Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
Print ISSN : 0915-7352
ISSN-L : 0915-7352
13 巻, 74 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • Takashi Muramatsu
    2001 年 13 巻 74 号 p. 563-572
    発行日: 2001/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ミッドカイン (MK) はヘパリン結合性の増殖因子で、細胞の増殖、生存、移動を促進するなどの多彩な活性を持っている。MKは引き続いて発見されたプレイオトロフィン (PTN)/ヘパリン結合性成長関連分子 (HB-GAM) と構造的に類似するが、他の増殖因子とはホモロジーを持たない。MKは腫瘍細胞の増殖、侵潤をうながし、また炎症性細胞の移動を促進し、虚血性の新生内膜の形成や腎障害にも関連するので、疾病治療の分子ターゲットとして注目されている。MKのシグナル受容体の成分にはコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである受容体型プロテインチロシンホスファターゼζ (PTPζ) やヘパラン硫酸プロテオグリカンであるシンデカンが含まれる。MKはこれらのプロテオグリカンのグリコサミノグリカン部分の過硫酸化構造 (コンドロイチン硫酸E構造、ヘパラン硫酸2糖単位中のトリ硫酸化構造) に結合し、この結合がMK作用に必要である。MKはジスルフィド結合で結ばれた2つのドメインから主として成るが、よりC末端側のドメイン上の塩基性アミノのクラスターが過硫酸化グリコサミノグリカンの硫酸基を識別する。MK受容体の成分としては膜貫通型糖タンパク質であるLRP (low density lipoprotein receptor-related protein) も同定されているが、プロテオグリカンとLRPがどのように相互作用し、細胞内のシグナル系 (PI3キナーゼ→ERK系) ヘシグナルを伝えるかが今後解析すべき課題である。
  • 化学的アプローチ
    Takayuki Ando, Hiromune Ando, Makoto Kiso
    2001 年 13 巻 74 号 p. 573-586
    発行日: 2001/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    化学的なアプローチは糖鎖生物学研究において不可欠である。化学的に合成された純粋な糖鎖や複合糖質は、生体内の様々な生理機能発現のための糖鎖構造や代謝経路を明らかにするために利用されてきた。本稿では、我々が合成シアロ糖鎖を用いて行った糖鎖生物学研究における最近の成果を、細胞の認識現象であるウィルス感染、細胞接着、および毒素とレセプター相互作用に焦点を当てて解説する。
  • Kohji Kasahara, Yutaka Sanai
    2001 年 13 巻 74 号 p. 587-594
    発行日: 2001/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガングリオシドは様々な神経活動を調節することが示されてきた。しかし、その分子機構については、まだ明らかにされていない。最近の研究から、ガングリオシドは形質膜表面においてミクロドメインを形成し、そこにいろいろなシグナル伝達分子が会合していることからシグナル伝達に関係していることがわかってきた。ここではミクロドメインにおけるシグナル伝達のガングリオシドを介する神経機能への関与について論じる。
  • Keiko Fukushima, Katsuko Yamashita
    2001 年 13 巻 74 号 p. 595-602
    発行日: 2001/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    糖鎖認識能を持つサイトカインが存在することが報告されて、糖鎖認識によってサイトカインとその受容体との相互作用が修飾を受けている可能性が示唆されている。本報では、サイトカインの糖鎖認識能について概観し、さらにIL-2における糖鎖認識能の役割について述べる。CTLL-2細胞はIL-2依存的に増殖する。マンノースを5残基あるいは6残基持つ高マンノース型糖鎖によってCTLL-2細胞の増殖ならびにシグナル伝達が阻害されたことから、高マンノース型糖鎖がIL-2によるT細胞増殖のモジュレーターとして働くことが示された。また、IL-2受容体の各サブユニットを独立に発現させると、IL-2と弱い結合しか見られないことから、IL-2刺激によってどのようにIL-2とIL-2受容体α, β, γサブユニットとの高親和性複合体が形成されるのかは不明であった。しかし、我々はIL-2がIL-2受容体αサブユニット上のマンノースを5残基あるいは6残基持つ高マンノース型糖鎖と特定のペプチド鎖をデュアルに認識することを見出した。IL-2とIL-2受容体αサブユニット複合体形成がシグナル伝達に必要な高親和性複合体の形成の引き金をひくものと思われる。
feedback
Top