むことが必要と思われた.
  • 曽我部 知明, 曽我部 芳美, 辻野 陽子, 佐野 裕之, 新木 隆史
    セッションID: O-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】住宅改修に理学療法士(PT)が関わる機会は多いが、建築士・施工業者などとのコミュニケーション不足や連携を行う上でのお互いの知識不足により、サービス利用者(利用者)の満足の行く改修が行えないことを経験する。〈BR〉今回、演者が所属するボランティアサークルの高齢者と障がい者の住まいと暮らしの相談会(高障研)へ相談があった筋ジストロフィー症患者(相談者)の住宅改修を通して、他職域との連携の取り方やPTとして求められる専門性を検討したので報告する。 【方法】対象は40代男性、一人暮らし。社会資源は身体障害者手帳2級、介護保険要介護度2、介護サービスとして週7時間の調理の家事援助の利用をしていた。生活状況は両手杖を使用し屋内・外の移動を行い、ADL完全自立、車の運転が可能であった。平成22年5月上旬に自宅内で転倒し右下腿骨折を受傷した。近医を受診した結果、保存的加療での自宅療養となり右下肢完全免荷の指示が出た。そのため生活空間が居室のみと行動の制限をされた。受傷後の介護サービス利用状況は洗面器、ポータブルトイレでの排泄の介助と後始末、入浴は出来ず身体清拭の身体介助を週3.5時間、週7時間の調理の家事援助であった。〈BR〉高障研へトイレ改修の相談の形で依頼があったため、平成22年5月下旬にPT、建築士、作業療法士と共に在宅訪問し動作分析を行い、改修へのアドバイスを施行した。相談者の希望は車の運転がしたい、トイレでの排泄が自立したいであった。〈BR〉PTによる身体機能評価、動作分析として上肢機能は良好であるが、両下肢は受傷前より伸展位での拘縮が強いことが分かった。動作は四つ這いやずり這いでの屋内移動が可能で、屋外にある電動車椅子へのPush upでの移乗動作や屋外の電動車椅子移動が可能であることが分かった。訪問実施後もメールにて相談者、他職域間との意見交換を行い移乗補助具の作成とトイレの改修を行うこととなった。 【説明と同意】研究協力症例に対し説明を行い、文章にて同意を得た。 【結果】トイレ改修は6月上旬に、移乗補助具は7月上旬に完成した。トイレは、Push upの能力に合わせ居室内に水洗トイレを埋め込む改修を行うことで動作自立となった。移乗補助具を使うことによって車への移乗が可能となり、車の運転が再開できた。その後の介護サービスは、受傷前と同様の週7時間の調理の家事援助のみの利用となった。介護保険要介護度1へ改善した。9月上旬に荷重許可が出たが、以前のように歩行することは困難になった。しかし、それ以外のADL、IADLに関しては受傷前と同様の状態に改善した。 【考察】今回のケースは身体機能の廃用化が軽度な状態で対応できたが、介入がなければ寝たきりに陥る危険性があったといえる。PTとして身体機能に対して直接的な対応は行っていないが、専門職としての動作分析を行いそれに基づいた環境調整を行うことで、相談者に自分の動作能力でも生活が可能になるという希望を与えることが出来た。〈BR〉当初はトイレ改修での相談であったが、相談者とコミュニケーションを重ねるうちに、実はトイレ改修よりも車が運転したいという強い希望があることが分かった。自宅の居室内のみと行動範囲を制限されたことにより、非常に強いストレスを感じていることが伺えた。そのため、トイレ改修に並行して移乗補助具の作成も行うことになった。それによって相談者からの前向きな意見が多く聞かれ、その意向に沿った対応を行うことで相談者が満足のいくトイレ改修、移乗補助具の作成が行え、結果的に受傷前のような自主性の高い生活を取り戻すことが出来た。 【まとめ】PTの行う身体機能評価、動作分析は利用者の生活の自立度、満足度を高めるための住宅改修や福祉用具の導入にあたり重要な情報である。利用者の満足度を高めるためには真のニードを把握し、それを実現するために専門職が連携することが重要である。専門職によるサービスを希望する潜在的な高齢者、障がい者は多いが、それを拾い上げるためのネットワークが不足しておりそのネットワーク作りの必要性を強く感じた。
  • 小田 知矢, 眞河 一裕, 小林 靖
    セッションID: O-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     愛知県西三河地区岡崎医療圏では2008年11月より“脳卒中地域連携パスby scone”(以下、脳卒中パス)を運用している。運用を開始して2年が経過した。計画管理病院である当院は脳卒中パスのデータを回収し、その分析を行っている。そこで今回2009年1年間に適用になった全データをまとめ、当医療圏における脳卒中医療の最終結果を報告する。また、脳卒中パス適用患者のリハビリテーション(以下、リハビリ)結果について脳梗塞と脳出血に分け比較検討した。
    【方法】
     脳卒中パスの電子的データをもとに2009年に適用した187名のデータを分析した。リハビリ項目である脳卒中機能障害評価表(以下、SIAS)と機能的自立度評価表(以下、FIM)の結果を集計した。加えて、全データを脳梗塞と脳出血の各データに分け詳細に分析し比較検討を行った。また、当医療圏でのリハビリ医療の質の検討として回復期病棟入院期間におけるFIM効率を算出し全国平均と比較検討した。
    【結果】
     2009年の1年で急性期病院を退院した脳卒中患者の内187名(適用率34.2%)に脳卒中パスが適用された。適用症例187名中バリアンスは22例(発生率11.8%)であった。バリアンスを除いた165例では平均在院日数:脳梗塞 急性期病院31.1日 回復期病院87.1日 脳出血 急性期病院32.5日 回復期病院101.2日であった。SIAS合計点の平均値:脳梗塞 急性期入院時48.8 転院時51.9 回復期退院時58.9 脳出血は同時期で40.2→46.4→55.1へと両者とも有意に改善した(p<0.05)。脳梗塞と脳出血間の比較では急性期開始時のみ有意な差がみられた(p<0.05)。FIM合計点の平均値:脳梗塞 転院時75.8 回復期退院時91.7 脳出血では同時期で69.1→94.6へと有意に改善した(p<0.01)。脳梗塞と脳出血の比較では各時期ともに有意な差はなかった。FIM効率は脳梗塞0.19 脳出血 0.26 脳卒中全体 0.20であった。発症からリハビリ開始までの日数は平均で脳梗塞3.13日、脳出血4.37日であり有意に脳出血の方が長かった。アウトカムとして発症前在宅率98.2%に対し、回復期病院退院後転帰では自宅復帰率83.6%であった。
    【考察】
     脳卒中パスを使用することで医療圏内での患者の症状の変化、在院日数、アウトカムとしての最終転帰が明確になった。また、共通したリハビリの評価が可能になり個々の症例の神経症状の改善とADL能力の推移が客観的に評価可能となった。今回の結果から脳梗塞も脳出血もリハビリ経過とともに神経症状とADL能力は有意に改善した。積極的なリハビリが患者の機能改善に寄与したことがうかがえる。その結果、退院後の在宅復帰率が83.6%と好結果になった。当医療圏における脳卒中パス適用患者の回復期病棟入院中のFIM効率は平均で2.0点であった。回復期リハビリテーション病棟協議会の示す全国平均は約0.18点であり当医療圏におけるリハビリの質は良好であったことが示唆された。脳梗塞と脳出血の病態間の比較では、急性期病院での発症からリハビリテーション開始までの日数が脳出血の方が約1.2日有意に長かった。加えて、急性期病院でのリハビリ開始時のSIASの合計点は脳出血で有意に低い値を示し急性期入院期間中継続していた。これは急性病態において特に血圧の管理に重点が置かれ安静臥床、投薬管理の必要性が生じたためと考えられる。また、神経症状の低下が有意に出現していることから発症直後の病態の不安定さが脳梗塞に比べ大きいのではないかと考えた。今回の結果から脳出血は在院日数が長くなるものの回復期退院時には脳梗塞患者と同等なADL能力を獲得出来た。したがって脳出血患者の急性期リハビリ中のリスク管理は非常に重要であり且つこの時期に起こり得る廃用症状の予防に配慮していけば十分に機能改善が得られることが示された。在宅復帰率向上のためには、急性期から症状に即したリハビリを立案し、質的、時間的に切れ目のないリハ連携の向上を目指していく必要がある。
    【まとめ】
     “脳卒中地域連携パスby scone”運用1年間の結果をまとめた。 脳卒中パスを使用することにより医療圏内で共通した尺度での評価が可能になり、患者の病態の変化が客観的に示された。今回脳出血患者の病態の推移が明らかになり、急性期リハビリでのリスク管理の重要性と回復期病棟での積極的なリハビリがADL能力の獲得に有用であることが示唆された。
  • 徳力 康治, 北沢 友衣, 伊藤 亜希子, 松尾 幹子, 藤井 珠江, 葛巻 知子, 藤島 千里
    セッションID: O-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】〈BR〉当院では、医師をはじめ、訪問看護師が、終末を在宅でと希望する患者や利用者と家族の支援を可能な限り実践している。その中には、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)で終末期に理学療法士(以下PT)が係わるケースも存在する。〈BR〉今回我々は、理学療法士がほぼ同時期に2例の終末期に係わるケースを経験し、1例目は在宅死、2例目は在宅死を希望しながらも最終的に病院死となった症例について若干の考察を加え報告する。尚、症例については、家族の同意を得ている。〈BR〉【当院における臨死教育】〈BR〉当院では、訪問看護ステーションに於いて、在宅での看取りを希望する場合、パンフレットを活用し利用者家族の不安を解消する取り組みを行っており、死後は、エンゼルケアやグリーフケアも行っている。また、併設する通所リハビリ・通所介護でも利用者に対し、いずれ自分にも訪れる「死」を意識した臨死教育の取り組みを行っている。〈BR〉【症例1】〈BR〉 90歳代女性 要介護5 主介護者:娘  約20年前脳梗塞発症、その後脳梗塞を再発し訪問看護、訪問リハ、通所リハ、ショートステイ、訪問介護などのサービスを利用しながら在宅生活を継続していた。〈BR〉理学療法プログラムは、関節可動域維持、車いすトランスファー、坐位保持、ポジショニングを行っていた。〈BR〉【経過】 平成22年12月初旬、在宅で意識レベル低下、医師往診の結果脳梗塞の再々発で、ターミナルと判断、家族に説明し今後の意向を聞いた所、「静かに在宅で看取りたい」との希望で、具体的には、必要最小限の医療行為で対応する事、訪問リハ、看護は継続して欲しいとの事であった。亡くなるまでに2度訪問リハを実施、最後の訪問リハでは、マニュアルコンタクトや関節可動域運動を行いながら、家族から本人の思い出話や、遺影の写真をどれにするか等の話を傾聴した。家族も長年に渡り献身的に介護をしてきた事もあり母親の死を受け入れる準備が出来ている様子が伺えた。〈BR〉【症例2】(BR) 60歳代男性 要介護5 主介護者:妻 平成19年両側小脳及び両側後頭葉梗塞発症、両側難治性乱視、両側同名半盲にて訪問リハ、訪問看護、通所リハ、訪問介護を利用し在宅生活していた。〈BR〉理学療法プログラムは、関節可動域維持、協調性運動、基本動作練習、介助での歩行器歩行を行っていた。〈BR〉【経過】 平成22年2月 肺癌の診断を受ける。その時点で、本人と家族には告知される。診断の結果を受けサービス担当者会議開催、本人は自宅で最期を迎えたいと希望あり、家族も本人の願いを叶えたいとの意思を確認、症状が悪化するまでは現状のサービスを継続する事が確認された。8月には嗄声が出現、10月には胸部痛と疲労感、食事量、水分摂取量が減少してくる。10月末、呼吸困難感出現し点滴など医療行為が増えた為、訪問リハが一時中止となるが、本人の希望で11月は不定期で訪問リハ再開となる。その理由は、理学療法士の訪問で、精神的不安の解消、関節拘縮の予防、呼吸困難感の軽減の為であった。12月初旬、呼吸困難感と訪問看護師への緊急コール頻回となり、在宅生活は介護負担から困難と医師が判断し入院となり約1週間後に死亡となる。PTが面会に行った時には妻から「苦しそうで見ていられなかった、最期を在宅でと希望していた本人には悪いが、病院に入院して安心した」との話を伺った。〈BR〉【考察】〈BR〉理学療法士は、医師や看護師の様に臨終の場面まで係わる事は無い。しかし、理学療法士の用いる技術が終末期の患者(利用者)のQOL向上に貢献できる事もある。太田は、終末期リハビリテーションの具体的目標として8つの項目を提唱している。今回の症例に於いても、チームで具体的目標に沿った対応を行った。本症例は、終末期以前からの係わりであり、本人や家族との関係も構築できていた為、終末期訪問リハの最大の効果は、本人または家族の不安解消であったと考える。また本人や家族が、死期を理解していても、関節可動域の維持や動作能力の維持を行う事は、人間としての尊厳を保つ為にも重要であったと考える。〈BR〉症例2に於いては、本人は最後まで在宅で過ごす事を望んでいたが、呼吸困難感が出現する病状で苦しさを目の当たりにする為、介護者の不安と負担が増してしまい本人の希望に添えず病院で最期となった。在宅では、家族で過ごす時間が増える半面、医療スタッフが常にいる環境にない為、最終的には家族の意向に沿う対応が必要である事を感じた。千葉も在宅で最期を迎える為には、本人と家族の思い、実際の病状と介護力がかみ合わないと看取りは難しいと述べている。〈BR〉今回の症例を通して経験させて頂いた事を今後の終末期リハへの係わりに役立てていきたい。
  • 水上 正樹, 三浦 健洋, 小山 吉昭, 守 雅之, 清光 至
