Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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13 巻, 70 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • “グリコシンターゼ”と糖転移酵素
    Gideon J. Davies, Simon J. Charnock, Bernard Henrissat, 山本 麻記子, 大橋 友紀, ...
    2001 年 13 巻 70 号 p. 105-120
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    過去10年間は、酵素的な糖転移反応の構造酵素学において大きな進歩が示された時代である。分子生物学の進歩と、高速処理の可能なタンパク質結晶学との組み合わせによって、糖質加水分解酵素の3次元構造があふれるほど明らかにされた。合成化学と構造生物学を共同して適用することによって、多数のオリゴ糖疑似化合物や機械的プローブが作られた。この仕事の多くを支えたのは糖質作用性酵素 (「CAZymes」) の分類であり、今日では非触媒モジュールと合わせて、糖質加水分解酵素、糖質エステラーゼ、多糖リアーゼおよび糖転移酵素を含む範囲にまで拡張されている。それらの構造とグリコシド結合の合成に関わる触媒メカニズムに対するわれわれの理解は、自然のもつ触媒器械および、「グリコシンターゼ」と呼ばれる糖質加水分解酵素変異体によって、最近刺激的に発展した。ここでは「GT-2ファミリー」糖転移酵素である Bocillus subtilis SpsA の構造を含めたそれらの発展を総説し、セルロース、キチン、ビアルロナンおよびNod因子のような生体高分子合成とこの酵素との関連を考察する。
  • Lars C. Pedersen, Thomas A. Darden, Yoshimitsu Kakuta, Masahiko Negish ...
    2001 年 13 巻 70 号 p. 121-129
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    GlcAT-Iはヘパラン硫酸/コンドロイチン硫酸生合成の鍵となる酵素です (1)。ヒトGlcAT-IのX線結晶構造がUDPと基質類似物の両方を結合した形で決定されています。GlcAT-Iの立体構造は、2つのサブドメインから成るSGCドメインとして知られている構造をとっていました。N末サブドメインが補酵素結合に関与し、C末サブドメインは基質結合に関与します。この酵素ファミリーに広く保存されている側鎖によって、補酵素認識が行われていることが明らかになったことに加えて、基質認識を行っているアミノ酸側鎖も決められました。又、GlcAT-Iの結晶構造は、グリコシルトランスフェラーゼファミリーの機能理解の構造的基盤を我々に与えてくれました。
  • Louis N. Gastinel, 横山 三紀
    2001 年 13 巻 70 号 p. 131-145
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガラクトース転移酵素は糖転移酵素のファミリーの中で最も代表的なものである。ガラクトース転移酵素はUDP-α-D-ガラクトースを供与体としてガラクトースを糖タンパク質、グリコアミノグリカン、糖脂質、あるいは植物ホルモンなどのような脂溶性分子などさまざまなアクセプターに転移する。過去10年間ほ乳類細胞のガラクトース転移酵素は糖質研究者の興味の中心であり遺伝子の発見と酵素反応機構の解明に焦点がおかれてきた。1999年にウシβ4GalT1の触媒ドメインの結晶構造解析の結果が分解能2.4Åで初めて明らかになった。この研究は、原子レベルでの立体構造に着目することにより酵素的性質を解釈し反応機構を理解することをめざす、糖転移酵素の構造的研究の新展開の幕開けとなった。この総説では糖転移酵素のファミリーの流れの中でガラクトース転移酵素の構造ー機能相関の現状をとりあげる。2つのウシガラクトース転移酵素、β4GalT1, α3GalT、の触媒ドメインの結晶構造と反応機構を考察する。
  • Mika Kaneko, Shoko Nishihara, Hisashi Narimatsu, Naruya Saitou
    2001 年 13 巻 70 号 p. 147-155
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    近年、ヒトや線虫などのゲノム計画が急速に発展してきている。その結果、これらのゲノム配列の中からたくさんの新規糖転移酵素遺伝子が見いだされるようになった。一体どのようにして糖転移酵素は、進化の過程でその遺伝子ファミリーの構成員を増やしてきたのだろうか? 糖転移酵素遺伝子の進化の道筋を辿る目的で、分子進化学的な手法を用いて解析を行った (1)。我々は55種類の糖転移酵素遺伝子を使って解析を行い、主にN-glycan とO-glycan を合成する糖転移酵素に関して論じた。系統樹の解析によって、糖転移酵素遺伝子が遺伝子重複を通してその遺伝子数を増やしていったことが明らかになった。更に、各遺伝子の分岐年代を推定したところ、糖転移酵素遺伝子が遺伝子重複とゲノム重複でその遺伝子数を増やしたことが、さらに、支持された。また、進化速度を比較したところ、糖転移酵素遺伝子は他の遺伝子より進化速度が遅い傾向にあり、遺伝子ファミリー内でばらつきが認められた。これらの結果から、糖転移酵素遺伝子が遺伝子重複やゲノム重複で遺伝子数を増やしたことにより、機能的制約がゆるみ、アミノ酸変異が蓄積して酵素活性に多様性をもたらされた、と推察される。本稿では、これらの解析を通して得られた「糖転移酵素遺伝子の進化史」のエッセンスを述べる。
  • Robert S. Haltiwanger, 久松 光湖
    2001 年 13 巻 70 号 p. 157-165
