Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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16 巻, 87 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • Joe Tiralongo, Roland Schauer, 佐野 琴音, 及川 浩子, 竹川 寛子
    2004 年 16 巻 87 号 p. 1-15
    発行日: 2004/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    天然に存在するシアル酸はC-4, -7, -8, -9位に水酸基を持ち、この4箇所の水酸基はいずれもO-アセチル化されうる。この修飾はシアル酸を発現するほとんど全ての動物と一部の細菌で見られ、多くの生命現象の調節と関連することが知られている。O-アセチル化によって大きく影響される重要な過程の1つは、癌の発達である。この総説では、ヒトの結腸直腸癌、基底細胞癌、および黒色腫におけるシアル酸のO-アセチル化の役割と調節の解明を目指した近年の研究成果について概説する。O-アセチル化シアル酸の生物学的役割の同定と性質決定は急速に進展したが、このO-アセチル化を担う転移酵素の活性に関する詳細な情報は未だ漠然としている。7(9)-O-, 4-O-特異的アセチル基転移酵素は、それぞれウシ、ウマ顎下腺において30年以上前に同定された。しかし数多くのグループの努力にもかかわらず、これらの酵素の精製やクローニングはなかなか成功せず、未だナゾである。ここで、我々は、数十年にわたって集められたデータを要約し、この不可解な酵素の反応機構と調節の解明をめざした最近の進歩について詳述することを試みる。
  • Anna A. Kulminskaya, Andrew N. Saveliev, Kirill N. Neustroev, 横山 三紀
    2004 年 16 巻 87 号 p. 17-31
    発行日: 2004/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    澱粉分解活性をもつアブザイムが酵素活性をもつヒト抗体の新しいタイプとして最近発見された。自己免疫疾患患者の血清やヒトの母乳にはマルトースオリゴサッカライド、澱粉、グリコーゲンや人工基質のα-(1,4)-グルコシル結合を加水分解する活性をもつさまざまな免疫グロブリンがあることが知られていた。臨床的に多発性硬化症や全身性エリマトーデスであると診断された数十人の患者のIgM分画は健常者のものと比較して澱粉分解の比活性が約千倍高い。ヒト母乳のIgG, IgAの活性の平均値は比活性にして自己免疫疾患患者のIgMの五分の一以下であった。アブザイムの活性は抗体そのものがもつ性質であって酵素の混入によるものではないことを証明するための厳密な実験がおこなわれてきた。アブザイムのIgMとIgG分画をFabフラグメントにしても同程度の活性を示した。還元末端に発色団や蛍光標識をもつさまざまなマルトースオリゴサッカライドに対するアブザイムによる分解活性のKMは1~2mMから0.01mMであった。異なるドナーからのアブザイムはミカエリスメンテン値の不均一性を示し天然基質や人工基質の分解様式にも差異がみられた。あるものはエキソ型アミラーゼ活性を示し、またあるものはグルコースを遊離するα-グルコシダーゼ活性を示しp-ニトロフェニル-α-D-グルコピラノサイドを分解できた。調べられたすべての澱粉分解活性をもつアブザイムの酵素的性質はヒトのα-アミラーゼと異なっていた。IgM, IgG, sIgAはいずれもトランスグリコシレーション活性を示さなかった。
  • Seiichiro Ogawa
    2004 年 16 巻 87 号 p. 33-53
    発行日: 2004/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    カルバ糖質は真糖の炭素環状アナログであり、最近、糖鎖生化学、糖鎖生物学の分野において注目される一群の擬似糖質に属している。カルバ糖の化学構造は、ピラノース環を有する五単糖、六単糖のそれらに酷似するが、分子中にアルデヒド基あるいはケトン基が存在しないので、生体内における安定性や反応性については、還元糖と大きな違いを見せている。とくにカルバ糖アミンは、天然から得られたもの、それを参考にして合成されたもの、いずれもが、真のグリコシルアミン類に期待される性状に、化学的安定性を賦与した格好なミミックスとして興味深い生理活性を示すことが分かってきた。さらに、グリコシダーゼによって加水分解されない、N-あるいはO-結合型オリゴ糖残基を含むオリゴ糖ミミックスの設計と合成が容易に行えるようになり、それらの興味深い性質が明らかにされつつある。カルバ糖の化学は、今後、生理活性糖ミミックスや糖鎖生物学・生化学研究のツールなどの開発現場で重要な位置を占めることが予期される。
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