    セッションID: O-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高齢化社会に伴い重度要介護者、認知症を有する高齢者が増え、核家族化が進む中、家族介護が十分でない場合も多く介護問題は高齢者の抱える最大の不安要因と考えられる。一方、訪問リハビリ(以下:訪問リハ)は早期介入することで、それら不安要因に対して有効に働きかけることが期待できる。今回、訪問リハ利用者の動向からその効果について検証したので報告する。 【方法】当院では定期的に日常生活動作能力を把握するため、機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:FIM )を用いている。今回、訪問リハ開始から6ヶ月間の効果を検証するため、平成21年9月から平成22年9月の新規利用者88名の内、6ヵ月間訪問リハを継続した50名(男性20名、女性30名)を対象とした。平均年齢76.08±9.3歳(男性76.2±10.43歳、女性76.0±8.65歳)、介護度は要支援1は2名、要支援2は9名、要介護1は7名、要介護2は9名、要介護3は7名、要介護4は10名、要介護5は6名であった。検証方法は1)入院期間から在宅生活を想定して訪問リハの利用を検討し、退院後早期に訪問リハを開始した群(早期群28名:平均開始期間5.53±4.07日)と、在宅生活を送りながら身体及び動作能力の低下、介護負担を感じて訪問リハを開始した群(非早期群22名)間と、2)疾患別では、脳血管群:23名、運動器群:8名、廃用群:19名間において検証した。また3)日常生活動作の維持・拡大のため重要である『トイレ動作』『トランスファー』『歩行』を区別し、各々の項目の「しているADL」のFIM値から訪問リハの効果について検証した。それぞれFIM値を基にt検定を用いて統計学的有意差を求めた。有意水準は5%未満とした。 【結果】早期群の訪問開始時の平均FIM値77.39、3ヵ月後の平均FIM値81.53、6ヵ月後の平均FIM値81.89間に有意差を認めた。非早期群の開始時平均FIM値85.09、3ヶ月後の平均FIM値88.45間に有意差を認めたが、6ヵ月後の平均FIM値は87.68と低下した。脳血管群と運動器群において開始時平均FIM値と6ヵ月後の平均FIM値間に有意差を認めた。廃用群は開始から3ヵ月後の平均FIM値は向上、6ヵ月後の平均FIM値は低下した。『トイレ動作』『トランスファー』『歩行』の中で脳血管群と運動器群の『トランスファー』は、開始時と6ヵ月後の平均FIM値間に有意差を認めた。廃用群は開始から3ヵ月後は各項目で平均FIM値の向上はみられたが有意差は認めなかった。 【考察】今回、訪問リハは早期介入により6ヵ月間に渉り訪問リハの効果が得られることがわかった。これは入院期間中のリハビリ効果を継続させ、退院後も生活に密接に溶け込んだ中で訪問リハを提供することで、さらにリハビリ効果を得ることができたと考える。非早期群は開始から3ヵ月間、平均FIM値の向上を認め一定の効果を得られたが、3ヵ月以降は利用者間の介入時期の差も影響しており、維持期の利用者が含まれているため有意差を認めなかったと考える。疾患別では、脳血管群と運動器群において開始から6ヵ月の間、『トイレ動作』『トランスファー』の平均FIM値の向上を認め、『トランスファー』の項目においては有意差を認めた。トランスファー能力が向上した結果、介助を必要とすることもあるが離床機会が増えたことにより、日常生活動作の維持や拡大、廃用予防につながったと考える。また在宅生活を送りながら、離床に必要な能力を引き出すことができたことからも訪問リハは有効であることが確認できた。廃用群は介入するも十分な効果を認めず、3ヵ月を境に平均FIM値は低下した。これは廃用群の多くに離床する際に中等度程度の介助を必要とする傾向があり、次第に離床する機会を失い、活動量の減少を生じ、さらに身体機能や動作能力の低下を招いたためと考える。日常生活の中で、「しているADL」を少しでも増やすことは重要であり、利用者や家族が訪問リハ以外の時間をどのように過ごすかが、身体機能や動作能力の維持・向上に大きく影響する。今後、6ヵ月以降の利用者の動向を検証することで訪問リハの有効期間や終了時期、他のサービスへの移行期等について検証することができると思われる。 【まとめ】北野は退院後、在宅生活が始まる1ヶ月間の「在宅導入期」は利用者や家族の不安・負担が大きくトラブルが起こりやすく、上手くこの時期を乗りきることが重要と述べている。介護負担が大きい場合、家庭生活が崩壊することもあり、早期から訪問リハを始め効果的なリハビリを提供することで身体的要素の回復が得られ、動作能力向上、日常生活動作の拡大につながり、介護負担軽減にも大きく影響する。利用者を含め家族等が生活を送る中、いかに早い段階で実用的な「しているADL」を向上・獲得できるかが重要であり、適切に介入することで自立した生活や介護量軽減につなげることは十分に可能であると考えられた。
  • 山下 正浩, 村松 完至, 棚橋 俊人, 太田 邦昭
    セッションID: O-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    演者の勤務する整形外科では、平成20年より太田の開発した姿勢矯正体操(パピーポジションと背殿位上体起こしの組み合わせ)を様々な症例に対して指導し、一定の効果を体感してきた。 その詳細は、第23回日本臨床整形外科学会において太田らにより報告された。
    今回当院で行っている姿勢矯正体操(以下矯正体操)が変形性膝関節症(以下膝OA)と診断された症例に対してどのような効果があるか、従来の大腿四頭筋訓練と改善度比較を行い検証した。
    【方法】
    膝OAと診断された10例に対して、矯正体操前後に10m通常歩行時間および歩数、10m努力歩行時間および歩数、VAS、加重検査を行った。期間は平成22年6月~平成23年1月。初めて矯正体操を行う者に限った。対象は男女比が1:9、年齢は51~80歳、JCOM平均は60.1。
    これを介入群とし、対照群として、膝OAと診断された他10例に同様の検査を、大腿四頭筋訓練前後に行い改善度を比較した。期間は平成23年4月~5月。初めて、もしくは殆ど大腿四頭筋訓練を行っていない者に限った。対照群は男女比が2:8、年齢は56~81歳、JCOM平均は61.5。
    加重検査は、ANIMA社製のGRAVICORDER GS31Pを使用した。
    矯正体操は、初めにパピーポジションをとり、臍が台から離れないように5秒保持し下ろす。これを5回繰り返す。次に背殿位となり、両手を大腿の上に置き手先が膝蓋に届くまでゆっくり上体を起こしゆっくり下ろす。これを5回繰り返す。
    大腿四頭筋訓練は、セッティング法を用い5秒キープを20回行った。
    【結果】
    前後比では、両群ともに平均値上改善が認められた。介入群では10m通常歩行時間で全例改善。10m通常歩行歩数で全例改善。10m努力歩行時間で9/10例改善。10m努力歩行歩数で8/10例改善。VASで9/10例改善。加重検査の加重バランスで9/10例に左右均等値への改善がみられた。 対照群では10m通常歩行時間で全例改善。10m通常歩行歩数で9/10例改善。10m努力歩行時間で6/10例改善。10m努力歩行歩数で8/10例改善。VASで9/10例改善。加重検査の加重バランスで3/10例に左右均等値への改善がみられた。
    改善度の群比較では、全ての検査において介入群が優位であった。中でも10m通常歩行時間、加重検査において対照群より介入群に有意な差が認められた。
    【考察】
    全項目において膝OAに対する矯正体操の有効性が示された。矯正体操では、パピーポジションにより腰椎の生理的前彎を促し、腸腰筋や腹筋群に対するストレッチ効果が得られたと思われる。また背殿位での上体起こしにより、腸腰筋や腹筋群の活動が再教育され、腰椎の支持性が高まり機能的な腰椎前彎保持に役立ったと考える。これらの効果により、歩容が改善され有効な膝伸展支持が可能となり、膝痛の軽減につながったと考える。具体的には、歩行時の立脚中期から立脚後期がより速やかに行えるようになったと推察する。
    改善度の差は立位バランスの矯正といった点において介入群に、より有効に働いたと思われる。
    特に通常歩行や立位バランスなどの、ほぼ無意識下で行われる動作において顕著に有効性が示されたといえる。
    【まとめ】
    膝OAに対して姿勢矯正体操を行う事は有効であると考える。体操は2種類の運動であり、その動作も簡便であるため覚え易く、即効性により理解も得られ易い。
    今後、膝OAのリハビリプログラムを作成するにあたり、姿勢矯正体操を組み合わせる事でより大きな効果が得られる可能性が示唆された。
  • 野呂 吉則, 瀬戸口 芳正, 百済 はつえ, 山口 尚子, 大熊 晶, 大東 亜衣, 前田 雅希, 梶間 康之, 小野 大輔, 樋口 善英
    セッションID: O-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】
     上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下 OCD)は,少年期の外側型野球肘として知られ,投球障害の中でも重篤な疾患である。進行すると,スポーツ活動が著しく制限され,日常生活でも障害が残ることがある。野球選手に起こるOCDは投球動作による繰り返される過剰な外反伸展ストレスにより、上腕骨内側上顆裂離骨折と共に起こるvalgus extension overload syndrome(以下 VEOS) の1つと考えられている。OCDに対するリハビリテーションは,肘関節機能の回復のみならず,その病因の1つである投球フォーム(以下 動的アライメント)の改善にも努める必要がある。当院では,投球中の肘外反ストレスは運動連鎖や動的アライメントに依存するものと考え(THABER concept)リハビリテーションを行ってきた。そこで,OCD手術症例の経過と当院の投球障害への取り組みを報告する。
    【方法】
     平成19年4月~平成23年5月までの当院を受診し,OCDと診断された患者73例73肘の中で,mosaic plastyを施行した24例の内,術後5ヶ月以上経過した手術症例21例を対象とした。対象の内訳は平均年齢14.5歳(12~17歳),術後経過平均観察期間12ヶ月(5ヶ月~4年),全例が男性の野球選手であった。なお,mosaic plasty は関連病院にて施行され,ほとんどの症例が術後1~2週間経過してから当院を受診している。リハビリテーションは,愛護的なROM-exから開始し、術後2ヶ月で全可動域の獲得を目指す。術後3ヶ月でMRI検査を行い、骨軟骨の回復が良好であればinterval throwing programを開始する。画像所見や臨床症状を考慮しながら,競技復帰は5~6ヶ月を目安としている。また,全例にはTHABER conceptのもとに,投球中の動的アライメントを改善すべく,ストレッチや筋機能改善訓練,投球動作練習を併用している。
    【結果】
     スポーツ復帰は,競技完全復帰18例(85.7%),他競技に変更1例,不完全復帰 1例,転院1例であった。18例の競技復帰時期については,術後4ヶ月2例,4.5ヶ月1例,5ヶ月3例,5.5ヶ月5例,6ヶ月6例,6.5ヶ月1例となった。
    【考察】
     mosaic plasty 術後症例21例の約86%を競技復帰へと導くことができた。また,競技復帰時期は全例が術後約6ヶ月以内であり,移植骨軟骨柱の修復過程と照らし合わせても良好な結果であると考えられる。Iwasakiらはmosaic plasty 後,経時的に上腕骨小頭のMRIを施行した結果,移植骨軟骨柱は術後6ヶ月で癒合し,12ヶ月で周囲とのゆるみを示す所見はないことを明らかにし,術後6ヶ月でのスポーツ復帰可能の根拠としている。
     当院では,移植骨軟骨柱の生着に着目し、定期的に画像検査を行い,修復過程を確認しながら運動を徐々に許可している。また,リハビリでは適切な肘関節機能の獲得と同時に,競技復帰に向けて,投球中の上腕骨小頭にかかる過剰なストレスを防ぐための患部外機能の改善に取り組んでいる。このように包括的に術後管理をしていくことが良好な結果に結びついたと思われる。冒頭にも述べたように,野球選手のOCDは投球中の繰り返されるストレスが関係していると考えられている。ブタの骨端の破断実験を行った研究において,幼弱ブタでは骨軟骨移行部の剪断強度が最も弱く,骨軟骨移行部あるいは軟骨下骨の損傷を生じやすいことが示唆されている。年少期のヒトも同様であるとすると,VEOSで説明されるように,投球中の肘外側にかかる圧迫・剪断ストレスがOCD発生の病因の1つである可能性は高いと考える。術後経過を長期的に考えると,投球中の上腕骨小頭へのストレスを減弱するための策を講じることは当然必要であろう。
     信原らは投球中の投球腕の軌跡がなす面をThrowing planeと呼んだ。我々は,投球中の最大外旋位で,空間的に十分な肩外旋がとれていれば、このThrowing planeに対し肘の屈伸の運動面(Elbow plane)が一致し、加速期での肘に作用する外反力は最小になると考えている。この場合の肩外旋は脊椎の伸展、肩甲胸郭関節の上方回旋や後傾、肩甲上腕関節の外旋といった身体運動の総計であり、肩甲上腕関節だけの外旋ではない。これをTHABER concept (Total Horizontal Abduction & External Rotation Concept)と称している。 現在のところ,復帰症例については順調な経過をたどり,競技復帰後の肩や肘の不調はほとんど認めていない。短期的には良好な成績であったと考えられる。
    【まとめ】
     投球肘OCD手術症例の経過と当院の投球障害への取り組みを報告した。mosaic plasty 術後症例に対し,THABER conceptを取り入れたリハビリテーションを行い,短期成績は良好であった。
  • 中村 壮大, 山下 淳一, 石野 麻衣子, 磯 毅彦, 黒澤 和生
    セッションID: O-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【はじめに】
    関節リウマチ(以下,RA)は,病態の進行とともに身体機能障害も重篤となり,日常生活動作(以下,ADL)に支障を来たすが,個々の障害像は様々である.RA患者に対する治療を行う中で,関節可動域制限や疼痛などの問題から,運動方法を工夫する必要性を日々感じている.今回,発症から長期経過したRA患者に対し,他動的な徒手的介入から関節相互の協調運動改善と自己管理として姿勢指導や自動運動へ移行する段階的治療介入を実施した.本報告では段階的治療介入を実施し,上肢機能を主としたADL能力の改善を認めた症例について報告する.
    【症例紹介】 70代女性(身長155cm体重52kg)主婦,右利き.昭和56年発症,投薬はプレドニゾロン1mg/日である.
    症例の希望は,洗濯物干し動作の改善であった.
    学会発表に関して,本人に説明し書面による同意を得た.
    【初期評価】 Barthel Index(以下,BI)100点,Face Scale(以下,FS)10/20,DAS28CRP2.51(臨床的寛解状態).関節可動域(右/左)は,肩関節屈曲105°/105°,外転100°/85°,外旋30°/10°,内旋55°/65°,肘関節伸展‐30°/‐35°.疼痛は,肩関節屈曲・外転時に肩峰下に数値的評価スケール(以下,NRS)4/10,両肘関節伸展時に3/10の訴えがあった.握力(右/左)は,水銀計を使用し88.0/92.0mmHgであった.
    【治療および経過】 治療は週6回60分間を8週間施行した.今回,上肢機能低下の原因として,肩関節挙上動作時に上腕骨頭が関節窩に引き寄せられる事で生じる関節可動域制限,軟部組織の柔軟性低下,疼痛が考えられた.このことから回旋筋腱板,上腕二頭筋,小胸筋,広背筋の異常な筋緊張や柔軟性低下,筋力低下が上肢機能低下の因子になることが示唆された.
    そこで,治療期間の前半は過緊張を呈した筋群の緊張軽減と疼痛緩和,関節可動域の改善に主眼をおいた.上肢の主な関節可動域制限の因子である回旋筋腱板,上腕二頭筋,小胸筋,広背筋の緊張軽減を目的に,横断マッサージを施行し,引き続き,軟部組織モビライゼーション後,ホールドリラックスおよびストレッチを実施した.
    自己管理としてのホームエクササイズは,ヘッドフォワード姿勢の改善や身体の正中位獲得を目的とした姿勢指導や肩甲骨面上での回旋筋腱板エクササイズ(肩甲骨面外転30°まで)などを併せて指導した.また,回旋筋腱板エクササイズでは内旋も外旋も必要のない肩甲骨面上外転運動Scaptionとし肩関節内・外旋中間位で行うよう指導した.
    治療介入4週目より疼痛の緩和,両肩・肘関節を主とする関節可動域の改善や関節安定性向上が認められ,積極的に自動運動を実施した.また,自動運動可能な最終可動域付近でのホールドリラックスを調節しながら実施し,上肢の機能向上に重点を置く練習に移行した.治療期間の後半では,回旋筋腱板の活動を促す事で上腕骨頭のコントロール改善や関節安定性向上を目的に,上腕骨を固定し三角筋の活動を抑制させた状態で回旋筋腱板に対する肩関節内・外旋運動を実施した.