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    Notch は、数々の発生過程で重要な役割を果たす細胞表面にある受容体タンパク質である。細胞外ドメインは、36個のEGF (epidermal growth factor) 様リピートから成り、各リピートはO-hcose とO-glucose の糖修飾を受けていることが最近の研究で証明されている。このタイプの糖修飾を受けるコンセンサス配列が数多く認められること、及び、種を越えてコンセンサス配列が保存されることから、糖付加が Notch の機能において重要な役割を果たしていることが示唆されていた。Fringe タンパク質が、Notch のO-fucose 残基を修飾するβ1,3-N- アセチルグルコサミン転移酵素であることが示され、O-fucose 修飾の機能解明への手がかりがもたらされた。Fringe は Notch 機能の修飾因子であり、リガンドに対する受容体の応答を変化させることが知られており、これらの結果は、特定のタンパク質上の糖鎖構造の変化が生物学的現象を司る明らかな実例となった。
  • Yoshitaka Ikeda, Naoyuki Taniguchi
    2001 年 13 巻 70 号 p. 167-176
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    β1,4-N-アセチルグルコサミン転移酵素III (GnT-II) は糖タンパク質アスパラギン結合型糖鎖の生合成を制御する重要な役割を担う鍵糖転移酵素として知られている。この酵素が担う調節の役割は、その反応産物すなわちバイセクティングGlcNAcの糖鎖生合成に対する効果に基づいている。このユニークな構造はコア構造の形成に関与する他の酵素に許容されないため、これらの酵素の反応が阻害されてしまう。このような抑制的な制御は、バイセクティングGlcNAcの性質やGnT-IIIの広い基質特異性ために起こるのである。GnT-IIIの過剰発現や異所性発現は細胞機能に様々な重要な変化をもたらすが、いくつかの場合を除き、これがバイセクティングGlcNAc残基の直接的な関与であるか、あるいは生物学的に重要な糖鎖構造の合成阻害によるものであるかはわかっていない。しかし、GnT-IIIによる著しい構造的な変化が細胞に生物学的な変化を引き起こすことは確かなようである。このような知見は、GnT-IIIやバイセクティングGlcNAcが細胞の機能に重要な役割をもつということや、N-グリカンが様々な生物学的な現象と関係していることを示唆する。
  • Minoru Ujita, Minoru Fukuda
    2001 年 13 巻 70 号 p. 177-191
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ポリ-N-アセチルラクトサミンはN-アセチルラクトサミン (LacNAc) 繰り返し構造を持つ特異な糖鎖であり、また、シアリルルイスxのような、さらなる糖鎖修飾のためのバックボーンとなる。ポリ-N-アセチルラクトサミンはN-グリカン、O-グリカン、および糖脂質に結合しており、i-β1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素(iGnT)とβ1,4-ガラクトース転移酵素 (β4Gal-T) 遺伝子ファミリーのメンバーによりβ1,3結合N-アセチルグルコサミン (GlcNAc) とβ1,4結合ガラクトース (Gal) が交互に付加して合成される。ムチン型O-グリカンにおいてポリ-N-アセチルラクトサミンはコア2およびコア4分岐糖鎖上に形成され、コア2およびコア4分岐糖鎖はそれぞれ、コア2β1,6-N-アセチルグルコサミン転移酵素 (C2GnT) およびコア4β1,6-N-アセチルグルコサミン転移酵素 (C4GnT) により合成される。
    コア2分岐糖鎖のガラクトースの付加においてはβ4Gal-TIVがβ4Gal-T遺伝子ファミリーのメンバーの中で最も効率よく働き、また、iGnTとともに作用してコア2分岐O-グリカン上にポリ-N-アセチルラクトサミンを合成するということが見出された。一方、N-グリカン上のポリ-N-アセチルラクトサミン合成においてはβ4Gal-TIが最も効率よく作用するということが示された。β4Gal-TIVの働く効率はβ4Gal-TIと対照的に受容体のLacNAc繰り返し構造が増加すると劇的に減少するが、これはいろいろな細胞で見られる、コア2分岐O-グリカンのポリ-N-アセチルラクトサミン鎖がN-グリカンの場合よりも短いという知見とよく合っている。コア4分岐O-グリカンのポリ-N-アセチルラクトサミンはiGnTとβ4Gal-TIにより最も効率よく合成されるということが見出された。しかし、iGnTはコア4分岐へ効率よくGlcNAcを付加できないため、コア4分岐におけるポリ-N-アセチルラクトサミン合成はコア2分岐の場合よりも効率が悪い。このようにコア2およびコア4分岐O-グリカンにおけるポリ-N-アセチルラクトサミン伸長はiGnTとβ4Gal-T遺伝子ファミリーの異なるメンバーにより特異的に制御されている。
  • Shoji Yamamoto, Shogo Oka
    2001 年 13 巻 70 号 p. 193-208
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    この十年の間に、HNK-1糖鎖抗原の生合成に関わるグルクロン酸転移酵素 (GlcAT) が相次いで見出され、またその遺伝子が単離された。HNK-1糖鎖抗原は構造的に末端の硫酸化グルクロン酸によって特徴づけられ、グルクロン酸転移酵素はこの糖鎖の生合成経路における律速酵素と考えられている。いくつかのグルクロン酸転移酵素cDNAが単離されたのに続き、それらグルクロン酸転移酵素の構造比較により、触媒領域における四つの保存されたモジュール構造によって特徴づけられる新しいグルクロン酸転移酵素群が提唱されることとなった。哺乳類においてはGlcAT-PとGlcAT-SがHNK-1糖鎖の生合成に関与しており、それらの発現は主に神経組織に局在していた。しかし、二つの酵素はそれぞれ神経組織中で異なった部位に発現し、さらに異なる受容体基質特異性を有していた。これらのGlcATのcDNAは通常HNK-1糖鎖を持たない細胞表面上に、HNK-1糖鎖抗原の発現を誘導することができる。グルクロン酸転移酵素はHNK-1糖鎖抗原の生理的機能を調べるに当たって強力なツールであると言える。
  • Shuhei Koshida
    2001 年 13 巻 70 号 p. 209-213
    発行日: 2001/03/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
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