    【最終評価】 BI100点,FS5/20,DAS28CRP2.04まで改善が認められた.関節可動域(右/左)は,肩関節屈曲130°/120°,外転100°/95°,外旋35°/15°,内旋75°/70°,肘関節伸展は最終可動域でのStiffnessを訴えたものの疼痛はNRSで1/10と緩和し,伸展‐10°/‐10°まで関節可動域は改善した.また肩関節屈曲・外転時に肩峰下で生じていた疼痛も1/10まで緩和した.握力(右/左)は104.0/100.0mmHgと向上した.治療介入後半には,洗濯物干し動作などADL能力の改善が認められた.
    【考察】 本症例はRA発症から30年程度罹患期間があり,全身的な関節可動域制限や疼痛,筋力低下が認められた.関節可動域制限や疼痛に対し,軟部組織モビライゼーションなど他動的な徒手的介入内容を中心に実施した事で,関節可動域の改善や疼痛の緩和が認められた.また自己管理としてのホームエクササイズでは,姿勢指導など正常な運動において必要な身体環境を調整した上で,積極的な回旋筋腱板エクササイズを施行することを指導した.エクササイズにより上腕骨頭のコントロールが改善し関節安定性が向上した結果,関節相互の協調運動が改善し,洗濯動作など上肢機能が向上したと考えられる.
    このように他動的な徒手的治療介入から関節相互の協調運動改善,自己管理として姿勢指導や自動運動を主体とした治療内容へ重点を移行する段階的治療介入を実施した結果,上肢機能が向上し洗濯物干し動作などADL能力の改善が認められた.
  • 笹谷 勇太, 中村 拓人, 増田 賢, 宮原 謙一郎, 徳田 裕, 塚本 彰, 鳥畠 康充, 糸川 秀人
    セッションID: O-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】静脈血栓塞栓症(以下,VTE)は,整形外科などの手術後の重篤な術後合併症であり,致死率が高いため予防が重要とされる.日本整形外科学会の静脈血栓塞栓症予防ガイドラインでは,長時間の車椅子座位は,下腿の静脈血流を低下させ血栓形成を生じるとしており,予防のために立ち上がりや歩行運動することを推奨している.しかし,VTE発症リスクの高い術後早期の患者は,疼痛や荷重制限などから歩行が困難であることが多く,車椅子座位を主たる移動手段とせざるを得ない.つまり,VTE発症のリスクが高い反面,推奨の予防運動を行うことが出来ず,反対に血栓形成のリスクが高い移動手段を選択する必要があるという矛盾を抱える.そのため,術後早期のVTEを予防するためには,車椅子座位のまま簡便に下腿静脈血流(以下,下腿血流)を改善させる方法を検討する必要があると考えるが,先行研究のほとんどが背臥位での報告であり,車椅子座位で検討した報告はみられない.
     今回の研究は,背臥位での先行研究で下腿血流の改善に効果的とされる,足関節自動底背屈運動(以下,パンピング),足型間欠的空気圧迫法(以下,フットポンプ),下腿型間欠的空気圧迫法(以下,カフポンプ)が車椅子座位保持時においては,下腿血流にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした.
    【方法】対象は,内科的,運動器的に機能障害のない健常成人11名(性別:男性8名,女性3名).年齢25.2±8.3歳.身長168.3±8.5cm.体重63.1±8.3kg.なお,被検者には,本研究の趣旨を十分に説明し,研究参加への同意を得た.
     パンピング,フットポンプ(小林製薬社製AVインパルス),カフポンプ(原田産業社製WizAir DVT)の3つの血流改善方法それぞれで,安静時と介入後の左側大伏在静脈の血流速度を,デジタルカラー超音波画像診断装置(メディソン社製),プローブは7.5MHzリニア深触子を用いて測定した.血流速度の評価は,先行研究で多用されている静脈血収縮期最高血流速度(以下,PSV)をパルスドプラ法にて測定した.なお血管径の変化を防ぐため,ゲル層を厚くし皮膚に直接プローブが接触しないように配慮した.
     測定環境は,室温約23℃,湿度約50%とし,車椅子は標準型車椅子(酒井医療社製)を用い,被検者には半ズボンを着用させ,両側ともに裸足にした.
     統計処理は,各方法で安静時と介入後のPSVの比較にWilcoxonの符号順位検定を用いた.また,安静時PSVからの変化率を求め,一元配置分散分析にて有意差を認めた場合,各方法間の比較に多重比較検定のGames-Howell法を用いた.なお,いずれも危険率5%未満を有意水準とした.
    【結果】パンピングのPSVは安静時3.1±1.0cm/sec,介入後12.6±8.6cm/secであった.フットポンプのPSVは安静時3.1±1.0cm/sec,介入後7.5±3.7cm/secであった.カフポンプのPSVは安静時3.0±0.8cm/sec,介入後5.3±1.9cm/secであった.全ての方法で,介入後のPSVは有意に増加していた(P<0.01).PSVの変化率は,パンピングが379.1±188.3%,フットポンプ が247.3±127.3%,カフポンプが179.3±53.6%であり,パンピング,フットポンプ,カフポンプの順に高値を示した.パンピングとカフポンプの間に有意差を認めた(P<0.05)が,それ以外では有意差を認めなかった.
    【考察】背臥位での先行研究と同様に,車椅子座位保持時でもパンピング,フットポンプ,カフポンプは,下腿血流を改善させ,VTE予防に効果的であることが示唆された.また先行研究などで,PSV改善に最も効果的とされるパンピングは,車椅子座位保持時でも最もPSVの変化率が高く,VTE予防の第一選択となると考えられる.しかし,パンピングを用いる場合には,患者の理解力や行動力が必要であり,患者の状態に応じて,フットポンプやカフポンプのような受動的血流改善方法の使用を検討する必要がある.背臥位での先行研究では,カフポンプのほうがフットポンプより効果的であるとされる研究が多いが,車椅子座位保持時では,フットポンプのほうがPSVの変化率が大きい傾向がみられた.これは,肢位によって静脈血が貯留する部位が異なることが影響していると考えられ,車椅子座位では足部が身体で最も底位となるため,足底静脈叢への血液貯留が多くなると考えられる.そのため,足底静脈叢を直接圧迫するフットポンプの方がカフポンプに比べPSVの変化率が大きくなったと考えられる.
    【まとめ】車椅子座位保持時にパンピング,フットポンプ,カフポンプを用いることは,VTE予防に効果的であり,中でもパンピングが最も効果的であると考えられる.また,間欠的空気圧迫法では,カフポンプよりもフットポンプの方が有効である可能性が高いと考えられる.
  • 森上 亜城洋, 西田 裕介
    セッションID: O-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】理学療法では,形態測定により身体各部の状態を把握し,筋厚,筋線維長,羽状角等の組織構造的要因(以下,内的要因)を推察しながらプログラムを展開している.形態測定の中の一つとして下腿最大周径測定がある.下腿最大周径は,この内的要因を反映した筋線維の集合体としての断面を評価していると考えられる.そのため,下腿形状を最も反映している下腿最大筋であるヒラメ筋構造に着目し,下腿最大周径と内的要因との関係性を明確にするとともに,個々の要因の関係性を確認し,筋構造を規定化する.また,筋力を決定する要因として,神経系の要因に加え,筋内的要因,筋線維数,筋線維タイプなども大きく影響すると言われている.本研究の目的として,下腿最大周径,ヒラメ筋内的要因,下腿底屈筋力との関係を検討することによって,下腿周径測定の意義を明確にし,評価要因を捉えた理学療法指標の再考に寄与することである. 【方法】対象は,足部に疾患既往の無い健常成人男性30名,女性20名,合計50名(平均年齢23±2歳)とした.対象者には口頭にて研究の主旨を説明し,研究参加の同意を得た.本研究は,聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認のもと実施した.測定項目は,下腿長,下腿周径,ヒラメ筋内的因子,ヒラメ筋筋力である.被験側は右側とした.下腿周径は,腰掛け座位にて股・膝関節90°屈曲位,足関節底背屈0°にて測定した.ヒラメ筋内的要因を筋厚,羽状角,筋線維長とし,超音波画像診断により測定した.下腿周径・筋厚は,腓骨頭下端を0cmとし,1cm刻みで測定した.ヒラメ筋の筋力測定には,BIODEXを用い,加えて表面筋電図にて筋活動も記録した.運動課題は,5秒間の最大等尺性随意収縮を3回測定した.測定肢位は,股・膝関節90°屈曲位,足関節底背屈0°とした.統計的検討には,ピアソンの積率相関分析を用い,有意水準は危険率5%未満とした. 【結果】各項目の平均値,相関係数について,以下に全対象,男性,女性の順番で示す.各項目の平均値は,下腿最大周径(cm)36.4±3.5,38.1±3.1,33.8±2.3,ヒラメ筋最大筋厚(mm)13.2±2.9,14.8±2.2, 10.7±1.8,羽状角(°)14.8±3.7,17.0±2.5,11.5±2.6,筋線維長(mm)51.9±6.3,50.6±5.9,53.9±6.5,下腿底屈筋力(Nm)115.5±34.7,135.9±26.7,84.9±19.0, 筋電図積分値(mV)30.7±22.2, 27.1±19.8, 36.1±24.9,平均周波数(Hz)132.1±30.4,136.8±34.1,125±22.6であった.下腿最大周径との相関係数は,筋厚r=0.79,0.77,(-),羽状角r=0.72,0.59,(-),下腿底屈筋力r=0.61,(-),(-)となった.筋厚との相関係数は,羽状角r=0.86,0.63,0.86,下腿底屈筋力r=0.65,(-),(-)となった.羽状角との相関係数は,筋線維長r=-0.25,(-),-0.77,下腿底屈筋力 r=0.85,0.71,0.63となった.筋線維長との相関関係は,下腿底屈筋力 r=-0.54,-0.47,-0.68となった.なお,相関分析において,有意でない結果については,(-)で示した. 【考察】筋の内的要因と下腿最大周径, 筋力との間には関係性が認められた.特に筋厚,羽状角は相互に関係し,下腿最大周径,下腿底屈筋力とも関係した.筋厚と羽状角は,筋断面における筋線維の集合体と考えられる.羽状角は筋厚,筋線維長と関係するとともに,下腿最大周径,下腿底屈筋力とも関係した.特に下腿底屈筋力において,筋力決定要因としての筋の内的要因,神経系要因に影響を与えていると考えられる.筋線維長は,羽状角,筋力と負の関係があることが確認された.このことは羽状筋構造である筋線維長を短くして筋線維数を増やし生理学的断面積の総和を増大させるヒラメ筋の特徴を大きく反映していると考えられる.このことから,筋の内的要因と下腿最大周径, 筋力との間には関係性が認められた.特に筋厚と羽状角は筋線維の集合体としての要素,羽状角と筋線維長は筋力決定要因としての要素があるため,周径,筋力の把握には,筋の内的要因が関与していると考えられる. 【まとめ】筋内的要因を反映した下腿最大周径囲,下腿底屈筋力は,身体機能活動レベルだけでなく,筋組織構造的変化を伴う筋蛋白同化異化作用など活動状態,栄養状態の把握もできることが示唆された.このことにより適切な栄養治療や理学療法により障害予防,健康維持向上,QOLの向上に寄与できるものと考えられる.
  • 石井 健太郎, 藤井 亮介, 清水 砂希, 宮地 諒, 中野 希亮, 西 祐生, 米倉 佐恵, 小島 聖
    セッションID: O-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】  外反母趾変形は第一中足骨の内反,第一基節骨の外反を特徴とし,足部機能の障害をもたらす.また,先行研究により外反母趾の歩行時の特徴として歩行立脚後期に母趾での離床が出来なくなり,推進期の際の母趾での蹴り出しが不十分になるともいわれている.本研究の目的は外反母趾変形における足部形態・機能面及び歩行時足底圧に着目し健常足群と比較検討することである. 【方法】  対象は,今年度金沢市で行われた「第32回健康づくりフェア」に参加した日常生活に支障のない市民29名58足(69.7±6.7歳,男性9名,女性20名)とした.対象者には研究の趣旨を説明し同意を得た.測定項目は足部形態として(1)外反母趾角度(HVA)を計測し,HVAは高倉らの報告を参考にHVAが15°以上を外反母趾(男性2足,女性19足)とした.また,15°未満を健常(男性16足,女性21足)とした.なお,男女比を考慮し女性のみとした外反母趾群(HV群)と健常足群に区別した.(2)横アーチ長率(足幅を足長で除した値)(3)内側縦アーチ高率(アーチ高/足長×100).母趾の機能面として(1)日本整形外科学会が制定する関節可動域測定法による母趾MTP屈曲・伸展可動域(2)母趾屈筋力は石坂らによる母趾圧迫力の測定方法を用いた.また,歩行時の足圧分布をマットスキャン(ニッタ社製)にて測定した.歩行は自由歩行速度にて足圧計上に接地できるよう十分練習した後,自然立位からの一歩目を測定した.足圧測定の結果より本岡らによる分類を用い,足底圧中心(COP)軌跡を内側型・中央型・外側型に分類を行った.また,歩行立脚後期の最大圧を母趾,前足部内側,前足部中央,前足部外側に区分し比較した.統計は,HVAと足部形態・機能面の測定項目の相関を,Pearsonの相関係数を用いて分析し,健常足群とHV群の横アーチ長率,内側縦アーチ高率,母趾屈筋力,母趾MTP屈曲可動域,母趾MTP伸展可動域の各平均値の差の比較をF検定後に対応の無いt検定もしくはWelchの検定を行い,全ての分析の有意水準を5%未満とした. 【結果】  HVAと各測定項目との相関関係について母趾MTP伸展可動域,母趾屈筋力に相関は認められなかった.横アーチ長率(r=0.81),内側縦アーチ高率(r=-0.54),母趾MTP屈曲可動域(r=-0.40)に有意な相関が認められた.健常足群とHV群との各項目の平均値において母趾MTP伸展可動域(健常足群:66.1±5.8°,HV群:60.9±14.8°),母趾屈筋力(健常足群:2.2±1.8kg,HV群:1.7±0.9kg)には有意差はなく,横アーチ長率(健常足群:42.4±1.9%,HV群:46.5±2.9%),内側縦アーチ高率(健常足群:15.6±2.6%,HV群: 12.9±3.1%),母趾MTP屈曲可動域(健常足群:30.9±7.8°,HV群:27.1±4.6°)に有意差を認めた.歩行時COP軌跡の分類は,健常足群(21足中)において内側型5足(23.8%),中央型が16足(76.1%),外側型に相当するものはなかった.HV群(19足中)において内側型は4足(21.0%),中央型は15足(78.9%),外側型に相当するものはなかった.また,歩行立脚後期の前足部の最大圧において,健常足群(21足中)では母趾7足(33.3%),前足部内側2足(9.5%),前足部中央8足(38.0%),前足部外側4足(19.0%)であった.HV群(19足中)では,母趾4足(21.0%),前足部内側6足(31.5%),前足部中央5足(26.3%),前足部外側3足(15.7%),その他1足(5.2%)であった. 【考察】  歩行時COP軌跡に関して,HV群と健常足群の両群において中央型が多く,前足部の最大圧に関しても前足部中央が多い結果となった.一方,前足部内側の最大圧においてHV群では健常足群と比べ多い傾向となった.HV群は健常足群と比べ横アーチや内側縦アーチが低い傾向から,歩行立脚後期に前足部の剛性が保てず前足部が回内しそのため前足部内側の圧が高まった可能性がある.そして,その後の母趾への荷重伝達が困難になかったと考えられる.HV群の前足部のCOP軌跡において前足部内側から急激に母趾以外の他趾の方向へと移動する例もみられた.今回の結果より母趾屈筋力や母趾MTP伸展可動域においても各群の差はなかった.そのことからHV群における歩行立脚後期の母趾への荷重伝達時には単なる筋力や関節可動域以外の問題がある事が示唆された.今後はHV群の前足部のCOP軌跡についてより詳細に検討していきたい.
  • 久保 裕介, 石川 結賀, 藤田 大輔, 西田 裕介
    セッションID: O-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 運動開始時において,運動負荷強度に相応なATP供給は,骨格筋のミトコンドリアにおける酸化的リン酸化過程から得られるATPだけでは賄えきれない。酸化的リン酸化過程から得られるATPだけで需要量のATPを賄うためには,2分から3分の時間を要する。この生体応答は,肺の酸素摂取量(V(dot)O2)の描写(第1相から第3相)を解析することで模擬的に再現できる。第2相のV(dot)O2の立ち上がりの速さは,時定数(τ)により解析される。その立ち上がりの速さ(τV(dot)O2)は,酸化的リン酸化過程からのATP産生速度を示す。τV(dot)O2が速いほど酸素不足が少なくなり,さらには,運動耐容能も高くなることが報告されている。そのため,τV(dot)O2を加速させる要因の検討は,重要な課題であると考えられる。そこで,本研究では,第2相の前に存在し,活動筋から肺毛細血管への血流量の移動時間を反映する第1相に着目した。第1相に要する時間の短縮は,心拍出量の増加速度を加速させ,肺への血液流入速度を速めることで,骨格筋への酸素供給を効率良くすることができると考えられる。したがって,今回は,τV(dot)O2を加速させる要因として第1相に要する時間を挙げ,それらの関係性を検討した。また,第1相に要する時間が短く,τV(dot)O2が速いほど,運動耐容能が高くなると仮説を立て,第1相に要する時間,τV(dot)O2と最高酸素摂取量(peak V(dot)O2)との関係性も検討した。 【方法】 対象は,若年健常男性7名(平均:年齢21.0±0.0歳,身長166.0±6.4cm,体重62.1±4.3kg)とした。測定項目は,最高酸素摂取量(peak V(dot)O2/W),第1相に要する時間,τV(dot)O2である。方法として,まず,自転車エルゴメータによる多段階漸増運動負荷試験を行い,peak V(dot)O2を測定した。運動負荷は1分間に20Wずつ増加するよう設定し,ペダル回転は60rpmとした。また,その際にV-slope法および呼吸商から嫌気性代謝閾値(AT)を決定した。次に,一段階運動負荷試験におけるτV(dot)O2の測定を行った。2分間の安静の後,20W,60rpmにて3分間のウォーミングアップを行い,その後,多段階漸増運動負荷試験により決定したATの80%負荷強度にて6分間の一段階運動負荷試験を行った。τV(dot)O2は,表計算ソフトMicrosoft Office Excelを用い,非線形回帰にて算出した。一段階運動負荷試験は計4回行い,τV(dot)O2の平均時間を算出した。統計学的検討には,各測定結果の相関関係についてピアソンの相関係数を用い,有意水準は,危険率5%未満とした。なお,本研究は、ヘルシンキ宣言(ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則)に則り,対象者に口頭ならびに書面にて同意を得て実施した。 【結果】 各指標の平均値と標準偏差は,第1相に要する時間は19.3±5.7(s),τV(dot)O2は42.1±7.3(s),peak V(dot)O2/Wは39.9±5.2(ml/min/kg)であった.各指標の関係性は,第1相に要する時間とpeak V(dot)O2/Wで有意な負の相関を認めた(r=-0.820,p<0.05)。しかし,第1相に要する時間とτV(dot)O2との間には,有意な相関関係が認められなかった(r=-0.056,p=0.904)。また,τV(dot)O2とpeak V(dot)O2/Wとの間にも有意な相関関係が認められなかった(r=-0.191,p=0.681)。 【考察】 本研究では,第1相に要する時間は,τV(dot)O2に影響を及ぼさないことが示唆された。また,第1相に要する時間が短いほど,運動耐容能が高いことが示唆された。先行研究において,年齢の増加にともない第1相に要する時間は有意に長くなったが,τV(dot)O2に関しては年齢の増加と有意な関係は認められなかったとの報告がある。この解釈として,第1相に要する時間が長い場合は,その代償にV(dot)O2を速く適応させるように生体が応答すると考察している。本研究においても,このような代償作用が働いた可能性はある。しかし,本研究の第1相に要した時間は,一般的な値であり,著しく遅いとは考え難い。そのことから,τV(dot)O2に悪影響を与えない値,つまり正常の範囲内であったため,第1相に要する時間とτV(dot)O2との間に有意な相関関係が認められなかったと考えられる。 【まとめ】 若年健常男性において,第1相に要する時間はτV(dot)O2を加速させる要因ではないことが示唆された。この考察から,第1相の正常な範囲が確認できたとも解釈することができる。そのことから,本研究で得られた第1相に要する時間(19秒)は,第1相が遅延する疾患群において,トレーニング効果の目標値として参考になると考えられる。
  • 松尾 英明, 久保田 雅史, 嶋田 誠一郎, 北出 一平, 亀井 健太, 野々山 忠芳, 鯉江 祐介, 成瀬 廣亮, 五十嵐 千秋, 生田 ...
    セッションID: O-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】  ストレッチングの目的の一つとして局所血液循環の改善がある。臨床的には静的ストレッチングが広く行なわれており,その適切な持続時間について様々な報告がある。しかし,静的ストレッチングの持続時間の違いによる影響を,局所循環動態の観点から検討した報告は少ない。近赤外線分光法(NIRS)は,近赤外線光が通過した組織内にある血液のヘモグロビンの酸素化状態を測定でき,組織内の酸素動態,循環動態を推定する事ができる。そこで本研究の目的は,NIRSを用いて静的ストレッチングの持続時間の違いが筋の局所酸素動態に及ぼす影響を明らかにする事とした。
    【方法】  対象は健常成人男性7名(年齢29.4±4.5歳, BMI24.0±3.9kg/m2)とした。被検者には研究の主旨を説明し同意を得た。測定肢位は背臥位とし,右下腿最大周径部の腓腹筋内側頭の直上の皮膚にNIRS装置(NIRO-200NX:浜松ホトニクス社)のプローブを下腿長軸方向に装着した。被検者の右膝関節を完全伸展位に保持し,足関節CPM装置(アンクルストレッチャー:山陽電子工業)に下腿から足部を固定した。
     被検者には測定前に十分に安静を保たせた。実験の手順は,足関節底屈30°位を5分間保持し,その後ストレッチングを行い,さらに開放後に足関節底屈30°位で10分間保持させた。この間,連続的にNIRSによる計測を行った。ストレッチングは,足関節CPM装置により20Nmの一定のトルクで持続的に背屈位に保持して行った。ストレッチングの持続時間は20秒間,1分間,2分間,5分間の4条件とし,測定順は無作為化した。
    測定項目は,筋内酸素動態の指標として酸素化ヘモグロビン量(O2Hb)及び脱酸素化ヘモグロビン量(HHb),組織酸素飽和度(Tissue oxygen index:TOI),筋血液量の指標として総ヘモグロビン量(tHb)とした。
    NIRS装置のサンプリングタイムは0.5秒間隔とし,これを10秒間毎に平均化した。ストレッチング開始直前の安静60秒間の平均値を安静値とし,ストレッチング中及びストレッチング後の変化は10秒間毎の平均値から安静値を引き,?Hbとした。ストレッチング中及びストレッチング後における各?Hbの最大値あるいは最小値をピーク値とし,各条件間で比較した。統計には一元配置分散分析を行い,post hoc testとしてBonferroniの多重比較を用いた。有意水準は5%とした。
    【結果】   1.筋血液量及び筋内酸素動態の経時的変化
     ストレッチング開始から約20秒後まで各指標は安静値から一時的に減少した。その後,ストレッチング中では持続時間の延長とともに,?O2Hb,?TOI はさらに減少し,?HHbは増加した。?HHbは,1分間,2分間,5分間の3条件で安静値を超えて増加し続けた。?tHbは,持続時間に関わらず安静値より減少した値で一定に維持されていた。ストレッチング終了後,減少していた?O2Hb,?TOI,?tHb は急激に増加し,約30秒後に安静値を超えた値で一定となった。一方,ストレッチング中に増加していた?HHb は,ストレッチング終了後に急激に減少し,約30秒後に安静値より低下した値で一定となった。これらの傾向は全例で類似していた。
    2.ストレッチング中の各指標のピーク値とストレッチングの持続時間の関係
    ストレッチング中の?tHb のピーク値は,各条件間に有意差を認めなかった。ストレッチング中の?TOIのピーク値は,持続時間の延長とともに減少を認め,20秒間と1分間の条件間以外の全ての条件間に有意差を認めた。
    3.ストレッチング終了後の各指標のピーク値とストレッチングの持続時間の関係
    ストレッチング終了後の?tHbのピーク値は,持続時間の延長とともに高値を示した。?tHbのピーク値は,5分間,2分間の2条件では,20秒間条件と比べて有意に高値を示し,5分間条件は1分間条件より有意に高値を示した。ストレッチング終了後の?TOIのピーク値は,持続時間の延長とともに高値を示した。?TOIのピーク値は,5分間,2分間の2条件では,20秒間条件と比べて有意に高値を示した。
    【考察】  本条件下では,静的ストレッチングの持続時間がストレッチング中の筋血液量へ与える影響は少ない事が明らかとなった。また,ストレッチングによる筋の伸張は,筋内の血管を伸張し,血管径の減少や,筋内圧の上昇を引き起こす事が報告されており,筋内の血流は停滞すると考えられる。そのため,ストレッチングの持続時間が延長すると,筋内の血液に脱酸素化が進行し,ストレッチング後に脱酸素状態を改善する反応が必要になっていると考えられた。
    【まとめ】  本研究では,静的ストレッチングの持続時間の違いが,ストレッチング中及び終了後の筋血液量,筋内酸素動態に及ぼす影響を検討した。静的ストレッチングの持続時間の延長は,ストレッチング中に一時的な酸素不足状態を惹起する事が示唆された。
  • 中神 孝幸, 新屋 順子, 土屋 忠大, 山田 哲也, 笠松 紀雄, 池松 禎人, 田村 浩章
    セッションID: O-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】近年,高齢者を対象とした手術が増加しており,術後の様々な合併症のため離床が困難となる症例が多い.高齢者は併存症を有することが多く,また術後に合併症を発症すると重篤になりやすく術前のADLに到達しない症例も経験する.今回,開腹術後,人工呼吸器管理となった2症例に対して理学療法(以下PT)を行った.人工呼吸管理が遷延し離床が困難な症例に対するPTの介入について検討し,報告する.尚,本発表にあたり本人に説明し同意を得ている.
    【症例1】70歳代男性.診断名:S状結腸癌.現病歴:H22年8月下旬左下腹部痛,下血を認め,当院入院となった.9月上旬S状結腸,下行結腸切除,リンパ節郭清が施行された.1病日よりPTを開始した.6病日吻合部に縫合不全を認め,回腸人工肛門が造設された.12病日呼吸不全によって挿管人工呼吸管理となり,15病日に気管切開が施行された.急性腎不全を発症し22病日に透析を導入した.全身状態の悪化のためPTは中止していたが37病日に再開した.両側背部の無気肺が遷延しており背側の換気改善目的に前傾側臥位,呼吸介助などを実施した。48病日,人工呼吸器サポートチーム(以下RST)が中心となって外科,腎臓内科との合同カンファレンスを開催した.人工呼吸器離脱へむけた方針として,自発呼吸を促すために鎮静を終了し,経管栄養の増量により全身状態を改善させること,日中はTピース管理とし離床を進めていくことが決まった.翌日より早速,日中はTピース管理となり同日より端坐位訓練を開始した.起居動作,坐位保持は全介助を要した.四肢遠位筋優位に筋力低下を認めた.56病日より終日Tピースにて管理となり人工呼吸管理は終了となった.58病日に酸素投与は終了となった.65病日より経口摂取が開始となったが,長期の人工呼吸器管理により頚部の可動性,筋力低下を認め嚥下障害を来しており,PTにて対応した.68病日より車椅子乗車を開始しトランスファーは中等度介助を要した.75病日より歩行器にて歩行訓練を進め,中等度介助を要し易疲労性も認めた.歩行の自立,易疲労性の改善を目指し徐々に歩行距離や頻度を増やしていった.134病日より3食経口にて摂取となり,活動性が向上し以後ADL自立に至った.
    【症例2】80歳代男性.診断名:横行結腸穿孔.現病歴:H23年4月中旬より腹痛のため,当院救急搬送の後,横行結腸穿孔の診断で同日ハルトマン手術,腹腔内ドレナージ術を施行した.術後は人工呼吸器管理となった.既往にCOPD(FEV1.0%:38.5%,%FEV1.0:46.5%)がありるい痩,低栄養状態も見られた.術後1病日よりPTを開始した.PT開始時,ミダゾラムにて鎮静中であった.側臥位での呼吸介助や排痰などを実施した.5病日より人工呼吸器離脱を開始することとなり鎮静を終了した.6病日Tピースにて自発呼吸トライアルを開始した.1時間後の血液ガス,循環動態,呼吸状態等が安定していたためその後抜管となった. 抜管直後にPTも介入した.介入時,頚部の呼吸補助筋の使用,呼気時の喘鳴を認め呼吸介助,排痰などを実施した.徐々に離床を進めたが,労作時の息切れや低酸素がみられ,基本動作の介助量が軽減せず離床は遅延していた.介助量の軽減,歩行の獲得を目標に呼吸状態に留意し運動療法を進めた.9病日より経口摂取が開始となったが,経口摂取が進まないため16病日より経管栄養へ変更となった.26病日より歩行器にて歩行訓練を開始した.経過に伴い呼吸状態は安定し,32病日に酸素投与が終了となった.37病日より経口摂取が開始となり徐々に食事摂取量も増えていった.それに伴い活動性,歩行能力が向上し40病日にトイレ歩行が自立となった.
    【考察】開腹術後,人工呼吸管理となった2症例を担当した.症例1では人工呼吸器離脱が遅延したが,RST介入により抜管に向けたチームアプローチがなされ離脱に至った.離脱後は長期人工呼吸器管理による様々な合併症を呈していた.それぞれの症状に対応しながらPTを実施していき,術前ADLの獲得に至った.症例2では抜管に際して,プロトコールに従った計画的な抜管がなされた.離脱後は,既往のCOPDのために呼吸状態に留意して運動療法を進めた.術前からの既往症や高齢のため,術前ADLの獲得は困難と思われたが,栄養状態の改善とともに積極的に離床が進み,概ね術前のADLに到達することができた.2例の経過より,術後人工呼吸器の離脱からADL能力の獲得のためには,チーム医療により統一した方針で介入すること,全身状態や治療経過を把握した上で術後合併症や既往症へ適切に対応することが重要であると考えた.
  • 伏屋 有子, 加賀谷 斉, 早川 美和子, 星野 美香, 水谷 公司, 石川 綾子, 都築 晃
    セッションID: O-37
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    当院では2009年6月からSurgical ICU(外科系集中治療室)がICU(集中治療室)となった。6床から10床へと増床し、術後患者のみならず、院内急変を含む内科系、外科系の最重症患者を収容し、積極的な集中治療を行っている。またICU開設にともない、専従の理学療法士が常駐し呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を実施している。今回、当院ICUにおける呼吸リハの現状を分析したので報告する。
    【方法】
    2009年6月から2011年3月までにICUに入室し、2011年6月1日の時点で呼吸リハが終了となった385件を対象とした。当科のデータベースを用いて、疾患、ICU入室期間、転帰などを後方視的に分析した。術前から呼吸リハを実施している場合は術翌日から開始し、それ以外の症例に関してはICU入室後、麻酔科からの依頼を受け、当日から呼吸リハを開始している。また、ICU担当の理学療法士は3名おり、日曜、祝祭日を除く週6日間、半日交替で勤務し、1名の理学療法士が常駐する体制をとっている。呼吸リハの内容は主に体位ドレナージやスクイージングなどの排痰手技、ポジショニング、患者の状態に合わせて座位や立位といった離床訓練を実施している。また、ICU退室後は状態に合わせ離床を進め、原則として自力排痰可能かつ、病棟歩行が自立または病前の日常生活活動が再獲得できた時点で呼吸リハを終了にしている。
    【結果】
    患者平均年齢は65歳(1-91歳)であり、疾患は心血管疾患202件、消化器疾患123件、呼吸器疾患13件、その他の疾患は47件であった。ICU入室期間は中央値7日、ICUでの呼吸リハ施行期間は中央値5日であり、年末年始や日曜祝祭日といった休日を除き、実際にICUで呼吸リハを行った日数は中央値4日であった。またICUで呼吸リハを開始してから終了までの呼吸リハ施行期間は中央値45.5日であった。対象患者の8割を占める心血管疾患、消化器疾患を疾患別にみてみると、ICU入室期間、ICUでの呼吸リハ施行日数、およびICUで呼吸リハを開始してから終了までの呼吸リハ施行期間の中央値は大動脈瘤(n=62)8日、6日、25日、狭心症(n=38)5日、3日、17日、弁疾患(n=35)6日、3日、21日、慢性肺血栓塞栓症(CPTE)(n=23)8日、5日、28日、大動脈解離(n=15)8日、6日、30日、心筋梗塞(n=14)7.5日、4日、29日、その他の心血管疾患(n=15)5日、3日、22日であった。消化器疾患では、肝臓・胆管癌(n=52)4日、3日、18日、食道癌(n=22)4日、3日、20日、胃癌(n=9)3日、2日、15日、大腸癌(n=5)12日、8日、62日、その他の消化器疾患(n=35)11日、7日、26日であった。
    また全対象患者385件中、入院中に呼吸リハが終了となったのが149件、退院まで呼吸リハを継続した症例の転帰は、自宅退院が121件、死亡退院が75件、転院が40件であった。
    【考察】
    今回、ICUでの呼吸リハ施行期間の中央値は5日であったが、休日を除いた実際の呼吸リハ施行日の中央値は4日であった。年末年始や日曜祝祭日といった休日は呼吸リハの介入が少なく、十分なアプローチができているとは言い難い。今後は祝祭日も含め365日対応可能な新しい臨床システムの導入が必要である。
    当院ICUでは3名の専従理学療法士が交替でICUに勤務しているが、365日対応できる臨床システムの導入には理学療法士の拡充が課題となってくる。ハイリスク患者を前に、適切なリスク管理と迅速な評価・アプローチを行うには知識や技術だけではなく、一定の経験が必要となるため、リハスタッフへの指導・教育も可及的速やかに解決すべき課題の一つである。
    酸素化や無気肺の改善に呼吸リハは一定の効果を示し、肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率を有意に低下させると言われている。アウトカムについては様々なものがあるが、今回はそれらのアウトカムを抽出するには至らず、呼吸リハの現状を報告するに留まった。今後は肺合併症の発生の有無や抜管までの日数等のアウトカムについて検討し、呼吸リハの効果を明らかにしてきたい。
    【まとめ】
    今回当院ICUにおける呼吸リハの現状を後方視的に分析した。1年9ヶ月の間でICUで呼吸リハを行った症例は計385件であり、心血管疾患の症例が約半数を占めていた。今後の課題は呼吸リハの影響を示すアウトカムの検討、365日対応できる臨床システムの導入、専従理学療法士の拡充だと考えられる。
  • 三嶋 卓也, 小川 智也, 渡邉 文子, 有薗 信一, 平澤 純, 古川 拓朗, 手塚 恵, 工藤 正太, 菅原 好孝, 石川 朗
    セッションID: O-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】 COPD患者では閉塞性換気障害に関連して労作時に動的肺過膨張がしばしばみられ、これは最大 吸気量(IC)の減少で示される。動的肺過膨張は運動耐容能や呼吸困難の程度、生命予後と関連すると 報告されている。さらにCOPD患者では労作時には低酸素血症を来していることがあり、労作時低 酸素血症は日常生活の中でも頻繁に起きている。そこで本研究ではCOPD患者における6分間歩行 試験前後の呼吸機能と労作時低酸素血症の関連を検討した。 【方法】 対象は男性COPD患者16名(年齢71.2±8.7歳、BMI 23.2±2.7、%FEV1.0 75.2±23.8%)。評価項目は安静時呼吸機能検査(スパイロメトリー、肺拡散能)、安静時血液ガス分析、6分間歩行試験(6MWT)、6MWT前後のスパイロメトリーである。6MWT前後のスパイロメトリーは各指標(VC、IC、TV、ERV、IRV)の変化量を算出した。6MWTの開始前と終了後の3分間、試験中6分間の計12分間におけるSpO2を測定し、最大値と最低値の差を算出した。統計学的解析はSpO2の低下の程度と各測定項目との単相関関係をPearsonの積率相関係数を用いて検討し、さらにSpO2の低下の程度を従属変数、有意な相関関係のあった項目を独立変数とする重回帰分析(stepwise法)を実施した。なお、統計解析ソフトはSPSS statistics 17.0を使用し、有意水準は5%とした。 【結果】 対象者の重症度はGOLD分類において軽症または中等症が多くを占めた。SpO2の変化と呼吸機能 との単相関関係を検討した結果、%DLco(r=-0.667、p<0.01)とΔIC(r=-0.54、p<0.05)が有意な相関関係を示した。さらに重回帰分析の結果、%DLco、ΔICの両者が採択された。 【考察】 COPDにおけるSpO2の低下にDLcoが関連することに関して、肺拡散能の低下が要因であると考える。ΔICはICが減少することで動的肺過膨張が起こり、換気制限が生じたためにSpO2の低下 が起きたと考える。 【まとめ】 COPD患者の6MWT中のSpO2低下量は安静時の肺拡散能力と運動中の動的肺過膨張が強く影響する。
  • 豊田 泰美, 梅田 美和, 矢部 信明, 樋田 貴紀, 高田 尚光, 塩崎 晃平
    セッションID: O-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【はじめに】
     当院では入院呼吸器疾患患者に対してPT、OT、STがチームの一員として関わり急性期から自宅退院まで一貫して包括的な呼吸器リハを行っている。今回、レジオネラ肺炎が重症化し、呼吸不全と気胸を合併したにも関わらず自宅復帰が可能となった症例を報告する。
    【症例紹介】
     症例は70歳女性。入院数日前から風邪症状あり自宅転倒し救急車で搬送される。来院時JCS-I桁。頭部CT異常なし、低酸素血症、肺炎を認め、尿中抗原陽性でありレジオネラ肺炎と診断され入院となった。翌日、ICU入室にて非侵襲的陽圧換気装置(NPPV)開始するも酸素化不良にて気管挿管された。
    【理学療法および経過】
    1.急性期(発症2日後~約1か月間)
     開始時血液ガス所見pH:7.5、PaO2:87.3mmHg、PaCO2:29.4mmHg HCO3:20.9mmHgであり、理学療法として排痰、体位ドレナージを実施した。発症3週後に気管切開施行され、BIPAPモードに変更となる。1ヶ月後にはSIMVモードへ変更。血液ガス所見pH:7.34、PaO2:121.0mmHg、PaCO2:61.5mmHg、HCO3:32.5mmHgとなった。
    2.一般病床リハ(発症1か月~2か月半)
     ICU退室後、ステロイド投与開始となる。積極的なリハ目的に、OT、ST追加となる。FIM:25/126、頸部ROM制限あり、唾液嚥下は可能であるも経口摂取困難であった。発症2か月後、気胸出現し、胸腔ドレーン留置される。また器質化肺炎を発症し発熱により訓練意欲も低下した。
    3.ウィーニング期~離床(発症2か月半~4か月)
     ウィーニングに合わせリクライニング車いす移乗開始し、運動療法、基本動作訓練、ADL訓練を実施していった。発症約3か月半後、日中夜間ともに人工呼吸器離脱、酸素投与終了となり胸腔ドレーンも抜去された。血液ガス所見はpH:7.46、PaO2:75.2mmHg、PaCO2:40.6mmHg、HCO3:29.1mmHgに改善した。理学療法評価としてMMTは体幹、四肢近位関節筋群1であり、手足部筋群に関しては2を認めた。ROMは特に頸部、手指、足関節の制限が顕著であった。嚥下機能としては刺激による連続嚥下可能なレベル、発声はスピーチカニュレ使用するが有声化困難な状態であった。認知機能面は、HDS-R:18/30、基本動作、ADL動作は全介助レベルであった。
    4.自宅退院を目標とした介入(4ヶ月~現在)
     自宅退院も視野に入れ、家族との起居動作練習、日中の自主練習の指導を行なっていき、自助具を使用して書字訓練、スプーン操作練習などを行なっていった。途中在宅への不安が強くなり転院も考慮したが入院の長期化と重症例により転院は断念せざるを得なかった。そこで、より具体的な自宅退院後の状況を見据え、胃瘻増設、気切孔閉鎖、嚥下訓練を追加された。
    【考察】
     レジオネラ肺炎は市中肺炎の中でARDSを合併する頻度が最も高い肺炎の一つである。厚生労働省によると本疾患の死亡率は15%~30%と高く、神原ら1)の報告では基礎疾患のない市中感染レジオネラ肺炎の75%にARDSを合併し死亡例は67%であったとされている。本症例は呼吸不全を合併したが救命されたものの、治療のために安静臥床を強いられることとなった。また、意識レベル改善の遅延、気胸の合併により、ウィーニングに難渋した。気胸改善後は運動療法を中心に基本動作訓練、車いす移乗による離床時間の延長、コミュニケーション能力拡大、嚥下訓練を行っていった。また自宅退院に向けて、環境調整、家族指導などを行っていった。
    以上の介入により重症例においても理学療法を施行し早期より積極的に離床を進めることで身体機能、ADL向上がみられ、退院時には、座位保持が可能となり電動車いす操作、机上での自助具を使用したペン操作などの道具操作が可能となることにつながったと考える。
    在院日数が短縮される昨今、転院先が少ない現状であり、急性期病院から自宅退院を目指す必要性が高まってきていると考える。そのためには、早期より、信頼関係を結び、患者家族とともに退院への方向性を決定していかなければならないと考える。
    【まとめ】
    1.レジオネラ肺炎による重症合併症を併発した症例を担当した。
    2.早期からの継続した介入にて、精神機能、身体機能、ADL改善がみられた。
    3.急性期病院において長期入院を要した場合には退院先について自宅退院もしくは転院について十分な検討が必要である。
  • 西尾 優華, 橋場 貴史
    セッションID: O-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】転倒は平衡機能の低下等によって引き起こされるが、その平衡機能に関する因子の中でも足趾把持筋力(Toe Grasp Power:TGP)の機能(役割)が注目されてきている。TGPは加齢とともに減少し、特に転倒経験者は非転倒経験者と比べて有意に低く、TGPの弱化は転倒発生の要因とする報告やTGPが強いことが動揺面積を減少させ、TGPのトレーニングにより転倒の危険性を減少させるという報告などがある。しかし平衡機能を妨げる因子が少ない若年者での報告や男女差を述べたものは散見する。以上のことから、本研究の目的は、若年健常成人を対象にTGPと重心動揺(総軌跡長、外周面積、矩形面積)を測定し、TGPが平衡機能に与える影響について検討し、TGPと重心動揺の関係を明らかにすることである。 【方法】対象は若年健常成人26名であり、内訳は男性13名、年齢20.9±0.3、身長172.2±4.7cm、体重64.6±8.9kgであり、女性13名、年齢20.9±0.4、身長160.2±5.0cm、体重53.8±6.9kgであった。下肢に骨折、靭帯損傷などの既往がある者は除外した。研究においてデータ収集の目的、使用用途、プライバシーの保護等を説明し同意を得られたものを対象とした。〈BR〉重心動揺における測定項目は総軌跡長(cm)、外周面積(cm2)、矩形面積(cm2)とし、重心動揺測定システムマットスキャン(ニッタ株式会社,MSS-0018)を使用して片脚開眼立位での重心動揺を30秒間、計2回測定し総軌跡長が小さい方の値を採用した。測定は頭頸部中間位にて、両上肢は体側に下垂し、裸足で行った。測定中は、3m前方の視線と同じ高さの点を注視させた。TGPの測定は足趾力計測器チェッカーくん(日伸産業株式会社)を使用してTGPを左右2回ずつ測定し、左右各々高い方の値を採用した。測定肢位は椅子座位とし、測定回数は一側につき練習1回、本番2回の休憩(1分程度)を挟みながら行った。また踵を離さないようにすること、膝の位置を左右にずらさないこと、呼吸を止めないことを指導した。〈BR〉データ処理は、測定した左右各々のTGPより体重にて補正した体重比TGP(%TGP)を算出した。統計処理は%TGPの強い側と、%TGPの弱い側の重心動揺各項目(総軌跡長、外周面積、矩形面積)の測定値の比較には、対応のあるt検定を用いた。%TGPと重心動揺各項目の測定値との関連性の検討には、ピアソンの相関係数を用いた。統計解析ソフトは、Microsoft Excel 2010を用い、各統計における有意水準は5%未満とした。 【結果】%TGPの強い側と、%TGPの弱い側の重心動揺各項目の測定値(総軌跡長、外周面積、矩形面積)を各々比較した結果、どの項目においても有意な差は認められなかった。男性の%高TGPと同側の片脚立位での外周面積(r=-0.80,p<0.01)及び矩形面積(r=-0.63,p<0.05)の間には負の相関が認められた。女性の%高TGPと、同側の片脚立位での重心動揺各項目との間にはいずれも相関は認められなかった。 【考察】本研究では、若年健常成人26名を対象に、TGPが平衡機能に与える影響を検討した。%高TGPと重心動揺との関係については、男性の%高TGPと外周面積及び矩形面積との間に負の相関が認められた。動的姿勢制御能とTGPとの関係を分析した結果、TGPが強いことが動揺面積を減少させることを示唆し、TGPの強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与していると報告されていることから、本研究でも男性に関しては、TGPの強い側で重心動揺が小さいことがわかり、TGPの強弱が身体の安定性に関与していると考えられた。しかし女性では、%高TGPと重心動揺と関係は認められず、その他要因のよる影響が考えられ、男性とは明らかにちがう傾向が見られた。〈BR〉今回は若年者で検討したが、性差が認められたこと、また男性においてはTGPが姿勢制御能に関係があったことは、高齢者の転倒リスクとなっている平衡機能因子の1つであるTGPの機能強化も必要であるが、評価やアプローチも男女間では違った視点で行う必要があるのではないかと考えられた。 【まとめ】TGPと平衡機能について、男性ではTGPが強ければ重心動揺は小さいという関係が認められたことから、若年健常成人においてもTGPの強弱が身体の安定性に関与していると考えられた。平衡機能の低下により転倒が引き起こされ、その平衡機能の因子の1つとしてTGPが挙げられることから、若年期からのTGP強化が重要になってくるのではないかと考えられた。
  • 中澤 奈央
    セッションID: O-41
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】〈BR〉近年,地域連携と言う言葉をよく耳にするようになった.〈BR〉当院は急性期病院であり,近院・施設へ担当患者が転院する例が多い.リハビリテーションサマリー(以下,リハサマリー)を作成する中で,転院先病院または施設に必要な情報が的確に伝達されているのか疑問に感じることが多くあった.〈BR〉そこで,スムーズな情報伝達・共有・連携を目指しリハサマリーに関するアンケートを実施した.〈BR〉【方法】〈BR〉当院は静岡県西部、北遠支部に位置している.そのため今回は同じ支部の中の42病院(または施設)を対象とした.郵送にてアンケートを実施した.〈BR〉アンケート項目は1.貴院・施設の種類,2.主なリハサマリーの送付先,3.主なリハサマリーの受け取り先,4.どのような場合にリハサマリーを作成するか,5.職種別にリハサマリーの形式を分けているか,6.リハサマリーの書式を疾患別(運動器・脳血管等)に分けているか,7.リハサマリーの記載内容,8.受け取るリハサマリーの内容として求める項目の全8項目で実施した.〈BR〉【結果】〈BR〉42病院(または施設)中,33病院より返信があり,回答率は78.6%であった.〈BR〉1.急性期病院29.7%,回復期病院14%,療養型病院31.3%,老人保健施設(以下,老健)3.1%,特別養護老人ホーム(以下,特養)0%,訪問リハビリ(以下,訪問リハ)9.4%,通所リハビリ(以下,通所リハ)11%,その他1.6%〈BR〉2.急性期病院5.4%,回復期病院8%,療養型病院17.9%,老健23.2%,特養8.9%,訪問リハ7.1%,通所リハ11.6%,ケアマネージャー15.2%,その他2.7%〈BR〉3.急性期病院48%,回復期病院34%,療養型病院8%,老健8%,特養2%,その他2%〈BR〉4.急性期病院への退院時5.9%,回復期病院への退院時9.7%,療養型病院への退院時20.4%,老健への退院時24.3%,特養への退院時10.7%,自宅への退院時(ケアマネージャー宛)19.4%,その他9.7%〈BR〉5.分けている39.4%,分けていない60.6%〈BR〉6.分けている32.4%,分けていない67.7%〈BR〉7.全病院が必ず記載している項目として,氏名,年齢,主病名である.職業,家族構成,キーパーソンの記載は少なく,看護サマリーに記載があれば省略するとの意見があった.その他,記載の多い項目は性別32件,発症日31件,最終評価30件,入院中の経過29件,退院時ADL29件,プログラム21件,初期評価21件であった.〈BR〉8.多い項目は氏名,年齢,性別,主病名,発症日の他に入院中の経過28件,退院時ADL25件,禁忌事項24件,最終評価20件,術式18件,初期評価13件,社会的背景13件であった.〈BR〉その他として,リハビリテーション実施頻度や現病歴・既往歴を知りたいという意見も聞かれた.〈BR〉【考察】〈BR〉地域医療を考える中で急性期から回復期,維持期,維持期から急性期への繋がりが必要である.しかし,アンケート結果より急性期病院転院時のリハサマリー作成率が非常に少ない.当院も急性期病院であり,他病院・施設よりリハサマリーを受け取ることは少ない.そのため,入院前ADLやリハビリ実施状況の把握に時間を要することが多くある.他病院より情報を受け取ることが出来れば,よりスムーズな介入が出来るのではないかと考える.〈BR〉リハサマリーの内容として,記載内容と受け取りたい内容に相違があった.また,療法士によって差があるとの意見もあった.当院でもリハサマリーに記載する項目はある程度は決まっているが,記載方法や表現方法が統一されていないのが現状である.地域連携を目指す上では転院先病院・施設が必要とする情報を確実に記載していく必要があると考える.〈BR〉【まとめ】〈BR〉今後,今回のアンケート結果をもとに,当院のリハサマリーの内容を見直し,検討をしていき,転院先病院・施設にとって意味あるリハサマリーになるように変更していかなければならない.〈BR〉また,今後はよりスムーズな連携を目指し,地域で統一したリハサマリーの形式を考える必要がある.〈BR〉
  • 佐藤 慎, 山下 裕太郎, 大杉 健太郎, 鈴木 淳也, 永田 晴之, 三室 明人, 坂井 安紀子, 内野 恵利子, 徳増 来斗, 大城 昌 ...
    セッションID: O-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】回復期病棟にてリハビリテーションを受けた患者は機能改善やADL能力の向上が図られると同時に,転倒リスクも増加し,退院後に転倒による骨折を受傷され再入院となる患者も多い。当院では,退院前訪問指導を実施し,環境整備の徹底を行っているが,加えて患者の転倒リスク評価を行い,予防的な介入を講じることも重要である。本研究の目的は,回復期病棟退院時の転倒リスク評価(バランス機能,歩行能力,注意能力)と自宅退院後早期の転倒発生との関係を分析し,転倒リスク評価の有用性や退院前指導について検討することである。 【方法】本研究は,当院倫理委員会の承認および参加対象者の同意を得て実施した。調査を行った6カ月間に回復期病棟に入院し,自宅退院した患者30名を対象とした。診断名は脳血管障害12名,骨折術後9名,脊椎疾患4名,その他5名であった(年齢71.5±11.5歳,男性11名,女性19名)。転倒リスク評価は,バランス機能の指標としてFunctional Reach Test(FRT),継ぎ足立位保持時間,歩行能力の指標として10m最大歩行テスト,注意配分の指標としてTrail Making Test-B(TMT-B) の遂行時間,エラー数,プローブ反応時間であった。プローブ反応時間の測定は,平行棒内にて足踏み運動中にプローブ反応課題を挿入し反応時間を記録した。プローブ反応時間の解析には,音声処理ソフトDigionSound5 Expressを使用した。転倒リスク評価は,患者が自宅退院する約1週間から前日に実施した。退院後の転倒調査は,退院時に転倒回数記録用紙を患者に説明・配布し,転倒回数を記載してもらうよう依頼し,退院後約1ヶ月後に電話にてその結果を聴取した。結果の分析は,転倒状況,転倒群と非転倒群の転倒リスク評価の比較を行った。統計解析は,各測定値の比較にはMann-WhitneyのU検定,転倒の有無と各測定項目の関係についてロジスティック回帰分析を用いた。ロジスティック回帰分析の独立変数は,多重共線性を考慮して,FRT(バランス機能の代表値),10m最大歩行テスト(歩行能力の代表値),TMT(注意機能の代表値)とした。有意水準は5%未満とした。 【結果】転倒調査の結果,転倒者は3名(10%)で,脳血管障害1名,廃用症候群2名であった。各測定値の群間比較では,継ぎ足立位保持時間が転倒群で有意に短く(p=0.04),TMT-Bの遂行時間が転倒群で有意に長かった(p=0.01)。またロジスティック回帰分析の結果,TMT-Bの遂行時間が有意なリスク要因であった(p=0.04)。 【考察】今回調査した対象30名のうち,1ヶ月間で転倒した者は3名(10%)であった。脳血管障害者では6ヶ月間に36%が転倒していたとする研究(Langhorne et al,2011)よりも少ない割合であるが,追跡期間が1ヶ月間であったことを考慮する必要がある。転倒リスク評価について,継ぎ足立位保持時間で,1ヶ月間に転倒した群で有意に短かった。継ぎ足立位保持時間はBerg Balance Scale(BBS) に含まれており,バランス機能評価として活用されている。若年者に比べ,高齢者の継ぎ足立位保持は,左右方向の動揺が大きくなるとの報告があり(猪飼ら,2006),転倒リスク評価としても活用できると考えられる。TMT-Bの遂行時間は,注意の転換や配分能力を反映する評価尺度(浜田,2003)で,1ヶ月間に転倒した群で有意に長く,注意能力の低下が転倒に関係していると考えられる。同様に注意の配分能力の指標とされるプローブ反応時間の結果は,2群間で有意な差は認められなかった。これは,反応速度にばらつきが大きかったことが要因であろうと考えられる。ロジスティック回帰分析の結果,FRT,10m最大歩行テスト,TMT-Bのうち,TMT-Bの遂行時間が有意な転倒リスク要因であった。このことから,退院後早期の転倒予測には,注意機能の低下がリスク評価に重要であると考えられた。 【まとめ】当院では回復期病棟から退院にあたり,環境整備や生活指導などを実施している。しかし,退院後1ヶ月間の転倒者割合は1割であり,転倒リスク評価と予防方法の再検討の必要性を示す結果であった。退院前の転倒リスク評価の結果から,転倒者は非転倒者群に比べ,バランス機能,注意の転換性・配分性に問題を持ち,中でも注意機能評価が転倒予測に重要な要因であることが示唆された。したがって,注意機能評価の実施と,転倒予防に向けた介入では二重課題トレーニングのような注意機能に着目した理学療法プログラムを検討することが必要であると考えられる。
  • 高田 美津雄, 石吾 卓也, 堀 友里, 寺田 一郎, 塚本 彰, 木村 智津子, 長谷川 健
    セッションID: O-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下リハ病棟)は、寝たきり防止と在宅復帰を目標に、転倒に注意し、病棟での活動量を増加させることが必要である。そのためには、移動動作の自立度判定が適切になされることが重要である。現在、当院リハ病棟では、理学療法士(以下PT)が患者の移動能力を評価し、医師や作業療法士、看護師(以下Ns)と日常生活動作(以下ADL)や精神・認知機能等を含めて検討し、病棟内自由度を設定している。しかし、実際の病棟での管理はNs主体であり、転倒予防を意識するあまり、PTが評価する移動能力と差があるように思われる。今回の調査は、リハビリテーション室(以下リハ室)での移動能力と病棟内自由度の相違を確認し、適切な自由度を設定するための方法を検討することを目的とする。
    【方法】対象は当院リハ病棟入院患者で、2010年7月1日から2011年3月31日までに退院された168名(男性78名、女性90名、平均年齢73.7±13.1歳)、疾患内訳は脳血管疾患等59名、大腿骨近位部骨折45名、その他運動器疾患(以下運動器疾患)49名、廃用症候群15名とした。対象者の退院時における日中および夜間の病棟内自由度、リハ室での移動能力と認知症老人の日常生活自立度判定基準(以下DP)、転倒・転落スコアについて、診療記録より後方視的に調査した。なお、移動自由度は、自立、見守り(一部介助を含む)、介助の3段階とし、移動方法については独歩(歩行補助具なし)、杖使用、歩行器使用、車椅子使用の4分類とした。
    【結果】対象者全体では、リハ室での自立64.8%に対し、日中の病棟内自立が73.8%で、自立割合が高い結果となった。しかし、リハ室での移動方法が、独歩63.3%、杖使用32.1%、歩行器使用3.7%に対し、日中の病棟内は、独歩25.6%、杖使用41.9%、歩行器使用21.0%で、日中の病棟内において独歩の割合が低く、杖、歩行器使用割合が高かった。また、日中の病棟内見守りが13.7%であるのに対し、夜間は32.8%と高い割合を占め、夜間の自由度が低下していた。病棟内において介助を必要とするのは、日中22.0%、夜間23.7%と差はなく、夜間介助を必要とするものの多くは、日中も介助を必要としていた。疾患別では、脳血管疾患等のリハ室での自立52.5%に対し、日中の病棟内自立が64.4%で、自立割合は高いが、リハ室では自立の9割以上が独歩または杖歩行であるのに対し、日中の病棟内では車椅子使用が28.9%と高い割合を占めていた。また、日中の病棟内見守りが13.6%に対し、夜間は39.0%と高い割合を示した。大腿骨近位部骨折のリハ室での自立55.8%に対し、日中の病棟内は71.1%で、自立割合は高いが、リハ室では自立の68.0%が独歩であるのに対し、日中の病棟内は杖使用40.6%、歩行器使用43.8%で、独歩は15.6%に留まっていた。また、見守りは日中の病棟内22.2%に対し、夜間は48.9%と高い割合を示した。運動器疾患では、自立度がリハ室91.8%、日中の病棟内91.8%、夜間の病棟内85.7%でいずれも高い割合を示しているが、リハ室では60.0%が独歩であるのに対し、日中の病棟内では杖使用が60.0%、夜間では歩行器使用が33.3%を占めていた。
    【考察】今回の調査で、日中の病棟内自由度はリハ室より高いが、移動方法で比較すると、杖、歩行器使用の割合が高い結果となった。これは、病棟内ADLが転倒リスクを低くし、自由度を高めるために移動能力レベルを下げているためと考えられた。疾患別の比較では、脳血管障害等と大腿骨近位部骨折は、移動能力レベルを下げ、日中の病棟内自由度を高めているが、運動器疾患では、移動方法に変化はあるものの、リハ室と日中および夜間の病棟内自由度に差はなかった。また、脳血管疾患等と大腿骨近位部骨折では夜間の病棟内において、見守り、介助を必要とする割合が高くなっていた。疾患別の転倒・転落スコアの平均は、脳血管疾患等17.5±4.9、大腿骨近位部骨折17.6±5.0、運動器疾患13.1±5.0であり、運動器疾患が低い値を示した。DPの評価による認知症を有する率は、脳血管疾患等71.2%、大腿骨近位部骨折60.0%、運動器疾患20.4%で、運動器疾患が低い割合を示した。このような違いが、自由度の高さに繋がっていると考えられた。リハ病棟では、毎週チームカンファレンスを行っており、その場において患者個々の状況を把握し、検討できる資料を提示することで、より適切な自由度の設定を実施していく。また、適切な自由度維持のためには、PTがより積極的に病棟活動に関われる体制を構築しなければならない。
    【まとめ】今回、リハ室での移動能力と病棟での自由度の相違を調査し、適切な自由度設定の方法について検討した。リハ病棟における自由度の設定は、転倒リスクを回避する上で一定の妥当性を感じられた。適切な自由度を設定するためには、スタッフ間の共通認識が重要である。
  • 里崎 賢人, 布上 隆之, 北川 秀機
    セッションID: O-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【はじめに】当院では上腕骨近位部骨折に対して、立位や前屈位の保持が可能で、認知症がない症例に限定して早期運動療法による保存療法を行っている。今回、上腕骨近位部骨折に対して本法を行い、良好な結果を得たので報告する。
    【症例紹介】症例は86歳の女性、前のめりに転倒し受傷。診断はNeerの分類で外科頚の2partsの右上腕骨近位部骨折である。
    【経過】受傷日は徒手にて整復し、バストバンドと三角巾にて固定。受傷1週間後から運動療法を開始した。下垂位での振り子運動を行い、その他の時間はバストバンドと三角巾にて固定を行った。受傷後3週間で安静時痛は消失。受傷後7週間から他動での右肩関節可動域練習を開始した。開始時の右肩関節屈曲可動域は他動115°、自動80°で運動時痛はVAS5cmであった。受傷後3ヶ月で右肩関節屈曲可動域が他動155°、自動125°、運動時痛VAS4cmになり日常生活での挙上動作、結帯動作が問題はなくなった。
    【運動療法】当院では上腕骨近位部骨折受傷1週間後から患側上肢に対し下垂位での運動療法を行う。まず、固定の着脱は必ず立位で腕を下垂した状態で行う。腕を下垂したまま、背中が床と平行になるまで前屈し、できるだけZero-positionに近い体勢をとり、身体を前後に揺らしながらその反動を利用して腕の振り子運動を行う。この際、肩から腕の力を抜きリラックスした状態で行う。回数は、1日1000~3000回を目安に3分1セット(約100回)とし10~30セット行う。挙上運動は、受傷6週間後から行うがX線写真ではっきりした骨癒合が確認できない場合は1~2週間遅らせることもある。関節可動域練習は、他動運動や健側で補助しながら行う自動介助運動から開始し、1~2週間ほどでの自動挙上獲得を目標とする。関節可動域練習を行う際は、骨折の転位に十分な注意を払い愛護的に行う。
    【考察】上腕骨近位部骨折の保存療法では従来3~4週間固定し、仮骨が形成され始めてから運動療法を開始していた。しかし、この方法は肩関節周囲に癒着が生じてしまい可動域制限が生じやすかった。保存療法では骨折の不良な転位や再骨折を起こすことなく、日常生活に必要な関節可動域を確保することが重要である。早期から下垂位での振り子運動を行うことにより、肩関節周囲の癒着は予防され、肩関節可動域は維持されると考えられる。石黒は、上腕骨近位部骨折患者16名に下垂位での早期運動療法(石黒法)を行い、座位での肩関節自動運動の可動域は、前方挙上110~153°(平均125°)であったと報告している。日常生活では、挙上120°可能であれば身の回りの動作は問題なく行える。最近では、早期運動療法を目的として積極的に手術的治療がなされる傾向もあるが、症例の全身状態や生活環境に応じて保存療法でも早期から下垂位にて振り子運動を行うことで、日常生活に必要な可動域は獲得できると考えられる。
    【まとめ】上腕骨近位部骨折に対し早期から運動療法を行うことにより、良好な肩関節可動域を獲得できた。
  • 小島 怜士, 高木 大輔, 影山 昌利, 佐々木 嘉光, 松本 博(MD)
    セッションID: O-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】
     肩関節周囲炎の主症状として疼痛や関節可動域制限がある.予後は一般的に疼痛が3ヵ月程度で治まり,1~2年以内に症状が軽快するとされている.しかし長期経過観察例では疼痛や関節可動域制限が60%残存したという報告がある.また適切な治療を受けなかった場合,日常生活に障害はないものの何らかの愁訴を訴えるとされており,必ずしも自然治癒するとは限らない.
     肩関節周囲炎に対するリハビリテーションは運動療法,物理療法が主であるが,有効な治療法は確立されていない.肩関節周囲炎患者の特徴として不良姿勢が挙げられ,姿勢矯正の指導も大切とされている.肩関節周囲炎患者の姿勢の特徴として,頭部は前方へ突き出し,胸椎は過度に後弯,肩甲骨が外転・前傾し,相対的に肩関節は伸展位となる.このような不良姿勢が頸部,肩甲骨周囲筋の筋緊張を助長し,肩関節可動域の制限をさらに悪化させている一要因と考えられる.また肩関節挙上動作には,脊柱・肩甲骨の運動が関与しているため,肩関節周囲炎患者に対して脊柱・肩甲骨に対してのアプローチも重要と考えられる.
     ここで,日本コアコンディショニング協会が提唱するストレッチポール(以下,SP)を使用したエクササイズがある.SPを使用したエクササイズには,脊椎・肩甲骨リアライメント効果があり,姿勢矯正に有効であることが示唆されている.そこで今回,肩関節周囲炎患者に対して,SPを使用した不良姿勢へのアプローチが姿勢矯正またそれに伴い,肩関節可動域が改善するのかを検証した.
    【方法】
     対象は当院を外来受診し,肩関節周囲炎の診断を受けた6名(男性2名・女性4名,右肩4例・左肩2例,平均年齢53.7±6.3歳)とした.有症期間は約5.0±1.2ヵ月であった.訓練内容としてSP上でのベーシックセブン(以下,B7)7~10分間,SSP15分間,ホットパック15分間を週に1~3回の頻度で計40分程度実施した.B7は,疼痛を伴わない範囲の運動で実施した.初診時に姿勢評価として壁から外耳孔までの距離(以下,頭部前方突出距離),第3胸椎棘突起・肩甲骨内側縁間距離の左右差(以下,肩甲骨位置の左右差)を測定し,肩関節可動域は屈曲,外転を測定した.頭部前方突出距離,肩甲骨位置の左右差はテープメジャーを,肩関節屈曲,外転はゴニオメーターを使用し,日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会評価基準の測定法に基づき,測定した.また上記評価内容を2週毎に治療介入後に測定し,8週間の経過をおった.なお対象者には,口頭,および文書にて説明し,同意が得られた者のみを対象とし,訓練・測定を実施した.
    【結果】
     頭部前方突出距離は初診時12.9±0.9cm,2週後12.3±1.3cm,4週後11.8±1.2cm,6週後11.5±1.2cm,8週後11.1±1.2cmであった.肩甲骨位置の左右差は,初診時1.17±0.31cm,2週後0.57±0.41cm,4週後0.40±0.38cm,6週後0.27±0.33cm,8週後0.25±0.34cmであった.また肩関節屈曲角度は,初診時101.7±13.1°,2週後130.0±12.9°,4週後140.0±10.4°,6週後146.7±12.5°,8週後151.7±12.5°,肩関節外転角度は,初診時86.7±16.2°,2週後109.2±11.7°,4週後115.8±13.4°,6週後126.7±12.8°,8週後133.3±9.9°であった.
    【考察】
     今回,姿勢矯正と肩関節可動域改善の要因として,SPによる脊椎・肩甲骨のリアライメント効果により,頸部,肩甲骨周囲筋の筋緊張が緩和したことが考えられる.また先行研究で実施されていたリハビリテーションでは,平均屈曲角度140°獲得期間が,治療開始から8~28週であったが,今回SPを使用したB7を施行した場合,平均5.7±2.7週程度であり,治療期間の短縮がみられた.さらに先行研究同様,運動療法開始から2~4週で関節可動域に大きな改善がみられた.加えて姿勢矯正,肩関節屈曲,外転可動域の持続的な効果があり,即時性・持続性が示唆された.
     またSPの利点として簡便に使用が可能ということが挙げられ,肩関節周囲炎患者に対してSPを使用したB7が姿勢矯正,肩関節可動域改善に有効な治療手段であることが示唆された.今後の課題として対象者数と評価内容・項目をさらに検討していく必要性があると考えられる.
    【まとめ】
     今回の検証によって,肩関節周囲炎患者の姿勢矯正効果,肩関節可動域の改善が認められた.また即時性・持続性も認められた.よって,肩関節周囲炎に対してSPが姿勢矯正,肩関節可動域改善に有効な治療手段の1つであることが示唆された.
  • 稲垣 剛史, 谷口 圭, 谷口 未奈, 戸田 裕美子, 前原 一之, 前原 秀紀
    セッションID: O-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】
    肩関節周囲炎は、肩関節の疼痛と関節可動域制限を主とする種々の疾患の総称です。
    今回、肩関節周囲炎のうち、腱板機能に障害のある者を対象に、X線画像を用いて肩関節可動域(Reng of motion:以下ROM)制限に影響する因子の検討を行いました。X線画像の検討として肩峰骨頭間距離(Acromiohumeral Interval:以下AHI)は、腱板断裂により第二肩関節の機能的狭窄を把握するものです。AHIの上腕骨頭最大径(Humeral Head Diameter:以下HHD)に対する比(以下A/H比)は、AHIの問題点である体格差を考慮し、必要とされる関節裂隙距離を骨頭径比として表したものです。肩甲骨関節窩のHHDに対する比(Glenohumeral index:以下GHI)は、肩甲上腕関節を把握する為に使用されるものです。これら3つを用いて測定された数値と肩関節ROMの関連について検討しました。
    【方法】
    対象は、平成21年12月から平成23年3月までに当院を受診され、医師が診断目的でX線撮影した肩関節正面像があり、疼痛及び肩関節ROM制限のある肩関節周囲炎と診断された症例で理学療法士が3週間以内に関節可動域測定(Reng of motion test:以下ROM‐T)を行い、整形外科的検査で腱板機能に障害があると考えられた、27症例28肩(女性15名、男性12名。平均年齢65.7±12歳)を対象とした。
    X線画像での測定は、肩関節X線正面像からAHI・HHD・肩甲骨関節窩最大径をFUJIFILM、SPINE2電子画像の画像処理を用いて測定し、測定した数値からA/H比・GHIを算出しました。肩関節ROM-Tは、肩関節屈曲、外転の関節可動域を日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が制定する方法に準じ、ゴニオメーターを使用し、端座位姿勢で測定を行います。腱板機能の検査は、SSP full can test、SSP empty can test、ISP test、Belly press testを用いました。その結果を、肩関節ROM-T とAHI、A/H比、GHIの相関関係を検討しました(P<0.01)。相関関係の判定には、PEARSONの積率相関係数を使用しました。
    【結果】
    肩関節ROM-Tの平均は、屈曲133.7±21°、外転118.4±32.3°でした。肩関節X線正面像測定からAHIの平均は、8.6±1.4_mm_、HHDの平均は、46.3±3.8_mm_、肩甲骨関節窩最大径の平均は、34.84±3.2_mm_でした。この数値からA/H比、GHIを算出しました。A/H比の平均は、0.178±0.05(17.8%±5%)、GHIの平均は、0.753±0.05(75.3%±5%)でした。次に相関の結果です。AHIと肩関節ROM-T屈曲は、‐0.17、AHIと肩関節ROM-T外転は、‐0.08(P>0.01)でした。A/H比と肩関節ROM-T屈曲は、‐0.21、A/H比と肩関節ROM-T外転は、‐0.14(P>0.01)でした。GHIと肩関節ROM-T屈曲は、‐0.58、肩関節ROM-T外転は、‐0.51(P<0.01)でした。
    【考察】
    今回の結果から肩関節屈曲・外転ROM とAHI・A/H比の間には、有意な相関を認めませんでした。
    AHIは、腱板断裂を疑う指標であり、正常値は、7~14_mm_である。今回、AHI平均は8.6±1.4_mm_であり、正常範囲内であった。その為、すべての対象で、肩関節挙上動作時、上腕骨頭は烏口肩峰アーチの下方を衝突せず通過していると考えられ、ROM制限因子にならず、AHIと肩関節屈曲・外転の間に有意な相関を認めなかったと考られた。また、A/H比もAHIを反映した検査の為、同様の結果と考えられました。
    しかし、肩関節屈曲・外転とGHIの間に、有意な負の相関を認めました。GHIは、肩甲上腕関節の個人差を把握する為に使用される測定法であり、正常値は、75.3%±3.9%です。肩甲上腕関節の挙上動作は、三角筋の作用により、上腕骨頭が肩甲骨関節窩に対し上方へ転がり、腱板機能により下方への滑りが生じます。今回の結果から、GHIは、75.3%±5%であり、標準偏差にわずかな相違がみられた。その為、GHIが大きいほどROM制限が大きく、有意な負の相関を認めたと考えられた。
    【まとめ】
    今回、腱板機能に障害がある肩関節周囲炎を対象にAHI・A/H比・GHIの数値を使用して肩関節ROMとの関連について検討しました。結果は、肩関節ROMとAHI・A/H比の間に有意な相関を認めず、GHIの間に有意な負の相関を認めました。腱板機能に障害がある肩関節周囲炎では、AHI・A/H比への影響はなく、GHIが大きいほど腱板機能にかかる負担が増し、肩関節挙上動作時の肩甲上腕関節に生じる下方への滑りが阻害され、有意なROM制限を生じたと考えられた。
    これらより、腱板機能に障害がある肩関節周囲炎では、GHIが肩関節ROM制限の有意な一因子であると考えられた。しかし、今回の結果からGHIの有用性を高めるには、腱板機能に障害がない肩関節周囲炎との比較等が必要と考えられGHIの有用性が示唆されただけである。この事から今後も検討していく必要があると考えます。
  • 矢澤 浩成, 水谷 仁一, 加藤 貴志, 細川 厚子, 太田 和義
    セッションID: O-47
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】投球動作は肩関節にとって大きなストレスのかかる動作であり,投球動作が繰り返されることで肩関節機能に影響を及ぼすことが報告されている.その中で野球選手の投球数増加に伴う肩関節可動域や肩周囲筋力についての報告は散見されるが,肩関節位置覚を検討したものは多くはない.関節位置覚は身体各部位の相対的位置を感知する感覚と定義されており,肩関節位置覚は投球動作にとって重要な感覚であると考える.そこで今回は成長期である中学生野球選手を対象とし,投球数増加に伴う肩関節位置覚の変化について調査したので報告する.<BR> 【方法】対象は,愁訴のない右手投げの中学生野球選手15名とした.年齢13.5±0.8歳,経験年数5.7±1.4年,身長162.6±12.2cm,体重48.6±12.0kgであった.ポジションは投手3名,捕手2名,内野手4名,外野手1名,複数のポジション5名であった.測定に先立ち対象者には測定内容を説明し,痛みが発生したなどの不利益となる場合には,ただちに中止できるよう配慮した.なお本研究は名古屋市立大学倫理委員会の承認を受けて行った.<BR> 測定は室内で行った.対象者はウォーミングアップの後,約4m離れたネットに向かい投球した.投球数は20球を1セッションとし,合計80球(4セッション)の全力投球を行った.なお,球種はストレートで,セットポジションからの投球とした.投球間隔は約20秒で,各セッションの間隔は約6分とした.投球前・20・40・60・80球後に肩関節位置覚およびボルグスケールを用いた自覚的運動強度を測定した.<BR> 肩関節位置覚の測定は先行研究(第7回肩の運動機能研究会,2010)の方法に準じて行った.測定部位は右肩関節とし,端座位,閉眼にて行った.まず検者が口頭で,「肘を伸ばし,水平と思うところまで腕を挙げてください.」と指示した.運動は前額面における肩関節外転運動に規定し,対象者には水平と認識する位置を表現し,静止してもらった.測定は5回行い,後方よりデジタルカメラで静止位置を撮影した.撮影した画像から上腕骨長軸と床への垂線とのなす角度を計測した.5回の測定角度について,最大値から最小値を引いた値(difference of angle:以下,DA)をバラつきの指標として算出した.<BR> 検討方法は,投球前のDAと年齢,経験年数について,ピアソンの相関係数の検定を行った.また投球前・20・40・60・80球後のDAおよび自覚的運動強度についてSteel-Dwass法にて多重比較検定を行った.有意水準はいずれも5%未満とした.また各セッションにおいてDAが10°以上となる対象者を抽出し,さらにDAが最大となるセッションについて個別に確認した.<BR> 【結果】投球前のDAは年齢と有意な相関関係(r=-0.6)を認めたが,経験年数とは相関関係を認めなかった.<BR> 投球数増加に伴うDAの変化について,投球前5.5±2.2°,20球後7.2±3.9°,40球後6.6±3.4°,60球後7.2±3.4°,80球後5.9±2.6°となり,各セッション間で有意差は認められなかった.自覚的運動強度は,20球後8.7±1.6,40球後10.8±1.6,60球後12.2±1.7,80球後13.7±2.1となり,投球前と20・40・60・80球後,20球後と40,60,80球後,40球後と80球後の間で有意差が認められた.<BR> またDAが10°以上の対象者は,投球前1名,20球後3名,40球後1名,60球後3名,80球後1名存在した.DAが最大となるセッションは,投球前1名(6.7%),20球後5名(33.3%),40球後2名(13.3%),60球後5名(33.3%),80球後2名(13.3%)であった.<BR> 【考察】いわゆる投げすぎは投球障害の一要因として考えられており,青少年の野球障害に対して全力投球数が提言されているが,その具体的根拠は明確になっていない.そのような状況の中,今回は肩関節位置覚に注目して投球数増加に伴う変化について調査した.<BR> まず投球前のDAは年齢と相関を認め,経験年数とは相関を認めなかった.これは関節位置覚が学習によって獲得される技能・技術などに比べ,心身機能の発達と関係が強い感覚であることを示唆している.そのため今後は幅広い年齢層での調査を行う必要があると考えられた.<BR> 次に,投球数増加に伴う変化について,自覚的運動強度は漸増したが,DAには有意な変化がなかった.田崎らは高校野球投手を対象とした研究において,肩関節位置覚の誤認が試合登板後に生じていたと報告している.本研究と結果が異なった要因に,対象や測定場面および測定方法の違いが考えられるが,本結果を個別に確認したところ,DAが10°以上という大きなバラつきを生じている対象者も存在した.また,DAは必ずしも漸増的な変化は生じず個人によって様々であった.肩関節位置覚の投球数増加に伴う変化には、投球フォームが影響している印象があり,今後は投球フォームとの関係について検討する必要があると考えられた.
  • 鈴木 達也, 水谷 仁一, 竹中 裕人, 大家 紫, 清水 俊介, 矢澤 浩成, 花村 浩克, 筒井 求, 伊藤 岳史, 岩堀 裕介
    セッションID: O-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】投球動作による肩・肘障害の原因として,オーバーユース,コンディショニングの不良,不良な投球フォームなどがあげられる.我々は第7回肩の運動機能研究会において,wind-up phase(以下WU)での体幹後方傾斜と肘下がりとの関係を調査し,WUでの体幹後方傾斜とearly-cocking phase(以下EC)での肘下がりとの関係は示唆されたが,late-cocking phase(以下LC)での肘下がりとの関係は見られなかったことを報告した.今回,WUで体幹後方傾斜を認める選手に対し,その場で投球フォーム指導を行い体幹後方傾斜を修正し,投球フォームが即時的に変化するのかどうかを調査したので報告する.〈BR〉 【対象】対象は,メディカルチェックを行い本研究に賛同し同意を得た肩・肘に愁訴のない中学生野球選手27名(平均年齢13.30±0.61歳)の中から,明らかにWUで体幹後方傾斜を認めた選手(以下WU体幹後方傾斜群)11名である.なお,11名は全員右投げである.〈BR〉 【方法】方法は,CASIO社製デジタルカメラEX-FH25を用い,前方,側方,後方の3方向からハイスピードモードの動画で撮影した.frame rateは240fpsとし,18m先の相手に対し,セットポジションから全力投球で3球投げさせ(撮影1),デジタルカメラの映像から複数人で評価し3球とも明らかにWUで後方傾斜が確認された選手をWU体幹後方傾斜群として抽出した.次に,WU体幹後方傾斜群に対し言語教示と実技によりWUの後方傾斜を修正した状態で撮影1と同様の撮影方法で投球フォームを撮影した(撮影2).撮影と同時にBushnell社製スピードガンスピードスターVで球速も測定し,もっとも速い1球を分析対象とした.投球フォームの分析は撮影1,撮影2とも動画を静止画にして行った.投球フォームの評価項目は(1)ECでの投球側股関節屈曲不足,(2)FPでの体幹後方傾斜,(3)FPでの投球側肘下がり,(4)LCでの投球側肘下がりの有無である.それぞれの基準は(1)右手が最も下がった時点で膝関節と股関節が同程度に屈曲していなければ投球側股関節屈曲不足あり,(2)FPで地面からの垂線に対し,体幹が後方に傾斜していれば体幹後方傾斜あり,(3)FPで両肩峰を結ぶ線よりも投球側肘関節が下がっていれば肘下がりあり,(4)LCで両肩峰を結ぶ線よりも投球側肘関節が下がっていれば肘下がりありとした.撮影1と撮影2の静止画を比較し,(1)から(4)の項目が変化したのかどうかを,i)変化なし,ii)改善,iii)改悪の3項目に分類し,投球フォームの変化を確認した.〈BR〉 【結果】WU体幹後方傾斜群の投球フォームの特徴として(1)EC股関節屈曲不足ありが11名中7名(63.6%),なしが4名(36.4%),(2)FPの体幹後方傾斜ありが11名中4名(36.4%),なしが7名(63.6%),(3)FP肘下がりありが11名中8名(72.7%),なしが3名(27.3%)(4)LC肘下がりありが11名中6名(54.5%),なしが5名(45.5%),であった.撮影1の投球フォームと撮影2の投球フォームを比較したところ,(1)EC股関節屈曲不足ありが7名中,変化なし4名(57.1%),改善3名(42.9%),改悪0名(0.0%),(2)FPの体幹後方傾斜ありが4名中,変化なし0名(0.0%),改善4名(100.0%),改悪0名(0.0%),(3)FP肘下がりありが8名中,変化なし6名(75.0%),改善2名(25.0%),改悪0名(0.0%),(4)LC肘下がりありが6名中,変化なし5名(83.3%),改善1名(16.7%),改悪0名(0.0%)であった.〈BR〉 【考察】今回の結果から,WUの体幹後方傾斜を即時的に修正することにより,FPでの体幹後方傾斜は100%改善できた.しかし,FPでの肘下がりは25%,LCでの肘下がりは16.7%しか改善できなかった.FP,LCでの肘下がりに関しては別のアプローチが必要であると考えられた.
  • 河野 隆志, 小林 敦郎, 八木下 克博, 漢人 潤一, 廣野 文隆, 甲賀 英敏, 岡部 敏幸
    セッションID: O-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】静岡県メディカルサポート(以下MS)は、静岡県高校野球連盟(以下静岡県高野連)の要請を受け平成14年より活動を実施している。主たる活動内容として、全国高校野球選手権静岡大会(以下静岡大会)での試合前・中・後における選手へのテーピング等の応急処置、試合後の投手へのクーリングダウン、選手や審判員に対しての熱中症予防を目的としたドリンク作製や啓発活動等を実施している。また、一昨年度より、投手の障害予防を目的とした投手検診をクーリングダウンと併用し実施している。そこで本研究の目的は、投手検診より、静岡県における投手の現状を把握し、今後意義のあるクーリングダウンの質的向上へとつなげていくことである。特に今回は、障害発生に関与するとされている投球数や投球後における肩関節内旋角度(2nd)、問診による既往歴の有無等を調査し、投手における現状を検討したので報告する。 【方法】対象は、静岡大会において初登板し、終了後または途中交代の投手で投手検診を行なった97名(3年生74名、2年生20名、1年生3名)とした。投手検診実施にあたり、静岡県高野連に加盟している全118校に対し、第92回静岡大会責任教師・監督会議においてMS代表より投手検診の趣旨を説明、その後静岡大会での各試合前のトスの際にも再度MSスタッフより趣旨を説明し、同意が得られたチームの投手に限り投手検診を実施した。投手検診の内容は、肩関節内外旋角度(2nd)の測定、問診にて一日の平均投球数(以下平均投球数)や一週間での投球日数(以下投球日数)、クーリングダウン実施の有無、疼痛や故障による既往歴や医療機関への受診歴等の調査を実施した。投球数に関しては、公式記録を参照し記録した。肩関節内外旋角度の測定方法は、15分程度の投球側肘・肩関節へのアイシング終了後、仰臥位にて投球側、非投球側の順に実施した。測定機器はレベルゴニオメーターを使用し、各可動域とも90°を最大値と設定し、5°毎での測定を行なうよう統一した。検討項目として、各項目での測定結果や問診結果の集計、投球後における投球側と非投球側との角度差(以下角度差)を抽出し、各々と既往歴の有無での関係性を検討した。統計学的処理として、投球数と肩関節内旋角度、角度差にはt検定、平均投球数(50球未満、50~80球未満、80~100球未満、100~150球未満、150球以上の5群に分類)と投球日数(3日未満、3~4日、5~6日、7日の4群に分類)、クーリングダウンの有無には、マン・ホイットニの検定を実施し、それぞれの有意水準は危険率5%未満とした。 【結果】投球数は98±34球であり、肩関節内旋角度は52.3±14.2°、角度差は8.5±12.1°であった。既往歴に関しては有りが60名(61.9%)無しが37名(38.1%)であった。既往歴有りの投手の部位別では、肩関節(46.7%)、肘関節(43.3%)、腰部(20%)の順に多かった。投球数、肩関節内旋角度、角度差、投球日数、クーリングダウンの有無と既往歴の有無に関しては有意差が認められなかった。しかし、既往歴と平均投球数において、既往歴有りと無しの投手間で有意差が認められた。 【考察】静岡大会における投手の現状として、61.9%の投手に既往歴や最近の故障等が認められた。そのなかでの投手の特徴として、一日における投球数が既往歴無しの投手と比べ有意に多いことが判明した。その反面、障害発生に関与するとされている肩関節内旋角度や角度差等において有意差は認められなかった。このような結果となった要因として、学童、少年野球時より受傷し、障害や疼痛が残存したまま現在に至る投手が多いことが予測される。また、部位別では肩、肘関節に次いで腰部の既往の訴えもみられており、投球動作における一連の流れや障害部位による代償等の影響も一要因として考えられる。肩関節内旋角度や角度差に関しては、MS活動における投手へのクーリングダウン時の肩甲骨周囲筋への必須ストレッチとしての実施やセルフエクササイズでの肩関節内外旋筋に対する個別指導による投手への認識が関与しているのではないかと考えられる。本研究より、静岡県における高校野球投手の現状として、肩・肘関節に留まるのではなく体幹や股関節等全身に着目しての実施が必要となるとともに、幼少期からのメディカルチェックも重要となることが示唆される。 【まとめ】MSの主たる活動目的として、選手の障害予防や自己管理能力の向上を図ること、教育場面の一環等が挙げられる。今年度より、県内3校を対象とした巡回事業も実施しており、投手検診等のメディカルチェックを実践し、その結果を分析し問題点に対し対策を講じることで、選手が怪我や故障なく高校野球を継続できる環境づくりや障害予防に対する認識の啓発活動を行なっていきたい。
  • 兵田 陽香, 小島 宗三, 草壁 美穂, 水野 詩織, 大森 弘則(MD)
    セッションID: O-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/22
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    【目的】寛骨臼回転骨切り術(以下、RAO)は、股関節周囲の筋肉を広範囲に剥離して骨切りを行う術式である。そのため、筋力の回復や骨切部の骨癒合にかなりの時間を要する。これに対し、当院ではクリティカルパス(以下、パス)を作成し運用することで、入院中安全で的確にリハビリテーションが進み、入院期間が長期化しないように取り組んでいる。今回このRAOのパスについて、バリアンス例を調べ、このパスの有用性と問題点について検討した。<BR> 【方法】対象は、平成17年10月から平成23年4月までに当院でRAOを施行した女性32例33股、平均年齢38.2歳である。術式において、大転子を切離した方法が4例4股、大転子を切離しない方法が28例29股であった。各症例の離床時期(車椅子移動開始時期)、起立歩行開始時期(部分荷重開始時期)、退院時期を調査しパスと比較した。尚、当院のRAOのパスでは術後4日で車椅子移動を開始し、術後2週より起立歩行開始、術後8週でT字杖での退院を目標としている。今回、術後9週を超えて退院した場合をバリアンスとした。<BR> 【結果】離床時期の平均は術後5日、起立歩行開始時期の平均は術後2週4日、T字杖での退院時期は術後8週3日であった。このうち、9週を超えて退院したバリアンス例は33股中6股(18%)であった。内訳は大転子を切離した症例3股、回転骨片に移動を認めた症例2股、表層感染を生じた症例1股である。特に退院までに術後12週以上の期間を要したのは、回転骨片が移動し直達牽引を要した2例であった。この2例とも離床後に発生した疼痛に対し投薬のみで対処し、リハビリテーション(以下、リハビリ)をパスどおり順次進めていたが、後の定時のレントゲン検査で異常が判明し対策が遅れてしまった症例である。また、大転子を切離した症例は3例とも退院時期が術後10週を越えていた。尚、表層感染の1例は術後9週5日で退院となっていた。感染そのものが偶発するものであり、感染の原因については特定できなかった。<BR> 【考察】今回、対象の80%以上の症例がこのパスに準じることができ、このパスはほぼ妥当なものと考え、有用性があることが示唆された。バリアンスとして回転骨片に移動を認めた2例は、直達牽引をすることで術側膝関節の屈曲拘縮や長期臥床による筋力低下を招き、これらの合併症に対するリハビリにも難渋したことが、入院の長期化につながったと考える。また、大転子を切離した3例は主に大転子部の骨癒合や術側股関節の外転筋力の回復に時間を要していた。そのため、当院では平成21年5月以降は、大転子を切離する方法を術式として選択することがなくなった。<BR>これらより、離床後や起立歩行開始後に疼痛の訴えがあった場合や大転子を切離した症例では、骨癒合の完成までは必ずレントゲンで確認した上でリハビリをすすめるべきであったと考える。従来のレントゲン検査はルーティン化されており、疼痛の訴えに応じて検査を即座に行うということが少なかった。また、理学療法士から自発的にレントゲン検査を医師に依頼することもなかった。したがって、今後このパスを運用していく場合、離床や起立歩行開始の翌日に患者の訴えに応じて適宜レントゲンの確認をすることが必須であると考える。また、個々の症例の訴えに傾聴し、異変のサインを見落とすことがないように努めることも、パス運用に対して意義があると考えられる。さらに、理学療法士の評価のみならず、症例の術中の状態を医師から、病棟での症例の訴えや問題点などを看護師から情報収集することで、客観的にも症例の異変を予測、察知できると考える。それが迅速な対応につながり、バリアンスとなるさまざまな原因を回避し、患者への負担も軽減されるのではないかと考える。したがって、他部門からの情報収集もパスを運用する上で重要であると考える。<BR> 【まとめ】以上のことから、当院のパスは有用性があると示唆された。しかし、あくまでも症例の経過をパスに合わせるのではなく、各症例の特徴を把握しながらパスを運用することが重要である。医師や看護師からの情報を収集したチームアプローチもパスの遂行において不可欠である。<BR>
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